闇 634(ゾク池袋のちか編)
闇 634(ゾク池袋のちか編)

2026/08/08 sat
※ダイヤのカットをするのが商業用小説。俺は原石をみんなに見てほしいと掘り続けているのだろう。
前回の章

二千二十四年二月一日、木曜日赤口。
池袋のキャバ嬢ちかからは、毎日のように来るLINE。
もう高い店には行きたくないので、全然顔を出していなかったが、やり取りだけは継続していた。
この子もこれまで数えるぐらいしか、店には顔を出していないのに、よくもまあこんなに続いているものだ。
真夜中に届くメッセージ。
リオとも上手くいかず、女関係がほとんど無しの俺にとって、せめて異性との接触を手放したくなかったのだろう。
未だ中学時代の同級生である神田と俺が、仲いいままだと思っているちか。
やはり以前一度しか一緒に行っていないが、三十分二万五千円の手相占いを視てもらった帰りに寄った彼女の店。
あの時の印象が強いのだろう。
あの時もあの馬鹿が中々帰ろうとせずに、二十万円の金を吐き出した。
あいつ御用達の店に行くのが嫌で、ちかの店を選んだ俺だが、結局使う金は変わらなかったという皮肉。
俺はあいつとの、これまでの酷さの愚痴をこぼす。
『うん、ほとんど真っ直ぐ帰ってゆっくり風呂入って、身体休めてはいるからね。いや、中学の時は俺のほうがだらしなかったと思うよ。仕事成功して、今誰も文句言える人間が、俺くらいしかいないからでしょ。作品なら、ここで全部読めるようにはしているよ。 岩上智一郎』
俺は新宿クレシェンドを始めとするブログへ過去の作品をアップしたURLをちかに教えた。
そんな最中、ちかからキャバクラを辞めるという連絡を受ける。
『それならいいけど…、働きすぎて身体無理せんでね。神田さんのはストレスから来てるやね。曝け出せる人が岩上さんしかおらんで余計に…。ありがとう! 一部目しか読んでないで時間ある時に読ませていただきます。今かよ的な告知なんやけどさ…、三月三日の金曜と四日の土曜にバースデーイベントやることになりまして。最後のバースデーイベントなので、顔見に来て頂けたら嬉しいです。そして、実は三月末でキャバクラを卒業致します。岩上さんとは三年?の付き合いやし、辞めてからも仲良くして頂けると嬉しいです。最後ドレス姿見て貰えたら嬉しいなあ…。 ちか』

あのちかが、とうとうキャバ嬢を辞めるのか。
彼女は三年と言葉を濁していたが、最初に出会ったのは二千二十年…、まだ酒井さんが脱税で捕まる前の時だから、四年間。
但し俺が二千二十一年の心筋梗塞から一年間、ちかと連絡を取るのを辞めた。
それを差し引いての年数を言っているのだろう。
『その状況で生活荒されるのはさすがに辛いね。最近はちょっと冷たくしてるよ。明日出ればやっと休みだから大丈夫だよ、ありがとう。俺の分身というか息子みたいなもんだから、作品読んでくれるってすごい嬉しい! 辞めるんだ? 次はもう決めてるの? ちかが今後も何て、光栄です。 岩上智一郎』
神田とはもうちょっとどころか、生涯絶縁だけどね。
まあ詳しく話したらキリがないから、このぐらいのニュアンスがちょうどいいだろう。
そもそもあの時、ちかの店へ行っていなければ、こうして再び繋がる事もなかった。
『岩上さんの立場も考えてほしいよね。それは良かった…、お休みは何する予定なの?読みたくても読めへん人がいる中、私だけいいんかなあとは思うんやけどね。それが正直次はまだ決めてなくて…。二十九歳の誕生日月で辞めるってのだけ決めてて。今まで仕事詰めやったから自分のこと考える時間にしようかなと…。末長く仲良くしてください。 ちか』

この子の言葉は、正直すべては信用できない。
何故なら俺が行った時、さり気なく一杯五千円のドリンクを頼むような子だから……。
『何もせずただただゆっくり休むくらいかな。出版社と揉めて以来、本にしてないでしょ。そこそこ読みたいって声あったから、あのページ作ったの。まあゆっくり過ごして自身を見直すのも大切な時間だと思う。俺なんかと仲良くしたところで、何の特も無いのに。 岩上智一郎』
明日というか朝に備えて、ゆっくり眠る。
インカジ『レディ』へ出勤すると、暇だったのでグーグルマップでの『河本マンション』のクチコミを共有してみた。
そしてあの光熱費ぼったくりマンションの口コミをフェイスブックでも掲載する。
今まで住んだ中で最低のマンション。
光熱費が後付で親メーター方式により、大家からの手書き請求書で来る。
一人暮らしなのに光熱費3万円超え、酷い時は4万円超えます。
内訳見ると水道代二ヶ月に一度でなく、毎月8000円の請求。
手書き請求書来て(ドアに貼られる)2、3日払わないと、すぐに払えの催促。
大家がまったく話にならないので、消費者センター、弁護士等とにかく色々相談しました。
弁護士曰く、この手書き請求書では法的根拠がなく支払う必要性がない。
俺は1年以上に渡り、約毎月2万5000円くらい光熱費を多く取られていたわけです。
合計20〜30万くらいかな。
大家サイドには何度も話しましたが、『うちはこの立地にしては家賃を安く還元している。だから水道代高いのはしょうがない』→「この1年ちょっとで払った光熱費の金額を出してくれ」→『取っといてないから分からない』…と、とにかくいい加減。
風呂場も綺麗にしているはずが、よくゴキブリ出ます。
排水溝から出てくるんでしょうね。
そういえばでったんって、川越に来ているのかな?
『こっち来てるなら、事前に連絡ちょうだいよ。 岩上智一郎』
早速彼から電話が掛かってくる。
法事やら仕事の用事で色々多忙みたいだが、数時間なら時間が取れるらしい。
小学時代の九州に引っ越した同級生でったんが、急遽こっちに来たのだ。
久しぶりに俺も時間を作る事にした。

そんな最中、自称俳優若菜龍平からLINEが届く。
内容は、河本マンション大家の不法投棄嫌がらせ写真の報告だった。
自称俳優マンションの栄福不動産がしたのか、龍平の叔父がしたのかは分からないが、俺に一言の断りもなく、郵便ポストから部屋の表札まですべてに
『岩上智一郎』と勝手に表札を出した自称俳優ファミリー陣営。
そのお陰で河本マンション大家にすぐ居場所がバレて、嫌がらせでポストにゴミを置かれた事案。
ちなみに一月三十一日分まで河本マンションには家賃を払ってある状態。
部屋を引き払った翌日、早速このような嫌がらせをするような性格の持ち主のメガネザル大家。
人の郵便ポストへゴミ袋をぶら下げていくなど、頭に蛆虫でも湧いているのだろう。
『キチガイ大家からの仕返しですか? 岩上智一郎』
『ですね。住居及び建造物侵入、そして営業妨害、廃棄物投棄で被害届出す旨言ってやろうと思います。 若菜龍平』

コイツ、小難しい事を言っているだけで、実際に行動するのは真面目に働いているケバブ屋の百十番通報ぐらいだからな……。
『若菜さん、今日小学校時代の九州引っ越した同級生がこっち来てて、マンションへ戻るの夕方になります。 岩上智一郎』
『了解です。 若菜龍平』

でったんと高田馬場で合流。
今日は別件の用事があるようで、三時間ほど食事をしながら別れる。
これから大久保へ戻って、若菜から河本マンションが何をしたのか聞き込みをしなくては。
『戻りました、居ますか? 岩上智一郎』
『居ますよ。 若菜龍平』
『二階に行きますね。 岩上智一郎』
『了解です。 若菜龍平』

郵便ポストにぶら下げられたままのゴミ袋。
龍平の話によると、彼の母親に河本マンションメガネザル大家が「岩バミさん、そっちへ住んでいるのか」と聞いてきたらしい。
しかも左手には缶の入ったゴミ袋を持っていたようだ。
表札があるので俺の場所はすぐ分かってしまう。
そこへゴミをぶら下げて帰るキチガイ大家。
「岩上さん、見栄えも良くないのでこれは捨てましょう」
「いや、そのままでいいですよ。あのババアが嫌がらせでやったんですよね? そのままにしておきますよ」
俺はそのゴミを放置しておけばいいと答える。
しかし処分しないと外聞が悪いと言い出す自称俳優。
ゴミ袋を捨てようとしたから、俺が止めて「だったら元あった場所へそのまま返す」と取り上げ河本マンションのゴミ箱へ捨てた。
「岩上さん…、あのブログ記事なんですけど」
「河本マンションのをまとめた記事ですよね? それが何か?」
龍平は『【1年ちょっとで百数十万の支出】道挟んで斜め向かいのマンションへ引っ越し』の記事で使われた写真に対し、このマンションの三階から撮影したというのが分かるので、使用を控えてほしいと言い出す。
さっきまで営業妨害、廃棄物投棄で被害届を出すとか言っていた男が、今さら何を抜かしているのだろうか?
自分たちまで巻き込まれるのは嫌だというのだけは分かる。
正真正銘の屑だな。
まあコイツには元々何一つ期待などしていないから別にいいか。
「岩上さん、一杯行きますか?」
「いえ、やらなきゃいけない事がたくさんありますので」
こんな無職のタカり魔と酒を飲みに行くなんて、真っ平ごめんこうむりたい。
さて、お馬鹿な河本マンション大家へ月に変わっておしおきよ。
俺はフェイスブックへ若菜の写真をそのまま載せて投稿する事にする。
俳優の若菜さんから連絡来て、俺の新しいマンションのポストにこんなものがと。

住居及び建造物侵入、そして営業妨害、廃棄物投棄で被害届出す旨言ってやろうと思います…と若菜さんサイド。
向かいの河本マンション大家の嫌がらせ……、頭悪いですね。
このフェイスブックの投稿には、すぐコメントがついた。
『頭おかしいですね。 いしかわまさゆき』
『キチガイなんですよ。小説じゃ、キチガイって使えないのでこの場を借りて何度も言います。前のマンションのキチガイ大家。 岩上智一郎』
俺も小説なんて十三年ちゃんと書いていないくせに、変なところで見栄っ張りだな。
『最低すぎます。ゴキブリ以下ですね! IaMerry』
『周りからは訴訟起こしたら? 協力しますよとは言われてますが、少しゆっくりして落ち着いてから考えていこうかなと。 岩上智一郎』
ぶっちゃけ河本マンションとは、本当に関わり合いになりたくなかった。
法律で許されるのなら、顔面に思い切りエルボーを叩き込んで終わりにしたい。
『酷いまるで子供ですね。今は挑発に乗ってはダメですよ。しっかり証拠を記録しましょう。 成田ゆかり』
『とりあえず今までの嫌がらせ、急な引っ越しで疲れ溜まっていたので、今はゆっくり休むようにしています。入浴剤三千円くらいの買って、一日何回も風呂入っています。前のマンションより光熱費いっちゃうかも。 岩上智一郎』
『自分が納得いくカタチでの光熱費ならばいいですよね。入浴剤めちゃお高いの使ってるんですねぇ。あたしも冬はなるべく欠かさず使いたい人なんですが、岩上さん何かおすすめの入浴剤ありますか? あたしの探し続けてたどり着いた入浴剤ありまーす。 成田ゆかり』

『今度試してみます! 俺が今使っているのはクナイプ バスソルトユズ&ジンジャーの香り850g。 岩上智一郎』
『ネットのほうが安いですね。俺が近所の薬局で買ったら二千円後半したのに。早速買ってみました 岩上智一郎』
この子も一回こっちへ遊びに来ないかな?
一度ぐらい抱いてみたい。
『このシリーズ! 高いですね。バスソルトもたまに、浄化したい時使いますが、コストコで買った天然粗塩ソルトです。コスパはいいですが、ソルトのみです。ジンジャーは体も温まりますね。音素は香りで癒されて、温まりツルツルになりますよ。あたしのおすすめは白。娘は黒みたいです。是非使ってみてくださーい。感想まってます。 成田ゆかり』

『これがコストコのバスソルトです。なかなか溶けにくいですがね。 成田ゆかり』
『ゆっくり浸かるので問題ないです。 岩上智一郎』
あー、猛烈に女を抱きたくなってきた。
俺は夜になると洗体エステのラブリーハートへ行き、リオを抱いてきた。
「プレゼント、何故持ってこない?」
「仕事帰りだったんだよ。今度な」
「早く欲しいよ、プレゼント…、あっ……」
面倒臭いので一緒に住む話もプレゼントの事も話さず、黙々と腰を動かして精子をぶっ掛けて帰る。
この中国人女は、金を払ってセックスするだけの女。
ちかのような女は連絡のやり取りをしても、絶対に俺が抱ける事はないだろう。
二千二十四年二月二日、金曜日先勝。
夜になり、ちかからのLINEが届く。
昨日抱いたばかりのリオの身体の感触を思い出しつつ、ちかの裸を連想した。
『そやんね、他の方も見れてるのね! それはなんか安心した。ニから三ヶ月ニートしてやりたい事見つけたいな。岩上さんから学んじゃってることは多々ある。 ちか』
『ゆっくりのんびり過ごす事も人生には必要だよね。いい転換期になる事を祈ります。もう書かなくなって十数年の作家に興味持つ人間なんて、ほとんどいないよ。俺から学ぶものなんて何も無いよ。ロクな知識にしかならないよ。 岩上智一郎』
酷く自虐的な気分になる。
彼女の文面が心の底から言っているのなら本当に嬉しいが、これは明らかに違う。
営業トークで俺を気持ち良くさせる為だけの言葉。
『ありがとう、仕事詰やったで、色んなところ行きたいのもある。でもさ、身近に一人いたら全国に千人はいると思うよ。そんなことないよ! 今まで色んな知識貰ってきたもん ちか』
『ちかは年齢的にも一番いい時期だと思うから、思うまま流れに沿って生きてみるのもいいと思うよ。もう応援してる読者なんていないでしょ。賞取った後、あまりにうるさいから「別におまらえの為に小説書いてるわけじゃねえ!」ってハッキリ言っちゃってるし。ちかはね、俺を買いかぶり過ぎなの。五十年以上生きて、結果も何も出せずに燻っているのが俺なの。 岩上智一郎』
『ありがとう…、人生ターニングポイントかなとも思う。この二年から三年かなり葛藤して、結局答え見つかってないんやけどね。そゆ媚びてない所も好きって読者絶対いるよ…! 金稼ぐために書いてるわけじゃないんや、この人はってなるもん。それは色んな弊害もあったやん? 総じて凄い人やなって私は思うよ。 ちか』
『人生なんて結局のところなるようにしかならないから、流れをどう受け止めながら生きていくかってだけのような気がするんだよね。例えば俺がプロのリング立ちました→ 左肘壊しました→ 小説書いて賞取りました→ でも印税入っこなくて仕事せざるえませんでした。俺もどうしたらいいのか答え見つかってないもん。また向き合って作品書いていかないと、俺は生きててもあまり価値が無いと思うんだよね。そう言いながら何もせず生きてきちゃったけど。失敗したなあと思う事振り返ると、やっぱり自身の甘さというか隙もかなり原因にあるんだよね。この年になって自覚できたのが、俺は本当に馬鹿だなあという事くらいで。 岩上智一郎』
『確かにそれは岩上さんの選択でそうなったわけじゃないもんね…。運命をどう受け入れるかって所なんかな…。価値なくないよ! 小説は書きたくなったら続き描いて欲しいし。岩上さんにしか描けん! それよくゆうけど、ほんまバカじゃないよ。学べるところが沢山あって人間の厚みがある人。 ちか』
人間的厚み?
こんな俺のどこが?
本当にそう思うなら今すぐ俺のところへ来い。
おまえの服を脱がして、朝までたっぷり可愛がってやるよ。
『自分が選択したものが、後々結果になるけど、どんな風になろうと全部引っくるめて受け入れるって事かな。ありがとう、また踏ん張ってやらないとね。俺は自己嫌悪の塊みたいなものだよ。参考になるものなんて何も無いしね。 岩上智一郎』
『なるほど、その選択をしたのは自分やから全部受け入れるってことか…。描きたい!と思った時にね。自己嫌悪とゆうか、自分のことを自画自賛しないからこそ厚みがあるんじゃないかなあ…? ちか』
『いい結果でも悪い結果でも、すべて自分で選んだからと思えば何とか受けれるでしょ。 岩上智一郎』
この女を一度抱いてみたかった。
一通りの会話を終えると、ちかの裸を想像しながらマスターベーションをした。
二千二十四年二月三日、土曜日友引。
鬼は外、福は内の節分がやってきた。
でも独身で一人身の俺には何の関係もないイベントだ。
自称俳優マンションへ引っ越して、一週間ほど過ぎた。
もう耳障りなやまかしい中国語も聞こえてこない。
爽快な目覚めの中、身体が妙に調子いい感じがした。
風水?
または環境を変えたせい?
今年に入って本当に体調悪く、特に右腕が俗に言う四十肩状態になり、腕を上げた状況で動かすと激痛が走っていた。
ほぼ毎日接骨院に行っても痛みはまったく解消されないでいる。
若菜が引っ越しを手伝った日、新居のほうで寝ていて寝ぼけながら右腕を動かしていると、靭帯のなる音が……。
別の角度から動かして、右腕を回したり伸ばしたりしていると、靭帯がバキバキ音を立てる。
数回タイマッサージへ行き、強めに肩背中をやってもらうと、更に動きが良くなった。
自身で右腕をストレッチしたり、動かしていると、痛みの箇所が理解できる。
徐々にだけど、状況が良くなっているのが自覚できた。
歳のせいか、前のマンションの悪質な環境によるストレスのせいか……。
とにかく引っ越して環境を変えたのは自身にとってプラスだと感じた。
定期券を購入する時、大久保から新宿も、東中野から新宿も、一駅違いだけど同じ値段な事に気付く。

早速東中野まで行き、ギンザ通りを真っ直ぐ行ってセブンイレブン超えた左手にある健康浴泉へ向かう。

帰り道、ギンザ通り沿いにある洋食屋キッチンドナルドへ寄ってみた。
横浜の洋食屋イタリーノを思い出させる赤いチェックのテーブルシート。

またあそこへ食べに行きたいなと思いつつ、メニューを眺める。

牛肉のミニッツステーキを注文。

少し物足りなかったので、大久保帰る前にでんがなの串カツへ寄る。

衣を片側しかつけてない串カツなので、何とて抜きな店なのだろうと感じた。
この店へ来る事は二度とないだろう。
リオの店へ寄ろうとして、もう少し節制しないとと自身を戒める。
部屋に呼んで簡単に抱ける女いないかな……。
ふと、一人の女を思い出す。
一年前くらいに出会った池袋の人妻里佳。
こんな女日照りになるぐらいなら、上手い具合に言いくるめて関係を保つべきだったのか?
久しぶりに彼女のLINEを開いてみる。
「あれ?」

里佳が河本マンションを去った翌日お付き合いはできないと送ってきた文面。
それに対し、俺はどうでもよかったので、彼女を『おもらいさん』認定して一言も返事をしなかった。
それがこの約一年間、里佳の自尊心を傷つけてしたのだろうか。
二十時十五分、彼女はひっそりと俺とのLINEから退出して姿を消した。
とうとうおもらいさん消えたか。
別段ショックも何もない俺。
まああの垂れ乳をこれ以上見ないで済み、良かったのだ。
何とも言えない空虚な気分になり、群馬の先生のところへまた顔を出したいと思った。
だが、先生は末期がんの為、現在ローズマリーをもう営業していない。
ふと以前先生が紹介した斎藤龍顕先生を思い出した。
携帯電話のアドレス帳を探してみても、番号は見当たらない。
しかしインターネットで検索をすると、SNSをやっていたのでインスタグラムやフェイスブックすべて申請を出してみた。
歳を取ったせいなのか、自分が悪いのか。
フェロモンが無くなってしまったのか。
若い頃のように異性が放っておいても、寄ってくる事がなくなってしまった俺。
一抹の寂しさを実感する。
ちかとのLINEをしながら、彼女のいやらしい姿を想像し、マスターベーションをしてから眠った。
すっかり虚しい中年男になってしまったものだ。
二千二十四年二月四日、日曜日先負、立春。
早番のパートナーは、今月に入ってから湯浅でなく片屋敷に変わる。
その片屋敷が彼女の涼子と一緒に九州へライブへ行くらしい。
従って来月の十五から十八日は、連休を取るので俺がその間一切休みを取れなくなった。
湯浅とのコンビのほうが本当に良かったなあ。
このひねたチビデブとは、いまいちそりが合わない。
三月に来ると言っていたでったんへ、早めに連絡をしておくか。
『三月だけど、十五から十八日はちょっと休みが難しい。最悪その間なら、俺抜きで川越同級生の楽しできてね。 岩上智一郎』
斎藤龍顕先生から連絡があり、群馬の先生の時のようにスピリチュアルヒーリングをお願いする。
一番早く空いている時間で、八日の木曜日。
俺はインカジ『レディ』へ電話を掛け、その日に休みを取った。
特に今現在これといった悩みはないものの、群馬の先生の時のような不思議な体験をまたしてみたい。
それにしても本当に寒い夜だ。
四種類の入浴剤をふんだんに使い、贅沢風呂に入ろう。

一番高い入浴剤のクナイプ。

そして昔から好きなきき湯。

さらに成田ゆかりお勧めで購入した琥珀の湯『温素』。

普通の薬用入浴剤、柚の香り。
これら四種類を混ぜて配合すると、乳白色の何ともいえないいい匂いが漂う。

湯船へブレンドしながら入れていく。

結局紅茶のような色になってしまうんだよね。
これは初期横浜時代、十種類ぐらいをブレンドして過去に知っている。
またあの頃へ戻りたいものだ。
毎日が楽しかったあの時へ……。
横浜橋商店街からピカソを周り、入浴剤を購入。

何だかんだで入浴剤が十種類。
せっかくなので全種類混ぜて風呂へ入ってみる。
紅茶みたいな色に浴槽の湯が変身。
様々な相乗効果なのか、風呂上り背中から腰に掛けて妙にポカポカしていた。

実家では湯船の風呂栓を隠される嫌がらせをされ、こんな風に風呂を楽しめる場面もなかった。
うん、今の俺ってかなり幸せじゃないか。
また今週末連休を取り、地元川越に顔を出しに行ってみよう。
「……」
あの時は入浴剤十種類を混ぜたが、今はもっと高級なものを使っている。
そう考えると、今も俺は幸せなのか。
一時間以上風呂に浸かり、身体の芯までポカポカすると、ベランダへ出てセブンスターに火をつけた。
二千二十四年二月五日、月曜日仏滅。
インカジ『レディ』の仕事帰り、元コマ劇場ゴジラホテルを通り掛かると、大粒の雪が降ってきた。
思わず空を見上げる。
雪が凄いなあ……。

映像を撮りながら、今日も帰ったらゆっくり風呂へ入ろうと思う。
ゆっくり寝て夜ベランダから外を見ると、珍しく銀世界。
雪が、積もっているぞ?

俺は入口側の通路へ出て、大久保駅の線路の部分を撮影した。
都内で雪が積もるなんて本当に珍しい。
ここまでの大雪は、初期横浜時代の頃……。
皮肉な事に関東一円に珍しく大雪が降る。
ほとんど積もる事など無いのに、結構な量が積もった。
まあ白銀の世界の中、バレンタインを過ごすのもいいだろう。

まだ数回しか会っていないアンジェリカ。
彼女は俺と一緒に住みたいようで、辿々しい日本語で懸命にアピールしてくる。
ロシア人なのか尋ねると、ルーマニア人だと答えた。
本音を言えば金髪のロシア系が好みだったので、アンジェリカへ黒く染めたのかと聞くと、ルーマニア系は元々黒髪だと言う。
現状のように遊ぶだけなら気楽でいい。
ただ共に暮らすとなると、話は全然違ってくる。
一人の女に縛られ、金も自由につかえなくなり、ましてや海外の彼女の家族へ送金だって頼まれるかもしれない。
俺は返事を誤魔化しながら、アンジェリカを抱いた。
お腹が減ったと言うので何を食べたいか聞くと、即座に焼肉と答える。
黄金町駅からすぐそばにある大岡川を通って焼肉屋へ向かう。
横浜橋通商店街からだと本来徒歩十分もしない距離だが、積雪の中向かうのは大変だった。
食事を終えるとアンジェリカは俺の部屋へ来たいと言ったが、仕事がこのあとまだ残っていると嘘をつき別れた。
おそらく俺は、横浜に来て手に入れた自由な現状をこのまま謳歌したいだけなのだろう。
抱きたい時に抱ける女がいればいい程度の欲望。
こりゃあ生涯結婚とは縁が無さそうだ。
雪を踏みしめながら歩いていると、大通り公園の交差点で轍にはまっている車が見えた。
しばらく様子を眺めていたが、中々車は雪で滑って空回りしている。
可哀相だったので、声を掛けて車を押してあげる事にした。
「いいですか? 気合い入れて押すのでアクセルベタ踏みして下さい!」
車が出た瞬間、俺は雪道にそのまま突っ伏してしまう。
驚いた運転手は車を停めて何度もお礼を言ってくるが、また轍にハマっても面倒だ。
手で服についた雪を払いながらそのまま発進してくれとジェスチャーした。
中々楽しいバレンタインを過ごしたが、最後の最後で雪まみれになり散々だ。

大通り公園に差し掛かる。シンシンと積もる雪。何だか幻想的だなと、俺はデジタルカメラで景色を撮影した。
「……」
あの時の横浜のほうがもっと積もっていたか。
ふと現実に戻りながら、積もり具合いだけでいうなら、以前住んだ北海道倶知安の二メートル級の雪、そして新潟グリーンプラザ上越ホテルのスキー場のほうが断然上なのに、時間の経過と共にここまで感覚が麻痺してしまうものなのかと驚く。
十代や二十代の頃と、五十二歳になった今を比較したところで、どうにもならないよね……。
二千二十四年二月六日、火曜日大安。
雪の影響か、凍えるような寒さの中、靖国通り沿いにある三平ビルへ向かう。
久しぶりのレストランはやしやへ。

大久保のはやしやは閉業してしまったけど、こっちはまだ残っていて一安心。

今日はグラタンコロッケランチにハンバーグつけてみた

何だか色々なものが、ちょっとずつ値上がってきているな。
大好きなハンバーグを食べているのに、まるで浮き浮きしてこない。
これは寒さのせいでなく、現状の自分が未来を想定した時、吐き気に近い感覚しかしないせいだろう。
二千二十四年二月七日、水曜日赤口。
何もやる事がない時は、ちかとのLINEに没頭する俺。
二番煎じではあるが過去他の女の為に描いた絵を、彼女に見せながらトークは進む。
『四時間でこんな凄いのかけるんや…!
才能やんなあ、ほんますごい…。ね、ほんま色々あったよ…。確かに昔の話聞いてるとまじでドラマ化出来るレベル。 ちか』
それでもちかのような美人と、このような会話のやり取りをしながら時間を過ごす俺は、贅沢に生きているほうなのか?
『一つだけ注意しなきゃいけないのが、人間って本当の極限になると自己防衛本能が働くのか死によって危険を止めようとする場合あるから、本当にヤバい時は誰かに頼ったり甘えたりするのも大切だと思う。絵だけ取ると、気まぐれでたまーに気分で描いている売れない画家って感じでしょ。まだこうして生きているって事は、過去も含めて自身ですべてこうなるよう設定していのかなって、ふと思うんだよね。 岩上智一郎』
ぼんやりと頭の中に浮かぶ、自己の輪廻転生論。
『ストレス抱えるくらいなら死をとっちゃうってこと? そうかなあ? 私が見てる感じやと全てに関して気の向くままにって感じがしてかっこいいけどね。それも自分の選択で、生きてることを受け入れるってことに繋がるんかな。 ちか』
この手の話になると、すぐ記憶へ直結するのが群馬の先生だった。
何故こうまで苦しむような人生を生きねばならぬのか。
自業自得である前に、様々な希望を潰されてきた現実。
俺がそこまで悪い事をしたのかと思うほどの葛藤。
その苦しみに対し、逃避できる手段は生まれ変わる前に、前世の自分がこのような人生の設定をセットしてから現世へ生まれてきたという考え。
『鬱病の先の先って感じかな。俺の場合で言うと、親父が守銭奴の女と勝手に籍入れて家に入れて、グチャグチャになっていたあの頃を振り返ると明らかに俺は鬱病だったなあと。当然死にたいとも思ったし、親父を殺してやろうかとも考えたしで、当時の彼女からもくどくど言われ、おばさんの嫌がらせもマックスで、地獄の中にいるような感じだったよ。そんな状況捨てて、早く飛び出ればいいだけだったのにね。長くなってしまったけど、結局のところそれでもまだ俺はこうして生きているし、心筋梗塞やったってまだ生きて生活しているし、腹減れば美味いものを食べたくなる。つまり死に向かうって本当に終わっちゃうけど、生きていれば些細な事でも幸せ感じられるし、何があっても生きろって事を伝えたかったのかな。気の向くままと言うか、本出してもそれじゃ食ってけなかったし、戦っていても同じ、そのままの流れに応じて自由気ままに流されるしか方法がなかっただけなんだよね、俺は。例えば死にたいっておもって電車のホームから飛び込んじゃえば自分自身はそこでおしまい。でも辛くても思い留まればそれは生きてくって事でしょ。生きてさえいれば、時間が心の傷を勝手に癒やす場合もあるし、また物事から学び、ちょっとした事で気付きとかあると思うんだよね。だから何があっても生きよ。人生は結局のところなるようにしかならないんだから程度にいるのがいいのかなとは考えてるよ。 岩上智一郎』
根底に根付くこれまでの憎悪。
そして渇望や後悔、無念さなどが渦巻くものを一気に言語化した。
他人へ吐き出す事で、見えなかった気付きもある。
『言ったたもんね…、八方塞がりやったもんね。生きてりゃいいことあるから、我慢しすぎず他人に甘えてでも生きた方がいいよってことかな? 深く考えすぎずにね…! その辛いこともいつかは笑い飛ばせる時がくるかもやしね。世の中には楽しいことや美味しいもので溢れてるのにそれを経験せず死ぬのって勿体無いもんね! ちか』
『うん、本当に苦しくて窮地で死ぬ方法を選択するならば、親友または甘えたい人間に頼ってでも生きた方がいいね。だって知っている誰々が自殺したなんて聞いたら、そんな追い込まれる前に私に相談しなよ?って思うでしょ。もうそんな深く考えてはないよ。いくら考えても解決のしようがない事もあるし、それなら関わらければいいだけだしね。ほんとそれだよね。 岩上智一郎』
過去に垂れてきた二つの蜘蛛の糸。
一つは二千十四年の有馬記念奇跡的な的中。
もう一つが、二千十六年の二俣川で陸橋へ足を掛けようとした時に来た岡部さんの電話。
『その人の気持ちを百パーセント理解は出来んけど、救えたかもしれんって思っちゃうもん…。プラスに考えたいよね! やってないことやりたいし、楽しいことしたいもん。 ちか』
あの時に比べたら、まだ今の俺は全然幸せなほうなんだよな。
明日は斉藤龍顕先生と久しぶりの再会。
仕事を終えた三時過ぎ。
何か新しい発見はあるのだろうか。
二千二十四年二月八日、木曜日先勝。
インカジ『レディ』の早番の仕事を終え、わざわざ大久保まで町田から来てくれた斎藤龍顕先生と十数年ぶりの再会。
前に会った時よりも、白髪が増え、少し身体も萎んだ感じがした。
ヒーリングする場所に新大久保駅前のシュベールを選び、俺はこれまでの地獄めぐりを回想し次々と話す。
一回り年の離れた聞き上手な龍顕先生。
気付けば新大久保駅前の喫茶店シュベールで、七時間ぐらい延々と話が弾んでいた。
掻い摘んで話をしても、それだけ密度のある呪われた人生。
コーヒーを十杯は頼んでいる。
群馬の先生の状況を聞くとまだ生きてはいるが、癌の進行が進み、今は人と会える状況ではない事を説明された。
神と話ができると言ったあの先生も、病魔には勝てないものなのか。
「龍顕先生、もういい時間になっていますけど、お時間大丈夫なんですか?」
「先生はやめて下さいよ。岩上さんの話が本当に面白い…、そう言っては失礼ですけど、それだけ濃密なものを肥やしにこうして生きてきました。だから私も時間を忘れるほど、聞き込んでしまったのかもしれませんね」
「以前群馬の先生に、俺は神に選ばれたから人より試練が多いとか、前世は雷電為衛門だと言われたりしたんですね。龍顕先生から見たら、そういうのって言うのは、どう思うんですか?」
両腕を組んで頷くように考える先生。
「うーん…、そもそも神の定義なんてものは、人によって様々なんですよ。前世にしてもです。だから自分がそう考え、それが生きる希望に繋がるのなら、スピリチュアルもありだし、また神もありなんです。それが現実とはかけ離れた思考へ行ってしまうなら、もう少し目の前をしっかり見なさいと言えますが」
「え、俺は見えていないという事ですか?」
「いえいえ、そうでなく裏稼業裏稼業とよく自分で仰いますが、岩上さんはそれでも前と変わりなく元気に健康で生きている。つまり何を持って生きるかなんてものは、自由なんですよ、すべてが。ましてや岩上さんはご自身の経験を元に小説を書いている」
「……。もう十三年前になりますよ。下手したら、今の俺はとっくにそんな能力を失ってしまったんだと思います」
「何故そんな風に思うんです?」
「何度か小説を書こうと動きました。でも今はまだ書く時期じゃないと感じたり、執筆している事に対し面白みを感じないんです」
「ふむふむ…、でも岩上さん、私にここまで怒涛のように出てしまうほど、人間の本音や秘密は、せきと同じで無理に止めようとしても勝手に出てしまうものなんです。言葉を書き連ね、自身を内省する行為。中々いいじゃないですか。それだけ言葉が溢れているんです。焦らなくともいずれ時期が来れば、勝手に指が動くでしょう」
料金はこれだけの時間を費やしているのに、一万円のまま。
結局この人も群馬の先生と一緒で、本当に欲が無い人なんだなとしみじみ感じる。
特別な何かは無かったが、おそらく俺は群馬の先生経由の人へ自分のこれまでの体験を聞いてもらいたかったのだろう。
夜の十一時過ぎに俺たちは別れ、せめて喫茶店の分ぐらいは出させてくれとお願いする。
閉店間際ギリギリの七時間もいた為、シュベールの代金は七千円台。
少し痛い出費であるが、充実した時間を送れたと共に先生へ感謝をした。
「また書いて下さいよ、小説を。私は岩上さんの書いた作品を読んでみたいと思っていますよ」
また俺が小説を書くか。
本当にそんな風になるのだろうか……。
自称俳優マンションへ戻り、少し横になっている内に深い眠りに入る。
目を開けようとすると瞼が開かないので、この異常事態に慌てふためく。
指で目を擦りながら、指先にぬるっとした感覚があったのでティッシュを手探りで掴み拭き取る。
紙についた大量の目ヤニを見てゾッとした。
何か不思議な現象が多いな……。
これらの事をフェイスブックへまとめて投稿してみた。
前のマンションに住んでいた頃、自身に起きた現象。
・腰背中が痛くなった(寝ていて痛くて仰向けに寝れない→ 何度接骨院行くも解消せず)。
・前回話した同様右腕に酷い痛みが走る。
・何もしていないのに二度の嘔吐。
・瞼が重く、視力が非常に落ちた感じ、物が二重にブレて見える。
ワクチン打って一週間で二度の心筋梗塞に掛かって死に掛け、年齢的なものもあって俺もそろそろかなと捉えていた。
しかし斜め向かいのマンションへ引っ越ししてから、右腕の痛みは消え、腰も痛みを感じない。
一度寝ていて目を覚ますと、目が開かない。
強引に開けると大量の目ヤニが……。
不思議な事に視力も通常になり、本来の吊り目型の目に戻りつつある。
これってあまり思いたくなかったけど、前のマンションには霊障みたいなものがあったって事?
それとも過度な光熱費の請求によるストレスからかな?
横浜時代の盟友石川雅之から早速コメントが入る。
『その手の履歴から日本人の投資家が避けていた物件だったのかもです。 いしかわまさゆき』
『今のマンションの三階の部屋から眺めてみると、本当にだらしないというか、小汚いマンションなんですよね。上の方なんか訳の分からない補強してますよ。ベランダから前のマンションの写真撮ってみました。 岩上智一郎』

さらに俺はここ数年を振り返り、今の心境をまた投稿してみる。
自身の今後についての転機と言ったらいいのかな。
そんな一日を過ごせた。
表舞台を歩くと言っても、様々な見方があり、様々な表現がある。
要は自分自身が自覚し、己へ向き合い、やるべき事をすればいいだけの話なのであった。
薄々分かってはいたんだけどね。
多分誰かに背中をボコンと押してもらいたかったんだろう。
ここ数年迷走し、すっかり淀んだ自身の感情が晴れてきた感覚。
再認識できたのが、やっぱ俺って馬鹿だねーって事。
群馬の先生の時のような不思議な感覚は、龍顕先生には無かった。
だが、正直な心境を文字へ投影してみただけ。
己と向き合えばよく、やるべき事を自覚する。
そうはいっても、それが俺にとって書く事なのだろうか?
印税ももらえず生活苦から、再び裏稼業の道へ足を踏み入れて脱出できない自分が……。

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