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ゾルトラーク理解と戦い方から見える師弟関係(ラントとエーレ)【葬送のフリーレン】


はじめに

ゾルトラークと一般攻撃魔法は同じ魔法「一般攻撃魔法ゾルトラーク」の別の名前です。が、ゾルトラークと一般攻撃魔法の関係についてはキャラクタによって認識が異なります。

そこで、フェルン、エーレ、ラントの若手魔法使い三人にとっての一般攻撃魔法ゾルトラークについて見てみたいと思います。フェルンは《一般攻撃魔法=ゾルトラーク》であることを理解する過程が描かれているため一つの典型例として見ておきます。エーレとラントについては、この二人が「魔法学校出身の秀才肌」という同じタイプの魔法使いであり、比較すると面白いためです。

この三人について見た後に、いくつかの師弟関係に触れます。

なお、エーレは一級魔法使い試験で不合格になってしまったこともあり存在感の薄いキャラクタなのですが、(ヴィアベルとの関係もありますが)レルネンの孫ということで重要なポジションにあると思っています。本稿ではその一端を示したいと思います。

フェルンと一般攻撃魔法ゾルトラーク

フェルンはフリーレンと出会う前から一般攻撃魔法を習得していて、一番岩を撃ち抜こうと修行に励んでいました。この時はフェルンはまだゾルトラークを知りません。ハイターはフェルンに魔力制限を教えたのに魔法史の講義はしなかったようです。(専門外だからとも言えますが、魔力制限は魔族を殺すための特殊な技術でしかも過酷な修行が必要です。明らかに学ぶ順序が逆になっており、魔王討伐後の平和な時代なのになぜ?と考えると魅力的な謎です)

フェルンはこの歳にしてフリーレンの虚を衝くほどの「早撃ち」です。フェルンのもう一つの強みである魔力制限も初対面時に森の中でフリーレンに気付かれずに近付いており、しっかりと描写されています。

フェルンがゾルトラークについて知るのは、フリーレンから腐敗の賢老・クヴァールに関する説明を受けた時です。

ただ、ここでもまだゾルトラークと一般攻撃魔法が同じ魔法であることは知りません。フリーレンが教えなかったからです。(フリーレンはフランメのことを「嫌味な奴」(第7話)などと言える筋合いではないと思います…。)

フェルンが《一般攻撃魔法=ゾルトラーク》であることを知るのは、クヴァールのゾルトラークを見た時です。

ここまで見てきたことから分かるように、フェルンの一般攻撃魔法ゾルトラークに関する理解は、まず一般攻撃魔法と呼ばれる魔法に慣れ親しんでおり、後からそれがゾルトラークとも呼ばれていることを知ったという順番になります。

このことはフェルンのゾルトラークを食らったリュグナーから「この魔法はなんだ?」と問われた時の返答にも現れています。

フェルンはまず「一般攻撃魔法」と答え、後から「確か魔族あなたたちの魔法体系では人を殺す魔法ゾルトラークと呼ばれているものです」と補足しています。つまり、リュグナーに問われてフェルンがすぐに思い浮かべたのは「ゾルトラーク」ではなくて「一般攻撃魔法」なのです。

なお、フリーレンの場合は順序が逆になります。フリーレンにとってはまずクヴァールのゾルトラークがありました。それを人間たちが人類の魔法体系に組み込んで後から「一般攻撃魔法」という名前で呼ぶようになったのです。

エーレと一般攻撃魔法ゾルトラーク

エーレは魔法学校を主席で卒業した秀才です。あの一級魔法使いレルネンの孫であり、彼の薫陶を受けています。

そのエーレが《一般攻撃魔法=ゾルトラーク》に言及する場面を見てみます。

エーレが一般攻撃魔法に言及する時「ゾルトラーク」のルビはありません。もちろんエーレは《一般攻撃魔法=ゾルトラーク》という知識を持っています。魔法学校の主席ですから。それでも、エーレにとって一般攻撃魔法はあくまでも一般攻撃魔法であり、ゾルトラークではないのです。

エーレにとって一般攻撃魔法は「古い戦い方」で使う「基礎的な魔法」です。そしておそらく、ゾルトラークはと言えば、魔法史の書物に登場するだけの過去の魔法なのです。

※余談ですが、彼女が不合格になった理由はこのフェルンとの戦いで「一級魔法使いになった自分」をイメージできなくなってしまったからだと考えます。この戦いの後エーレは自信を失ってしまっていて、二次試験でも目立った活躍はできていません。表情も精彩を欠いています。この破壊されてしまったセルフイメージが回復すれば三年後の一級魔法使い試験に合格できるはずです。

ラントと一般攻撃魔法ゾルトラーク

エーレと同じようにラントも魔法学校の出身です。特に描写はありませんが、彼の理知的な性格や姿勢からして、エーレと同じようにかなり優秀な生徒だったと考えて良いでしょう。(どう見てもラヴィーネやカンネとは異なるタイプの生徒だったと思います)

そのエーレと似た秀才タイプの魔法使いであるラントが一般攻撃魔法に言及する場面です。

エーレとは異なり、ラントの場合は「一般攻撃魔法ゾルトラーク」となっています。

ラントとその祖母

エーレとラントは「魔法学校出身の秀才肌」という同じタイプの魔法使いなのですが、エーレとは異なり、ラントにとって一般攻撃魔法はゾルトラークなのです。この認識はどこから生まれたのでしょう。

前述したエーレのことを考えれてみれば、魔法学校で学んでもこういう認識にならないことは明らかです。

ということは、魔法学校での学びとは別に、ラントに魔法を教えた師が存在したと考えるのが自然です。

それはおそらくラントの祖母です。ラントの杖は祖母が生前に使っていた杖ですから。

ラントの祖母は「(5年前に)老衰で穏やかに逝った」ということですから、亡くなったときにはかなりの高齢だったと思われます。

とすると、ラントの祖母は、魔族の魔法であるゾルトラークが人類の魔法体系に組み込まれて一般攻撃魔法と呼ばれるようになる過程(一般攻撃魔法ゾルトラークの歴史)を目の当たりにしてきた世代(つまり約80年前に現役)の魔法使いでしょう。

おそらく、ラントの祖母の一般攻撃魔法ゾルトラークに関する認識はフリーレンと同じ(フェルンとは逆)です。つまり、まず「ゾルトラーク」という魔法が存在していて、それが後から「一般攻撃魔法」と呼ばれるようになったという認識です。

その祖母の認識「一般攻撃魔法ゾルトラーク」をラントは受け継いでいる。(杖だけではなく)

だから、ラントにとって一般攻撃魔法はゾルトラークなのだと思います。

エーレとその祖父レルネン(フリーレンとフランメ)

ここでもう一度エーレに関して考えてみます。

ラントと同じようにエーレにも師がいます。祖父のレルネンです。

レルネンは一級魔法使いの中でも筆頭と言える程の実力の持ち主です。ゼーリエが好む「戦いを追い求める」タイプの魔法使いでもあります。レルネンがフリーレンと戦ったとき、レルネンは物質を操る攻撃魔法を使いませんでした。レルネンの戦い方はフリーレン(やフェルン)と同じ「古い戦い方」です。

しかし、レルネンはその自身の戦い方を孫のエーレには教えていません。エーレの戦い方は物質を操る攻撃魔法を活用するもので、これは魔法学校で習う現代的なスタイルです。

なぜ、レルネンはエーレを魔法学校へ通わせたのでしょうか。なぜ、レルネンは自分の魔法や戦い方を孫のエーレに伝授しないのでしょう?

レルネンはフリーレンに手傷を負わせる程の実力者です。その実力は七崩賢と渡り合えるレベルでしょう。フリーレンはレルネンを「とんでもない手練れだ」と評しています。

ならば、魔法学校へ通うよりもレルネンの下で修業した方がずっと効率よく学べそうです。フリーレンがフェルンに対してしたように、レルネンが自身の魔法と戦い方をエーレに叩き込めば、エーレは途轍もなく強い魔法使いになるでしょう。その上で、エーレをゼーリエに引き合わせれば、強い魔法使いが大好きなゼーリエのことです、エーレを気に入って取り立ててくれるのではないでしょうか。

けれども、レルネンにはエーレのためにそういった骨折りをする素振りがなく、なぜか孫の教育に関しては特段の関心を示さないのです。エーレがヴィアベルをレルネンに引き合わせている一コマからは、レルネンが孫娘に優しいお爺ちゃんであることがうかがえるので、孫の教育に関するこの淡白さは一層不思議に感じます。

レルネンが自身の魔法や戦い方を孫のエーレに伝授しない理由はおそらく、エーレには自分のような「戦いしか知らない時代遅れの魔法使い」になって欲しくない、「平和な時代の魔法使い」になって欲しいと考えているからです。

これはちょうど、フランメがフリーレンに「平和な時代の魔法使い」になることを望んだのと同じです。

魔王討伐のためには仕方なかったこととは言え、フランメはフリーレンに「戦いのことしか教えなかった」ことを後悔していたはずです。(「後悔しているの?」と問うフリーレンに、フランメは「いいや」と否定はしていますが、背を向けています)

このフランメの後悔は、レルネンが自身に感じている「私は戦いしか知らない」という後悔と相似しています。レルネンにはこの後悔があるからこそ、孫のエーレには自身の魔法と戦い方を教えないのです。

魔法使いとしての傑出した才能を持つレルネンが、同じく傑出した才能を持つ孫のエーレに自身の魔法を教えることを断念する。これは凄まじい決断だと思います。(二人が親と子ではなく、祖父と孫娘だから出来る決断かもしれません)

レルネンとエーレの関係は作中ほとんど描かれていませんが、二人の戦い方の違いから、レルネンの孫娘に対する不器用な愛情を感じ取れると思います。

おわりに

ラントとその祖母、エーレとその祖父レルネンの関係はいずれも作中ではほとんど触れられていません。

けれども、二人の一般攻撃魔法に対する認識や戦闘スタイルからその関係性を窺うことができます。

ラントとエーレは「魔法学校出身の秀才肌」という同じタイプの魔法使いです。

しかし、ラントは一級魔法使い試験に合格し、エーレは合格できませんでした。ラントは祖母の「魔法」を承継していますが、エーレは祖父の「魔法」を承継していません。

ラントとエーレの進む道が交わることはなさそうですが、対照的な二人です。読者としては、ラントとエーレを比較しながら物語を読むとより楽しむことができます。また、フランメとフリーレンの師弟関係と、レルネンとエーレの師弟関係を比較するのもおもしろい視点です。

このように、エーレは複数のキャラクタを繋ぐ存在になっています。これが、エーレが三年後の一級魔法使い試験に合格してメインストーリーに再登場すると考える理由です。

本文は以上になります。以下は『葬送のフリーレン』を紹介する記事等へのリンクになります。魅力的な「謎」がたくさんある作品ですので、是非読んでみてください。

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