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【万博】激レア 化けるLABO見学ツアー! CO₂と生ゴミが都市ガスに"化ける"

はじめに

大盛況のうちに幕を閉じた大阪・関西万博。
住友館やnull²、イタリア館といった華やかなパビリオンが話題となりましたが、その裏では「未来の環境技術の実証」もひっそりと行われていました。

その中心は最先端のカーボンニュートラル技術に取り組む4施設!

・RITE 未来の森
・化けるLABO
・地球の恵みステーション
・日本館バイオガスプラント

いずれも特別ツアーでしか見学できない激レア中の激レア施設。詳細は以下のnoteでも紹介しています(宣伝)。

そんな幻のツアーのひとつ「化けるLABO」に8月に奇跡的に当選。もう見ることのできない雄姿を写真と動画付きで完全レポートします。

(一部、SNSで知り合ったミャク十郎さん提供の写真を使用しています。ありがとうございました)


CO₂がメタンに化ける?

地球温暖化の主要因とされる二酸化炭素(CO₂)。
その排出量を減らすべく世界が研究に取り組んでいるのですが、化けるLABOの発想はひと味違います。

「メタネーション」という技術を使い、CO₂から未来の都市ガス「e-メタン」を生産しているのです。

化けるLABOの運営は「ガスパビリオン・おばけワンダーランド」と同じ大阪ガス。

ガスパビリオンではVRを駆使してメタネーションを紹介。マスコット・ミッチーが「僕も化けるよ~!」などとユーモアたっぷりに説明してくれたのを覚えているかと思います。

ガスパビリオンのミッチー

これに対して、化けるLABOは実際にe-メタンを生産する本物のプラント。いわば「シン・ガスパビリオン」というべき存在なのです。


ツアー開始地点ですでにワクワク

化けるLABOはシャインハットの南東にあります。
「そんなところ行けたっけ?」と思うかもしれませんが、それも当然です。一般来場者は立ち入ることのできない管理区画の先にあるため、専用バスでしか近づけないのです。

化けるLABOの位置(Googleマップより)

集合場所はガスパビリオンの前ですが、そこからTECH WORLDとの間の隠し通路を通ってバス停に向かいます。

「え、こんなとこ通るの!?」と思わず声が出そうになりました。ツアー開始前からテンションが爆上がりです。

バス乗り場への道

待っていたのは専用バス。定員15名程度が乗り込んで10分ほどかけて万博の裏側を進みます。

バス車内

・ガチの産業ゾーンとご対面

目的地で待ち受けるのはまさに化学プラント。
無数のパイプが絡み合い、タンクがずらりと並び、低くうなる機械音。 万博のにぎやかな表舞台からは完全に切り離されたガチの産業ゾーンです。 理系の人なら興奮必至ですね(実証済み)。

自由に見て回りたいところですが、最初に案内されるのは小さなセミナー室です。


ミッチー登場! 化ける仕組みを学ぶ

まずは施設を紹介するオープニング映像を鑑賞します。案内役はおばけワンダーランドでおなじみのミッチー。

いつもの軽いノリのミッチーですが内容はいたって真面目。要約するとこんな感じです。

・化けるLABOでは「メタネーション」を研究
・CO₂と水素から未来の都市ガス(e-メタン)を生産
・化石燃料ゼロでCO₂をリサイクル

どうしても全編見たいという方は、他の方がYoutubeに投稿しているので紹介します(3分ちょっと)。

セミナー室には化けるLABOの概要が掲示されていました。


最新プラントは…泥臭い

そしていよいよ屋外へ。
そこは全長10メートルほどの狭い通路。両脇にパイプやタンクがぎっしりと並べられ、うなるような低音が響きます。様子を撮影してきたので以下の動画をどうぞ。

ようやく近くで見ることができる最新鋭のエネルギー設備。近くで見ようとワクワクしながら奥に進む参加者たちを意外なものが襲います!

「く、臭い!! なんだこの匂い!!」

あたりに漂うのは牛舎か下水のような強烈な悪臭!
参加者全員が思わず「うっ」となり、スタッフも苦笑い。オープニング映像で「生ゴミの発酵」に触れていましたが、ここまで臭うとは…。

でもこれこそ最新技術の現場なのかもしれません。
カッコいいだけじゃない。臭いや騒音といった泥臭い部分もひっくるめてカーボンニュートラルの現実なのです(知らんけど)。

悪臭と騒音、そして8月の酷暑に苦しめられながらもスタッフによる各設備の説明が行われます。


地味すぎる水素製造装置

ツアーの最初に説明されたのは、水素製造装置。
この装置では、再生可能エネルギーを使って水を電気分解しています。

水⇒水素+酸素

という教科書でも見る反応で水素を生産します。

水素製造装置

……とはいえ、見た目はただのコンテナ。
音も振動もなく、本当に稼働しているのかもよく分かりません。あまりの地味さに説明するスタッフもやや困った表情。残念ながら「水素の音」は聞こえませんでした。

水素製造装置の紹介パネル

水素の製造に使用する再生可能エネルギーの詳細は説明がありませんでしたが、おそらく会場内に大量に設置された太陽光パネルによる電力でしょう。

このように再生可能エネルギーから作った水素を「グリーン水素」と呼びます。グリーンといっても色が付いているわけではありませんが、環境に優しい未来のエネルギー資源として期待されています。


まさかのサプライズ! 隣接施設の紹介

ここで予想外の展開!
次に紹介されたのは化けるLABOではなく、隣接する「RITE 未来の森」と「地球の恵みステーション」。

この2つの施設はCO₂の回収に取り組んでいます。そしてCO₂の一部は化けるLABOに原料として供給。そのような関係でついでに紹介されたのです。

大まかな位置関係

・RITE 未来の森:空気からCO₂回収

この施設では、大気中から直接CO₂を回収するDAC(Direct Air Capture)の実証実験を行っています。

おおまかなメカニズムは以下の通り。

2階:巨大な3基の吸引装置が空気を吸い込む
1階奥:特殊な薬品で空気からCO₂だけを分離
1階手前:分離したCO₂を4基のタンクに貯蔵

RITE 未来の森の外観

これまで、大気中のCO₂は森などが自然に吸収するしかありませんでした。それをこの施設では機械で積極的に吸収しようとしているのです。まさに「未来の森」にふさわしい大胆な取り組みですね。

集められたCO₂の一部は、パイプによって化けるLABOへ送られてきます。

赤矢印がCO₂の輸送ルート

なお、未来の森の詳細については以前に紹介しているので、そちらも参照してください。


・地球の恵みステーション:排ガスからCO₂回収

続いて紹介されたのは「地球の恵みステーション」。
こちらでは、工場などの排ガスからCO₂を回収する技術を実証しています。

排ガスには大量のCO₂や不純物が含まれ、しかも高温です。そのため、同じCO₂の回収でも未来の森とは異なるアプローチが必要なようです。ついでに、この施設では会場内で使われるドライアイスも製造

入口はシャッターで閉鎖されていますが、紹介パネルが貼られ、横から様子を覗くこともできます。

入口のシャッター
地球の恵みステーションの様子


・化けるLABOとの連携プレー

「RITE 未来の森」と「地球の恵みステーション」で回収したCO₂のうち、化けるLABOでは1時間あたり約2立方メートルをメタンへ変換します。

カーボンニュートラルの達成には複数の企業や大学の連携が必須。万博は「最新の環境技術の共同研究フィールド」という側面も秘めているのです。

それにしても、化けるLABOに来たはずなのに隣接施設まで説明してくれるのはお得ですね。特に「地球の恵みステーション」は激レア中のレアで今回の説明だけでも貴重です。


生ゴミも資源にする

ツアーは再び化けるLABOの説明に戻ります。
この施設には、万博会場から出る生ゴミが毎日約1トンも運び込まれているのです。ずいぶんと多い…。

回収された生ゴミは冷蔵保管され、異物を取り除いたうえで粉砕! この日はちょうど作業中で、外には生ゴミのポリ容器が並んでいました。

奥の植物で覆われた建物が生ゴミの保管庫


・ARで“発酵パーティ”を可視化

処理後の生ゴミは威圧感のある巨大発酵タンクへ!
待ち構えていた微生物がフィーバーし、どんどん分解するのです。とはいえ、タンクを見てもなにが起こっているのかは分かりません。

デカすぎる発酵タンク

そこで登場するのが事前に渡されたタブレット。
画面をかざすとミッチーが現れ、タンク内でどんな反応が起きているのかをARで説明するのです。

目に見えない化学反応を可視化するユニークな取り組みですね。ただし、ツアーの時はメモ帳を片手にタブレットを見ていたため撮影は手が回らず断念しました。残念ながらこのnoteではARシーンは割愛します。


・バイオガス生産!

発酵が進むと、生ゴミはCO₂、水素、酢酸(お酢の成分)、水へと分解されます。この過程を「加水分解」と呼びます。

次に登場するのが「メタン菌」!
CO₂や水素、酢酸を食べて「バイオガス」を作り出すものすごく重要な微生物です。

バイオガスの成分は、メタン約60%+CO₂約40%。メタン(化学式:CH₄)は都市ガスに含まれる成分で、バイオガスも燃えます。メタン菌はゴミを燃料にするこの施設のキーパーソンです。

発酵プロセスの解説

ARを見たい方は他の方のYoutubeをどうぞ(動画の12:30~13:30頃)。


・グルメな微生物

メタン菌には好き嫌いがあり、米が大好物、魚や油は苦手です。万博では回転寿司(スシローやくら寿司)の廃棄物が大量に出るそうで、これはメタン菌にはごちそう。お米たっぷりの生ゴミからバイオガスをバンバン生産してくれているそうです。

化けるLABO的にはよいことかもしれませんが、廃棄物がそんなに多いと思うとちょっと心がざわつきますよね…。


・意外と身近! 身の回りにもバイオガス

ところで、バイオガスは特殊な物質ではなく自然界でも発生します。例えば、下水処理施設、埋立地、沼、水田など酸素の少ない環境で有機物が分解されると普通に発生するのです。

万博当初にメタンガスが問題になりましたが、夢洲は埋め立て地であるため、地下のゴミが分解されてバイオガスが発生したのです。

メタンガスは万博叩きの好材料となりましたが、会場の一角でメタンガスをせっせと生産していたと知られたら大騒ぎになっていたかも。化けるLABOが超マイナー施設だったことが功を奏したのかもしれません。


メタネーション、化けろCO₂

実は、生ゴミからバイオガスを作ること自体は最新技術ではありません。たとえば、横根バイオガス発電施設(公式HP)では、すでに生ゴミを原料としたバイオガス発電に取り組んでいます。

ただし、従来のバイオガス生産には課題があります。一般的な都市ガスはメタン90%以上という高品質な燃料ですが、バイオガスはメタン約60%、CO₂約40%という構成。燃料として一応使えるものの、メタンの割合が少なくパワーが物足りないのです。

そこで登場するのが、化けるLABOの核心技術「メタネーション」。これは、バイオガス内のCO₂をe-メタンに変換し、ガスの品質を引き上げるプロセス。CO₂が燃料に「化ける」のです。


・未来のエネルギー技術「メタネーション」

「メタネーション」(e-メタンの生産)は以下の式で表されます。

CO₂+水素(H₂)⇒e-メタン+水

必要な材料はCO₂と水素だけ。ツアーの冒頭で紹介された「水素製造装置」は、この反応に水素を供給するためのものだったわけです。

化けるLABOでは、バイオガス由来のCO₂だけでなく、先ほど触れた「RITE 未来の森」や「地球の恵みステーション」、そして「日本館バイオガスプラント」から集められたCO₂も活用します

メタネーション原料

バイオガスの品質向上とは少し異なるアプローチですが、CO₂を有効活用するという視点から、多角的に取り組んでいるのです。

CO₂を削減するだけでなく、「エネルギーに変えて再利用する」。これこそ化けるLABOが挑む未来型エネルギー循環なのです。


隙を生じぬ二段構え

化けるLABOのメタネーションは2段階です。

・第1段階:バイオメタネーション

まずはバイオメタネーション。名前の通り、微生物を用いたメタネーションです。ここで活躍するのは、先ほどの発酵プロセスでも登場したメタン菌。

メタン菌はCO₂と水素を食べてメタンと水を吐き出すというユニークな能力を持っています。その性質を利用して、バイオガス内のCO₂を少しずつe-メタンに変換します。

バイオメタネーションの様子

ちなみに、メタネーションを研究する機関は多くありますが、バイオメタネーションに注力するのは少数派。大阪ガスの独自性が光る部分です。

プロセスが始まると塔状のバイオメタネーション装置の下側からバイオガスとCO₂が送られます。ガスは装置を昇りながら徐々にCO₂がメタンに変換。

画面中央の塔がバイオメタネーション装置

このステップを経てガス組成はメタン約80%、CO₂約20%に改善されます。最初のバイオガスよりは燃料として優秀ですが、都市ガスには届きません。

ARを見たい方は他の方のYoutubeをどうぞ(動画の14:00~15:20頃)。


・第2段階:サバティエ・メタネーション

そして、仕上げのステップへ。続いて行われるのは、触媒を使った純粋な化学反応「サバティエ・メタネーション」。なお、「サバティエ」とはこの反応を発見した化学者の名前です。

このサバティエ・メタネーション装置には2基のメタン反応器が備わっています。

サバティエ・メタネーション装置
メタン反応器のアップ

バイオメタネーション後のガスには原料ガスがさらに追加され、2基のメタン反応器に順番に送られます。反応器の中ではガスが高温高圧にされ、触媒の力でメタネーションが進行!

1段目のメタン反応器ではCO₂の90%がメタンに変換され、残ったCO₂も2段目のメタン反応器でしっかりメタンに変換されます。

1段目のメタン反応器
2段目のメタン反応器
メタネーションの全容

こうして、ほぼすべてのCO₂がメタンに「化ける」のです。最終的に得られるのはメタン濃度95%という高品質な「未来の都市ガス」

化けるLABOで生産されたe-メタンは都市ガスとほぼ同組成のため、既存のガス管を使ってそのまま家庭に届けることもできます。化けるLABOが1日に製造するe-メタンは一般家庭の170世帯分!

ARを見たい方は他の方のYoutubeをどうぞ(動画の15:35~17:15頃)。


・メタンガスの意外な使い道

面白いことに、化けるLABOで作られたガスは万博の迎賓館へ供給され、ガス調理に使われています。プロの料理人でも都市ガスとの違いが分からないほど燃料として高品質だとか。

メタネーションの最大のメリットは、既存のガスインフラ(ガス配管や天然ガス発電所)をそのまま利用できる点です。

メタネーションを行わずにバイオガスや水素を直接使うことも可能ですが、大規模に普及させようと思えばインフラの再整備が必須。それと比べてメタネーションは既存インフラの活用でコストを大きく抑えられるのです。


さらば化けるLABO

ここまでで施設の紹介は終了。最初に案内されたセミナー室に戻り、締めの映像を鑑賞します。案内役はもちろんミッチー。

締めの映像を要約すると以下の通りです。

・製造したe-メタンは万博会場で実際に使用
・大阪ガスでは2030年までに都市ガスにe-メタンを1%混ぜることを目標
・2050年には都市ガスをカーボンニュートラル化
・舞洲など他の地域でもメタネーションを実験中
・SOECという新技術も研究
・化けろ、都市ガス!化けろ、未来!

全編見たいという方は他の方の動画をどうぞ(3分ちょっと)。

記念にピンバッジ「e-メタンくん」を貰い、スタンプを押して終了です。再びバスに乗ってガスパビリオンまで戻りました。

スタンプとピンバッジ

バスの中からは通常では見ることができない貴重な万博の裏側を除くこともできました(撮影OKとの案内)。ちなみにメタンガスは可燃性ガスなので近くには消防施設もあります。

地球の恵みステーションの裏手
生ゴミ保管庫の裏手
水素製造装置付近の裏手
RITE 未来の森の裏手
スタッフ用の大量の電動キックボード
謎のリボンで覆われているガスパビリオン裏側

おわりに

といった感じで、約1時間のツアーはあっという間に終了となりました。

メタネーションという言葉は耳にしたことがありましたが、実際に稼働する現場を見るのはもちろん初めて。内容が詰め込まれていて少し早足でしたが、こんな貴重な体験ができて大満足です。

化けるLABOは万博協会から表彰されたそうです。メタン生成というインパクトのある取り組みに加え、ARを駆使した展示を考えれば納得の評価です。

万博の閉幕とともに残念ながら「化けるLABO」は解体されてしまいます。しかし、大阪ガスの挑戦はこれからも続いていくとのこと。

最後に真面目な話をすると、メタネーションはまだ課題の多い技術です。プラントの建設も含めたライフサイクル全体でどこまでCO₂を減らせるのか、コストや再エネをどう調達するのかは未知数です。それでも、未来のエネルギー技術が着実に前進していると思うと心強いですね。

それにしても、化けるLABOは万博マニアしか知らないマイナー施設。先進的な取り組みを進めているのに、知名度が低いのはもったいない話ですね。よければ、この記事をシェアして広めてみませんか?(宣伝)


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ジュン右近|万博に詳しい知財人 この記事が面白い、役に立ったと思われたら ♡スキ で応援してもらえると励みになります!