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芥川の川づくり20年ーひとと魚にやさしい川づくり

1.初めに

 おはようございます。こんにちは。こんばんは。IWAOです。アクアピア芥川へと行ってきました。アクアピア芥川の近くには、芥川が流れています。その芥川では、環境を改善するための活動が行われており、その活動がどのようなものかについて紹介・解説されていました。是非、ご覧ください。

*過去にアクアピア芥川に行き、どのような展示が行われていたのかを書いています。こちらも是非、ご覧ください。

2.構成

 アクアピアの1階の1室を利用して、芥川にはどのような魚がいるのか、どのような活動が行われているのかが展示されていました。主に、解説パネル、芥川を再現したパネルとボード展示、実際に作られた模型の3点が展示の中心となりました。
 芥川を再現したボードは、非常に完成されていました。ただただ青いシートを川として、また、魚のイラストを張り付けているだけでなく、支流がどうつながっているのか、上~下流の間で、上流ではタカハヤ、下流ではニゴイが置かれ、どのような生物がいるのか、配置が考えられています。また、芥川の橋の位置、鉄道の位置、堰の位置…などと人工物もどこに置かれているのかも再現されていました。

芥川の再現ボード
芥川の下流の再現
芥川の上流の再現
魚のイラスト
このような有志の方によって描かれたイラストが、張られていた。

3.川づくりー魚の住処を作る

 まず、芥川で魚のすみかを作るための活動が行われるきっかけは何だったのでしょうか?それは、「アユ」が見つかったことです。それをきっかけに魚が住みやすく人と共生できる川を作っていこうとする取組が始まりました。2006年に、最初の川づくりとして、魚みちを土嚢を積み上げて作るという取組が行われ、その時に、アユが一匹遡上したことが確認されました。これを知った国交省がコンクリートで魚みちを作るようになり、活動が本格化しました。現在、芥川には、魚みちが多く設置されています。それは、淀川との合流地帯から上流までの間で10ヶ所以上です。地図で設置箇所を確認しましたが、1ヶ所に集中して置いているのではなく、場所に配慮し、ある程度の距離を持って配置されています。

芥川の前に設置されている魚道①
*アクアピア芥川の近くに設置
芥川の前に設置されている魚道②
*アクアピア芥川の近くに設置
魚みちでは、コサギなどの鳥が待ち構えていることもある。
*別の場所で撮影

 魚のすみかを作る上で注目されるのが、「竹蛇籠」「バーブ工」です。
「竹蛇籠」は、竹で編んだ筒の中に石を入れた籠です。後ほど説明する「バーブ工」の材料一つとして使用されたり、岸際の深掘りを防ぐためのものになります。竹蛇籠のメリットは、人が治水のための材料として利用できることだけでなく、水生生物にももたらします。カゴの中に入れる石は、大きさから形まで様々なものがあります。つまり、カゴの中に隙間ができるため、そこを生き物が住処・隠れ家として利用することになります。実際の水中カメラでは、カワムツやヨシノボリ、シマドジョウが利用していたことが確認されたそうです。また、このカゴの材料は竹なので、分解されて自然に帰るため、プラスチックのような残り続けるゴミにもありません。

竹蛇籠の再現①
実物の竹蛇籠
竹蛇籠を利用する魚の再現
実際に使われていた竹蛇籠

 バーブ工は、岸から川の中央へと向かって石を積み上げるものになります。その時の形が、「釣り針の返し(バーブ)」に似た形をしてりため、このような名前になりました。バーブ工のメリットは、環境を「多様に創出する」ことです。流れの早い所、遅い所、深い所、浅い所…と変化のある環境を作り出すことになります。このバーブ工は、先ほどの竹蛇籠のように水生生物へ住処を提供することだけではありません。餌場の創出です。石に苔がつくことで、アユやオイカワがそれを食べます。バーブ工は、環境を創出し、それが餌場や生息地を提供するという役割を担うということです。

オイカワ
やや婚姻色が出ている
バーブ工のイメージ図
実際のアユの食痕

4.芥川の帰ってきたアユー魚を見る

 書かれていたわけではないですが、芥川のシンボル生物・指標生物は、アユになるでしょう。アユは、両側回遊、秋に生まれた仔魚は海へ降り、翌春になると再び川へと戻る魚です。2012年からアユの遡上をボランティアと調査を行った結果、2014年の2400匹が最小、2016年の17000匹が最大という結果になりました。アユは、川で産卵を行います。先程の魚みちのように海から川へ上りやすい道を作ることだけが大切ではありません。産卵がしやすいように川底に数センチ程度の小石や砂利がたくさんある水通しのいい環境であることが大切です。これまでの芥川では川底がガチガチに締まっていたため、熊手、スコップ、クワを使って川底を耕し、アユの産卵に適した環境へ整備することとなりました。その成果もあり、2023年には12年ぶりに、2024年では稚魚が下流で見つかるようになりました。

アユ

 ここで注意しなければならない点があります。それは、芥川ではアユ「だけ」生息できればいい活動になっていない点です。アユの遡上調査の際、アユ「以外」の生物も調査対象です。アユ以外だとオイカワ、カワムツ、カマツカの遡上が多いことが確認されています。タカハヤも採取されますが、彼らは流された個体であろうとされています。アユ以外だと、タモロコが注目される生物になります。魚みちが完成した後の2019年に初めて見られるようになった生き物になり、魚みちを利用して登った個体ではないかとされているということです。遡上調査、特に、魚みちの意義は何だったのか?を考えれば、アユが登れる環境を創り出す事でしたが、魚みちはアユの占有物でしょうか?つまり、アユのために作った魚みちが与える恩恵は、アユだけではなく、他の生物へといい形で影響していることが分かります。

タモロコ
我が家の飼育個体
カワムツ
カマツカ

 淀川との合流地点近くである下流域の調査も行われ、カネヒラやコウライニゴイが確認されています。他にもスミウキゴリ、ゴクラクハゼ、モクズガニ、ボラも確認されています。彼らの存在は、アユと同じものがあります。それは、「回遊」です。彼らも川と海を行き来するということです。川と海が繋がりを持つことが大切ですが、それは、アユだけの話ではなく、他の生物にも波及するということです。芥川は淀川を介して海と川と繋がっていることが生き物を通して見えてくるということです。

カネヒラ
コウライニゴイ
ゴクラクハゼ
モクズガニ

*魚の遊泳能力は以外にも高いです。かつて京都にあった巨椋池にも遡上した魚がいました。そちらも是非、ご覧ください。

 個人的に注目すべき点だと思った点として、「外来魚」の問題に関するパネルはあまりなかったと思います。芥川には、ティラピア、カダヤシ、ブラックバスなどが定着しています。ただ、外来魚がゼロではないですし、非常に脅威的な存在ですが、種数が少ないこと、後ほど記述するミズヒマワリほど解説が占められることはなかったので、駆除などで繁殖が抑えられているのではないかと感じました。つまり、在来種が安定して生息しているいい環境になっているということを感じたということです。ただ、ブルーギルの定着が2024年に確認されているため、注視が必要な所があります。

5.ミズヒマワリとの戦い

 芥川には、「ミズヒマワリ」という外来の水生植物が定着しています。彼らは、アクアリウム用で日本へ持ち込まれましたが、何らかの形で逸失・漏れ出たものが、日本の池や河川で定着しています。特定外来生物に指定されている外来種になり、2005年に特定外来生物法が制定されたと同時に指定されました。同じ時期にブラックバス、ブルーギル、マングースが指定されており、ミズヒマワリもそれだけ脅威的な外来種として見られていたということを示します。

ミズヒマワリの花

*外来種の歴史については、こちらをご覧ください。

 ミズヒマワリの問題点は、「競合」「生活への悪影響」、そして「駆除の困難さ」です。ミズヒマワリの存在は、在来の水生植物に対して非常に大きな脅威になります。ミズヒマワリに侵入されたら、その水辺環境での植物はミズヒマワリだけになり、他の水生植物は駆逐され、ミズヒマワリ一色の光景になります。これは私の推測ですが、水辺環境がミズヒマワリだけの場合、創出される環境も一様なものになり、それが生息する生物の種数も大きく減ることになると思われます。様々な植物があることで、水草や抽水植物が生えることで高さ、複雑さが多様になり、植物を利用するなどのために昆虫や魚、貝などの多種多様な生物が生息することになるでしょう。それが、ミズヒマワリだけで代替できるとは考えづらいですし、本来使用していた水草がなくなることは、他の生物にとっては生息環境が喪失したことと同義だと言えます。つまり、ミズヒマワリの侵入と定着は、植物だけでなく植物を利用する側の生物にも悪影響を与えるのではないかということです。ミズヒマワリは、人間社会にも悪影響を与えます。ミズヒマワリが増えすぎることで、水路を堰き止め、水道の入・出水や船の往来が難しくなる、できなくなるという実害を発生させています。

ミズヒマワリが定着した光景
アナカリス
こちらも一切れで繁殖できる外来の水草
外来水草がしない環境
多種多様な生物が生息する
外来水草が優占する場合の環境
生物種は少なくなり、環境も単純で貧弱なものになる

 ミズヒマワリ、そして、外来植物がもつ何よりも厄介な点は、「駆除が難しい」ということです。そもそも外来種を根絶すること自体は、非常に難しいですが、根絶できた例はあります。ブラックバス・ブルーギルのような外来魚の駆除だと、池の場合では極端なことを言えば、水を全て抜いて干してしまえば、全てが死滅してしまうため、根絶することができます。また、動物の多くはオス・メスに別れるため、数多くの外来種を駆除し、片方の性のみになってしまえば、外来種の根絶は時間の問題になります。
 しかし、ミズヒマワリを含めた外来の水生植物の厄介な点は、「一切れ」で繫殖することができる点です。どれだけのミズヒマワリを引っこ抜いても草の一切れだけで根を生やし、定着します。よって、取りこぼしからまた繁殖するため、動物と比べた時の難しさがさらに上がります。芥川では、2003年にミズヒマワリが定着したことが確認されています。定着を確認した5年後には、花の数が100倍になり、繁殖力の高さが分かります。

*外来種の根絶の難しさについては、こちらの動画をご参照ください。

 芥川では、国の緊急対策雇用費を使い、ミズヒマワリの駆除を行ております。ただ闇雲にミズヒマワリを刈り取るのではなく、上流から駆除を始めることや駆除事業は成長が遅くなる冬に行うなど効率的な駆除ができるよう方法が工夫されています。これらの活動のかいがあったことで、現在では芥川ではミズヒマワリが集中する場所は減り、芥川からいなくなる手前まで進んでいます。
 外来種の駆除は、根絶するのには時間と労力がとてもかかるものです。まして、外来の水生植物は少しの見落とし・取りこぼしによって元通りになることが少なくありません。芥川で根絶できそうな所まで成果ができたことは、偉業になると思われます。

6.まとめ

 以上が、アクアピア芥川の企画展示の内容になります。私は、芥川は非常にいい川だと思いました。魚が住みやすい川をどのように作るのか?を考えた時、「アユ」を起点にそれが他の生物へと波及していることが分かるためです。特に、タモロコが注目されたのが意外でした。私は、タモロコというとどこにいる魚だが、地域や生息環境によって変異が多い魚のイメージがあり、「進化」や「多様性」に印象があるからです。しかし、芥川ではいい境が作り出せたからこそ芥川に現れたという意味でとらえられたからです。
 芥川の川づくりから学べることは、「生物は保全活動に応えてくれる」ということです。アユが遡上でき、芥川で暮らせ、そして、産卵できる環境を整えた結果、アユは芥川で産卵するという成果につながりました。また、バーブ工や魚道を作ったことで、それを利用する生き物が多かったです。特に、こういうものを作るのが、アユだけではないことから、生物全般のことを考えていい川を作ろうとしているのがよく分かります。

*アユは、長良川において鵜飼などの文化を構成する要素にになります。地域でどのように捉えられるのか、どう利用されるのか違いますが、アユが人間にとっても大切な存在であることが分かります。

 芥川では、アユの遡上をきっかけに20年間何をしてきたのか、どういう変化があったのか、それらを通して芥川の環境の変遷と改善が読み取れる展示になっていたと思います。また、環境の改善には、ものすごい労力と時間がかかります。ただ、それらをしっかり投資したことでアユが戻り、ミズヒマワリがいなくなるという成果に繋がった20年の活動だと感じます。

アユの遡上から始まった川作りはどう繋がったのか?

*タモロコについて知りたい方は、こちらをご参照ください。

*過去には、土岐川と伊丹の水辺環境について書いています。芥川と比較するという意味でこちらもご覧になることをお勧めします。

 以上になります。ここまで読んでくださり、ありがとうございました。次回もお楽しみに。

7.おまけー大阪北部のドジョウの希少性

 アクアピアへ行ったのは3年ぶりとなり、企画展示を見る前に2階の魚の生体展示を見ました。芥川に生息する魚が展示されており、配置等もやや変わった印象を受けました。

今回の来館時のアクアピア芥川の生体の展示フロア

 その中で気になった存在がおり、それはドジョウです。芥川には、ドジョウとオオシマドジョウの2種が生息しており、その2種が生体で展示されています。解説ボードには記述がなかったのですが、展示されていたドジョウは、背鰭の乗数が6本だったことから、形態的に在来系統の可能性が非常に高い個体ではないかと思ったからです。

オオシマドジョウ
我が家の飼育個体
実際に展示されていたドジョウ
後ろの小さいのは不明
背鰭の乗数

 展示個体が在来系統であるとしたらは、大坂においては非常に意味が大きいことになります。なぜなら、大坂に生息するドジョウのほとんどが外来系統か交雑個体であり、在来系統は極一部にしか生息していないからです。大阪で在来系統のドジョウが残っているのは、北部のみであろうとされ、高槻も北部に位置します。よって、この展示個体の存在からも高槻に在来系統のドジョウが生息していると考えてもいいのではないかと思います。北部ならどこにいるわけでもなく、山間部などのまだ外来系統が侵略されていないわずかな箇所での生息だからです。私たちが大阪北部のとある市街地の中心を流れる河川で採取されたドジョウは、「外来系統」のドジョウでした。大阪に在来のドジョウがまだいるからと言っても決して安心できる状況ではないと言えます。これらの事実も考えれば、大阪に生息するドジョウは、かなり希少な存在であるということが言えるのではないでしょうか。調査した論文からは、大坂のドジョウから地域独自のハプロタイプも確認され、ドジョウには地域性が強いことが分かります。つまり、アクアピア芥川で展示されている在来系統と思われる個体の存在は、高槻には在来系統のドジョウが生息していることを示す存在そのものとして非常に貴重な存在であり、一つの見どころだと思われます。

採取された外来系統のドジョウ
大阪自然史博物館では、ドジョウが展示されています。
外来系統・在来系統どちらも見ることができます。

 大阪北部ではもう1種非常に特別なドジョウがいます。それは、「アジメドジョウ」です。アジメドジョウは、中部地方から近畿地方の河川の上流側で、川底が砂礫でやや流れのあるキレイな河川に生息する日本の「固有種」です。アジメドジョウの名前の「アジメ」も「味目」という言葉から由来し、食用として利用した場合、非常においしいことが由来です。このドジョウの模様は個体差がありますが、地域差も大きい上、太平洋側はGタイプ、日本海側でSタイプなどと模様に加え、遺伝的にも分化していることが確認されています。ただ、大阪のアジメドジョウが特別な理由は、アジメドジョウの生息地の最西端に位置するからです。現在、アジメドジョウは数を減らしており、大坂のアジメドジョウも例外ではなく、むしろ、極めて危ない状況にあります。下手したら消滅するかもしれないような状況です。そのような中、実際に大坂北部に生息している個体を私は見せてもらいました。見つかったのは、3㎝程の小さい個体だけでした。しかし、小さい個体が見つかるということは、生産されている、つまり、繁殖していることを示す存在です。決して安心できる状況ではないですが、この個体は希望になると私は感じました。また、アジメドジョウがいる河川では、他の河川では見ることが難しい希少な生物が同所していることが少なくありません。

実際に大阪北部で採取されたアジメドジョウ
別の水系で採取した在来系統のドジョウ
アジメドジョウがいる環境には、他の希少な生物が少なくない。

*過去に琵琶湖・淀川水系のドジョウについて書いています。詳細は、こちらをご覧ください。

 大阪の北部には、何とか生き残っているアジメドジョウと在来系統のドジョウが生息しています。彼らを含むドジョウは、多くの種が絶滅の危機にあります。そのような中で彼らが生息している高槻を含む大阪北部というのは、ドジョウの最後の砦のような場所になるのではないかと私は感じました。大阪北部は、ドジョウにおいて重要な意味を持つ地域であることがもっと認知されるべきであると思います。

*アクアピア芥川のリンク先


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