コミュニティは「管理」するものではなく「育てる」ものだ|『GET TOGETHER』レビュー
「グレートリーダーズ・クリエイト・モアリーダーズ」。この一文がこの本の核心を突いています。コミュニティを作るとは、自分が中心に立ち続けることではなく、自分の灯火を渡せる次のリーダーを育て続けることだというのが、本書の最も大切なメッセージです。
今回取り上げたのは、Bailey Richardson、Kevin Huynh、Kai Elmerらが著した『GET TOGETHER』です。コミュニティをどう立ち上げ、どう育て、どう継続させるかを、TwitchやBeyoncéのBeyhiveなど多様な事例をもとに解説しています。英語の本でしたが、今回の輪読会では「今まで読んできた中で一番理解しやすかった」という声が出るほど、具体的でシンプルな内容でした。
この本を読むべき人
コミュニティや組織を立ち上げたい、または育てたい人
スタートアップやプロダクトにコミュニティ要素を取り入れたい人
なぜコミュニティが続く組織と続かない組織に分かれるのかを知りたい人
リーダー育成やエンゲージメントに悩んでいる人
輪読会で議論したこと
コミュニティを始める2つの問い
本書はコミュニティを作る前に、まず2つの問いに答えることを求めます。「誰を集めたいのか」、そして「なぜ集まるのか」。この2つが明確でない限り、どんな施策も空回りします。
そして初期のコアメンバーを選ぶ際も、2つの基準を使います。「誰がエネルギーを持っているか」「コミュニティが停滞したときも残り続けてくれるのは誰か」。最初から熱量の高い人を中心に据えることが、後のリーダー育成につながります。
ファースト・アクティビティをデザインする
コミュニティの立ち上がりを決めるのが「最初の体験」です。本書はそのデザインに3つの条件を課しています。目的を持つこと、参加型にすること(メンバーが共通の目的に貢献できる余地を作ること)、そしてリピート可能であること。
Twitchの事例が印象的でした。メンバーはアクティビティを通じて、コミュニティの目的に自然と気づいていく。「グループでやったほうが良いことは何か」「メンバーが求めているものは何か」という問いからデザインが始まります。
輪読会でもまさにここが一番今やっていることに関連するという話になりました。プロダクトやビジネスにコミュニティ要素を組み込もうとするとき、最初の体験をどう設計するかが、その後の定着率と熱量をほぼ決めてしまう。
コミュニティをつなぎとめるもの
メンバーが最初に集まる理由は「人」で、戻ってくる理由も「人」です。そのために必要なのが、話す場を作る3要素です。スペース(プラットフォーム)、プロンプト(対話のきっかけ)、ストラクチャー(ルールとファシリテーション)。
さらにコミュニティを長く続けるための核になるのが「ストーリー」です。本書では「パブリック・ナラティブ」として3つに分解されています。自分自身のストーリー(Story of Self)、私たちのストーリー(Story of Us)、そして今のストーリー(Story of Now)。この3層のストーリーが共有されているとき、人は「ここにいる理由」を言語化できます。
バッジ・リチュアル・言語でアイデンティティをつくる
コミュニティが成熟するにつれて大切になるのが、メンバーのアイデンティティをどう育てるかです。本書はここで3つの問いを投げかけます。どんなバッジ(呼称や象徴)を推進するか、どんなリチュアル(儀式や習慣)を大切にするか、どんな言語(共通のキーワード)を使うか。
BeyoncéのBeyhive、BTSのARMYなど、長く続くコミュニティには必ず独自のバッジがあります。輪読会では「バッジとは所属の証明であると同時に、同じバッジを持つ仲間との共通言語にもなる」という話になりました。個人のアイデンティティと共同体のアイデンティティを同時に満たす仕掛けとして、バッジは非常によくできています。
リーダーを育てることの難しさ
本書が最も強調するのが「リーダーを育てよ」というメッセージです。そのために問うべきことは3つ。自分のコミュニティにおけるリーダーの条件は何か、どうやって次世代のリーダーを発掘するか、そしてリーダーへのフィードバックをどう機能させるか。
輪読会では実際にコミュニティを運営している体験から「100人を超えるとエンゲージが落ちていく」という現象が共有されました。増えれば増えるほど知らない人が増え、心理的安全性が低下する。解決策として、参加者同士を個別に繋いでいくこと、小さなタスクをメンバーに担ってもらうこと、共同リーダーを複数置くことが実践例として出ました。
感想
この本を読んで一番印象に残ったのは、コミュニティとアソシエーションの違いという視点です。本書が説くのはどちらかというと「目的を持った集まり」であり、別の資料で言われていた「感情重視がコミュニティ、合理性重視がアソシエーション」「目的なしがコミュニティ、目的ありがアソシエーション」という定義と照らすと、本書の描く世界はアソシエーションに近い部分もある。それでも、ストーリーとアイデンティティと人の繋がりを重視するところに、コミュニティとしての本質が宿っています。
「人はコミュニティに集まり、人のために戻ってくる」。この一文がすべてを言い表していると思いました。どんなに優れたプラットフォームや施策があっても、最終的に人を動かすのは人との繋がりと、そこに感じるアイデンティティです。これは単なるコミュニティ論ではなく、組織論であり、プロダクト設計の話でもあります。
この記事で掲載した引用は、Glaspの機能を使ってエクスポートしています。Kindleのハイライトをエクスポートすることに興味がある方は、以下の記事をご覧ください。
また、この本のトップハイライトは以下のリンクよりご覧ください。
Get Together: How to build a community with your people
📚 この本が好きな人におすすめの記事
▶ Facebook・Airbnbが実践したグロース戦略の全貌
▶ 習慣を設計するとはどういうことか
▶ 「伝道師」か「傭兵」か|Airbnb創業者が証明した情熱の力
