【S3|身体性の哲学】ココロに響く声 —— 浸透する波長というデザイン #5
第5回|声とデザイン
デザインの判断は、
思っているよりもずっと速い。
資料を読み込む前に、
要件を整理する前に、
もう方向は決まっていることが多い。
この案は、違う。
このまま進むと、うまくいかない。
そう感じる瞬間がある。
理由は、あとからいくらでも説明できる。
けれど、判断そのものは、もっと早く起きている。
私は、デザインを「考えて」決めているつもりでいた。
けれど実際は、感じ取ってから、
考えている。
順番は、いつも逆だ。
クライアントの声。
チームの声。
打ち合わせの空気。
その中に、わずかな違和感が混じることがある。
言葉は丁寧だ。要望も理解できる。
それでも、どこか引っかかる。
その感覚は、デザインを始める前に、すでに現れている。
声には、余白がある。
言葉にされていない部分。
言い切られなかった躊躇。
強く言わなかった理由。
そういったものが、声の中には残っている。
デザインとは、
見えるものを整える仕事ではない。
見えないものを、
そのまま無視しないことだと思っている。
だから私は、声をよく聞く。
発言の内容だけではなく、
その言葉が出てくるまでの「間」や、言い切らなかった部分も含めて。
違和感を感じたとき、すぐに修正案を出さない。
まず、その違和感がどこから来ているのかを、
静かに確認する。
焦って形にすると、だいたい失敗する。
うまくいくデザインは、説明が少なくて済む。
なぜなら、判断の多くが、
言葉になる前に共有されているからだ。
声とデザインは、
よく似ている。
どちらも、押しつけるものではなく、
浸透するものだ。
正しさで選ばれたデザインよりも、腹に落ちたデザインのほうが、
長く残る。
私は、そういう判断を信じて、
仕事をしている。
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