ビッグマフを前にして、決められない
ビッグマフは、ギタリストの義務教育みたいなものだと思っています。
RATがいて、TS9がいて、BD-2がいて。
このへんは、もう「持っている/持っていない」というより、「話ができる」枠(?)というか。
履修科目みたいなものです。
で、ビッグマフ。
これが、なぜか僕の棚にいない。
おかしい。ギタリストを名乗る資格がギリギリ怪しくなる。
いや、名乗る資格とか言い出した時点でだいぶ面倒くさいんですが、でも、なんとなく落ち着かない。
ビッグマフって、音の話でありつつ、存在の話でもあるじゃないですか。
棚に置いてあるだけで“ギタリストの部屋”になる感じ。
(僕は特に、V3みたいな見た目のやつが、置物として強すぎると思っています)
そんなわけで、数年ずっと「マフ欲しいな……」が頭の片隅にあります。
ただし、ここからが問題で、マフは選べない。
選べない理由は、音が難しいから、というより、僕の頭が勝手に分裂するからです。
まず最初の僕:王道でいいじゃん派
「もう普通のやつで良くない?」という僕がいます。
いわゆるBig Muff Piの系譜。
定番のやつ。王道のやつ。
“とりあえず持っておけば話が早い”やつ。
これを買えば、この問題は一旦終わります。
終わるんですけど、同時に別の僕が出てきます。
次の僕:OP-AMPの誘惑派
OP-AMP版を見ると、急にテンションが変わります。
あの感じ。
ザラッとした硬さ。
「マフなのに前に出てくる」みたいな印象。
僕がオルタナや90年代的な“ギターが暴れる美味しさ”に弱いせいもあって、OP-AMPは妙に刺さるんですよね。
しかも、価格も現実的。
「これで良くない?むしろこれじゃない?」
と、また話が変わってくる。
ただ、その瞬間に、また別の僕が出てきます。
さらに別の僕:マヨネーズを思い出す派
ここで、最悪の情報を思い出します。
僕、昔 Umbrella CompanyのMayonaise Fuzz を持ってたんですよ。
そして、お金がなくて売りました。
いや、これが地味に効いてる。
しかも厄介なのが、当時の僕は 全然不満がなかった んです。
普通、機材を売るときって、どこかに言い訳があるじゃないですか。
「ちょっと思ってたのと違った」とか
「結局あんまり使わなかった」とか
「もう少し抜けが欲しかった」とか。
でもMayonaise Fuzzに関しては、それがない。
“不満ゼロ”なのに売った。
この事実、時間差でじわじわきます。
今になって思うんです。
僕が欲しいのって、新しいマフなのか?
それとも、売ってしまったものを取り戻す感覚なのか?
この問いが入ってくると、いよいよ迷いが終わらなくなります。
そして僕は「比較」を始める(でも結論は出ない)
ここから僕は、いかにも真面目っぽく比較を始めます。
王道のBig Muff Pi 2(とりあえず“持ってる”状態にしてくれる)
OP-AMP(硬さと攻撃性、これが今の自分に刺さる)
そしてMayonaise Fuzz(過去に不満ゼロだったのに、手放した)
この3つが、頭の中でぐるぐる回る。
理屈で言えば、優先順位は簡単です。
「不満ゼロだったやつがあるなら、それ買えばいいじゃん」
……はい、そうなんです。
そうなんですけど、ここで現実の僕が出てきます。
「同じものをもう一回買うの、なんか悔しくない?」という僕です。
いや、悔しいとか言ってる時点で意味がわからない。
買い物にプライドを持ち込むな。
でも、持ち込んでしまう。
「一度手放したものを、もう一回買う」って、
なんかこう、“負け”っぽく感じるときがある。
誰に負けてるんだよ、という話なんですが。
さらにAmazonのクローン系が追い打ちをかける
ここでAmazonを見始めると、泥沼に入ります。
クローン系もいっぱいある。
「これで十分じゃない?」
「いやでも本家じゃないと意味なくない?」
「いやでも“今の自分の環境”ならクローンで良くない?」
「というか、クローン買って満足できるタイプだっけ?」
「結局、棚に置いてニヤニヤしたいんじゃないの?」
「だったら本家じゃない?」
みたいなやり取りが、脳内で始まる。
僕は音を聴き比べているはずなのに、
半分くらいは “自分に言い訳できるかどうか” の戦いです。
今日の結論:まだ買わない(でも負けてない)
結局、今日もカートに入れて閉じました。
でも、妙に満足している。
たぶん、僕は今、ビッグマフそのものより、
「迷っている時間」を買っているんだと思います。
マフって不思議で、
“持ってない状態”でも、もう音が鳴ってるんですよ。
頭の中で。
そして、そういう状態が続くと、
いつか、ある日、突然買います。
たぶん、疲れた日に。
あるいは、何かを頑張った日に。
買い物って、だいたいそういうものです。
追記(自分へのメモ)
Mayonaise Fuzzを売ったのは、音が悪かったからじゃない。
必要だったから売った。
だから今、買い直すのは“後退”じゃない。
ただの回収です。
……と、言い聞かせておきます。
