5店舗から世界ブランドへ|スタバCEOが語る社員本位の経営
わずか5店舗の小さなコーヒー豆販売店が、どうやって世界中に展開するブランドになったのか。本書はスターバックスのCEOであるハワード・シュルツが自ら語る成長の記録です。イタリアのエスプレッソ文化に衝撃を受けた一人の男が、アメリカにその体験を持ち帰り、反対されながらも自分の信念を貫き通した物語が描かれています。
印象的だったのは、この人の誠実さとバランス感覚です。前回の輪読会で読んだウーバーの創業物語がかなりはちゃめちゃだったこともあり、温度差がすごい。シュルツの経営にはギラギラした感じがなく、夢想家と経営者の両方の側面をうまく持ち合わせている人だと感じました。従業員をパートナーと呼び、健康保険制度やストックオプション(ビーンズストック)を導入し、フランチャイズをギリギリまで禁止した。資本主義の権化のような国で、30年前にこれをやり切ったというのは本当にすごいことです。
著者プロフィール: ハワード・シュルツ
ハワード・シュルツ(Howard Schultz, 1953年7月19日 - )は、アメリカ合衆国ニューヨーク出身の実業家。世界的なコーヒーショップチェーン・スターバックスコーポレーションを成長させた人物として知られる。同社の元会長兼社長兼CEO。
著者プロフィール: ドリー・ジョーンズ・ヤング
ドリー・ジョーンズ・ヤングは歴史小説、ビジネス、インスピレーション、口述歴史、子供向けの本など、多岐にわたる本を執筆しています。アジアの元外信記者として、彼女は文化や世代間の橋渡しを目指しています。
この本を読むべき人
「社員を大切にする経営」に興味がある人
ブランドがゼロからどう作られるかを知りたい人
カフェ・飲食業界で起業や経営に関心がある人
感想
個人的には好きな本
前回がウーバー戦記ではちゃめちゃだったが、今回は堅実でカルチャーも良く、良いと思った。
サンフランシスコにいた時は安いコーヒーで、IT Companyという印象だった。この本で書かれているスターバックスは、ちょっと違うなと。シアトルだともっと、大事にされている感があった。
ただ、一号店では実際に色々説明されて圧倒された記憶がある。
良い言葉が多い本
ハワードの言葉もそうだし、引用で使われている言葉も良い。
気に行った引用は、以下の引用のセクションで表示しています。
心構えや価値観
実行力・反骨精神
出身が関係していたりもするのだと思う。
ひたむきさ・誠実さ
パートナーを大事にすることで、社員のモチベーションや貢献力を上げ、結果として会社全体が上がっていく。
準備の大切さ
この人は成長も求めるけど、それに至るにはそれだけの器や能力が求められるというのをちゃんと理解して、先手を打っているのがすごく感じられる。
経営陣がいないといけない。製造装置がどれだけないといけないのように。
会社の制度
ビーン・ストックは素晴らしい
資本主義の権化の国で、このような制度が出てくるのは画期的だと思う。
従業員に配られたストックオプションはどれぐらいの割合だったのだろうか?一般的なスタートアップだと、初期は10%はストックオプションのために準備している。
健康保険のカバー
採用活動はどのようにしていたのだろうか?
Culture-fitとかはどのように見極めるのか、何かシステムがあったのだろうか?
カフェ・アレグロ
University Districtにあり、よく行っていた。
物語に出てきて懐かしさを覚えた。
お店で実際に話すのは10%ぐらい。しかし、来る人は何かつながっている感を感じている人がほとんど。
上場してどう思ったのだろう?
価値観の維持はできたのだろうか?
イル・ジョルナーレの時のイタリアの本物思考のようなな価値観は、維持されたのだろうか?
フラペチーノとかは、元の価値観に沿っているのか?
コスト管理とか厳しくなったのでは?
輪読会で議論したこと
人生はニアミスの連続である
全員が一番印象に残った言葉として挙げたのがこのフレーズです。「人生はニアミスの連続と言ってもいい。我々が幸運とみなしているものがあるとしたら、つまり幸運ではない。幸運とはチャンスを逃さず、自分の将来に責任を持つことに他ならない。他の人たちには見えないことに目を凝らす。誰が何と言おうと自分の夢を追い続けることである」。
この言葉は経験があるからこそ重みがあります。ただ、同じ言葉でも誰が言うかは大事です。知らない人に言われたらピンとこなくても、イタリアでコーヒー文化に感動してアメリカに持ち帰り、周りの反対を押し切って形にした人の言葉だからこそ響きます。コンテクストの大切さを改めて感じました。
こだわりと柔軟性のバランス
スターバックスの成長を支えたのは、製品へのこだわりを持ちながらも柔軟に変化できる姿勢でした。フラペチーノの導入は本来のイタリア式エスプレッソ文化へのこだわりとは相容れないものでしたが、結果的にはそれが新しい顧客層を開拓しました。
一方で、ここまで大きくなってしまった今のスターバックスに対する違和感もあります。コーヒーの説明をされたことがない。流れ作業でオペレーションしているように見える。ブルーボトルのようにローカルでクオリティの高いところが出てきたら、グローバルオペレーションでは勝てない部分もある。フラペチーノは絶対原価が安いだろうとか、サードプレイスを掲げているなら別にコーヒーじゃなくてもいいのではないかとか、上場後の価値観の維持はできたのかとか、本に書かれていない部分への疑問も議論になりました。
誠実さという最大の武器
「誠実さに欠ける人物とは付き合わないことにしている。長い目で見るとそれが正しいことがわかる」というシュルツの言葉が深く響きました。誠実さは後々ボディブローのように効いてくるし、逆もまたしかりです。
人に向き合う姿勢も印象的でした。パフォーマンスが出ない社員に対して、いきなり解雇するのではなく、自分が感じている懸念や期待していることをちゃんと本人に伝えてあげる。それこそが透明性の文化であり、それでうまく成長するかもしれないし、合わなかったとしても誠実なプロセスを踏んでいます。優しさとは考えることだという話も出ました。何も考えずに優しい人なんていない。誠実で優しい人は何かしら深く考えている人です。
情熱を見つけた人は幸せである
シュルツがイタリア旅行で受けた衝撃と、そこから何十年も情熱を持ち続けたことについて、「人生何が起こるかわからない」という話になりました。圧倒的にやりたいことを見つけて、楽しくて、しかも長期で続けていける人は本当に幸せです。大半の人は何をしたらいいかわからないまま過ごしていく中で、インターナルなドライブを持って長期的思考で走り続けられる人は珍しい。
ブルーハーツの甲本ヒロトさんが言っていた話も出ました。「ミュージシャンの夢は音楽をやることだろう。金持ちになることじゃないんだから。それだったらお前ら毎日夢叶ってるじゃないか。俺も毎日夢が叶っている」。やりたいことをやり続けていること自体が夢の実現であるというマインドセットは、スターバックスの話にもそのままつながります。
行動的に考え、慎重に行動せよ
本の中でさらりと出てきた「行動的に考え、慎重に行動せよ」という言葉がグサッときました。考えるときはすごく行動的にする。でも実際の行動は慎重に。この一見矛盾するようなバランスが、シュルツの経営スタイルそのものだと思います。
また、「どのようなシグナルを送り、いかなる価値観を植え付けるかという問題を決して軽んじてはならない。パートナーと組む時も社員を採用する時も、あなたと同じ熱量と意欲と目標を持つ人物を選ぶことが必要だ」という言葉も印象的でした。創業初期に誰と一緒にやるかで、その後の会社の文化が決まる。これはスタートアップに限らず、あらゆるチームに通じる話です。
引用
「人生はニアミスの連続と言ってもいい。われわれが幸運と見なしていることは実は単なる幸運ではないのだ。幸運とはチャンスを逃さず、自分の将来に責任を持つことにほかならない。ほかの人たちには見えないことに目をこらし、だれが何と言おうと自分の夢を追い続けることなのである。」
私は毎日、何百回となく自分の精神と肉体が、 すでに亡くなった人々や生きている人々の労働によって支えられていることを思い返している。 だから、私も同じように人々のために献身しなければならないのだ。 ――――アルバート・アインシュタイン
私はこの危機を通してもう一つ大切なことを学んだ。それは銀行から借金して資金をつくるのは最善策ではないということである。銀行から借金する企業家が多いのは、そうすれば資金を自由に動かせると思っているからだ。株式を発行して資金を集めた場合、自分の思い通りの経営ができなくなる危険性がある。
成功の要素にはタイミングとチャンスがある。しかし、本当は自分自身でチャンスをつくり出し、ほかの人たちに見えない大きなチャンスが見えたときには、いつでも飛びつけるように準備をしておくべきなのだ。
夢見ることは大切だが、絶好のチャンスと思ったときには、慣れ親しんだ場所を飛び出して自分自身の道を発見しなければならない。
「成功する人には、ひたむきさが感じられる」とロンは言う。「そういう人は全力でリスクに挑戦する。大きなリスクに自分から立ち向かう人は少なくなった」。
直感が物を言うことは間違いない。最高のアイデアとは、ほかの人たちよりも先に必要性を発見する鋭い感覚と心構えにほかならない。
本当の人間の価値は、すべてがうまくいって満足しているときではなく、 試練に立ち向かい、困難と戦っているときにわかる。 ――――マーティン・ルーサー・キング・ジュニア
会社を組織してみれば、自分一人では何もできないことがすぐわかる。心から信頼できる協力者、自分とは違う能力を持ち、価値観が同じ人物を発見できれば、さらに強力な企業を築くことができる。
会社の草創期にどのようなシグナルを送り、いかなる価値観を植え付けるかという問題を決して軽んじてはならない。パートナーと組むときも社員を採用するときも、あなたと同じ情熱、意欲、目標を持つ人物を選ぶことが必要だ。そういう人たちと一緒に目標を追求すれば大きな力を発揮できる。
会社を支える人々が誠実であれば、さらに大きく成長できるのだ。
羅針盤は物質的財産ではなく、心に刻み込んだ価値観と株主に長期的な利益を保証する事業への意欲である。一歩一歩、約束した以上の実績を積み上げていく。長い目で見れば、それが成功するための唯一の秘訣なのである。
われわれが本当に満たしている欲求とは何なのか。多くの顧客が、長い列に並ぶこともいとわずスターバックスに足を運んでくれる理由は? テイクアウト用のカップを手にしたまま、なかなか立ち去ろうとしない人が大勢いるのはどういうわけなのか。
この記事で掲載した引用は、Glaspの機能を使ってエクスポートしています。Kindleのハイライトをエクスポートすることに興味がある方は、以下の記事をご覧ください。
また、この本のトップハイライトは以下のリンクよりご覧ください。
この本が好きな人におすすめの記事
▶ 『SHOE DOG 靴にすべてを。』フィル・ナイト レビュー
▶ ウーバーが壊した常識と壊されたモラル|『WILD RIDE ウーバーを作りあげた狂犬カラニックの成功と失敗の物語』レビュー
▶ 夢を追い続けた二人の自転車屋|デヴィッド・マカルー『ライト兄弟』レビュー
