なぜ「シューゲ」はネットミーム化したのか?
最近やたら聞く「シューゲ」という言葉。
でもよく見てみると、かなり雑に使われている気がします。
ギターが歪んでいて、空間系がかかっていれば「シューゲ」。
轟音なら「シューゲ」。
少し浮遊感があれば「シューゲ」。
いつの間にか、かなり便利な言葉になってしまいました。
そして最近は、ついにギャグとしても使われ始めているように見えます。
「シューゲっぽいですね」とか「それシューゲじゃん」みたいな感じで、ほとんどネットミームのように流通している。
来るところまで来たな、と思いました。
気がついたらそこにあった言葉
ただ正直に言うと、僕は「シューゲ」という言葉を昔から知っていたわけではありません。
むしろ、ここ最近になってから耳にするようになりました。
最初に見かけたのは、おそらくX(旧Twitter)かInstagramだったと思います。
特にバンドマン界隈の投稿で、
「この曲ちょっとシューゲですね」
とか
「最近シューゲっぽい音作りにハマってます」
といった言い方を見かけるようになりました。
その頃にはすでに、ジャンル名というより
少し軽いニュアンスの言葉として使われていた気がします。
気がついたときには「シューゲ」という言葉があり、
それはすでにネットの中でミームのように流通していました。
日本でのシューゲの流れ
もちろん、シューゲイザーという音楽そのものは昔からあります。
例えば
My Bloody Valentine
や
Slowdive
のようなバンドが90年代に作った音楽です。
足元のエフェクターを見ながら演奏しているように見えることから
「shoegaze(靴を見る)」と呼ばれた、という話もよく知られています。
ただ、日本でこの系統の音楽が広く知られるようになったきっかけは、
もう少し別の流れだった気もします。
大きかったのは、やはり
SUPERCAR
のヒットではないでしょうか。
90年代後半、轟音ギターと浮遊感のあるサウンドは、
それまでの日本のロックとは少し違う景色を見せていました。
一方で、その下で地道に活動していたバンドもいます。
例えば
Luminous Orange
のような存在です。
派手なヒットではないけれど、海外のシューゲイザーと地続きの音楽を続けていた。
そうした活動の積み重ねがあって、日本でもこの音楽の文脈がゆっくり広がっていったのではないかと思います。
そして言葉だけが広がった
ただ、今SNSで使われている「シューゲ」という言葉は、
当時のシューゲイザーと同じ意味なのかというと、少し違う気もします。
今は
・空間系エフェクトが多い
・浮遊感がある
・少しノイズっぽい
そういった音を、まとめて「シューゲ」と呼んでいる印象があります。
つまりジャンルというより、
雰囲気タグのような使われ方です。
インターネットではよくあることですが、
言葉だけが先に広がって、意味は少しずつ変わっていく。
使われすぎた言葉
そして面白いことに、最近はそのバンドマン界隈でも
あまり「シューゲ」と言わなくなってきた気がします。
使われすぎた言葉は、だんだんと気恥ずかしくなっていく。
また別の言葉が現れて、同じような音を指すようになる。
ジャンル名というのは、そうやって少しずつ形を変えていくものなのかもしれません。
音楽より先に言葉が広がる時代
もしかすると今は、音楽そのものより
ジャンル名の方が先に広がる時代なのかもしれません。
SNSで言葉が流通し、
そのあとで「それってどんな音?」と調べる。
昔とは少し逆の順番です。
だからこそ「シューゲ」という言葉も、
本来のshoegazeとは少し違う意味を持ちながら、
ネットの中で独自の文化になっていったのでしょう。
気がついたらそこにあって、
気がついたら少しずつ使われなくなっていく。
「シューゲ」という言葉は、
そんなインターネット時代のジャンル名なのかもしれません。
