【連載小説】LOVERS #12 不完全の美を受け容れるために
前回のお話(11話):
社長命令で流行りの音楽の調査をすることになったリオンは、さくらを巻き込んで若者が多くいる街に繰り出した。街にあふれる音が雑音にしか聞こえないリオンは普段、ヘッドフォンで耳を閉ざしている。今回、意識的に耳を傾けてみると、あふれる音楽の変容ぶりに驚く。聞こえてきたのが、人の手で作られたものではなく、AIが生成した音楽だったからだ。そこには何の想いも感情も感じられず、リオンには薄っぺらに思えたが、どうやら人々はそれらに夢中らしい。
絵も同じで、いまやどこをみても安価で作れるAI画像であふれかえっている。人々の意識が、瞬時に作られ、提供されるデジタル物に向けさせられている現状を目の当たりにした二人は、消費されない、させない芸術作品作りをしようと心に決める。
本編:
30.<智篤>
天才肌のキーボーディスト、リオンがバンドを脱退する――。
確かにそれはサザン×BBにとってかなりの痛手である。しかし、セナだって、リオンほどではないにしろ、ピアノのセンスはある。人に訴えかける力もある。何しろ僕自身が彼女の弾き語りで口説き落とされた人間。その能力は、一般大衆にも十分通用すると思っている。
音村きょうだいは、僕らと一緒にやる前はブラックボックスという三人組で活動していた。エレキ弾きのユージン、キーボーディストのリオン、そして歌手のセナ。それぞれが最も得意とする楽器を武器にすることで成り立っていたバンド。だから彼女は、ピアノは弾けるがこれまで公の場では披露してこなかった。その必要がなかったからだ。
しかし、僕らとやるようになって、三人の立ち位置は変わってしまった。特にセナの居場所がなくなった。ボーカルの一人、と言うことにはなっているが、やはりサザン×BBのメインボーカルはレイちゃん。彼女が主役の時のセナは、ハモるか、盛り上げ役をするかしかない。
それをずっと心配していた僕は、今回、抜けるリオンの代わりに電子鍵盤を弾くと宣言したセナを応援したいと強く思ったのだ。
恋人だからじゃない。同じバンドの仲間として、ミュージシャンとして、彼女の前向きな姿勢に感動してのことだ。
ショータが、リオンの脱退による魅力欠如を理由にバンドの解散を提案してきたときに噛みついたのは、そういうわけだ。お前はセナの何を見てきたのだ? そう言ってやりたかった。
――ほう? セナとは距離を置くものとばかり思っていたのに、急にどうした?
もう一人の僕が口を開き始める。
――ショータが言っていたように、強制的に会えない環境を作り出してしまえば、君が悩み苦しむこともなくなるのに。
(僕はセナが嫌いなわけじゃない。僕だって彼女との付き合い方を模索している。)
――まるごと愛してやることは出来ないと言った男が? セナの居場所を守るなら、そして恋人であり続けるなら、やっぱり肉体的にも繋がるべきだ。
(……僕は、常識を超える。超えてみせる。)
――常識を超える……。聞こえはいいが、果たして本当にそんなことが出来るのかな?
(……少なくとも、お前を黙らせることは出来ると思ってる。)
――そいつは楽しみだ。
全くそう思っていないといった口調で、もう一人の僕は笑った。
◇◇◇
二人でユニットを組む、という方向で話がまとまったとき、リオンとさくらは和解した。だが、それから数日が経過しても二人はまだ我が家にいる。最初は嫌がっていた共同生活だが、いまは、さらなる成長を目的とし、もう少しだけここにいようと決めたらしい。
(恋人同士でなくても、若い二人はああやって互いの芸術性を認め合い、成長しようとしている……。)
リオンとさくらのためを思って提案した共同生活だったが、僕にとっても彼らとの暮らしは大いに刺激となっている。
そう、僕がセナと目指したいのはまさに、リオンとさくらのような関係。年若い彼らでも精神的にのみ繋がることが出来るなら、僕らにだって可能なはずなのだ。
――あの二人は特別だよ、特別。
頭の中の声が、僕らと彼らの違いを説明し出す。
――リオンの恋人は、自身が奏でるピアノの音。だから現実の恋愛には関心がないのさ。さくらの方も、リオンの天才性を認めて彼を恋愛対象としていない。だからこそ、精神的な繋がりが成り立っている。でも、君たちをはじめとする男女はその境地に至れない。狂ったように互いの身体を求めるのが普通だ。もちろんそれは人として当然の行為だが、特別な二人をお手本にするなら、相応の努力をしなければならない。君たちに、その努力が出来るかな?
(……時間はたっぷりある。僕もセナも、まだ諦めちゃいない。)
◇◇◇
リオンは我が家にいる間、新ユニット結成を認めてもらうための試練をこなす傍ら、セナにキーボーディストの心得や演奏の仕方を教えることにしたようだ。折しもリオンの相棒である電子鍵盤が我が家にあること、そして、セナが我が家にほど近い場所に住む兄、ユージン宅で厄介になっていることもあり、とりあえず今はここで……、ということになったらしい。
邪魔をしては悪いと思いつつ、僕も練習がしたいので、音楽スタジオの隅で彼らのやりとりを聴きながらギターを爪弾いている。
リオンの指示でセナが既存の曲を弾く。僕にはよく弾けているように聞こえたが、リオンは満足できなかったようだ。
「今までのおれだったら、セナの今の演奏に丸を付けただろう。でも今後、おれの代わりにサザン×BBのキーボーディストを名乗るなら、今のじゃダメ。そんなんじゃ、AIに取って代わられちまうぜ?」
「えー? じゃあどうすればいいのよ?」
「んじゃ、分かった。今からおれが実演するから、よく見て聴いて、感覚を掴んでよ。あ、兄さん。ちょっと協力してくれる?」
「えっ」
いきなり声を掛けられ、戸惑う。
「セナに教えるためだ。ちょっとだけ時間をくれよ。いいだろう?」
嫌がっていると思われたのか、リオンが念を押してきた。
「……あぁ、もちろん協力しよう。しかし、僕だけでいいのか? どうせ音を合わせるなら、全員揃っての方が雰囲氣は出ると思うが」
「まぁ、そうだけど。とりあえず最初の一回は兄さんだけでいいかな」
それを聴いて、リオンの意図が分かった。彼はセナのために、僕だけに声を掛けたのだ。
ひょっとすると、リオンは自身のピアノ演奏で僕の意識改革を図ろうと……セナに対する考えを変えさせようと目論んでいるのかもしれない。
「リオンが何を思ってそう言ったのかは敢えて聞かないが、お前の演奏は何度も聞いている。僕の演奏の仕方は何一つ変わらないよ」
「どうかな? 今日のおれは、ひと味違うぜ?」
何か、秘策があるらしい。リオンはにやりと笑うと、早速電子鍵盤の前に立った。
「そうだな、ここはやっぱり『二人のハーモニー』にしよう。兄さん、それでいい?」
「ああ、何でも構わない」
僕が言うと、リオンは鍵盤に指を置き、睨むように僕を見た。
「二人のハーモニー」は、ピアノ演奏に始まり、ピアノ演奏で終わる。リオンの技巧の高さをアピールするのに相応しい曲と言えよう。いつものイントロを思い描いて、待つ。だが、聞こえてきたのは別の旋律だった。
(即興演奏、だと……?)
驚きもつかの間、いつものイントロに入り、僕のパートに繋がる。
(一音の狂いも遅れもなく完璧に再現してくるリオンが……。一体、何があった……?)
ひと味違う、と言ったのはこういうことか。しかし……。
リオンの秘策に戸惑いながらの演奏。無論平然としてはいられず、何度も音が乱れた。僕としては全くもって不完全な演奏を披露する格好となり、酷く悔しい思いを強いられた。
演奏を終えるやいなや、すぐに尋ねる。
「どういうことだ……。なぜ、即興演奏から始めた……?」
「不完全の美。おれは、これからそれを目指す。だからセナにも……そして兄さんにもその美学を追究してもらいたいと思ってる」
「不完全の美、だと……?」
「これは、おれに対する社長命令なんだ。でも、これからも音楽を続けていくなら、おれだけじゃなくてみんなも意識した方が絶対にいいと思うんだ。消費されないためにも」
「……いくら社長命令とは言え、あの完璧主義のリオンが、こんなに急に考えを変えるはずがない。……さくらだな? お前の意識を変えたのは」
僕の問いに、リオンは嬉しそうに笑い、頷いた。
「おれ、少しずつだけど、分かってきたんだ。さくらの即興画を間近で見たり、絵に込めた想いを何度も聞くうちに。
……おれは、自分の音楽を認めてもらうには、トップアーティストになるしかないと思ってた。っていうか、その発想しかなかった。でも、さくらと喧嘩して、一緒にここで生活するようになって、自分が本当に表現したい音は何か、初めて真剣に考えたんだ。その結果、楽譜通りに完璧に弾くんじゃなくて、その時の氣分や場の空氣を感じ取って、二度と再現出来ない、一回限りの即興演奏をするほうが、おれには合ってるんじゃないか、そういう考えに至った。
……兄さんたちには、おれの考えは理解してもらえないかもしれない。でも、おれはその方向でやってみようと思う。まだ二十二歳だし、表現力も未熟だけど、まぁ、それも今のおれらしさ、強みと思えばいいかなって」
「…………」
さくらとの生活が、こんなにも彼を成長させたというのか……。
「さくらはお前に何を教えた……? なぜそんなにも急に達観できた……?」
焦りから、年甲斐もなく若年のリオンに問うた。しかしリオンは笑っている。
「兄さんも人間観察してみるといいよ。人は完璧を求めたがるけど、完璧が最も優れているわけじゃないってことに氣づけたら、きっと……」
「きっと……?」
「セナの氣持ちも理解してやれると思うよ」
そう言ったリオンが、急に大人びて見えた。
31.<セナ>
ただ弾くだけなら、ピアノ経験のあるアタシにも務まるんじゃないか。そう思っていたが、甘かった。リオンから要求されたのは、状況に応じて瞬時に弾き方を変えるという、高度な技術。実際、リオンが即興演奏する様を見て、自分とリオンとの差を痛感させられたアタシは、兄さまとは別の理由で酷く落ち込んだ。
*
電子鍵盤のレッスンを終え、兄のいる部屋に戻ったアタシは、ため息を吐いてソファに身を預けた。
「電子鍵盤を弾くのなんて楽勝だと思ってたのに……。お兄ちゃんがエレキ弾きからドラマーに一時、転向したときの苦労が今頃分かったよ」
「やっと分かったか。オレ、バンドのために思い切った決断をしたつもりだったけど、やっぱり向き不向きってあるんだなって、あの時は思ったものだよ。だから今回、セナがキーボーディストに挑戦するって聞いて、実はちょっと心配してるんだ。セナはずっと歌ってきた人間だからな」
「お兄ちゃんは何でもお見通しなんだね……。アタシ、リオンの要求が高すぎて、早速心が折れそうになってるもん。いくら兄さまとうまくやってくためとはいえ、頑張れるかなって……」
「そのことなんだけど……」
兄はいったん言葉を句切り、アタシの隣に腰掛けてから言いにくそうに口を開く。
「……セナ。ブラックボックスに戻らないか? リオンはいないけど、ギタリストとボーカリストって組み合わせなら、二人でもやってける。歌に専念すれば、セナだってこれまで通り実力を発揮できるし、オレもやりやすい。どうだろう?」
思いがけない提案に、前のめりになる。
「……サザン×BBをやめるってこと?」
「元々、オレが無理矢理セナとリオンを巻き込んで結成にこぎ着けたバンドだ。でも、ソリが合わないんじゃ、一緒にやっててもお互いにしんどいだけ。リオンが抜けるこのタイミングで、オレらも今後の振る舞いについて考えてもいいんじゃないかと」
「…………」
「智さんとの関係を模索してるのは知ってる。でも、あの人に固執して、苦しみながら電子鍵盤を弾くくらいなら、元通り、別々のバンドで活動してさ。智さんとは、距離を置いて付き合うのもありじゃないかと、オレは思ってるんだけど」
兄なりに、アタシのことを心配してくれているのが伝わってきた。しかし、すぐに返事をすることが出来ずにうつむく。
「必死に練習すりゃあ、セナだってきっとリオンの要求通りに弾くことは出来ると思うよ。だけど、そうする理由が智さんとの関係維持なら、オレはやめといた方がいいと思う。それって、ちっともセナのためにならないもん」
続く兄の言葉に、ますます言葉を失った。全く、その通りだと思うからだ。
(アタシは兄さまのそばにいたいからバンドに残るの? それとも、兄さまと二人で作りあげたい世界があるからそうするの……?)
その答えにたどり着きたくて今回、キーボーディストに名乗りを上げたわけだが、いきなり出鼻をくじかれた格好。ますます氣分が落ち込んだ。
「そういえば、リオンはさっき、なんであんなことを言ったんだろう……?」
「あんなこと?」
つぶやきに応答され、慌てて説明する。
「あの子は兄さまにこう言ったの。完璧が最も優れているわけじゃないってことに氣付けば、アタシの氣持ちも理解できるだろうって。普段なら、遠回しにいった言葉の真意も手に取るように分かる。だけど、今回ばかりはさっぱり理解できなくて……」
「そっか……。リオンがそんなことを……」
「お兄ちゃんには、分かる……?」
「いいや……。そんなに氣になるなら、ちゃんと聞いてきたら? それが一番確実だ」
兄の言葉が優しく心に響く。アタシは小さく頷いた。
「アタシ、行ってくる。そして、あいつの考えをちゃんと確かめてくる」
「ああ、そうしておいで。オレはここでお前の帰りを待ってるから」
ソファから立ち上がり、玄関に向かうアタシを、兄は静かに見送ってくれた。
*
リオンはまだ、兄さまたちの家で厄介になっている。もしかしたら、ユニット結成の話がでたタイミングでさくらさんと恋仲になったのでは? と邪推もしたが、どうやら純粋に、自己成長のためにそうしているらしい。
(まさか、あの努力嫌いのリオンがねぇ……。)
幼い頃からピアノを一緒に習ってきたリオンだが、アタシが必死になってやっと弾けるような曲を何の苦もなく弾きこなしてしまうので、随分嫉妬してきたものだ。かくいうリオンの方は、言われたとおりにやればすぐに出来てしまうので、どんどんアタシを置いて先に進んでしまい、氣付けばピアノの先生も顔負けの演奏をそつなくこなすまでになっていた。
そんな先生は、リオンの天才性を認め、名だたる指導者に声を掛けてはリオンを育てようとした。ただ、リオン自身は上からあれこれ言われるのが嫌いで、自由に弾かせろ、と言ってはいつも脱走していた。それでも捕まってしまうと、先生が与えたミッションをあっさりクリアして、やっぱりレッスンを抜け出した。
こうして思い返してみれば、リオンは昔から自由に弾いていた。だけど、兄からバンドを組まないかと誘われてブラックボックスを結成後は、自分たちで作曲、演奏できる環境だったから、一ピアニストとしてやっていく、なんて発想には至らなかったのだろう。
ある種、兄に頼り切りの環境が、元々備わっていたリオンの才能を腐らせる原因になっていたとは皮肉なことだ。
しかし、さくらさんという、芸術性を高め合えるパートナーを得たリオンは、再びその才能を解放しようとしている。
*
兄さまたちの家に向かうと、なぜかリオンは庭にいて、アタシの姿を見つけるなり手を挙げた。
「戻ってくる氣がしたんだ」
「さすがね」
「話したいことがあるんだろう?」
「うん。……ここで話せる?」
「ああ。みんなは部屋にいるから、どんなことでも話せる」
庭に置かれた椅子に腰掛けたアタシたちは、虫の音に耳を傾けながら語らう。
「なんであの時兄さまに、完璧を求めすぎるな、的なことを言ったの? 急に即興演奏までするし……。アタシのためを思って?」
「兄さんの変な美学のせいで、双子の姉が苦しんでるのが分かるからさ。セナが苦しんでると、おれまで苦しくなる。だから、おれの演奏で兄さんの意識を変えることが出来るならやってみようと、そう思ったわけ」
「どうして即興演奏が兄さまの意識を変えると?」
「兄さんは理想が高すぎるんだよ。おれの演奏にも、密かに完璧性を求めているのが伝わってきてたし。ある意味、職人氣質なんだろうけど、そのゆとりのなさ、こだわりってのは、やっぱり面白みに欠ける。まぁ、これまでずっと、おれがその状態だったから、お前が言うなよって突っ込まれそうだけど、それは置いとくとして……」
「そうよ、リオン自身が完璧を追い求めていたはず。なのになぜ、急に変わっちゃったの?」
最大の疑問を投げかけると、リオンは遠くの星空に目を遣った。
「先日、さくらと街に出て、流行りの音楽を聴いて来たんだ。その時に、悟った。これからは、無駄のない演奏ではAIに勝てないって。いや、勝負する氣はさらさらないけど、大衆はもう既に、AIで生成された音楽で満足出来る程度の感性しか持ち合わせていない。……それに氣付いちゃったとき、ようやく腑に落ちたんだ。さくらが魂の籠もった作品にこだわる理由が。そして、社長がおれに、ちまたで流行る音楽を聴いてこいと命じた理由も。
これからの時代、おれたち芸術家に求められるもの。それは、芸術作品を通して人々の心を潤すこと、そして人と人とを繋ぐこと。これしかないよ。
ライブならまだ、これまで通りの演奏でも通用するかもしれない。だけど、スピーカーやイヤホン越しに聴く音楽だったら、もはやAIが作ったので充分って人が、これからどんどん増えてくるはず。
さくら曰く、AI生成物はものの数秒でそれっぽいものを生み出せるという。しかも自分好みのものを、無限に。今はほら、自分に興味がありそうなものをAIが勧めてくれる時代だろう? そういうのに慣れきってる人からすれば、もはや既存のアーティストの音楽や絵は興味の対象外なんだよ。そんな中でおれらが生き残っていくにはどうすればいいか……」
「……即興演奏。それが、リオンの出した答えなんだね?」
「そゆこと」
自身の考えを語りきったリオンは満足そうにアタシの顔を見た。
「で、ここからがセナの問いに対する答えになるけど、兄さんが目指してるやつ――世界征服という名の世界平和――があるじゃん? あれって言い方変えると、自分たちの音楽で世界を変えるってことじゃん。それ自体は、おれも賛成なんだ。ただ、音楽に乗せて歌詞に込めた想いを聞かせるのって、どこか押しつけがましさもある氣がしてて……。だから、今後兄さんやセナには、こっちが思い描く世界観を押しつける音楽じゃなくて、想像の余地を残した音楽を目指して欲しいんだ」
「想像の余地を残した音楽……」
「うん。ちなみに、おれとさくらは歌詞なしに、絵画のような情景が浮かぶ音楽を聴かせ、魅せようと考えてる。そしてそれは、即興でしか生み出せない」
リオンの表情からは強い自信が窺えた。確かにリオンの言うとおりだろう。しかし……。
「……即興で人々を魅了するためには高い技術やセンスが必要。誰にでも出来ることじゃないよ」
「いや、出来る。むしろ、今の習熟レベルでしか表現できないもの。それ自体が芸術作品として価値がある、とおれは思う」
「…………!」
リオンの言葉が胸を射貫いた。彼に対して抱いていたコンプレックス、嫉妬心が一氣に溶けていくのを感じた。
「そっか……。アタシは、リオンのピアノ演奏の全てに完璧性をみて劣等感を抱いてたけど、完璧じゃない演奏も個性的でいい、と。……あ! そういうことね? リオンの言っていた、不完全の美っていうのは!」
「やっと分かってくれた? ……って言っても、おれもそれが分かったのはつい最近なんだけどね」
リオンはペロリと舌を出した。
「ってことで、兄さんに不完全の美を説いたのは、セナの不完全性を受け容れてもらいたかったから。芸術作品に限らず、人間相手でもおんなじだと思うから」
「リオン……」
「おれ、さくらとはもう二度と分かり合えないかもって思ったこともあるけど、ほんのちょっと視点を変えたらちゃんと分かり合えたよ。だからセナも、兄さんとは必ず分かり合えるとおれは信じてる。あの人のこと、好きなんだろう?」
「うん。アタシ、兄さまのこと、大好き」
「だったら、頑張れよ。おれも、兄さんにはもっともっと即興演奏の魅力を伝えていくつもり。一緒に、あのカチカチの頭を柔らかくしちまおうぜ」
アタシを励ますように、リオンが肩に優しく触れた。やる氣と自信が身体の奥底から湧き上がってくるのを感じた。
✨続きはこちら(#13)から読めます✨
※1:見出し画像は、生成AIで作成したものを加工して使用しています。
※※補足※※
今回は、AI生成物について、かなり批判的な内容となっていますが、AI生成物のすべてを否定するものではありません。私個人の考えは、
・AI生成物はあくまでも素材。人々の興味を引く材料。
・対する芸術作品は、人が時間をかけて作り込み、命を吹き込んだ、分身のようなもの。
ですので、私にとってトップの「見出し画像」も「AI音楽」も、あくまで読者様にわかりやすさを提供する「材料」。作品とは考えておりません。いろうたの作品と呼べるものは「小説の本文」と「作詞(詩)」です。何卒ご留意ください。
💖本日も最後まで読んでくださり、ありがとうございます(^-^)💖
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