[JP] Ep.2|友情の装い
From My Closet To You
~ファッションと心を綴る、創作エッセイ~

1.憧れ
服を選ぶ。そこには自分が気づいていない、密かな願いが宿っているのかもしれません。心理学では、「エンクローズド・コグニション」と呼ばれる概念があります。身につけるものが、人の思考や行動に影響を与えるという考え方です。白衣を着ると注意力が高まる話もあるのだそう。とするなら、私たちは服を選ぶことで、無意識に抱く憧れに、近づこうとしているのではないでしょうか―「本当は、こういうあなたに、なりたかったはず」
2.道しるべと壁
「今日は何を着よう」と、クローゼットの前で悩むとき。エンクローズド・コグニションの概念が、私たちの道しるべとなってくれます。「何をするか」、「誰と会うか」を出発点に、目的に合った装いを選ぶ。自分の力を発揮し、会う人にも印象良く映るでしょう。何より、私たちの悩みを減らす効果は大きい。でも、理論だけでは乗り越えられない壁があります。それは誰もが持っている、複雑で繊細なもの―感情、そう「心」の存在です。
3.心の影に
私たちの毎日にはさまざまなことが起こります。「疲れた」、「どうせ良いことなんて」と落ち込む日も。「自分には、もう何もない」と人知れず涙を流す日も。そのすべてに背景と理由がある。だから、いつだって感情とは違う、完璧な装いができるわけじゃない。そんなとき、あなたの心に、小さな光を灯せるのなら。願いを込めて、遠い日の記憶をここに綴ります。これは私が「今の私」になる前―装いが、私に力をくれた物語のひとつ―
4.絆
ある時、心の痛む出来事があった。私はそれまで出会ってきた人たちのことを振り返っていた。最初に、「あの人」を想った。もう数年以上会っていない、かつての友人。ときに「きょうだい」、「同士」、「守り手」。支え合えると、深く感じた人。私に多くの可能性や夢を見せてくれた、あの存在を言葉にできない。確かなのは、私たちには固い絆があり、輝かしい日々を送っていたということ―2人が、友情以外の気持ちを抱く日までは―
5.願い
「ご無沙汰しています。お元気でしょうか」、気づけば連絡をしていた。「何その口調!?元気だよ」。心が痛んだ出来事を話すため、会う約束をした。どうしよう、どんな服を着よう。迷ったときこそ原点に還る。ファッションは、私という存在をどう表すか、創り上げていく世界。大切なのは、私が彼の前で『どんな私でありたいのか』―カジュアルで飾らない、けれど華やかな大人の女性。過去の願い、そして憧れを服に託すことにした。
6.そして纏う
その日の朝は雨だった。この後の天気は読めない。何度も着替えた末、古着のロングニットを手に取った。キャメル色でオーバーサイズ、ゆるやかなシルエットが膝まで落ちていく。下にはアイボリーのチュールスカート。ニットの重みが、裾にマーメイドラインをつくる。ネックレスとリングを足し、バッグにやわらかな白を。仕上げはオレンジレッドのリップ。家を出ようとベージュのシアーブーツを履いた時、鏡の反射が足元を輝かせた。
7.飾らない勇気
待ち合わせに現れた彼は―ずるいくらいに、かっこよかった。雨はあがり、晴れていて、顔がはっきり見える。その存在を強く意識するからこそ、ずっと目をそらしてきた。でも、この日は彼を見ていたかった。私たちは、それまでの日々について、多くのことを語り合う。「今、何をしているときが1番楽しい?」彼が言葉を変え、何度も尋ねてきた。悩ましい問い―装いが力を与えている。何も飾らずに、彼の目を見て、私は笑って答える。
8.灯火
外は宵に。家路へつき、思い巡らす。輝かしい日々、光は影に転じ、長い歳月が流れた。私たちは暗い記憶には触れていない。かつてなかった見えない結界が、2人を隔て、そして守っている。この薄い透明な壁が映すのは、友情という装いで佇む私たち。灯火のように揺れる光がよく似合う。消えてしまいそうなその灯を、どう携えよう。ありたい姿を探したい―どんな形でも、この世界にいてくれるなら―今、心からの敬意と感謝を込めて。
Fin (Ep.2 友情の装い)
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