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「大いなる退出」レポートが示す育児危機とRTO(出社義務化)に追い詰められる働く母親たちをコワーキングが救う件:今日のノート#694(2025-10-12)


#今日のBGM

#今日のコトバ

"この世界に意味なんかないのに、なぜ私が意味のある絵を描かなきゃならないんだ?"
(パブロ・ピカソ)

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#「大いなる退出」レポートが示す育児危機とRTO(出社義務化)に追い詰められる働く母親たちをコワーキングが救う件

働く女性に関するショッキングな数字が並ぶ記事をいくつか目にした。

メインはこの記事。タイトルは「The Great Exit」、「大いなる退出」。誰がいなくなるのか?働くママさんたちだ。

それとこれ。

これらの記事からAIに手伝ってもらって要点をまとめた。


今、静かに、しかし確実に、アメリカの労働市場で深刻な地殻変動が起こっている。それは、企業が期待する「ニューノーマル」と、家庭が直面する「リアルな日常」との間に生じた、埋めがたい亀裂が生み出した現象だ。

この現象は、専門家の間では「The Great Exit」(大いなる退出)と呼ばれ、その主役は、若い母親たち

大手コンサルティングファームであるKPMGが2025年10月に発表したレポート「The Great Exit」は、この危機的な状況に警鐘を鳴らしている。未就学児を持つ若い女性、特に35歳未満の母親たちが、労働市場からかつてない規模で流出し続けている。

この退出劇の背景には、アメリカ特有の二つの構造的な要因が複合的に作用している。一つは、深刻化する育児危機(Childcare Crisis)。そしてもう一つは、パンデミック後の柔軟な働き方を奪い返す、企業によるオフィス回帰(RTO: Return to Office)の義務化だ。

加速する「The Great Exit」の現実

KPMGのレポートが指摘する「大いなる退出」は、コロナ禍が落ち着き、企業が経済活動を再開したにもかかわらず、特定の層の女性労働人口が回復どころか減少している異常事態を示している。

彼女たちの退出は、単に「仕事を辞めた」という個人の選択の結果ではない。むしろ、社会的なインフラの欠如と、企業の硬直的な労働環境が、最も合理的で、避けられない選択肢として「退職」を提示している構造的な失敗の結果だといえる。

育児コスト:働くことが「ぜいたく」になる逆転現象

母親たちが最初に直面するのは、天文学的な育児費用だ。

Fortune誌が2024年4月に報じたところによると、アメリカの育児費用の高騰は目を覆うばかりだ。一部の州では、フルタイムの育児費用が大学の学費を上回るほど高額になっているという。特に、乳幼児期の子どもを持つ家庭にとって、公的な支援が極めて限定的なアメリカでは、このコストは家計を直撃する。

KPMGはレポートで「保育危機は今に始まったことではない」と指摘している。しかし、保護者が仕事に復帰し、より多くの保育サービスを求めるようになると、料金は再び高騰し始め、保育料は全体的なインフレ率の約2倍のペースで上昇している。これは、供給上の制約と、事業者が家庭に転嫁する運営コストの上昇を反映している。

この状況は、すでに女性の労働参加率に影を落とし始めている。KPMGの文書によると、大卒でごく幼い子どもを持つ母親の労働力参加率は、2023年の80%近くから2025年8月には約77%にまで低下している。

仮に、夫婦のどちらかがフルタイムで働いたとしても、その給与の大部分、場合によってはすべてがチャイルドケアの費用に消えてしまうケースが多発している。

この状況は、働く母親にとって冷酷な「計算」を強いる。

  • 年収 $50,000の母親

  • フルタイム育児費用 $25,000/年

この場合、手取りから育児費用を引いた実質的な収入は大幅に減少し、さらに通勤費や仕事着代などの「働くためのコスト」を差し引くと、残るのはわずかだ。結果として、「自分が働かなくても、育児を自分で担った方が経済的に合理的だ」という逆転現象が発生する。

これが、アメリカの若い母親を労働市場から追い出す第一の、そして最も強烈な引力となっている。

RTO義務化:リモートワークという救命ボートの喪失

育児危機という水中に沈みかけている母親たちにとって、パンデミック中に普及したリモートワークは、唯一の救命ボートだった。

allwork.spaceやFortune誌が言及するように、リモートワークは、通勤時間をゼロにし、急な子どもの病気や学校のスケジュール変更、送り迎えといった突発的な育児ニーズに対応するための「時間的な柔軟性」を提供した。母親たちは、この柔軟性を活用することで、キャリアを中断せずに済んだ。

しかし、2024年後半から2025年にかけて、多くの大企業が「コラボレーションの回復」「企業文化の維持」を理由に、週3日以上の出社を義務化するRTO(Return to Office)ポリシーを強化し始めた。

この企業側の動きは数字に明確に表れている。Fortune 500社におけるフルタイム勤務の必要性は、2024年末の13%から2025年第2四半期には約24%へと急上昇した。パンデミックの間とその後に多くの母親を仕事から遠ざけていた柔軟性が損なわれている状況だ。

このRTO義務化は、育児コストの高騰と組み合わさることで、爆発的な離職の引き金となった。

義務化が強化されるにつれて、幼い子どもを持つ母親の参加率はさらに低下した。KPMGによると、幼い子どもを持つ大卒の母親の参加率は、およそ69.7%から2025年半ばには66.9%にまで低下している。

働き方の柔軟性を失った母親たちは、再び時間と場所に拘束されることになった。朝の保育園の開園時間とオフィスの始業時間、夕方の終業時間と閉園時間、さらにそれに加わる通勤時間。このタイトなスケジュールは、ひとたび子どもが熱を出したり、送迎ルートで渋滞が発生したりするだけで、全体が破綻してしまう。

柔軟性を失った環境で、高額な育児費用を支払う意味があるのか。多くの母親の答えは「ノー」だった。KPMGのレポートは、この「柔軟性の喪失」が、特に優秀で経験豊富な若い女性たちのキャリアを断念させる最終的な一押しとなっていると分析している。

企業と経済が支払う代償

「The Great Exit」は、辞めていった母親たちだけの損失ではない。彼女たちを失った企業と、マクロ経済全体が、長期的かつ甚大な代償を支払うことになる。

失われる知と経験の資本

退職するのは、往々にして高い教育を受け、企業での経験を積み始めたばかりの、ポテンシャルのある若手〜中堅の女性人材だ。彼女たちは、出産・育児というライフイベントを機に、最も生産性が高まり始める時期に労働市場から去ってしまう。

企業は、彼女たちの採用と育成に投じた多大なコストを失い、さらに多様性という観点でも後退を余儀なくされる。ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン(DEI)の目標を掲げる企業にとって、「The Great Exit」は、その目標達成を根本から覆すものだ。

Fortune誌は、この問題が単なる人事の問題ではなく、経済全体の生産性に関わる問題だと指摘する。競争力を保つべき企業が、優秀な人材プールを自ら縮小させているのだ。

マクロ経済の成長鈍化

労働市場からの若い母親の流出は、経済全体に大きな影を落とす。

  • 労働力不足の深刻化: アメリカでは、既に多くの産業で人手不足が指摘されている。そこに、高いスキルと意欲を持つ若い女性たちが加わることで、労働力供給のボトルネックはさらに深刻化する。

  • 消費の冷え込み: 働くことを諦めた母親たちの世帯収入は減少する。これは、可処分所得の減少に直結し、特に高インフレ下のアメリカ経済において、消費を冷え込ませる要因となる。

「The Great Exit」は、単なる一つの社会トレンドではなく、持続可能な経済成長を阻害する構造的な病理だといえる。企業が旧態依然とした働き方(RTO義務化)に固執し、政府が育児支援というインフラ投資を怠った結果、優秀な人材の労働参加機会の損失という形で、社会全体がコストを支払っている。

…と、ここまでが、ちょっとマズイことになっている、という向こうの記事のまとめ。では、日本ではどうなのか?

日本への波及—「対岸の火事」ではない深刻な予兆

日米の育児環境に見る決定的な違いと共通の壁

日本は、公的な保育制度が整備されていて、アメリカのように保育園の費用が給与の大部分を占めるほどの「コストの危機」には直面していない(と思われる)。

しかし、日本の働く母親には、別の深刻な壁が立ちはだかっている。

  1. 時間的な柔軟性の欠如:

    • アメリカの母親たちが失った「リモートワークによる時間的柔軟性」は、日本では元々根付きにくいものだった。日本の企業文化は「対面での長時間労働」を暗黙の前提としているケースが依然として多い。

    • 時短勤務制度はあっても、昇進や重要なプロジェクトから外される「マミートラック」のリスクが伴う。

    • 子どもの急な病気や、保育園・学童の開園・閉園時間に合わせた「時間厳守」の制約は、アメリカと同じく日本でも深刻なストレス源だ。

  2. 「小1の壁」の強固さ:

    • 日本の母親たちが最も離職を決断しやすいタイミングの一つが、子どもが小学校に入学する「小1の壁」だ。保育園と比べて学童保育の受け入れ時間が短縮され、利用条件が厳しくなり、学校行事や長期休暇の対応が格段に難しくなる。

    • アメリカの「高すぎるコスト」という壁に対し、日本の壁は「時間的・制度的な硬直性」という形で現れる。

日本版「Great Exit」のシナリオ

もし、コロナ禍で導入された限定的なリモートワークやフレックスタイム制度が、多くの企業で撤回され、本格的なRTOが強制された場合、日本でもアメリカと同じ現象が加速すると思う。

日本の企業は、アメリカの企業が「企業文化の維持」を理由にRTOを強化したのと同じように、「日本的なコミュニケーション」「ハンコ文化」など、前近代的な理由で出社を求める可能性が高い。

このとき、日本でも働く母親たちは、次のような計算を強いられる。

  1. 「時間効率が極めて悪い」: 通勤時間と硬直的な労働時間が加わることで、仕事と育児の両立に必要な「時間的余力」が完全にゼロになる。

  2. 「制度に縛られる」: 短時間勤務を選べばキャリアが停滞する。フルタイムを選べば、子どもの急な事態に対応できない。

この結果、彼女たちは「このままでは家庭も仕事も破綻する」と判断し、「自主的な退職」という形で労働市場から退出する道を選ぶ。日本版「The Great Exit」だ。

日本はただでさえ少子高齢化による労働力減少が深刻だ。そこで、貴重な生産年齢人口である若い母親たちが、「育児の困難」を理由に労働市場から退出していくことは、経済成長の芽を自ら摘む行為に等しい。

対処すべきは「支援」ではなく「働き方の設計」

アメリカの経験が示すのは、育児支援の重要性はもちろんのことだが、それ以上に「働き方の柔軟性」が、女性の労働参加を左右する決定的なファクターだということ。

母親たちは、企業に「育児を考慮した特別な配慮」を求めているのではない。求めているのは、「いつ、どこで働くか」という裁量権であり、これが育児の予期せぬ事態への対応を可能にする。

日本企業が取るべき行動は、アメリカの失敗を繰り返さないことだ。

  1. RTOの合理的根拠の提示: 単なる「慣習」や「文化」ではなく、「この業務はなぜオフィスでなければならないのか」という合理的根拠がなければ、RTOを義務化するべきではない。

  2. 成果主義への移行: 労働時間ではなく、明確な成果で評価する仕組みを確立し、短時間勤務やリモートワークの選択がキャリア停滞に直結しないようにすること。

  3. 男性育児の前提化: 育児は女性のタスクという暗黙の前提を打ち破り、男性の育児休暇取得を義務化し、働く父親たちも同様に柔軟な働き方を求められる社会にすること。

失われた人材を取り戻すために

KPMGのレポートが突きつけた「The Great Exit」は、アメリカが抱えるチャイルドケアのインフラ問題と、企業がもたらす柔軟性の欠如という、二つの現代的な矛盾の結果だ。

働く母親たちが労働市場から退出していくというこの現象は、個々の家庭の問題に留まらず、社会全体の人的資本の損失であり、経済成長への重い足枷となる。

日本は、アメリカの轍を踏まないよう、この教訓を深く受け止める必要がある。企業によるRTOが避けられないとしても、柔軟な働き方を担保するための「第三の居場所」の整備を進めるべき。

つまり、コワーキングスペースだ。

自宅では集中できず、かといってオフィスに縛られたくない働く女性にとって、コワーキングスペースは、通勤時間を削減しつつ、高い生産性を保つための現実的な解となる。

ただし、コワーキングスペースは単なる物理的な「ハコ」ではない。それは、同じように仕事と育児の両立に奮闘する母親たちが集うコミュニティとして機能することが極めて重要。

彼女たちはそこで、悩みを共有し、情報を交換し、共感を得ることができる。このネットワークこそが、孤立しがちな子育て中の女性にとって、精神的な支えとなり、離職を防ぐセーフティネットとなる。

ここで、そういう取り組みの先進事例を貼っておこう。

我々が取り組むべきは、「育児の壁」を緩和するための制度改革と、何よりも「時間と場所にとらわれない、柔軟で生産的な働き方の設計」であり、そのコミュニティ機能を持つ第三の居場所としてのコワーキングスペースを日本のどこのまちにも整備すること。

そこでのカツドウは仕事に限らない。蛇足だが、コワーキング曼荼羅には「育児」というテーマも挙げられている。

「大いなる退出」は社会的損失が大きい。日本社会の持続可能性そのものを脅かすことにもなりかねない。それほど、「働く母親」の存在が重要であるということ。

その彼女たちの拠り所として、コワーキングの果たす役割は極めて大きい。

ということで、今日はこのへんで。

(トップ画像:Stephen Andrews

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