見出し画像

仕事が楽しい、楽しくないとはどういうことか。

仕事が楽しい。

仕事が楽しくない。

この言葉は、意外と雑に使われている。

楽しい仕事がしたい。
今の仕事が楽しくない。
昔は楽しかった。
最近、仕事がつまらない。
楽しいかどうかで仕事を選んでいいのだろうか。

こういう言葉の奥には、かなり複雑なものがある。

なぜなら、仕事の楽しさは、遊びの楽しさとは違うからである。

笑える。
気分が上がる。
好きなことだけできる。
嫌なことがない。
毎日わくわくする。

そういう意味で仕事が楽しい人は、たぶん多くない。

それでも、人は仕事を楽しいと言うことがある。

逆に、条件は悪くないのに、楽しくないと言うこともある。

では、仕事が楽しい、楽しくないとは、どういうことなのか。

私は、仕事の楽しさは気分ではなく、自分の力が世界に届いている感覚に近いと思っている。



仕事の楽しさは、快楽ではない。

仕事には、面倒なことが多い。

調整。
確認。
やり直し。
報告。
謝罪。
数字。
納期。
人間関係。
理不尽。

これらが全部楽しいわけではない。

むしろ、楽しくないことの方が多い。

それでも、仕事全体としては楽しいと言える瞬間がある。

難しい仕事が少しできるようになった。
自分の提案で相手が動いた。
誰かの困りごとが少し軽くなった。
自分の判断が前より深くなった。
前は見えなかった構造が見えるようになった。
苦労した仕事が、誰かの役に立った。

ここにあるのは、快楽ではない。

手応えである。

仕事の楽しさとは、単に気持ちよいことではない。

自分の力、判断、言葉、経験、関係性が、外の世界に届いている感覚である。


楽しくない時、人は何を失っているのか。

仕事が楽しくない時、人は単に気分が落ちているだけではない。

何かを失っている。

一つ目は、意味の接続である。

自分の仕事が、何につながっているのか分からない。

誰の役に立っているのか。
何を前に進めているのか。
なぜ今これをやっているのか。
この作業が、どの価値につながるのか。

ここが見えないと、仕事はただの処理になる。

処理は、終わってもあまり満たされない。

二つ目は、成長の感覚である。

人は、同じことを繰り返しているだけだと楽しくなくなる。

もちろん、安定した仕事にも価値はある。

ただ、自分の見え方、できること、判断の深さが変わっていないと、仕事は少しずつ色を失う。

昨日と同じ自分で、昨日と同じ処理をしている。

この感覚が続くと、仕事は退屈になる。

三つ目は、裁量の感覚である。

自分で考える余地がない。

言われた通りにやるだけ。
決める余地がない。
工夫しても変わらない。
提案しても通らない。
失敗だけ責められる。

こうなると、人は自分の仕事を自分のものとして感じにくくなる。

仕事が楽しくないというより、自分が仕事の中にいない感じになる。

四つ目は、関係の温度である。

仕事の楽しさは、人間関係にも左右される。

雑談が多いかどうかではない。

自分の働きが見られているか。
困った時に相談できるか。
成果だけでなく過程も分かってもらえるか。
失敗しても戻れるか。
誰かと一緒に前に進んでいる感じがあるか。

関係の温度がない職場では、仕事は冷たい作業になる。

五つ目は、報酬感である。

報酬とは、給与だけではない。

もちろん給与は重要である。

ただ、それ以外にも報酬はある。

認められる。
任される。
成長する。
感謝される。
選択肢が増える。
自分の言葉が通る。
次の機会につながる。

これらがまったく返ってこない仕事は、だんだん空しくなる。


楽しい仕事とは、苦労がない仕事ではない。

楽しい仕事を、苦労がない仕事だと思うと、仕事選びを間違える。

苦労がない仕事は、楽かもしれない。

でも、必ずしも楽しいとは限らない。

むしろ、仕事の楽しさは、少し難しいところに生まれる。

できそうで、できない。
分かりそうで、分からない。
届きそうで、届かない。
前より少し見える。
前より少しできる。
前より少し深く関われる。

この「少し先にある感じ」が、仕事の楽しさを作る。

簡単すぎると、退屈になる。

難しすぎると、苦痛になる。

ちょうどよく難しい時、人は仕事に入っていける。

だから、仕事が楽しいかどうかは、好き嫌いだけでは決まらない。

自分の現在地と、仕事の難しさが合っているか。

ここが大きい。


楽しくない仕事を、すぐに辞めるべきとは限らない。

仕事が楽しくない。

そう感じた時、すぐに辞めるべきだとは限らない。

もちろん、心身が壊れているなら話は別である。

ハラスメントがある。
長時間労働が続いている。
人格を傷つけられている。
眠れない。
体調に出ている。
もう限界に近い。

こういう場合は、楽しさ以前に、安全を考える必要がある。

ただ、そうではない場合、まず見るべきことがある。

何が楽しくないのか。

意味が見えないのか。
成長感がないのか。
裁量がないのか。
関係が冷えているのか。
報酬感がないのか。
難しすぎるのか。
簡単すぎるのか。

ここを分けずに「楽しくない」とだけ言うと、次の選択も曖昧になる。

転職しても、同じ退屈を繰り返すかもしれない。

部署を変えても、同じ空しさが残るかもしれない。

仕事の楽しさを取り戻すには、まず何を失っているのかを見る必要がある。


人事や管理職は、楽しさを軽く扱わない。

職場で「仕事が楽しくない」と言うと、少し子どもっぽく聞こえることがある。

仕事なんだから楽しいことばかりではない。

給料をもらっているのだから当然だ。

好き嫌いで働くものではない。

そう言いたくなる気持ちも分かる。

でも、「楽しくない」という言葉を軽く扱うと、大事なサインを見落とす。

その人は、意味を失っているのかもしれない。

成長感を失っているのかもしれない。

裁量を失っているのかもしれない。

関係の温度を失っているのかもしれない。
報酬感を失っているのかもしれない。

つまり、仕事が楽しくないという言葉は、単なるわがままではなく、職場の認知地形が狭くなっているサインかもしれない。

本人に見えている選択肢が少ない。
仕事の意味が見えない。
自分の力が届いている感覚がない。

ここを見なければならない。


明日から見る場所。

仕事が楽しいかどうかを考える時、いきなり好き嫌いで判断しない方がよい。

次の五つを見てみる。

この仕事は、何につながっていると感じられるか。
この仕事を通じて、自分は何が少しできるようになっているか。
この仕事の中に、自分で考え、決める余地はあるか。
この仕事を一緒に進める人との関係に、温度はあるか。
この仕事から、給与以外に何が返ってきているか。

ここが見えると、「楽しい」「楽しくない」は少し分解できる。

仕事が楽しいとは、毎日わくわくすることではない。
自分の力が、少しずつ世界に届いていると感じられること。

仕事が楽しくないとは、単に気分が乗らないことではない。
自分の力が、どこにも届いていないように感じること。

だから、仕事の楽しさを考えることは、甘えではない。
自分がどこで生きている感じを失っているのかを、見つけることである。


根拠・確認メモ

  • 本稿では、仕事の楽しさを快楽ではなく、自分の力が世界に届いている感覚として整理した。

  • 楽しくない状態を、意味の接続、成長感、裁量、関係の温度、報酬感の喪失として分解した。

  • 人事・管理職向けには、「仕事が楽しくない」をわがままと見ず、職場の認知地形や働く条件が狭くなっているサインとして扱うことを提案した。


関連記事


#AI
#人事
#HR
#人事の仕事
#これからのHR
#仕事
#仕事観
#キャリア
#働くとは何か
#仕事の楽しさ
#モチベーション
#成長
#裁量
#意味
#報酬
#働き方
#人材育成
#マネジメント
#1on1
#組織開発
#パーソナル分析
#認知地形
#キャリア自律

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集