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部活動の“引っ越し先”⑥子どものスポーツ機会を未来へつなぐ


~部活動改革とスポーツ人本主義~

大型連休の最終日、磐越道で発生した北越高校ソフトテニス部の遠征バス事故をきっかけに始めたこの連載は、今回が最終回です。
私はこれまで、学校部活動が抱える課題を、「学校だけでは支え切れなくなった現実」地域移行の受け皿」「子どもの居場所」「競技力向上」「移動と安全」という視点から考えてきました。
一見すると、それぞれ別々のテーマのように見えるかもしれません。
しかし、私の中ではすべて一つの問いにつながっています。
子どもたちのスポーツ機会を、これからも社会全体で守り続けられるのか。
それこそが、部活動改革の本当の目的ではないでしょうか。

■学校から地域へ――目的は変わらない

少子化が進み、教員の働き方改革も進んでいます。
学校だけで部活動を支える時代は、終わりを迎えようとしています。
だからこそ地域移行、そして地域展開が進められています。
しかし、活動場所や運営主体が変わることは目的ではありません。 
目的は、子どもたちが安心してスポーツを続けられる環境を将来にわたって守ることです。
学校から地域へ。
その変化は「目的」ではなく、あくまで「手段」です。
私たちは、手段の議論に夢中になるあまり、本来の目的を見失ってはならないと思います。

■スポーツは「する人」だけのものではない

学校部活動では、顧問教員が競技指導だけではなく、安全管理、保護者対応、会計、施設予約、引率など、数多くの役割を担ってきました。
地域へ活動が広がれば、その役割も変わります。
競技指導は指導者。
移動は交通事業者。
救護は医療関係者。
クラブ運営はマネジメントを担う人材。
大学生が地域クラブで指導や運営を経験することも、大きな学びになります。
スポーツ人材とは、競技者だけではありません。
スポーツを「支える人」を育てることも、これからの地域スポーツには欠かせない役割です。

■競技環境も人がつくる

私はこの連載で、「競技環境」という言葉を繰り返し使ってきました。
競技環境とは、体育館やグラウンドだけではありません。
家を出て、活動場所へ向かい、安全に練習し、安心して帰宅するまで。
その一連の環境すべてが競技環境です。
スポーツ活動の「ラストワンマイル」も、その一部です。
立派な施設があっても、優れた指導者がいても、安全に通えなければ、その競技環境は十分に機能しません。
競技環境は、施設だけでなく、人と仕組みによって支えられているのです。

■「スポーツ人本主義」という考え方

この連載を書き進める中で、私は一つの考え方にたどり着きました。
スポーツは、勝敗や記録だけを競うものではありません。
健康を育み、仲間と出会い、学び、支え合い、地域とつながる。
そして、その経験を社会へ還元していく。
スポーツが人を育て、人がスポーツを育て、さらに地域を育てていく。
私は、こうした「人」を中心にスポーツを考える視点を、スポーツ人本主義と呼ぶことにします。
これは競技力向上を否定する考え方ではありません。
競技力向上も、豊かな競技環境も、人がいて初めて成り立ちます。
だから私は、競技そのものではなく、「人」を出発点にスポーツを考えたいのです。

■桃が流れてこなければ

トップアスリートも、最初は一人の子どもです。
スポーツと出会い、楽しみ、挑戦し、成長する。
その積み重ねが、やがて競技力向上につながります。
桃太郎」の物語は、川上から桃が流れてこなければ始まりません。
スポーツも同じです。
子どもたちがスポーツと出会う機会が失われれば、その先に競技人口も、トップアスリートも生まれません。
中体連が拾うのか。
競技団体が拾うのか。
地域クラブが拾うのか。
大学が拾うのか。
地域によって答えは違って構いません。
しかし、大人の事情によって、子どもたちがスポーツと出会う機会そのものが失われてはならない
そこだけは、社会全体で守らなければならない一線だと思います。

■手段ではなく、目的を見失わないために

学校部活動は目的ではありません。
地域クラブも目的ではありません。
中体連も、競技団体も、大学スポーツも目的ではありません。
それらはすべて、子どもたちのスポーツ機会を支えるための手段です。
だからこそ、手段は時代に合わせて変わってよい。
人口減少が進み、AIが社会を支える時代になっても、人を育てることは人にしかできません。
スポーツは、そのための大きな可能性を持っています。
私は、スポーツを競技だけで終わらせるのではなく、人づくり、地域づくり、そして未来づくりへつなげていきたい。
部活動改革は、その第一歩です。
この連載が、スポーツの未来を考える一つのきっかけになれば幸いです。

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