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採用フローをAIエージェントで改善する⑤改善と報告編|数字が苦手な人事でも1年の振り返りはAIに任せられる

「今年の採用、結局どうだったの?」

役員会議でそう聞かれて、数字で答えられるでしょうか?

1年分の採用活動が終わったあと、記憶は驚くほど薄れています。


私は元採用担当です。
今は人事の実務にAIエージェントを持ち込む実験を続けています。

前回の④実行編では、学生への返信メールと会社説明会の資料をAIと作りました。

シリーズ最終回は、1年を振り返って役員に報告するフェーズです。


結果を先に書きます。

模擬会社で1年分の記録をためて、AIに振り返らせました。

シリーズの①から④で使ってきたメモとデータが、そのまま材料になりました。

まだ読んでいない方は、そちらから先にお読みください。

振り返りも来期の計画も、材料はもう揃っている。
Claude CodeやCodexに「今期の振り返りをして、来期の計画を立てたい」と一言伝えるだけで、作業が驚くほどスムーズに終わります。


この記事でわかること:

  • 1年分の記録をAIに振り返らせる実演(前年比・月次推移)

  • 来期への引き継ぎメモをAIに作らせる実演(そのまま使える1枚のメモ付き)

  • AIと回す採用チームのフォルダ構成(全公開)

年度末の振り返りと引き継ぎに毎年苦労している方は、ぜひ最後までお読みください。


このシリーズで目指すゴール

採用の実務は、大きく5つのフェーズで回ります。

①分析編で集計を30分に縮め、②戦略編で予算配分を決め、③計画編で年間スケジュールを組み、④実行編でメールと資料をAIに渡しました。

今回は5つ目の改善と報告です。
1年を締めて、来期に渡すフェーズです。


振り返りが重いのは思い出す作業から始まるから

振り返りの資料を作るとき、最初にやることは何でしょうか。

数字を集めることではありません。


「何があったか」を思い出す作業です。

採用担当だったころ、1年後に私の手元に残っていたのは「感覚」でした。

「今年はマイナビからの応募が多かった気がする」
「あの大学の学生は感触が良かった」

「気がする」では報告書は書けませんし、次年度のための改善策も立てられません。

数字は媒体の管理画面の中にあります。
去年の資料はフォルダのどこかにあります。

年度末になって、それを1つずつ発掘するところから始まる。

そんな経験はありませんか?


感覚は残ります。数字と、そのときの状況は、メモしなければ消えていく。

数値分析は、人事や文系出身者の苦手分野でもあります。

苦手な作業こそ、AIに任せる価値があります。

AIの発達のおかげで、文系の苦手分野は「無くなった」といっても過言ではありません。


【実演1】1年分の記録をAIに振り返らせる

最初に、①分析編との違いを書いておきます。

①では応募者100件のデータを集計して、役員が3分で読める1枚にまとめました。

今回AIに渡すのは、1年分を月ごとに分けた12個のファイルです。

同じデータでも、月で並べ直すと別のものが見えます。

シリーズでモデルにしている架空の中堅IT企業「HITO Inc」(150名・新卒8名採用)で、2027卒の採用活動が一区切りついた時点を想定しました。

12か月分の応募者記録を渡して、こう頼みました。

data_2027/ の月次CSV12ファイルを全部読んで、
①媒体別のファネルと承諾単価
②月次のエントリー推移
③前年(2026卒)との比較
を出してください。

※以下の数字はすべて模擬データからの実出力です(模擬会社・内容は架空)。


前年と比べて打ち手の答えが出た

②戦略編で、リクナビからの撤退を決めました。

前年は130万円かけて、承諾までつながったのは1名だけでした。

浮いた130万円は、スカウトの送信数を増やす費用と、自社採用ページの打ち手に回します。

その答えが出ました。

上の図にある「承諾単価」は、内定を承諾してくれた1名あたりにいくらかかったかを表します。

応募者数は93名から76名に減りました。

リクナビを撤退したためです。


ところが書類通過率は43%から55%に上がり、承諾は6名から7名に増えています。

採用単価は63.3万円から50.0万円へ、21%下がりました。

②で「量から質へ」と決めた打ち手は、数字で当たっていました。


月で並べてはじめて見えたもの

2月がピークで14件。1年で一番多い月です。

内訳を開くと、14件のうち9件が自社採用ページからのエントリーでした。

自社採用ページ経由は、他の月だと多くて5件です。2月だけ倍近くに増えています。

2月は会社説明会をやった月でした。

年間の合計だけを見ていると、この変化には気がつけません。

月で並べる。それだけで、説明会が採用ページの入口になっていたと分かる。

大学別に見ると、来期どの大学に足を運ぶかも見えてきました。

  • 旭川平原大学:応募7名/書類通過率71%/承諾1名

  • 湘南台大学:応募6名/書類通過率67%/承諾1名

  • 瀬戸内海洋大学:応募6名/書類通過率67%/承諾1名

応募は少ないのに、書類通過率が7割近い3校です。

母集団を広げなくても、ここから採用数を伸ばせる可能性がある。

①分析編にこう書きました。

AIが事務処理を回している間に、人間は足で稼ぎに行く。

その行き先が、数字で決まりました。


今まではExcelや会社独自のデータベースに記録を残しておくしかなかったものが、AIにデータを蓄積しておくことで、簡単に精緻な振り返りができるようになりました。

数字で根拠が見えるので、次年度の「打ち手(対策)」が簡単に立てられます。


この革命に気がついている採用担当者は、かなり大きなアドバンテージを得られます。


【実演2】来期への引き継ぎメモをAIに作らせる

振り返りの数字が出たら、もう1つ頼めることがあります。

来期への引き継ぎメモです。

ここでいうメモとは「MDファイル」のことです。

MDファイルについて詳しく知りたい方は、下記の記事を参考にしてください。

出てきたメモは、冒頭がこうなっていました。

先に3つだけ
1.質への転換は数字で効いた。応募は93名→76名に減ったが、書類通過率は43%→55%に上がり、承諾は6名→7名に増えた。採用単価は63万→50万
2.目標8名には1名届かなかった。直接の原因は内定辞退3名。辞退者はいずれも内定までの期間が2か月以上
3.説明会が自社採用ページの入口になっていた。2月の自社経由9件のうち6件が説明会の後

読む人が最初に知りたいことから並んでいます。

このあとに数字のサマリ、効いたこと、効かなかったこと、来期への申し送り、ファイルの置き場所、未確認、と続きます。

面白かったのは、申し送りが記録から自動で立ってきたことです。

内定辞退が3名いました。

3名とも、内定を出すまでに2か月以上かかっています。

選考のスピードが効いているかもしれない。

ただ、どこで時間がかかっていたのかは分かりませんでした。

書類選考から一次面接までに何日かかったのか、その記録を取っていなかったからです。

申し送りの1番目は、こうなりました。

選考のスピードを上げる。辞退3名はいずれも内定までが2か月以上。書類から一次面接までの日数を測るところから始める。今年はこの数字を取っていなかった。

振り返りは、来期の記録項目を決める作業でもあります。

このメモは後任のためだけではありません。

1年後、記憶を失っている自分のための「置き手紙」です。


週に5分の記録が年度末を軽くする

ここまでの実演には前提があります。

1年分の記録が溜まっていたことです。

記録がなければ、年度末にまとめて思い出すところから始まります。

採用担当だったころの私が、毎年つまずいていた場所です。

AIに、記録の係を任せることにしました。

用意したのは「記録係」という1枚のメモです。

全文を置いておきます。そのまま使えます。

# 採用記録係(数字と現場の状況をメモする係)

## 役割
- 毎週の採用活動の「数字」と「そのときの状況」を記録する係
- 記録が仕事。評価や判断はしない
- 年度末に、溜まった記録から振り返りと引き継ぎメモを作る

## 記録する場所(自社に合わせて書き換える)
- 週次メモ:振り返り/週次メモ/YYYY-MM-DD.md
- 応募者の記録:データ/YYYY-MM_応募者記録.csv

## 毎週の質問(4つ)
1. 今週のエントリーは何件か(媒体別に)
2. 選考はどこまで進んだか(書類・一次・最終・内定の件数)
3. 今週やったこと(説明会・面接・学校訪問など)
4. 気になったこと(学生の反応・辞退の理由・現場の実感)

4つ聞いたら、その場で週次メモに書いてください。私が答えられない項目は空欄で構いません。

## 記録のルール
- 数字には必ず出典と日付をつける(どの管理画面の、いつ時点の数字か)
- 「そのときの状況」を1〜3行で残す。数字だけでは、後から理由が分からなくなる
- 事実と感想は分けて書く(事実→観察の順)
- 記録は上書きせず追記する。前の記録を消さない

## 年度末にやること
1. 12か月分の週次メモと応募者記録を全部読む
2. 振り返りレポートの叩き台を作る(前年との比較・月次の推移・媒体別の成果)
3. 来期への引き継ぎメモを作る(次の担当者が読むだけで動ける粒度で)

## 守ること(安全装置)
- 学生の氏名・連絡先は記録しない。応募者IDと大学・学部までにする
- 確認できない数字は作らない。【未確認】と書いて空けておく
- 推測で埋めた箇所には【推測】と明記する

やることは週に1回、聞かれた4つに答えるだけです。

答えたら、AIがメモに書きます。

慣れれば5分で終わります。

この習慣が、あとで効きました。

2月にエントリーが突出した理由が、週次メモの1行に残っていたからです。

説明会の最後に採用ページのURLを出したのが効いたかもしれない。【推測】

数字だけ見ても、なぜ2月だけ突出したのかは分かりません。

そのときの状況を1行残していたから、来期も同じ手を打てる。

数字は結果を教えます。状況は、次の打ち手を教えます。


発展も1つ。今回は、数字を手で入力しています。

ナビ媒体や採用管理ツールから取れるデータは、自動で取ってくる仕組みにしたい。

記録の手間は、まだ削れます。

1つだけ、④と同じ仕掛けを入れてあります。

確認できない数字は、AIに作らせない。【未確認】と書いて空けておく。

知らないことを知らないままにさせる。
この設計は、メールでも記録でも変わりません。


【全公開】AIと回す採用チームのフォルダ構成

シリーズ最終回なので、全部お見せします。

①から④で配ってきたメモは、実はこの中に収まります。

採用チーム/
├── 採用チームの取扱説明書.md   ← チームのルール(AIが毎回最初に読む)
├── 会社情報.md                 ← 会社概要・条件表・採用方針
├── 採用計画_2027卒.md          ← 年間スケジュール
├── メンバー/
│   ├── データ分析係.md         ← 集計を頼む係
│   ├── 上司レビュアー.md       ← ②で配った上司ペルソナ
│   ├── 学生返信アシスタント.md ← ④で配ったメール下書き係
│   └── 記録係.md               ← ⑤で配った記録の係
├── データ/
│   └── 月次の応募者記録(CSV)
└── 振り返り/
    ├── 週次メモ/
    └── 2027卒_引き継ぎメモ.md

中心にあるのは「メンバー」のフォルダです。

AIに役割を持たせたメモが、係ごとに入っています。

集計をしてほしいときはデータ分析係。メールを書いてほしいときは学生返信アシスタント。


いちばん上の取扱説明書には、チーム全体のルールを書いています。
会社の情報はどこにあるか、確認できない数字は埋めないこと、送信や公開は人間がやること。AIに毎回最初に読ませる1枚です。

どれもMDファイルという、AIへの指示を書いただけのテキストです。

最初から全部作る必要はありません。

④の学生返信アシスタント1枚から始めれば十分です。


AIに任せること、人間がやること

今回AIに任せたのは、「記録」と「集計」と「文書化」です。

人間に残ったのは、来期どこに賭けるかの判断です。

3校に足を運ぶのか。選考のスピードを上げるのか。マイナビの求人票を書き直すのか。

データが示すのは、選択肢までです。

①から④と、同じ線引きです。

シリーズを通して、この線は一度も動きませんでした。


これだけ凄まじいスピードでAIが進化する中で、もはや人間が事務処理をする意味はなくなります。
人間残された仕事は「判断すること」。

それ以外の仕事は、ほぼ100%AIエージェントに任せられます。


まとめ|今日の1つ

今回の持ち帰りは4つです。

  • 振り返りが重いのは、数字集めの前に「思い出す作業」があるから

  • 同じデータでも月で並べ直すと、媒体ごとの合計では見えない層が出る

  • 引き継ぎメモは後任のためでなく、1年後の自分への置き手紙

  • 記録は週5分で足りる。数字だけでなく、そのときの状況を1行残す

今日の1つは「今週やったことを1つ、AIに話して記録させる」。


手順は3ステップです。

  1. 今週の採用活動で数えられる数字を1つ選ぶ(エントリー件数など)

  2. その数字と、今週やったこと・気になったことをAIに話す

  3. メモに書いてもらって、日付をつけて保存する

来週も同じことをすれば、記録が2週分になります。

1年後、それが振り返りの材料になります。


シリーズを終えて

今回、5回にわたって「現役の採用担当者がAIエージェントを活用したら、どうなる?」というテーマで記事を書きました。

分析、戦略、計画、実行、そして改善と報告。

1周してみて分かったのは、AIに任せた仕事の記録が、消えずに残るということです。

指示のために書いたメモも、集計したデータも、週5分の記録も、全部そのまま次の材料になりました。

来期の分析は、白紙からは始まりません。

ただ、AIエージェントを触ったことがない人からすると「イメージが湧かない」「抽象度が高い」と感じた人もいるかもしれません。


次回は、もう少し対象範囲を広げて「メール返信などの事務作業をどうやって効率化する?」というテーマでAIエージェントの活用方法を紹介します。

まずは、AIエージェントに触ってみることから始めてみてください。


今まさに「現代の産業革命」が起きている真っ只中です。

AIに触れて先に進むのか。はたまたここで停滞するのか。

1年後の未来…いや、半年後の未来が大きく変わってくると思います。


ぜひ、この記事をきっかけにAIエージェントに触れてみてください。

「AIエージェントって何?」「どんなことができるの?」「従来のAIと何が違うの?」と疑問をお持ちの方は、こちらの記事を参考にしてください👇


HITO|現役人事×AI実運用

元採用担当。人事・事務の実務にAIエージェントを持ち込む実験を発信しています。

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