追放からの復活、そしてApple再建|ジョブズ公式伝記【後編】レビュー
前編はこちら:
2巻まで読むと、壮絶な人生でした。1巻でも十分に強烈でしたが、2巻はAppleへの復帰からiPod、iPhone、そして死までが凝縮されていて、語りたいことがたくさん出てきます。
改めて10年前に読んだ時どう思ったのかメモを探しましたが、今のような詳細な読書感想を書いていなくて、すごくもったいないなと思いました。2巻を全部読んでからスタンフォード大学のスピーチを見ると、あのスピーチにコアが凝縮されていることがわかります。
著者プロフィール: ウォルター・アイザックソン
1952年生まれ。ハーヴァード大学を経て、オックスフォード大学にて学位を授与。英国『サンデータイムズ』紙、米国『TIME』誌編集長を経て、2001年にCNNのCEOに就任。ジャーナリストであり伝記作家。2003年よりアスペン研究所理事長。ベストセラー『ベンジャミン・フランクリン伝』『アインシュタイン伝』『キッシンジャー伝』などがある。
感想
2巻まで読んで、語りたいことがたくさん出てきたなと。
10年前に読んだ時のメモはあったけど、今みたいな詳細な読書感想文は書いていなかったので勿体無いなと思った。
Stanford Universityでのスピーチを見てから、ジョブズの伝記を読んだけど、やはりコアはあのスピーチに凝縮されているなと思った。
改めて後世に遺していくものは何か・何をしていくかと考えた。
Appleの復活劇
圧倒的なファウンダーモード
NeXTではビジネスとしてはうまく行かなかったのに、なぜAppleでは戻った瞬間に復活させることができたのか。
その能力があれば、NeXTうまく行かせることができたのではと思う。
また、NeXT時代と何を変えたのか。
アメリオなぜCEOになれたんだ
魅力/カリスマ性
記事で褒められると大喜びして、それをメールでたくさんの人に送りまくる。
現実歪曲フィールド
意志の強さ
大泣きする
相手にとって魅力的になれるという能力
おかしな習慣
断食や菜食主義など
よくこんなので世界一の会社を作れたなと。
Connecting dots
Appleはいきなり魔法のように素晴らしい製品を作ったと外からは見えるけど、内部を見てみると、一歩一歩の小さなイノベーションの積み重ねと、そこから来るアイデアの飛躍なんだろうなと。
死を普段の生活で意識するようになった後のジョブズ
妻への感謝
生への希望
歳を取ったというのもあると思うけど、1巻のジョブズとは全然違う性質が見て取れる。
ジョニー・アイブ
ジョブズのジョニー・アイブへの賞賛がすごい。
すごいデザインの才能なんだろうなと。こういう人の脳内を見てみたい。
ボブ・アイガー
ディズニーのCEOとして、Pixarの買収を成功させた人物。
前任が良くなかったというのもあるけど、今回の本で何か気になる人物。
どういう思想で動いているのか、何が原動力なのか気になるので、本を読んでみたい。
日本
頻繁に日本へのフライトだったり、旅行だったりが出てくるのが嬉しい。
ソニーや富士通など、仕事で行くことも多かったけど、京都の禅寺や寿司屋(穴子)・蕎麦屋など、プライベートで来ているのも素晴らしいなと。
禅寺が究極まで無駄を省いたシンプルさ・美を追求して表現しており、それがアップルの製品にも表れている。
ジョブズ無き後のアップル
ゲイツの言う通りになるのか
「ジョブズがいる間は統合型のアプローチがうまくいく」
今もまだ世界一の会社ではあるけど、今後どうなるかは未定。ジョブズが亡くなってから、今年で14年。
Apple製品を見ていると、妥協と呼べるものが増えてきているのではないか。
考えたこと
死の間際ということもあったのかもだけど、振り返ってみると、ジョブズの根本にある価値観、「素晴らしい製品を作りたい」・それを通して「人類全体を前に進めたい」というのが感じ取れて感動した。このジョブズの根底にある部分を知れただけでこの本に価値があると思ったし、世界一の会社を作った人物がそのような魂を持っていたというのが大きい自信に繋がった。
一番好きな引用なのが、最後にジョブズ自身が語ったところにある「先人が遺してくれたものに本物をなにか追加するにはそうするしか方法はないんだ。 1世代あるいは 2世代あとであっても、意義のある会社を作るんだ。」「僕がいろいろできるのは、同じ人類のメンバーがいろいろしてくれているからであり、すべて、先人の肩に乗せてもらっているからなんだ。そして、僕らの大半は、人類全体になにかをお返ししたい、人類全体の流れになにかを加えたいと思っているんだ。」「僕らの先人が遺してくれたあらゆる成果に対する感謝を表現しようとするんだ。」
唯一無二だと思われていた、「先人の肩に乗せてもらっている」と語っていたスティーブ・ジョブズ無き後もAppleは存在しているし、偉大な起業家のバトンはジョブズから別の起業家に渡っていく。唯一無二だとみんな思いたがるし、実際そうなんだけど、その人がいなくても社会は回る。世の中ってうまく出来てるなと。だとすると、自分たちができることって何なんだろうなと。
色んな人にこういう話をしていると、人類社会を前に進めるとか長い目で見て意義のあることをするというOSを持っていない・インストールできない人がいる事がわかる。これは何なんだろう。
ジョブズも「スタートアップを興してどこかに売るか株式を公開し、お金を儲けて次に行く──そんなことをしたいと考えてる連中が自らを「アントレプレナー」と呼んでるのは、聞くだけで吐き気がする。」と言っているけど、自分もこういうマネーゲームや賞賛のために時間を使うというのは賛成できないなと。
よく参考にしている企業として、ディズニーと任天堂を挙げているけど、やはりディズニーがすごいなと改めて思った。
ウォルト・ディズニーが目指した世界観というのが死後100年経っても、映画やディズニーリゾートを通してわかるし(最近はポリコレでかなりおかしくなってしまったが)、創業者の価値観やDNAが残り続ける会社というのはどういう会社なのだろうか。
世の中にとって価値がある仕事はどうすればできるのか。
素晴らしい製品や会社はどうやったら作れるのか。
本当の意味で、人類社会を前に進めるというのはどういうことなのか。どうすればそれが達成できるのか。自分に与えられた役割は何なのか。
輪読会で議論したこと
ビジョナリーと詐欺師の境界線
ジョブズの現実湾曲フィールドの話から、セラノスとの比較に議論が発展しました。ジョブズもホラを吹く。詐欺師的な側面があります。「我々はこれを本当に信じているんだ」と言ってやるけど、モノがなかったらただの詐欺師です。宗教活動家と何が違うのか。
セラノスは血液検査の技術が全くなかったわけです。裏付けとなる技術が何もなかった。でもあれがいつかできていたら別に嘘じゃない。夢を見ているだけです。ただ「今すぐできます」と言ってしまったからダメだった。
Appleの場合は、エンジニアチームがいろいろあった上で、すごく頑張ったらできるという領域まで行っていたからこそ、ビジョナリーなことを言えたわけです。宇宙船を作ったこともないのに明日宇宙に行きますと言ったら、それは嘘です。技術的な裏付けがあるかどうか。この境界線は相当曖昧ですが、結果として製品を出せたかどうかが全てだったのかもしれません。
ネクストからAppleへの復帰は演出だったのか
ネクストにいた時期のジョブズは、庭で子供たちとのんびりしていて、結構満足していたようなニュアンスが文章から伝わってきます。でも声をかけられて渋々帰ってきたように見せている。あの間は何だったのか。
ネクストで開発していたUIやGUIのインタラクションが、Appleに戻ってきた時にそのまま使われたのが面白いです。点と点が全部つながっています。創業者が作るものは結局同じになる説。欲しいものも同じだから。
実はネクストが開発している方向も、Appleが欲しがるような方向に向かっていたのかもしれません。創業者が同じだから結局同じものを作る。延長線上にあるだけで、角度が違うだけ。
戻ると決めたら取締役全員に辞めてもらうという徹底ぶりです。ファウンダーが戻ったのに取締役として自分の思い通りに動かせなくて、結果パフォーマンスがよくわからないという状態ではダメだから。自分の名誉にかけても、やるなら全権を握らないといけない。戻り方を考えた人でもあります。
意外だったのは、残っていた役員がお金をもらって割とあっさり辞めたことです。そこにこだわりがないのかと。当時のAppleがそれだけダメになっていて、辞められてホッとしたような雰囲気すらありました。
ファウンダーモードとプロ経営者の限界
ジョン・スカリーはプロダクトの人ではなくセールス、マーケティングの人でした。ティム・クックも製品の人ではなく流通の人です。ジョブズが言っていたように、企業が成熟してくると利益を上げるために営業力やマーケティングに大きなレバーが移り、技術畑やデザイナーが後方に押しやられます。社内で尊敬を欠くようになり、いいイノベーターが生まれなくなります。
時価総額で見ると、すごい企業にはだいたいファウンダーがいます。NVIDIA、Google、Facebook、Amazonもそうです。ITの分野では特に、ファウンダーがやめないのがすごい。売りもしないし、お金のためでもない。好きなことをやり続けています。
一方でウーバーのようにファウンダーが追い出されたケースもあります。ただウーバーはもう創造的なイノベーションがそれほど必要ない段階に来ていて、ファウンダーがいなくても回るフェーズでした。Appleのようにイノベーションを起こし続ける企業こそ、ファウンダーが居続けることが大きいのかもしれません。
一方で日本企業は逆に技術はすごいが売れるものが作れないという問題があります。オーバーキルしている。ソニーが何で生み出せなかったかというと、社内で統合する人がいなかったからです。今から数年後にみんなが欲しがるようなものを、ビジョナリーに見せて実際に作る能力。ジョブズが言っていたアートと技術の融合がもっと進んだら面白いことになると思います。
ディズニーとニンテンドーが参考にしている企業として挙がりました。創業者の価値観やDNAが残り続ける会社です。ディズニーが目指した世界観は100年経っても映画やリゾートを通してわかります。そういう会社をどうすれば作れるのか、考えさせられます。
好きなことをやり続ける幸福と成功の矛盾
ジョブズが病床にいてもチームの人から連絡が来たり、製品のことを話している時はすごく楽しそうだったという記述があります。チームマネジメントではなく、あくまで1プレイヤーとしてトップラインで新しい世界観や製品を作っている人と一緒にやっている。それがやっぱり楽しいということに、すごく共感しました。
ここからメンバー間で「好きなことをやり続けるのが一番いい」という話になりました。お金のためにやるとどうしてもダメになります。でも矛盾があって、やりたいことを本当にやっていたら、たまたま当たって大きくなることがある。組織を大きくしなきゃいけない、チームマネジメントに時間を使う、あれこれやりたいことじゃなかったのにという状態になります。
トニー・シェイの話でもあったように、自分で作った会社なのに自分の会社に行きたくないという状態になる。だからこそジョブズのように一流のデザイナーや一流のエンジニアがチームにいて、面白いものを一緒に作っていくという環境は理想です。
成功しない方が長く楽しめるかもしれないという逆説的な話も出ました。大きくなってほしいと願いつつ、大きくならない方がずっと何かを追い求められて楽しい。その矛盾を抱えながらやっている起業家は多いのではないかと思います。
原動力と幼少期の環境
ジョブズの原動力を改めて考えた時に、養子でなかったらどうなっていたかという問いが出ました。普通の親のもとで育っても承認欲求の化け物になっていたかもしれないし、全く違う人生だったかもしれません。
あれだけの不遇な状況だったら、グレてもおかしくないし犯罪の方に行ってもおかしくないのに、よく戻ってきたという話になりました。実際に小学校の時には爆弾を仕掛けたり、LSDをやったりと犯罪はしていたわけですが、本当にギャングやマフィアになってもおかしくなかった。小学校3年か5年の時の先生の存在が大きかったのではないか。あと育ての親のお父さんの影響。モヤモヤしたエネルギーを上手い方向に向けてくれた人たちがいました。
そこから「人間の人格は小学校までにほぼ形成される」という議論になりました。メンバーそれぞれの幼少期の原体験を振り返ると、確かに小学校の時の経験が今につながっています。石を集めに行ったこと、いじめの環境で自分を下げると人が安心するということを学んだこと、本を読んでスタンプを集めていたこと。
面白かったのは、友達が多くて外で楽しく遊んでいた人は漫画も本も読む時間がなかったという指摘です。内向的で友達があまりいなかった人の方がクリエイターに多いのではないか。人間関係で満たされていた人はそこで完結してしまいます。ジョブズのようにこじらせた何かがある人の方が、世界と新しい関わりを持ちたいという欲求が強い。下手な友達がいるくらいならいなくて本があった方がいいという結論になりました。
親が本を読んでいると子どもも読む傾向があるという統計データの話も出ました。すごく当たり前なことです。当たり前の原因があって当たり前の結果がある。親が楽しそうに読んでいたら、子どもも楽しく読むのではないかと。家にスマホもテレビもなくて本だけあったら、本を読むかもしれない。幼少期の環境は本当に大事だと改めて感じました。
この伝記の一番の価値
最後に全員が一致したのは、ジョブズの根底にある価値観を知れたことです。素晴らしい製品を作りたい、それを通して人類全体を前に進めたいという思い。スタートアップを起こして株式を売ってお金を得て次に行く、そんなマネーゲームのために人生の時間を使うことには賛成できないとジョブズも語っていました。
先人が残してくれたものに何かを追加すること。全て先人の肩に載せてもらっていること。唯一無二だと思われていたジョブズですらそう語っていたという事実が、この伝記で一番の収穫でした。
引用
スタートアップを興してどこかに売るか株式を公開し、お金を儲けて次に行く──そんなことをしたいと考えてる連中が自らを「アントレプレナー」と呼んでるのは、聞くだけで吐き気がする。連中は、本物の会社を作るために必要なことをしようとしないんだ。それがビジネスの世界で一番大変な仕事なのに。先人が遺してくれたものに本物をなにか追加するにはそうするしか方法はないんだ。1世代あるいは2世代あとであっても、意義のある会社を作るんだ。それこそウォルト・ディズニーがしたことだし、ヒューレットとパッカードがしたこと、インテルの人々がしたことだ。彼らは後世まで続く会社を作った。お金が儲かるだけじゃなくてね。アップルもそうなってほしいと僕は思っている。
僕がいろいろできるのは、同じ人類のメンバーがいろいろしてくれているからであり、すべて、先人の肩に乗せてもらっているからなんだ。そして、僕らの大半は、人類全体になにかをお返ししたい、人類全体の流れになにかを加えたいと思っているんだ。それはつまり、自分にやれる方法でなにかを表現するってことなんだ──だって、ボブ・ディランの歌やトム・ストッパードの戯曲なんて僕らには書けないからね。僕らは自分が持つ才能を使って心の奥底にある感情を表現しようとするんだ。僕らの先人が遺してくれたあらゆる成果に対する感謝を表現しようとするんだ。そして、その流れになにかを追加しようとするんだ。そう思って、僕は歩いてきた。
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