⑤話 今日は、『可愛くない』って気づいた日。 【これは、風俗を通して自分を赦す物語】 #お仕事小説部門投稿作#創作大賞2025
これまでのあらすじ
★「ほんとの私じゃ、愛されないかもしれない」
そんな小さな憂鬱から、
私はプロフィールを“盛る”ことにした。
#これは風俗を通して自分を赦す物語
①話 向いてない仕事と、優しさで首を絞める人達
②話 待ち合わせは11時、ショッピングモールの前で
③話 魔法少女に変身したかったみたい
④話 女は秘密を着飾って美しくなるbyベルモット
⑤話◀︎NEW
全⑲話予定🍀

可愛い服っていつぶりに着るんだろ。
思い出そうとするけど全然思い出せない。
うーん、うーん。そうだなぁ。
多分あの時のことが原因で、着たいけど着れなくなっちゃったのかなぁ。
あれはそう。幼稚園の、おままごとの時だった。
女の子たちに人気の“可愛いエプロン”があって、それを何人かで順番こに着てた時。
「ゆゆちゃん、はい」
女の子の1人が順番待ちをしている私にエプロンを渡してくれた。マイメロのアップリケがついた、可愛い桃色のエプロン。
「ありがとう」
私は嬉しくてニコニコでそれを受け取る。
「違う違う。これは“可愛い方”のゆゆちゃんに渡したの」
私の後ろで待っていた“可愛い”ゆゆちゃんが
「ありがとう」
とそれを受け取った。純粋で可愛らしい笑顔がそこにあった。
「……」
小さな衝撃が走った。
あの子が可愛い方のゆゆちゃんなら、私って、なんなんだろ。
だって、お母さんとお父さんは私を
「可愛い可愛い」
って。
私、そう言われて、育ったから。
何を言われたのか、上手に飲み込めなかった。
家に帰ると、私は泣いていた。お母さんの膝に頭を埋めながら、幼稚園であった嫌なことを話した。
「あのね、あのね。可愛いくない方のゆゆちゃんって、言われたの」
それを聞いた瞬間、ヤカンに火をつけたようにお母さんの顔は真っ赤に沸騰した。だだっと廊下に走ると、すごい剣幕でどこかに電話をかけ始める。
その怖い声がドア越しに聞こえて、
あ、私はただ、話を聞いて欲しかっただけで。
抱きしめて欲しかっただけなのに……。
お母さんの怒鳴り声で、また涙が溢れ出した。
次の日からエプロンは
「汚れちゃったから」
と廃止され、子供心に
「私がお母さんに話したからだ」
って気がついたんだよね。
“本心を話すと天罰がくだる”
くだしてるのはお母さんだけど、思えばあの頃から自分の気持ちを話すのが怖くなっていたのかもしれない。
♢♦
お店に載せる写真を撮るために、おじさんは色々と機材を持ってきたようだった。
私は渡されたお店の衣装に着替えていた。
黒字のワンピースの上に、白いエプロン。ひと目でメイドさんだと分かる、可愛らしい衣装。
スカート丈はかなり短くて、レースで誤魔化されているものの、これはパンツが見える長さである。
っておいコラ。
「これパンツ見えませんか?」
「大丈夫です」
「絶対写真撮る時パンツ映さないでくださいね。普通に嫌なので」
「大丈夫です大丈夫です」
本当に大丈夫なんでしょうか?
悪気は無いんだろうけど、おじさんの笑顔はちょっとだけ胡散臭かった。
パンツは置いといて、私は指示されるままカメラの前でポーズをとっていった。気分はまるで、超絶人気なグラビアアイドルだ。
写真は嫌いだけど、撮られるのは好きだった。なんか人気者になったみたいで、ちょっとだけテンションがあがるから。なんてね。

「まぁ後は自撮りとかして頂いて。結局それがお客さん1番喜ぶんですよね」
「うーん。まぁ気が向いたら撮りますね」
なんだかこのぬるい空気にも慣れてきたみたい。いつもの私は結構礼儀正しくて、初対面の人にこんな態度なんて絶対に取らない。なのに適当に相槌できてしまってるのは、この業種が“責任の無い仕事”なせいなのかもしれない。
こうして写真撮影も無事終わり
「ちょっと待っててくださいね」
と待つこと2時間が経過していた。
「に、2時間……?」
ちょっと待たせすぎじゃない?
「いや〜お待たせしました。あれ、ゆゆさん大丈夫ですか?すごい顔して……。ささ、できたので早く確認してください」
「……はい」
このマイペースっぷりに少しげんなりしたけど、まぁいいや。
私はゲーミングチェアに腰掛けると、ホームページをクリックして女の子の一覧を開いた。
顔はぼかされて誰だか分からないけど、優しげな雰囲気の女の子が、微笑むようにそこにいた。スカートの裾からは、白い足がすべるように覗き、品の良い色気がそこにある。
やるじゃん、おじさん。
やっぱこの人、抜けてるとこもあるけど、ちゃんと店長なんだな。
下をスクロールすると店長からのコメントがあった。
ーー清楚な黒髪の方が入店されました!
雰囲気は𓏸𓏸さん(可愛くは無いけど演技派な女優さんの名前)に似ています!
ぜひ癒されてみては?
.........?
あ、なんか、なんなんだろ。
上手く言えないけど、私の紹介文ってこれだけ?
私の魅力ってえらく簡単な言葉で収まるんだなぁ……
あ、違う。
私、褒められてないんだ。
………ほ、ほんと?ちがうよね?
なんだか嫌な予感がした。お母さんの膝の上に頭を埋める小さい女の子が頭の中でチラつく。
PCの熱気か、手にじんわりと汗をかきながら、焦る気持ちで他の人のコメントを覗いた。
ーーその容姿アイドル級☆
ーー韓国風のお顔は店長イチオシ☆
「……っあ」
いつかと同じ、小さな衝撃。
そう。
褒め言葉ってこういうことを言うんだよね…。
静かな痛みが私を刺した。
誰かに嫌味を言われたわけじゃない。
ただ私と他の人に差があって、それを今認識しただけなんだ。
ただ、それだけのことなんだよね。
「良いと思います」
と私は言った。
震えていない、確かな発声。
なのにどうしてこんなに弱々しく感じるんだろう。
「ありがとうございます。じゃあこれで公開しましょう」
「…………」
ウソですよね、これから付け足してくれるんですよね。
言えるわけが無い。
おじさんは私の異変には気が付かず、ホームページに、可愛くない私をアップした。
他の女の子と私は、何が違うんだろう。
やっぱり私は嘘を着飾らなきゃ。
美しくなんてなれないんだよね。
すると、控え室にいる女の子たちが一際大きな笑い声を上げた。きっと私を笑ってるんだ。
やだな。被害妄想が大きくなる。
はぁ、また逃げ出しちゃおうかな。
どこか遠くへ。誰も私を知らないところへ。
そう思ってた時だった。
「あ、あの」
「っ!はい!」
いきなり声をかけられ背筋が伸びた。恐る恐る振り返ると、ショートカットの女の子が立っていた。女の子は化粧っ気のない、体育会系の名残のある雰囲気をしていた。
「もしかして、今日から初めて入る方ですか?」
優しい声で尋ねられる。
「はい」
答えた私は情けない顔をしてただろう。ずっと不安で、誰かに声をかけて欲しかったことにやっと気づいた。
「実は私も最近入ったばかりで。良かったら仲良くしてください」
「……」
私は今、自分を飾っていない。
それなのに、仲良くしてくださいって言われたの、いつぶりだろう。
私は自分に自信が無いし、本音を晒して、またあの時のように天罰が下ってしまうことが怖いんだ。だから自分を飾るし、素直に自分を見せることができない。
そんな思いから、私は、ノートの上にゆゆちゃんを作ってみた。でも、本当にゆゆちゃんになりたかった訳じゃない。私自身を、好きになって欲しかった。ただそれだけなんだよ。
「は、はじめまして。私も、仲良くなれたら嬉しいです」
その声は小さくて、頼りなくて。
でも、精一杯の、私の本音だった。
キラキラと、世界がまた輝いて見えた。
♢♦♢♦
🍀最後まで読んでくださって、本当にありがとうございます。
たまたま立ち寄ってくれた方も、いつも読んでくださる方も、心から感謝しています。
よかったら、感じたことや共感した場面など、どんなことでもコメントで聞かせていただけたら嬉しいです(ˊ˘ˋ)
🍀ゆゆの物語は、note大賞に向けて7月22日までに完結を目指して書いています。※あくまで連載が終わるだけです!
この作品に込めた思いや、これからの展開については、また別のnoteでお知らせさせて頂きます。
どうぞ一緒に、“ゆゆの物語り”を見守っていただけたら嬉しいです。
ゆゆゆ式より

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