《葬送のフリーレン》フリーレンの早起き、シュタルクの予言、ゼーリエの賭け(帝国編考察)
※ネタバレおよび先の展開に関する考察・予想が含まれます。
はじめに
帝国編でフリーレンは一度だけ早起きをしています。その時にシュタルクは「明日は天変地異だ」と言います。
現実であればこの台詞は冗談でしかあり得ません。なぜなら、誰かの早起きと天変地異の発生には因果関係がないからです。
しかし、これは物語です。そして、作者はフリーレンの早起きからシュタルクのこの台詞までに一ページ使っています。(ゼンゼの「ぐっすり眠れる魔法」への伏線やファンサービスもあるとは思いますが)
そこで、冗談ではなく予言として受け止めて、この「天変地異」が何なのか考えてみます。
それがわかると、何とゼーリエの「賭け」(第144話)の意味と結果もわかることになります。

回り道のある考察ですが、お付き合い下さい。ショートカットしたい方は目次から「ゼーリエの賭け」へ飛んでください。
フリーレンの早起きとシュタルクの予言
フリーレンの早起きはとても珍しいことです。
最初に第2巻13話「解放祭」で描かれています。朝食の支度をしていたシュタルクは「…それすごいことなの?」とたずねています。

そして、フリーレンたちは次の第14話「言葉を話す魔物」でリュグナー達に遭遇してアウラとの戦いに巻き込まれて行きました。結構な大事件です。
帝国編では第14巻130話「水面下」でフリーレンの早起きが描かれています。

フリーレンの世話するフェルン達を見たゼンゼが朝食のパンを齧りながら「…凄いことなのそれ?」とたずねて、今回はシュタルクが「とんでもないことだぜ。きっと明日は天変地異だ」と予言します。

では、帝国編ではどのような「天変地異」が起こったのでしょう。
「明日」=舞踏会当日だと思うかもしれませんが(私もそんな気がしていました)、丁寧に読んでみると実は違って、フリーレンが早起きをしたのは舞踏会二日前で、「明日」=舞踏会前日です。
でも、舞踏会前日に「天変地異」と呼べるような出来事なんてありましたっけ?
舞踏会当日までの主な出来事
舞踏会の三日前(フリーレンたちが帝都に到着した日)から当日までの主な出来事を並べてみます。大体時系列になっていると思いますが、確定しきれない部分があります。また、この記事のためにざっと書き起こしたものですので粗々です。ご了承ください。
舞踏会三日前(第13巻126話~第14巻129話)
帝都での第一日目です。

フリーレン一行が帝都に到着、任務の説明を受ける(第126話)
ラントとユーベルの回収任務(第127話~第128話)
フリーレン一行が帝都を偵察、花火を見る(第129話)
ゼーリエは帝都へ向かう馬車の中(第129話)
レーヴェがシュリットに任務を伝達(第129話)
舞踏会二日前(第14巻130話~第14巻137話)
フリーレンが早起きした日です。長い一日です。

カノーネによるグリュックの取り調べ(早朝、第130話)
カノーネがデンケンと会う(第130話)
フリーレンが早起きする。シュタルク「きっと明日は天変地異だ」(第130話)
カノーネがノイからラント・ユーベル捕縛の報告を受ける(第130話)
ラントとユーベルが脱出する(第131話)
フリーレンがガゼレから銀貨で買い物をする(第132話)
デンケンが図書館でルティーネと会う(第132話)
ゼンゼとデンケンが会う。デンケンはその後ヴァイゼへ。(第132話)
影なる戦士たちの「任務内容の最終確認」(第132話~第133話)
イーリスとルティーネ、ファルシュ(第133話)、ヴァルロス(第134話)が地下通路を下見
クレマティスとヴァルロスが教会で相談(第134話、夕方)
ガゼレ、ロレ、酒場へ(第134話) ※ガゼレ「二日後には死ぬかもしれない」
ガゼレが銀貨でツケを払い、ロレが逆探知して「前哨戦」へ(第135話~第137話)
ザインと再会
ラントとユーベルが帰還(第137話)
この日の夜に見た予知夢が第144話以降で描かれている予知夢である可能性が高い

舞踏会前日(第138話~第139話)
シュタルクの予言により「天変地異」が起こるとされる日です。
ゼーリエが帝都に到着、ファルシュの出迎えを受ける(第138話)
一級魔法使いたちの作戦会議(第138話~第139話)
カノーネたちが「前哨戦」の戦闘の痕跡を検討して対策を上申しようとするもフラーゼの所在がつかめない(第138話)
フリーレン一行が帝都を探索するが収穫なし(第139話)
レーヴェがゼーリエ暗殺の理由をクレマティスに明かす(第139話)
夜、ゼーリエの魔力探知が帝都全域を覆う(「何者かに喧嘩を売っている」「ゼーリエが派手に仕掛けてくれた」)(第139話)
夜、フラーゼが戻り、カノーネと会う(第139話)
予知夢での出来事(第144話)
ゼーリエがフラーゼを殺害
皇帝「どうせ明日の舞踏会で会うのだ」
舞踏会当日(第140話~)
ゼーリエ以下、全員で打ち合わせ(第140話)
デンケンとグリュックがヴァイゼに到着。レルネンと会う。(第140話)
夜、舞踏会へ(第140話~)
以降省略
舞踏会前日のゼーリエxフラーゼ
こうやって見ると、舞踏会前日には「天変地異」と呼べるような目立った出来事はありません。
あるとすれば、ゼーリエが見た夢の中で舞踏会前日の夜にフラーゼを殺害していることくらいです。

そうすると、フラーゼの所在がわからなくなっていることも気になります。
また、舞踏会前日の夜には、「ゼーリエの魔力探知が帝都の全域を覆」っています。「ゼーリエは私たちが認識できていない何者かに喧嘩を売っている」、「ゼーリエが派手に仕掛けてくれた」とフリーレンは言います。ですから、ゼーリエとフラーゼは(夢の中だけではなく)現実でも文字通り「バチバチ」やり合っています。(第139話)

フラーゼがカノーネ(リネアール)に「貴女は私に質問があるはずです」(第139話)と言ったのも、カノーネの反応(フラーゼの真意を測ろうとするような目のクローズアップ)を踏まえると意味深です。カノーネは「大陸魔法協会と影なる戦士が交戦を開始した場合は如何なさいますか?」と当たり障りのない質問をするのですが、本当に聞きたかったことは「午前中どこで何をやっていたのか?」とか、「ゼーリエをどうするつもりなのか?」でしょう。
ですから、シュタルクが「天変地異」が起こると予言した舞踏会前日に、ゼーリエとフラーゼの間で何かあった感じがします。そうすると、夢の中でのゼーリエによるフラーゼ殺害と、フラーゼの不在。この二つの出来事には関係がある気がします。まずはその線で考えてみます。
フラーゼ隊長殺人事件
夢の中での殺人と、翌日の被害者の不在。この二つが無関係だとは思えません。犯人は大魔法使いゼーリエ、被害者は魔導特務隊のフラーゼ隊長です。
整理してみます。
夢の中は舞踏会前日の夜です。皇帝が「どうせ明日の舞踏会で会うのだ」と言っているからです。

ということは、ゼーリエと皇帝が夢を見ているのは舞踏会二日前の夜です。ゼーリエが「最後の機会だった」と言っているからです。

そして、舞踏会前日の午前中にはフラーゼが所在不明になっています。カノーネたちが舞踏会二日前の夜の「前哨戦」の戦闘の痕跡について検討している場面でフラーゼの所在不明が話題になっているからです。

舞踏会前日の夜、フラーゼは復帰しておりカノーネと会っています。
まとめるとこうです。
【舞踏会二日前の夜】夢の中でゼーリエがフラーゼを殺害
【舞踏会前日の午前】フラーゼが所在不明
【舞踏会前日の夜】フラーゼが復帰
【舞踏会前日の夜】夢の中の時間
何かがおかしいですね。
時系列の把握が誤っているのか、そもそも夢の中のフラーゼ殺害と現実のフラーゼ所在不明は無関係or直接の関係はないのか…
探偵求む。特に時空犯罪捜査の経験豊富な名探偵を希望
※たとえば、皇帝の夢への侵入者に気付いたフラーゼも夢の中に入り、夢の中でゼーリエと戦って敗北。その戦いで現実のフラーゼにダメージが伝わり、翌日の午前中は不在だった(体の再生に時間が必要だった)というのはあるかもしれません。ただ、これを「天変地異」と呼ぶのは大袈裟な気がします。
ゼーリエの賭け
捜査は振り出しに戻りました。そもそもの所から考え直してみます。
選べない選択肢
予知夢の魔法を持っているゼーリエは「数ある未来」へつながる「数ある現在」の中から、一組の現在と未来を選ぼうとしています。

しかし、ある時期から、何度 予知夢を使っても、舞踏会の夜に殺されるor魔法使いたちが虐殺されてしまうという未来しか見ることができなくなってしまいました。

そして、だんだんとタイムリミット(舞踏会当日)が迫ります。なのに答えが見つかりません。
ゼーリエに見えている選択肢はこんなイメージです。
現在1………未来1(舞踏会での死)
現在2………未来2 (舞踏会での死)
現在3………未来3 (舞踏会での死)
現在4………未来4(舞踏会での死)
現在5………未来5(魔法使いたちが虐殺される)
そういう状況でゼーリエは馬車に乗り、帝都へ向かいます。
最後の予知夢とゼーリエの選択
舞踏会二日前の朝、フリーレンが早起きをして、シュタルクが「明日は天変地異だ」と予言しました。
舞踏会二日前の夜、予知夢を見る「最後の機会」です。この最後の予知夢の中で、ゼーリエは皇帝と情報交換をします。(第144話~)

そして、舞踏会前日(シュタルクの予言の日)、ゼーリエは皇帝から得た情報を基に、一つの現在(とその先の未来)を選択しました。
現在x………未来x(???)
舞踏会二日前の夜に見た予知夢が「最後の機会」ですから、選択した現在の先の未来のことはゼーリエにもわかりません。わからないから、ゼーリエは「賭けにでた」、「勝とうが負けようが」と言っています。(第144話)

「天変地異」と賭けの結果
先ほど検討したように、舞踏会前日には「天変地異」と呼べるような目立った出来事はありません。シュタルクの予言は外れた?そうではありません。(これは現実ではなく物語ですからね)
この舞踏会前日のゼーリエによる選択が「天変地異」です。どういうことか?
「数ある未来」につながっている「数ある現在」の中から、一組の現在と未来が選ばれました。先ほどの《現在x………未来x(???)》です。
そして、選ばれた現在は、これまでゼーリエが何度も見てきた、どうしても避けられなかった未来(ゼーリエが舞踏会の夜に殺されるor魔法使いたちが虐殺されてしまう)とは異なる未来につながっています。
つまり、舞踏会前日、未来に大きな変更が生じました。(世界線の大きな変動)
だから、文字通り「天変地異」なのです。(このことをゼーリエは知らず、知っているのは私たち読者だけです)
ということで、シュタルクの予言「きっと明日は天変地異だ」が当たるなら、ゼーリエは賭けに勝つことになります。これが物語である以上、シュタルクの予言は当たるでしょうから、賭けはゼーリエの勝ちです。
まとめ
回り道をした考察でしたので、簡潔に流れだけまとめます。
フリーレンの早起きを見てシュタルクは「明日は天変地異」と言うのですが、「明日」は舞踏会当日ではなくて、舞踏会前日です。
では、舞踏会前日に何があったか?と調べると「天変地異」と呼べるような目立った出来事は描写されていません。
じゃあシュタルクの予言はハズレたのか?というと、物語としてそれはあり得ません。
注意して見ると、舞踏会前日はゼーリエが予知夢を見た翌日です。
ですから、予知夢での皇帝との情報交換を受けて、舞踏会前日にゼーリエが未来を大きく変える選択を行なった可能性が高い。
そういう考察でした。
おわりに
ゼーリエというキャラクタは、基本的には読者に隠し事をしていて物語を謎めかせる存在です。ですが、ここでは賭けの結果をゼーリエは知らず、読者だけが知っているという珍しい状況が生じています。予言したシュタルク自身はもちろん無自覚です。おもしろいですね。
舞踏会前日にゼーリエは「運命の分かれ道」になる選択をしているはずです。
具体的にはどのような選択なのかは、予知夢での情報交換が更に説明されなければわかりません。
ただ、舞踏会前日にはゼーリエとフラーゼで相当やり合っているようですから、フラーゼに関係することのような気はします。そういう意味では「フラーゼ隊長殺人事件」の検討も無駄ではなかったかもしれません。
他方で、ゼーリエ暗殺の実行犯はレーヴェで、黒幕はレーヴェの背後にいそうな雰囲気になってきています。南側諸国方面ですね。
そこのあたりがどうなるのかはわかりません。ですが、ゼーリエは賭けに勝つという結論部分は動かないでしょう。そこに至る過程を楽しみに待つことにします。
第146話の感想・考察はこちらになります。
《葬送のフリーレン》に関する記事は下記のマガジンにまとめています。
140本以上ありますが、最初の考察記事としてお勧めなのはこちらです。
これを読んだ上で、フランメ、ヒンメル、エーヴィヒなどで検索すると物語の全体像に関わる考察が出てきます。
考察手法に関してはこちらをどうぞ。
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