《葬送のフリーレン》ミリアルデ、聖杖法院へ行く
帝国編(第147話)までのネタバレと、先の展開に関する考察・予想を含みます。
はじめに
前回はミリアルデの過去(「皇帝酒」(第8巻69話)のエピソードの前に彼女に何があったのか)について考察しました。
今回は、記事タイトルの通り、「皇帝酒」のエピソードから現在まで(聖杖法院へ行くまで)について考えます。
根拠は少ないため、点と点を想像と物語でつなぎます。ですから、二次創作のようなものかもしれません。
おかしなところもあると思いますが、それも含めておもしろがって頂けたら嬉しいです。コメントも歓迎です。
ミリアルデの現在
第14巻128話でラントが聖杖法院について説明した際に登場したショートカットのエルフの女性はミリアルデだと考えられます。(他に候補がおらず、
特に矛盾もないからです。新しいキャラクタが登場するなら話は変わりますが、可能な限り新設定は使わずに考察します)

そうすると、ミリアルデは現在、聖杖法院のトップ(院長)の地位にあると解されます。現役のレーヴェと並べられているのですから、このコマの解釈としてはそれが最も素直でしょう。(ミリアルデだけが過去の人だというのは不自然です。この点は私の解釈に変更があり、後述しています)
そして、聖杖法院はデンケンの根回し先(第14巻130話)として最有力です。フラーゼ(魔導特務隊)に対抗できる根回し先となると、他に思い当たらないからです。(もう一つの理由は後述します)

したがって、ミリアルデは帝国編で再登場すると考えます。
そこで、「皇帝酒」(第8巻69話)のエピソードから聖杖法院までの彼女の来歴を考えてみます。
ここまでの考察が正しければ、これが(ふんわりした雰囲気だったのが)

こうですからね。(髪をきれいに整えてキリッとしています。ただ、顔が隠れるほど前髪を伸ばしており、影のある雰囲気は残っています)

一体何があったのでしょうか?(「人生をかけて探したものが、なんの価値もないゴミだった」という「皇帝酒」のエピソードが前提にあると、普通はビフォア・アフターが逆だと感じます)
ミリアルデと酒
まず、ミリアルデの人となりについて少し掘り下げておきます。

ミリアルデは皇帝酒を発見する「酒好き」が町の皆に皇帝酒を振舞うことを分かっていました。
そうでなければ、「酒を保存するための」結界であれだけ大量の皇帝酒を封印しないでしょう。


つまり、ミリアルデは酒好きの行動原理(気持ち)をかなりよく理解しているのです。
酒好きの気持ちとはこういうことです。
「最上の名酒」とされる皇帝酒を是非とも飲んでみたい
「不味い酒なんでしょう?なら皆で楽しまないと」(ハイター)
「酒は楽しく飲むに限るな」(ファス)




そして、酒好きの行動をここまで予測して、「暇つぶし」の計画を立てています。
酒好きが「最上の名酒」とされる皇帝酒の存在を知れば、いつか必ず地下の遺跡に辿り着き、封印を解いて皇帝酒を手に入れる(酒好きでなければそんなことはしない)
大量の皇帝酒(最低の安酒)を手に入れた酒好きは町の皆に振る舞って楽しく飲む
このミリアルデの想定にぴったりはまったのがドワーフのファスだったわけです。(ハイターは魔王討伐の旅の途中だったために、泣く泣く断念しました)

なぜミリアルデは酒好きの気持ちを理解して、行動を把握できるのでしょうか?
簡単です。ミリアルデ自身がもともと酒好きだからです。
「人生をかけて探したものが、なんの価値もないゴミだった」ことがわかり、人々から拒絶されて故郷を捨てる前から、ミリアルデはお酒が好きで社交的なタイプだったのでしょう。(それだけに、より一層、人々の心変わりは堪えたと思います。そのあたりは前回の記事を参照ください)

そうすると、僧侶 → 生臭坊主・破戒僧 → 酒好き という「フリーレン理論」により推測して、もしかしてミリアルデって「僧侶」なの?と思いますね。

そこで、次に《葬送のフリーレン》の世界における教会と修道院ついて確認して、聖杖法院がどんな組織なのか考えてみます。
教会と修道院、聖杖法院
教会と修道院
《葬送のフリーレン》の世界における教会の仕組み(制度)の詳細は明らかにされていませんが、これまでの描写や使われている用語(「神父」等)からして、概ね「カトリック教会」のイメージで理解しておけば良さそうです。
そうすると、聖職者は男性に限られることになります。
ちなみに、ロレはシスター(修道女)です。

修道士(モンク)・修道女(シスター)が生活している修道院は「女神の石碑編」(第12巻112話)で登場しています。修道士たちは「修行の一環として写本」を行い、「昔の文献や神話を現代へと伝え」る仕事をしています。(これに関しては後述します)

聖杖法院はどんな組織なのか
聖杖法院はその名称に「聖杖」と冠されていることや、例のミリアルデらしきシルエットの女性が手を組んで祈るような姿勢を取っている所から女神様と関係のある組織だと推測できます。
※「大魔法使い」は神話の時代から存在するのですから、女神様と何らかの関係があります。「聖杖の証」も同様で、「聖杖」は女神様との関係を示します。そのあたりはこちらの考察を参照ください。
ただ、トップが女性ですから、教会とは別系統の組織でしょう。つまり、修道院系の組織です。
ということは、聖杖法院はシスターとモンクで構成される「対魔法使い専門の特務機関」だと考えられます。
ですから、現在のミリアルデはお酒の好きなシスターになっていると思われます。
ミリアルデ、クラフトと出会う
修道女・修道士、修道院といった話になると、気になるのは武道僧のクラフトです。(第3巻24話など)

ファンタジーものの文脈で「モンク」と言えば、体を鍛えている「武器を使わずに戦う僧侶」のイメージで、これがまさにクラフトなのですが(第4巻37話、S1-EP18)…

言葉の通常の用法としてはモンク(monk)とは修道士・修道僧を意味する
からです。
そして、クラフトは約300年前に同族と会っています。

それが修道院にいたシスター(見習い?)のミリアルデかもしれないですね。
「心の底から女神様を信じている」と言うクラフトに対して、それはただの願望に過ぎないとフリーレンは指摘しました。

しかし、クラフトとのやり取りを通じて(ハイターのことも思い出し)、フリーレンは考え方を少し変えました。

ミリアルデが人生の意味を回復するきっかけになったのは、クラフトとの出会いだったかもしれません。
ミリアルデ、聖杖法院へ行く
では、現在ミリアルデが聖杖法院のトップ(院長)だとして、そこまでの道筋を想像してみます。
ここまでの考察を踏まえると、ポイントは修道院に入ってシスターになることと約300年前のクラフトとの出会いです。その他の部分はストーリーとしておもしろければ自由でしょう。そこで、こんなふうに考えてみました。
玉座のバザルトによるエルフの里の襲撃時に上手く難を逃れたミリアルデは人里離れた修道院に転がり込みました。
ハイターによれば修道院は「自力で探すのは難しい」ような場所にあることが多いそうなので、魔王のエルフ狩りも心配ありません。
ミリアルデ(Milliarde)はあんな感じですから、修道院も彼女の扱いには苦労したことでしょう。なんとなく映画『サウンド・オブ・ミュージック』の修道女見習い・マリア(Maria)を思い出します。(マリアははつらつとした女性で、ミリアルデとは真逆のタイプですが)
もちろん大魔法使いの素性は隠して生活します。
そして、シスターとして過ごしている間に、クラフトとの出会いがありました。これが一つの転機です。(約300年前)
そうこうするうちに、聖杖法院から優秀なシスターを探しているという知らせが修道院に届きます。扱いずらい所はあるけれども才能はありそうだし渡りに船ということで、修道院長の計らいでミリアルデは帝都へ送り出されます。
あるいは、ハイターからスカウトされたザインのお兄さんのように(第4巻28話)、帝都からの視察があって埋もれた才能を見出されてスカウトされたかもしれませんね。
そして聖杖法院で頭角を表して院長へ。(というか同期はみんないなくなってしまうわけですが…)
完全に妄想ですが、ポイントは押さえています。
Milliarde(ミリアルデ)とMaria(マリア)の言葉遊び
妄想ついでに言葉遊びをします。Maria(マリア)からMilliarde(ミリアルデ、10億)を作るのに足りない文字はL, D, Eです。大雑把にやるので数にはこだわらず、もともとMariaに含まれている文字は使って良いとすると、こんな単語でMilliardeを作ることができます。
Milliarde = Maria + lied 歌(独)
Milliarde = Maria + idle むなしい(英)
Milliarde = Maria + ideal 理想(独)
デンケンと図書館(ルティーネの勤務先)
話は飛びますが、ミリアルデと関係があるのでここで触れます。「はじめに」で触れたデンケンの「根回し」に関してです。
デンケンの行動の謎
舞踏会二日前の日の朝のことです。調べ物をしていたデンケンの元へカノーネがやってきて(場所はおそらく宮殿内の書庫)、グリュックに対する措置について報告します。しばらく会話をして別れた後、デンケンが「根回しを進めておくか」(第14巻130話)と呟いて場面は切り替わります。

次にデンケンが描かれたのは図書館(図書館司書・ルティーネの勤務先)です。(第14巻132話)

「根回しを進めておくか」から図書館までの場面展開はこうです。
「根回しを進めておくか」(第130話)
フリーレンの早起き(第130話)
ラントとユーベルの脱出(第131話)
フリーレンがガゼレから銀貨で買い物(第132話)
図書館(第132話)
このように、デンケンの「根回しを進めておくか」と図書館の間には複数の場面が挟まれており、時間の経過があることを強く示唆する場面展開になっています。(特にラントとユーベルの第131話「脱出」が丸々一話挿入されています)
「根回しを進めておくか」 → 〈時間の経過〉 → 図書館
こうしてみると明らかですが、デンケンは根回しを済ませてから図書館へ行っていると解されるのです。
デンケンがどこへ根回しに行ったのかは「はじめに」でも指摘していますが(消去法で考えて聖杖法院)、それとは別のアプローチで考えてみます。
ルティーネの勤務先は?
ルティーネの勤務先は、「図書館」という独立した施設でしょうか? それとも、何かの組織の付属図書館なのでしょうか?
この世界での書物の希少性(しかも宮廷魔法使いのデンケンが借りる書物です。かなり専門性・希少性の高い書物でしょう)や物語の世界観を鑑みると、前者には違和感を覚え、後者が自然だと感じます。
前述しましたが、修道院には「昔の文献や神話を現代へと伝えていく」という役割があります。(第12巻112話)

これを踏まえれば、帝都の修道院本部(本当の名称はわかりませんが、修道院の総元締めのようなところ)が帝国の国立図書館的機能を果たしており、貴重な書物を収集・管理していることは十分に考えられます。
であれば、ルティーネの勤務先は修道院本部の付属図書館でしょう。
そして、聖杖法院はその存在が公になっていない特務機関ですから、修道院本部の中に設置されていると考えられます。
デンケンの行動(解答)
そうすると、デンケンの行動は、「根回しを進めておくか」 → 聖杖法院でミリアルデと面会 → ついでに図書館へ ということになります。
ルティーネの勤務先を描いた目的の一つは、デンケンの根回し先を示唆するヒントなのでしょう。(もう一つここからわかるのは、デンケンがルティーネの趣味まで調べ上げていることから、暗殺計画に影なる戦士が関与していることには既に気付いており、調査済みだというとです。)
※フリーレン達の帝都到着から舞踏会当日までの主な出来事は次の記事で整理しています。
デンケンが借りていた書物は?
細かい話ですが、デンケンが図書館で借りていた書物は何でしょう?
デンケンはお金に不自由していませんから、お金で買える書物なら迷わず購入しますし、膨大な蔵書があるはずです(第7巻59話)。加えて、皇帝の右腕である宮廷魔法使いですから、宮殿内の書庫や資料室を自由に使える立場です。

そのデンケンが、わざわざ外部の図書館から書物を借りています。
ということは、自分の蔵書や宮殿の書庫ではカバーできない分野の調査をしていたわけです。
それって、どういう分野でしょう?
宗教関係です。
前述したとおり、修道院には「昔の文献や神話を現代へと伝えていく」(第12巻112話)という役割があります。
デンケンが調べていたのは神話の時代についてです。
そして、この時のデンケンが懸念しているのは、フラーゼの暗躍です。
過去の記事で触れていますが、フラーゼの「死でさえ時間稼ぎ」(第144話)という特性には、賢者エーヴィヒが関係していると私は考えています。
デンケンは神話の時代の英雄・賢者エーヴィヒについて調査していたのでしょう。
ミリアルデ関連の出来事のまとめ
最後に、ミリアルデ関連の出来事をまとめておきます。考察に基づく内容を含みます。
「遠い昔」「人生をかけて探したものが、なんの価値もないゴミだったときのこと」。その結果、故郷を捨てる(かなり昔のことではありますが、神話の時代ではなさそうです)
〈統一帝国の時代〉
即位式、皇帝酒の配付
皇帝酒を地下の遺跡に封印する
1000年以上前、フリーレンと同じエルフの里で暮らす(第8巻69話)
フリーレンの故郷が玉座のバザルトに滅ぼされる。フリーレンはフランメに助けられる。ミリアルデは難を逃れ、修道院へ
約400年前、フリーレンが同族と会う(第2巻13話。可能性があるのはミリアルデ、ミーヌス、新キャラですが、「皇帝酒」エピソード時のフリーレンの様子からしてミリアルデとは再会していないように感じます。)
約300年前、クラフトと出会う(第3巻24話。おそらくミリアルデだと考えます。他に可能性があるのはゼーリエ、ミーヌス、新キャラです)
修道院を出て帝都の聖杖法院へ
〈現代〉
約80年前、勇者一行がファスの協力依頼を断る
ファスが皇帝酒を発見
現在は聖杖法院の院長
なぜ私は読み間違えたか?(物語の魅力と怖さ)
このコマの読み方ですが…

このコマで描かれている二人は同じ時間に存在していると読むのが素直です。一方が現在なら他方も現在ですし、一方が過去なら他方も過去です。一方が現在で他方が過去という読み方はかなり不自然で、特別に理由がある場合だけできる読み方です。
先入観なく落ち着いて考えれば、そういうことになります。
しかし、私はつい最近まで、レーヴェは現在、ミリアルデは過去だと思い込んでいました。
なぜそんな思い込みが生じたのか?と考えてみると、おそらく、「人生をかけて探したものが、なんの価値もないゴミだった」(第8巻69話)というミリアルデの物語がとても強烈な印象を持っているからだと思います。
「人生をかけて探したものが、なんの価値もないゴミだった」という物語を前提に、「キリっとしている姿」と「ぼーっとしている姿」とを見ているため、前者がビフォアで、後者がアフターだと思い込んで決めつけてしまったのです。思い込みで「ミリアルデは現在は既に回復している」という可能性を排除してしまいました。

そして、一度そういう思い込みができてしまうと、なかなか間違いに気付けませんでした。
これが物語の魅力であり、怖さでもあります。(自分がはまっておいて偉そうなことは言えないのですが、魅力的な物語は物事をありのままに見ることの妨げになります)
今回、私がどうやってこの自分の思い込みに気付いたかというと、ミリアルデの年表を書き出したことによってです。
書き出してみると、矛盾しているというわけではないのですが、どうも出来事の並びがバタバタとしていて、物語としてのエレガンスに欠ける印象でした。この辺は感覚なのでうまく説明できませんが、段取り・要領が悪い感じ、もっと上手く整理できそうな感じです。
そこで、何かがおかしいと思ってあれこれ考えた結果、ミリアルデのビフォア・アフターを取り違えているという結論となりました。
そうして帝国編を見直してみると、「デンケンの根回し先はどこなのか?」という謎があっさりと解けてしまったのです。
…と言っているこの見解が間違っている可能性もあるのですが、現時点ではそう考えています。
私の作文は「(現時点では)私はこう考える」ということを書いています。考えを変更したり撤回したりすることもあり、それについて説明することもあるのですが、過去の作文を書き直すことは原則としてしません。解釈の変遷が残っていると受け取っていただけるとありがたいです。
おわりに
ミリアルデとロレは「安物の酒」という一本の線で繋がっていたことを思い出します。この繋がりは、作者からのちょっとしたメッセージ(目配せ、サイン)なのでは?と思います。

次はミリアルデのこれから(帝国編で聖杖法院がどんな登場の仕方をするのか)について書こうと思って、いろいろと考えているのですが、記事一つ分の内容になるかどうかわかりません。
休載中で新しいネタがないこともあり、更新頻度は落ちると思います。コメントでいろいろ疑問点なども教えて頂けると嬉しいです。
《葬送のフリーレン》に関する記事は下記のマガジンにまとめています。
150本超ありますが、最初の考察記事としてお勧めなのはこちらです。
これを読んだ上で、フランメ、ヒンメル、エーヴィヒ、ゼーリエ、大魔法使い、などで検索すると物語の全体像に関わる考察が出てきます。
おもしろかった記事には「スキ」していただけると励みになります。コメントもとても嬉しいです。《葬送のフリーレン》に関することでしたら、感想・質問・疑問など何でもどうぞ。
