【S1|形のルール】口が消えた #3
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第3話|私たちは、機能を見ていない
自動車のグリルは、空気を取り込むための装置だった。
そう説明されれば、
誰もが納得する。
けれど、私たちは本当にそれを“装置”として見ていただろうか。
街ですれ違う車を見て、
吸気効率を想像したことがあるだろうか。
たぶん、ない。
私たちは、
怒っている、と感じていた。
強そうだ、と感じていた。
やさしそうだ、と感じていた。
機能を理解していたのではない。
安心していたのだ。
見慣れた前面に。
見慣れたバランスに。
見慣れた“顔”に。
長い時間をかけて、それは冷却装置ではなく、
判断の拠り所になっていた。
だから、それが消えたとき、視線が落ち着かない。
失われたのは機能ではない。
拠り所だ。
私たちは、性能ではなく、前提に寄りかかっていた。
では、前提が消えたとき、
何を拠り所にすればいいのだろう。
つづく。
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