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東ティモール人も日本人も「国家の奴隷」 ーー自民党総裁選ではっきりしたこと

(ヘッダー画像はYouTube「ディリ旅21世紀初の独立国家、未知の国、東ティモール」より)



観光の穴場となった東ティモール


有名旅系YouTuber「しげ旅」さんが、東ティモール旅行動画を公開していて、これが最近のYouTube番組では、いちばん面白かった。


ディリ旅🇹🇱21世紀初の独立国家、未知の国、東ティモール。【アジア#87】2025年8月13日〜16日(しげ旅 2025/9/20)


東ティモールがどういう国か、私は初めて知った。

東ティモールという国に、皆さんがどういうイメージを持っているか、わからない。

私のイメージは、私が物心ついて以来、紛争ばかりやってる危険な国、というものだった。


でも、この「しげ旅」の動画を見ると、今や平和で、美しい、あまり観光ズレしていない、穴場的な旅行先になっているように見える。

素朴なこの島国の風景に、私は魅了されてしまった。

観光名所は少ないとはいえ、今さらバリ島なんか行くより、俗化してない東ティモールが狙い目では。

物価も安い。でも、まだ観光客が少ないためか、ホテル代や航空券代は、アジアとしてはやや高め。

上記「しげ旅」より ディリは東ティモールの首都 飛行機代はインドネシアのジャカルタからバリ経由で入国、バリへ出国


アジア随一のカトリック国


東ティモールには、以前から興味はあった。

しげ旅さんが言うように、「21世紀初の独立国」(2002年にインドネシアから独立)というキャチフレーズもあるけど。

私が興味を持ったのは、アジア随一のカトリック国としての東ティモールだ。


少し前から、世界的に地味に「カトリックブーム」が起こっている。

アメリカのZ世代で、カトリック入信が増えている、というのが一つの話題。プロテスタントが現代化しすぎて、より伝統的なカトリックが若者に受けている。

若者に限らず、有名人でカトリックに改宗する人もけっこう多い。いちばん有名なのはJ・D・ヴァンス(プロテスタント→カトリック)だろう。


なぜ今カトリックが人気か、というのは別の記事に書きたいが、そういうカトリックの最近の話題を追っていると、よく出てくるのが東ティモールだ。

アジアで、フィリピンと並ぶキリスト教国。

とくに東ティモールは、国民の9割がカトリックである。

アジア最大のイスラム国であるインドネシアのすぐ隣、であるにもかかわらず。

「しげ旅」では、カトリック国であることは強調されていないが、ひときわ立派なカトリック教会が紹介されている。

ディリ大聖堂(上記「しげ旅」より)
「しげ旅」より



東ティモールは今なおアジア最貧国の一つで、最も豊かな日本とは、その点では対照的だ。

しかし、似ている点もある。

東ティモールは、1596年、ポルトガルの植民地になった。

そう、もし織田信長や豊臣秀吉の時代、日本がポルトガルかオランダ、あるいはスペインの植民地になっていたら、こうなっていたかも、というアジアの島国なのである。


独立後も、ポルトガル文化の影響は大きい。

だが、現在東ティモールがカトリック国なのは、ポルトガルの影響というより、インドネシアとの長年の抗争のせいのようだ。

インドネシアの過酷な弾圧に耐える間、地元のカトリック教会が、東ティモール人を物心両面で支援した。

wiki「東ティモール」でも、以下のように説明している。


インドネシア統治時代の1992年推計ではイスラム教徒が人口の4%を占めていたとされるが、独立によりインドネシア政府の公務員などが東ティモールから退去し、イスラム教徒の比率は大幅に低下した。一方、独立運動を精神面で支え続けたカトリック教会への信頼は高まった。


有名なのは、東ティモールで生まれたカトリックの司教、シメネス・ベロで、インドネシアと東ティモールを調停しようとした努力により、1996年にノーベル平和賞を受賞した。


ノーベル平和賞受賞者のスキャンダル


しかし、知っている人は知っていると思うが、ベロ司教には2022年、地元で少年に性的虐待をおこなった疑惑が持ち上がっている。


 オランダメディア「デ・グルンネ・アムステルダマー」は28日、1996年にノーベル平和賞を受賞した東ティモールのベロ司教(74)が1980年代から90年代にかけて、当時未成年の少年に性的虐待を繰り返してきたと報じた。ベロ氏は精神的支柱として、東ティモールの独立に貢献した功労者の一人。
 報道によると、当時14~16歳で現在40代の匿名男性2人が証言。ベロ氏が首都ディリにある自宅などで性的虐待を行った後、お金を渡した。
(朝日新聞 2022/9/30)


カトリックの司祭は、妻帯を許されないためか、こういうスキャンダルが多い。

ベロ司教はまだ存命だ。

上のベロ司教のwikiの説明では、「2002年、病気療養のため東ティモールでの司教職を退き、2004年より宣教師としてモザンビークに赴任している」となっていて、スキャンダルには触れていない。

だが、バチカンはスキャンダルに早くから気づいていたらしく、病気療養は名目で、司教は二度と東ティモールに戻れないようだ。

いずれにせよ、このベロ司教のスキャンダルは、どうも東ティモールでは報道されていないっぽい。


アジア各地で格差に抗議する大規模デモ


ごく最近の東ティモールの話題といえば、これだ。

国会議員全員にトヨタのSUVを1台ずつ与える、という国の決定に、国民がブチ切れて大規模デモが起こった。


東南アジアで最も貧しい国の一つ東ティモールの議会は25日、ぜいたくな特権に対する学生主導の抗議デモを受け、国会議員経験者らの終身年金を廃止する法案を可決した。(中略)

発端は、2025年度予算で、国会議員65人全員に自動車大手トヨタの「ランドクルーザープラド」を1人1台購入する項目が承認されたことだった。この決定に貧困にあえぐ国民は激怒した。

世界銀行によると、東ティモールでは人口の40%以上が貧困状態にある。

先週には、数千人規模の抗議デモが2日連続で行われた。デモ隊の一部は暴徒化して警官隊に投石し、警官隊は催涙ガスで応戦した。

(AFP 2025/9/26)


しげ旅さんが平和な旅行を楽しんだ、わずか1カ月後に、こういうことが起こったわけである。

似たようなことがネパールで起こった、と連想する人は多いだろう。

昨年はバングラデシュで、今年はネパールで、抗議デモから政権が吹っ飛んだ。

それ以外でも、タイ、インドネシア、フィリピンで、この数カ月の間に大きなデモがあった。


タイの首都バンコクでは、28日に保守派の支持者などが集まってペートンタン首相の辞任を求めるデモが行われ、地元メディアによりますと、およそ1万7000人が参加したということです。
(NHK  2025/6/29)https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250629/k10014847431000.html


インドネシアでは、8月25日からジャカルタをはじめとする主要都市で学生を中心としたデモが発生している。今回のデモの主な要因は、国会議員の住宅手当の引き上げに対する反対だ。(中略)8月28日には、ジャカルタで大規模なデモが発生し、暴徒化した学生を鎮圧するために出動した機動隊の車両が、デモに参加していたオートバイ・タクシーの運転手と接触し、同運転手が死亡する事態となった。

(jetro 2025/9/1)


フィリピンでは国の洪水対策の公共工事をめぐって不正の疑いが相次いで発覚し、首都マニラで21日これに抗議する大規模なデモが行われました。デモには数万人が参加し、一部が警察と衝突してこれまでに17人が拘束されました。

(NHK 2025/9/21)https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250921/k10014929141000.html



思うに、アジアのあちこちで、既得権益者と、権益から見放された国民とのあいだの亀裂が、深刻化している。

特権を持つ者と、特権のない者との闘いだ。

学生、若者がデモで主導的役割を果たしているのも、共通しているようだ。

スマホやSNSなどが威力を発揮しているだろう。


日本も見せかけだけの民主主義国ーー総裁選でわかったこと


ネパールも、東ティモールも、貧しいから暴動が起こる、と説明されがちだ。

でも、貧富のギャップの固定化、既得権益者の身分の固定化などは、日本のような豊かな国でも同じだと思う。

今回の自民党総裁選なんか見ていても、「選挙」というのは体裁だけで、結局は党の重鎮たち、つまり政治権力者と、マスコミとが、国の行方を決めている構図がはっきりしている。


日本でも、選挙なんか、民主主義なんか、意味がないじゃないか、という不満が溜まりつつある。ここでも、その不満は若者ほど大きそうだ。

選挙で人気があった安倍晋三が殺され、それをマスコミは歓迎した。以後、選挙で人気がない政権の延命に、政治権力者もマスコミも腐心している。既得権を守りたいからである。

だが、日本は豊かな分、まだ激しいデモや暴動には結びついていない。

だから、舐められてもいる。


アジアはこの500年ばかり、西欧からの独立を優先させたため、国内的には専制的な政治の構図が温存されている。そのため、政権交代が民主的にどうしてもおこなわれない。

日本も東ティモールもネパールも、他の同様に名前だけの民主国も、抱えている闇は同じではないかと最近思えてきた。


優れたカトリック情報誌「ピラー」は、東ティモールの現状をルポし、以下のような「情報筋」の見解を結論にしていた。


「東ティモールの今、最大の問題が何だかご存知ですか? 誰もが国家に依存しているのです。東ティモールの人々が経済的に自由でない限り、彼らは国家の奴隷であり続けるでしょう」
Do you know what the biggest problem in East Timor is at the moment? Everybody is dependent on the state. As long as the Timorese people are not financially free, they will be slaves to the state
(The Pillar 2024/9/4)


しかし、日本人は、東ティモール人よりは経済的に自由かもしれないが、国家に依存し、「国家の奴隷」であることは、基本的に同じと思われる。

我々は、自民党とマスコミにより、国家の奴隷になっている。ある狭い空間に閉じ込められ、政治的自由を奪われている。

そう考えると、東ティモールがますます身近に思えてきた。



<参考>


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