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事業計画の用語 #7: ユニコーン、T2D3

今回は、事業計画の用語というより、SaaS のスタートアップが目指すビジネス規模や成長スピードのお話しです。


(1) SaaSビジネスの宿命

前回は、SaaSやスマホアプリが高いスケーラビリティを実現している、という話を紹介しました。

この「スケーラビリティが高い」という特徴は、SaaSビジネスの大きな魅力であると同時に、厳しい宿命ももたらします。

  • ユーザー数↑ ⇒ 利益↑
    一度システムを構築してしまえば、ユーザーが1万人でも100万人でも、追加でかかるコストは比較的小さく済みます。そのため、ユーザー数を増やすことが直接的に利益の増大につながります。

  • 利益↑ ⇒ 開発競争力↑
    多くのユーザーから収益を得られれば、その豊富な資金をさらなる開発に投資できます。逆にユーザ数が小さいと、競合に機能改善や新機能の追加で先行されやすくなり、小規模なサービスはますます不利になります。

  • ユーザー数↑ ⇒ ユーザー価値↑
    また、ユーザー数が増えることにより、そのユーザーコミュニティも豊かになります。その結果、個々のユーザーにとっても、ノウハウも得られやすくなるなど、様々な恩恵を得られることになります。

  • all or nothing に振れやすい
    こうした構造から、SaaS市場は勝者が多くの利益を得る「all or nothing (勝者総取り)」の傾向が強くなります。

そのため、SaaSのスタートアップは、できる限り大きな規模に、最速で到達することを目指す必要があります。

今回は、そんなSaaSビジネスの規模や成長スピードを示す際によく使われる「ユニコーン」と「T2D3」という言葉を紹介します。

(2) ユニコーンとは

ユニコーンとは、評価額が10億ドル (約1500億円) を超える、未上場のスタートアップ企業を指します。

2013年にベンチャーキャピタリストのアイリーン・リーが提唱した言葉で、それほど巨大な成功を収めるスタートアップが伝説上の一角獣 (ユニコーン) のように稀であることから名付けられました。

2025年9月現在、世界では1,200社以上、日本国内では11社のユニコーン企業が存在します。

単なる評価額の基準ではなく、業界を根底から覆すほどの破壊的イノベーションを起こし、巨大な市場を獲得した成功の証として、多くの起業家や投資家が目指す一つの象徴となっています。

(3) T2D3とは

T2D3とは、SaaSビジネスがいかにして評価額10億ドル (約1500億円) の企業へと成長できるか、その理想的な成長ペースと各段階で乗り越えるべき課題を示したフレームワークです。

これは、ベンチャーキャピタル Battery Ventures の Neeraj Agrawal 氏が、2015年に TechCrunch の記事で提唱した考え方です。
「T2D3」は Triple, Triple, Double, Double, Double の頭文字をとったもので、ARR (※) を軸にした以下の7つのフェーズで構成されます。

※ ARR (Annual Recurring Revenue): サブスクリプションのように、顧客から毎年継続して得られることが確定している売上 (収益) の総額を指します。

  • フェーズ1: 優れた PMF の確立

    • 顧客の「上位1、2番目のペイン」を解決できるプロダクトを開発

  • フェーズ2: ARR 200万ドルを達成

    • 主に創業者自身が営業を行い、最適なセールスの手法を確立

  • フェーズ3: ARR 600万ドルへ (Triple)

    • 創業者個人から脱却し、スケーラブルな営業チームを構築

  • フェーズ4: ARR 1800万ドルへ (Triple)

    • 営業部門に第二階層の管理職を導入

  • フェーズ5: ARR 3600万ドルへ (Double)

    • 海外展開

  • フェーズ6: ARR 7200万ドルへ (Double)

    • 事業運営上の課題が顕在化

  • フェーズ7: ARR 1億4400万ドルへ (Double)

    • 10億ドルの評価額とIPOが視野に

多くのトップSaaS企業がこれに近い成長曲線を描いてきたとされており、特に投資家がスタートアップの成長性を見極める際の、一つの重要なベンチマークとなっています。

(4) 参考情報


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