自分のため、笑わせるため、あの子のため【出張一人芝居-04】
沖縄で俳優として活動しています。
暗闇でも慣れれば見えるようになるヒトの順応性に感動した、いっちーこと伊藤駿一です。
普段は大学の医学部に通いつつ、演技の稽古に励む傍ら、「カンヌ国際映画祭主演男優賞」を目標にし、「演劇は世界を平和にする」という信念のもと、自らの表現と人生を豊かにしてくれそうなことは何でも試すようにしています。このnoteでは、そんな日々の試行錯誤のプロセスで見つけた学びや気づきを、できるだけ正直な言葉で綴っていきます。
自分のため、笑わせるため、あの子のため
公式LINEを開いて、やりとりを読み返している。出張一人芝居の、初めてのお客さんからのメッセージ。
本番まであと5日。台本はまだ白紙に近い。
でも不思議と焦りはない。地に足がついた「よし、やるぞ」がある。
この1年で「誰のために演じるか」が3回変わった。その度に、自分の中の何かが確実に変わってきた。今日はその話をします。
自分のため
去年、初めて一人芝居をやりました。北谷のライブハウスで、88人満席。
あの時のペルソナは、完全に僕でした。
自分が心から良いと思えるものを、心を込めて作る。それだけを考えていた。脚本もゼロから書いて、会場も自分で手配して、告知も3ヶ月前から必死にやった。全部自分で回す大変さはあったけど、「自分が面白いと思えるものを作る」という軸はブレなかった。
結果、88人の方に来ていただけた。嬉しかった。
でも同時に、大きな反省もありました。「アート」と「エンタメ」の区別がついていなかった。自分が良いと思って作ったものが、お客さんの期待とズレていた部分があった。
ただ、あの時の僕にとって一つだけ楽だったことがあります。
失敗しても影響が僕だけで完結すること。うまくいってもいかなくても、結果を受け止めるのは自分一人。お客さんに申し訳ない気持ちはもちろんあったけど、誰かの人生の大事な瞬間を預かっているわけではなかった。
笑わせるため
昨日、コントの本番がありました。
コントの目的はシンプルで、お客さんに笑ってもらうこと。
相方と稽古をやったり、アイデアを出し合ったりする中でも、考えていたのは「どうやったら面白い瞬間を増やせるか」だけでした。
一人芝居の時とは、頭の使い方がまるで違う。自分が面白いと思うかどうかではなく、お客さんが笑うかどうか。
本番。相方がちょっとイカれたキャラを全力でやっていて、僕がそれにツッコんでいくスタイルでした。相方の勢いに本気でタジタジになりながらツッコんでいる場面で、客席から笑いが起きた。
終わった後、体がめちゃくちゃ熱かった。
笑わせるために作ってきたかいがあった。自分の中で何かが満たされる感覚とは少し違う。お客さんが笑ってくれた、その事実そのものが嬉しかった。それはそれで、楽しかったです。
あの子のため
そして今週、出張一人芝居の第1回をやります。
2月に「出張一人芝居、始めます。誰も呼んでくれなかったらどうしよう」とnoteに書きました。その後、公式LINEに初めての依頼が届いた。
内容は、お子さんの誕生日プレゼントとして一人芝居を届けてほしい、というもの。干支がちょうど一周する、節目の誕生日です。
依頼者は、いつも一緒にお芝居をやっている方です。
「誕生日に来てほしい」。そう読んだ瞬間、背筋が伸びました。
88人の時とは、責任の質が違う。
あの時は、たとえ全部ダメでも、影響は僕だけにとどまった。僕自身がちょっと下を向くだけで済んだ。
でも今回は違います。その子にとっての一大イベント。1お客さんではなく、1イベントの責任を担うことになる。
大人になった時にふと思い出して、心が温かくなるようなものを届けたい。
親御さんからお子さんのエピソードを聞かせてもらいました。聞けば聞くほど愛おしい子で、「この子のために何を作ろう」と考えるだけで胸が熱くなる。
生まれてきたことを自分で嬉しく思えるような、これからの人生が楽しみになるような、そういう内容にしてほしいという想いも受け取りました。
今、その素材をもとに構成を考えています。
積み重ねが、一人の子に注ぎ込める
この半年で「誰のために」が3回変わりました。
自分のために作る。笑わせるために作る。ある子のために作る。
「誰のために」が変わるたびに、責任の形も変わった。自分だけで完結していたものが、笑いという即時評価にさらされ、今度は一人の子の人生の一瞬を預かることになった。
でも、焦りよりもやる気が勝っています。
自分が心から良いと思えるものを作り込んだこと。笑わせるために頭を使い尽くしたこと。普段の舞台でお客さんに感動や涙を持ち帰ってもらうために工夫してきたこと。それは全部、今の自分の中に残っている。その全部を、今度は一人の子の視点で注ぎ込む。
普段やっている「地域を応援する演劇」と構造が似ていることにも気づきました。特定の誰かをモデルにして舞台を作り、その人に見てもらう。出張一人芝居でも同じことをやろうとしている。
演劇で世界を平和にすると言い続けてきたけれど、その一歩目は、目の前の一人を幸せにすることなのかもしれません。
本番まであと5日。内容はまだ固まっていません。
でも胸は熱い。ここから着実に積み上げて、最高の誕生日を届けます。
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・1人でも行く。出張一人芝居という生存戦略【出張一人芝居-01】
・「応援したいけど、いつ頼めばいいか分からない」【出張一人芝居-02】
