《葬送のフリーレン》第146話「人類最強の戦士」感想・考察
『週刊少年サンデー』(2025/10/01発売号)掲載《葬送のフリーレン》第146話「人類最強の戦士」の感想です。ネタバレと先の展開に関する考察・予想が含まれます。
一つ前の第145話「未来視」の感想・考察はこちらです。
《葬送のフリーレン》に関する記事は下記のマガジンにまとめています。
はじめに
《葬送のフリーレン》は「安心して」読めるマンガで、紆余曲折あっても最後は勝つでしょ、死なないでしょ、仲直りするでしょ、最後はみんなハッピーでしょ、という信頼のようなものがここまでの物語で出来上がっています。(そこに物足りなさを感じる方もいらっしゃるでしょう)
今回の第146話「人類最強の戦士」は、その読者の油断を突く内容でした。(ですから、例外的なエピソードだと思います)
第146話の感想に入る前に、前回をざっと振り返ります。
前回の第145話「未来視」から生じる主な期待は次の最初の二つではないでしょうか。予告を見ている場合は、ここに三つ目が加わります。
皇帝は何を語るのか?ゼーリエが知りたいことは何か?(第144話「予知夢」から引き続き)
ファルシュの焦りの原因は?(第145話の最後のコマ)
ヴァルロスの回想の内容は?(予告より)

「予告」を踏まえての私の予想(期待)はこんな感じでした。
ファルシュの焦りの原因を描写
そこへフリーレン一行が到着
会敵 フリーレン一行+ファルシュvs.ヴァルロス、クライス、ヴォルフ、ガゼレ(シュリットとロレは遅れて合流)
フリーレンを見てヴァルロスの回想開始
詳細はこちらの記事を参照ください。ゼーリエ暗殺のタイミング等についても触れました。→「第146話を読む前の雑談」
また、これとは別に数話先の話として、この↑記事で私はこう↓予想しました。
ユーベル・ラント対ルティーネ・イーリスの戦いが終わって、さあユーベルが会場に入るぞ!なんとか間に合ったか!?というギリギリのタイミングでレーヴェが動くのではないでしょうか。なぜなら、作劇としてそれが一番盛り上がりそうだからです。
ただ、よく考えてみると…ユーベルは額から流血していますから、包帯を巻く等の応急手当をするとしても、そのまま会場に入れる格好ではありません。会場の前で足止めを食らうことになります。しかし、それでは物語として滑稽です。ということは、ユーベルが会場に着いた時にはもうレーヴェが動いた後で会場は大騒ぎの混乱状態になっており、いちいち彼女の格好を詮索する人などいない状態になっているはずです。つまり、ユーベルは暗殺の瞬間には間に合わない。居合わせるのはゼンゼとカノーネ(リネアール)でしょう。(なお、ゼーリエは一時退場だと私は考えています)
イーリス・ルティーネ戦の後、ラントがユーベルのケガについてどう言及するのかは楽しみです。ラントは聖典を持っているでしょうか?でも、ラントは原理のわからない魔法は好きではないでしょうね。(第4巻31話、第5巻46話参照)


そして、この「会場に入れる格好ではない」という理屈は、よく考えるとケガをしているユーベルだけではなくて、戦闘に参加した全員なんですよね(服が汚れているため)。ですから、フリーレン一行も一旦戦闘になれば会場には戻れないでしょう。(会場が大混乱に陥っていれば別です)
フェルンの「お洗濯の魔法」を使うという手もありますが…。戦闘後に「私のお洗濯の魔法で服の汚れをきれいさっぱり落としますから、会場に戻りましょう」というのは、なんだかシュールです。
長くなりましたので、このあたりで第146話の感想に入ります。
感想
全体の構成など
第146話「人類最強の戦士」の構成は
ヴァルロスとクライス(ヴァルロスの回想を挟みながら)
ファルシュのモノローグ
ヴァルロスとファルシュ
大雑把に言うと、第146話で描かれたのは、ほとんどがファルシュの焦りの原因(敵の強さ)についてでした。(私の予想は、回想の内容が間違っていましたし、全体として進行が早すぎでした)
第145話のヒキ(最後のコマ)で作った読者の期待に、真正面から応えた内容です。しかも、読者を納得させつつ驚かせる内容になっていました。
描かれた内容は、小学生のような表現になりますが、「敵はとても強い」ということですね。既存のキャラクター(アイゼン、リヴァーレ)と比較することで「なぜ強いのか?(背景)」には触れずに、「敵はとにかくとても強い」ことを読者に印象付けたエピソードだったと思います。(そのため、敵のことをますます知りたくなりました)
扉絵・タイトル
扉絵は勇者一行で、アイゼンの背中が大きく描かれています。タイトルは「人類最強の戦士」。
ですから、ヴァルロスの回想はアイゼンについてのようです。これは戸惑いました。フリーレンと対面することをきっかけにフリーレンとの関係が語られると思っていましたし、アイゼンについて語られても帝国編の背景が明らかになる感じはしないからです。
ヴァルロスとクライス 1
まずは雪解け水で水没した地下通路から宮殿に侵入したヴァルロスです。クライスは正面から入ったようです。
ここはヴァルロスの身体能力の高さ、頑強さの説明です。
「英雄ラーゼン」の像や肖像画は「ずっと昔に打ち壊されて燃やされちまった」とのこと。「もう誰も(中略)覚えちゃいねぇよ。覚えちゃいねぇんだ。この国の英雄だってのに」というクライスの台詞からは、帝都の人々の薄情さに対するクライスの憤りを感じます。優しいですね。ヴァルロスの「お前が気に病むことじゃない」からは、人の心なんてそんなものだという諦めを感じます。二人の態度からは、原因はヴァルロスの側にあったのではなく、人々の価値観の変化にあったのではないかと感じます。

装備を整えて二人は歩き始めます。どこへ向かうのでしょうか? 黒ずくめの完全武装ですから、地下通路で待機だと思いますが。
ヴァルロスとクライス 2
ヴァルロスの「戦士ならこのくらい普通だ」の口癖が話題になり、ヴァルロスはアイゼンについて語ります。
二人は戦ったことがあるのでしょうか?模擬戦?それにしては真剣です。もしかすると、ヴァルロス(当時ラーゼン)と勇者一行は、最初は協調していたけれども最終的には対立し、そのため、勇者一行の魔王討伐後にヴァルロスの評価が地に落ちた…のかもしれません。
ここでは、ヴァルロスはアイゼンと同じくらい強いことが示されています。血塗られし軍神リヴァーレと戦って生き残ってもいます。
そして、ヴァルロスはアイゼンから「戦士としての誇り」や「死をも恐れぬ勇敢さ」が「致命的な隙へと繋がる」ことを学んだ。だから「この歳まで、生き永らえることができた」と言います。「臆病だった友の言葉が儂を冷静にさせる」と。だから、自分は特別ではなく普通なんだと言い聞かせている。(ここは少し難しかったので丁寧に読んでみます)

しかし、クライスはヴァルロスに反論します。そうは見えないと(「どうだか」)。ヴァルロスは誇りや勇敢さを捨てることができておらず、「戦士として誇り高き」「死に場所を探しているように見える」と指摘します。

ヴァルロスは「短い付き合いだ」と反論するのですが、結局「もしそう見えるのであれば、きっとそれは嘘ではないのだろう」とクライスの指摘を認めます。
そして、ヴァルロスは、自分はまだ戦士としての誇りや勇敢さへのこだわりを捨てきることができておらず、それを求めてしまう自分がいる。だからこそアイゼンの言葉を「自分に言い聞かせている」のだと言います。(「臆病だった友の言葉が儂を冷静にさせる」のです)
だから「そう言っただろう」=最初にそう言ったじゃないか、とクライスに言い訳します。(クライスには少し誤解があり、少しおかしな反論になっているとも言えます)

まとめますと…ヴァルロスは「戦士ならこのくらい普通だ」とは思えないからこそ「普通だ」と自分に言い聞かせています。それに対してクライスは「あなたは普通だとは思っていない。特別だと思っている(それが証拠に誇り高き死に場所を探している)」と指摘する。ヴァルロスはクライスの指摘を認めた上で、だから言い聞かせている、それは最初に言っただろう(そんなに簡単に「普通だ」と思えるなら、何度も自分に言い聞かせる必要などない)と再反論する。そういう対話劇だと解釈しました。

このように、ヴァルロスは「普通だ」と思えないからこそ「普通だ」と自分に言い聞かせています。では、アイゼンの口癖はヴァルロスと同じで自分に言い聞かせているのでしょうか? それとも心の底から「普通だ」と思っているからこそなのでしょうか?
ここはヴァルロスがアイゼンをリスペクトする態度からして、後者だろうと私は思いました。(アイゼンは心の底から「戦士ならこのくらい普通だ。特別なことではない」と思っている)
また、ヴァルロスが「冷静」という言葉を使うのは面白いと思いました。戦士としての誇りや勇敢さを求めてしまう自分=「熱い自分」(特別な自分)なんですね。そんな「熱い自分」に対してアイゼンの言葉を言い聞かせて熱を冷まし、「冷めた自分」(普通の自分)になろうとするわけです。
ヴァルロスからは、レルネンを思い出します。ヴァルロスは時代の変化に取り残されてしまった人で、レルネンは生まれた時代と自分がミスマッチなんですね。魔王討伐後の平和な時代というのは、熱いものを持った人には生きづらい時代なのかもしれません。(第9巻82話)

また、レーヴェもこのタイプかもしれません。
所詮は人殺ししか能のない、無学な戦士よ。俺もまた駒に過ぎん。
クライスは「良い若者」でした。ヴァルロスがクライスとの師弟関係に生きる意味を見出す展開もありそうです。
ヴァルロスとクライス 3
「人類最強の戦士である我が友(アイゼン)」が話題なったところで、ヴァルロスが「レーヴェに会ったことは?」と話を振ります。
レーヴェはヴァルロスやアイゼンよりも遥かな高みにいる存在だと言うのです。二人には加齢による衰えはあるにせよ、魔王討伐後の平和な時代にどういうわけなんでしょうか。
とにかく、敵(レーヴェ)はとてもとても強い、ということですね。(理由はわかりません)
ただ、第146話で出たのは、「敵が強い」という話だけではありませんでした。

遥かな高みにいるレーヴェでさえも「捨て駒になる覚悟」でこの任務にあたっている。「一体儂等は、何を相手にしようとしているんだろうな」とヴァルロスは問うというよりは語っています。(クライスは無言です)

ヴァルロスたちが相手にしているのはゼーリエです。ですから、ヴァルロスのこの問いは、言い換えれば「ゼーリエは一体何者なのか?」です。読者視点でこの問いに答えるなら「神話の時代の大魔法使い」(第10巻93話)ですが、それはヴァルロスも知っていることですから(第14巻133話)、彼が納得できる答えにはなりません。つまり、ヴァルロスの疑問は読者の疑問でもあるのです。

ここでこの問いが立てられた(読者の期待が作られた)ということは、帝国編では、この問いに対する答えとまではいかなくとも、何らかの手掛かりが示される(読者の期待に対する応答がある)はずです。これ以上は長くなりそうなので、できれば別記事にしようと思います。(書きました)
また、こういった物語における読者の期待とそれへの応答については次の作文を参照ください。
レーヴェは南側諸国で「工作活動」をしていたということですから、ミーヌスの周囲はかなりきな臭くなってきました(もともとですが…)。偽装された死、入れ替わり、成り済まし等のミステリ小説的トリックが仕掛けられている可能性が高いでしょう。
たとえば、ミーヌスの死は偽装されていて、ミーヌスとレーヴェが協力しているとか、ミーヌスが魔族と入れ替わっている等です。
ミーヌス殺害自体が帝国による「工作活動」である可能性もあります。そうであれば、皇帝は承知しており、予知夢の中でゼーリエに語るでしょう。
ファルシュのモノローグ
ファルシュは柱の陰に潜んでヴァルロスとクライスの様子をうかがっています。ファルシュの焦りの原因はヴァルロスでした。
ファルシュはヴァルロスを「魔族の将軍と見紛った」「立ち振る舞いが人類のものじゃない」「化け物」と評して「私たちは一体何を相手にしようとしている」と畏怖しています。
ここはとても緊張感のある場面です。
私の場合、ファルシュを心配する気持ちと、ファルシュに感情移入してバレやしないかとドキドキする気持ちがありました。
最初は膝を折って体を屈めていたファルシュですが、ヴァルロスたちが通過するとお尻を床に付けて完全に座り込み、柱に体を預けています。これではいざという時に動けません。思考の対象は目の前のヴァルロスたちから離れてレーヴェに移っています。緊張が解けて油断が生じたのでしょうか。ファルシュの若さも感じます。それほどまでに緊張する場面だったということになるでしょう。
そして、レーヴェの面が割れました。この情報がゼンゼたちに渡れば、何か対応ができるでしょうか?
「嫌な予感」とは、前述したミーヌス関連や、未来視の魔法についてでしょう。
「あんなものを宮殿に入れる訳にはいかない」。このファルシュの理屈はわかりませんでした。魔導特務隊と影なる戦士で潰し合ってもらうのが好都合だと思いましたが…?
ヴァルロスとファルシュ
ヴァルロスがファルシュの存在に気付き、ファルシュが魔法を使おうとした瞬間、ヴァルロスがファルシュの腕を切り落とします。
ここはとても驚かされた場面で、前述した読者の「油断」を突くものだったと思います。
こういった生々しい残酷描写は第2巻15話「ドラート」以来ではないでしょうか。絵柄の変化の影響もあり、より、衝撃的な描写になっていると感じます。
ただ、フリーレンvs.ドラートでは切断されたドラートの手首をもっとしつこく描いています(5コマ)。(今の絵柄と比べるとフリーレンもドラートも少し幼く見えます)

vs.ドラートは、実質的には対魔族の初戦であり(クヴァール戦があるので厳密には違います)、フリーレンの魔族に対する容赦のなさを強調する意味があったと思います。(とは言え、フリーレンはアウラを殺す時は何度も躊躇した上に、自分の行為を直視できないのですが)
ですから、今回のファルシュvs.ヴァルロスの描写は振り返ってみれば意味のある描写なのだろうと思います。(このファルシュが実体なのか?という疑問は若干ありますが…)
こういった残酷描写からはユーベルvs.ブルグを思い出すかもしれませんが、マンガではこれだけです(第6巻54話)。胴体を真っ二つに切断しているのですが、とてもマンガ的な描写です。ここはユーベルの残酷さを強調したいシーンではないからでしょう。(ユーベルに殺すつもりがあったのかは疑問があります)

ヴァルロスはファルシュをすぐに殺すつもりはない様ですね。どうしてでしょう。影なる戦士である以上は正当な理由なく見逃すことはないはずです(第14巻133話)。情報が欲しいのでしょうか?

最後に、もしかすると今後言及するかもしれませんので、念のため押さえておきます。ファルシュが切断された腕はグラオザームと同じ右腕です。ちなみに、レーヴェのケガは右目、リヴァーレのケガも右目です。同一人物だと言いたいわけではなく、不思議な符合があるということです。もちろん、単なる偶然やミスリードの仕掛けである可能性が高いと思います。

まとめ
ファルシュが柱の陰に隠れてヴァルロスとクライスをやり過ごそうとする場面はとても緊張感がありました。私の場合、《葬送のフリーレン》でこれほど緊迫したエピソードはなかったですね。自分もファルシュと一緒に柱の陰に隠れているような気持ちがしました。
ヴァルロスの黒ずくめの鎧は、派手なところはないのですが不気味でかっこいいんですよね。
ヴァルロスとクライスの対話劇は、師弟関係がよく表れていて好きです。特に「もう誰もあんたのことなんて覚えちゃいねぇよ。覚えちゃいねぇんだ」の繰り返しは込み上げてくるものがあります。
とてもエモーショナルでおもしろいエピソードですが、他方で、具体的な説明はしないまま敵の強さを印象付けて超えるべきハードルを上げたエピソードだったと感じます。このエピソードで帝国編の背景がわかったか?というと、あまり新情報はなかったと思います。
第146話を読んで生じる期待
今回の第146話「人類最強の戦士」を読んで私が感じた期待・疑問は主に次のとおりです。
ファルシュはどうなる?(最後のコマ)
フリーレン一行はいつファルシュの所へ来る?
南側諸国(レーヴェとミーヌス)について知りたい(予知夢での皇帝の情報提供)
ゼーリエって何者なの?(ヴァルロスの問い)
ヴァルロスやクライスのことももっと知りたいですが、とりあえずは今一番ピンチのファルシュと、敵のレーヴェについて知りたいです。「ゼーリエって何者なの?」については、すぐにアンサーがあるとは思いませんが、帝国編の終盤で答えまたは手がかりが示されるでしょう。メインストーリーや世界観に深く関わる問いなので、忘れない様に書いておきました。
そうすると、次回でこの期待にストレートに応えてくれるなら、ファルシュとヴァルロスが腹の探り合いをしている所に、異変を察知したフリーレン一行(最後の登場は第143話)が急行するといった展開でしょうか?
予知夢の続きも見たいのですが今である必要を感じません。ユーベルたちの戦闘は睨み合い状態なのでしばらくペンディングできるでしょう。動き出せばすぐ決着しそうですが。戦闘が終わるまでは会場で大きな動きはないと思います。
おっと。細かい予想は予告が出てから(来週)にします。
おわりに
予告がでたら改めて予想してみようと思います。
《葬送のフリーレン》に関する記事は下記のマガジンにまとめています。
140本以上ありますが、とりあえず、初めての方にお勧めなのはこちらです。
これを読んだ上で、フランメ、ヒンメル、エーヴィヒなどで検索すると物語の全体像に関わる考察が出てきます。
おもしろかった記事には「スキ」していただけると励みになります。コメントもとても嬉しいです。《葬送のフリーレン》に関することでしたら、感想・質問など何でもどうぞ。
「週刊少年サンデー」の連載(最近は隔週)も追いかけて、感想・考察を書いていますので、よろしくお願いします。


