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屋根裏に眠る「資産」

― コレクティブル市場とリユースの本質

The Economistで面白い記事を読んだので、それについて投稿する。

https://economist.com/culture/2026/04/30/is-a-fortune-gathering-dust-in-your-attic

2000年、イスラエルのテルアビブ東部の道路工事現場で、ある洞窟が発見された。そこには約30万年前の炉の跡があり、人類が火を囲んで生活していた痕跡が見つかった。動物の骨や石器は予想通りだった。しかし研究者を驚かせたのは、別のものだった。

用途不明の小さなカラフルな石。

実用性はない。ただ集められていた石だ。つまり、人類は30万年前から、収集癖のある生き物だったのだ。

◼️コレクティブル市場の拡大

現代社会に生きる現生人類でもその衝動は変わらない。トレーディングカード、硬貨、切手、スポーツグッズ、映画の小道具などの「コレクティブル/ collectibles」(収集品)は巨大な市場になっている。かつては小さな専門ディーラーの世界だったが、今では大手オークション会社がこの市場に参入している。

例えば、ジョン・レノンのピアノは320万ドル、ジェリー・ガルシアのギターは1160万ドル、そして映画『オズの魔法使い』の靴は3250万ドル、といった価格で取引されている。

◼️Heritage Auctionsという存在

この市場で重要なプレイヤーの1つが、Heritage Auctionsという企業だ。1976年に、ダラスの小さなコイン商として始まったこの会社は、現在では巨大な収集品オークション会社になっている。本社は、ダラス・フォートワース空港の敷地内にあり、倉庫は33万平方フィート (アメリカンフットボールスタジアムの6面分ほどの広さ)に及ぶ。年間売上は約21億ドルで、5年連続で過去最高を更新している。大手オークションハウス全体の売上高には及ばないが(2025年のSotheby’s Christie’sの売上はそれぞれ70億ドルと62億ドル)、彼らに存在を認識させ、少なからず警戒させるには十分な数字である。

Heritage Auctionsの特徴はシンプルだ。小さな専門業者を吸収し、スケール化する。創業者のSteve Ivyは、「小規模な専門家は知識と顧客を持っているが、スケールできない。だから我々が取り込む」と言う。これは正に、PE(プライベートエクイティ)的戦略である。

◼️ECが市場を変えた

このコレクティブル 市場の転換点はインターネットだった。以前は、ディーラーだけが価格を知っていて、買い手は情報不足という典型的な「情報の非対称性」が確立していたビジネス構造だった。しかし、今はオークション履歴・市場価格・相場が簡単に見える時代になった。その結果、市場の透明性が上がり、参加者が増えたのだ。

◼️コレクティブル vs アート

コレクティブル市場を定義するのは難しい。Ivy氏は、この市場を「複数製作された品々」——つまり人々がセットとして収集できるもの——を包含することを定義としている。(「芸術作品ではセットを収集することはできない」と彼は指摘する。)

一方で、アート市場を研究するイェール 大学の経済学者Magnus Resch氏は、行動面での違いを指摘する。「芸術は主に機関によってその価値が認められる」、つまり「美術館、ギャラリー、キュレーター」がその価値に影響を与える。それに対し、「コレクティブルはコミュニティによってその価値が認められる」つまり、個人が支払う意思のある金額が価値となるのだ。つまり、コレクティブル市場での価格は「合意」で決まるのだ。

◼️ノスタルジアが価値を生む

この市場の大きなドライバーはノスタルジアだ。例えば、ポケモン・野球カード・クラシックカーなどは、「子供時代の記憶+大人になってからの可処分所得」で価値が上がる。つまり、人は「モノ」を買っているのではなく、「自分の過去」を買っているのだ。所謂、memorabiliaだ。

◼️不況でも強い理由

もう1つ重要なポイントがある。この市場は景気が悪くなると供給が増えるのだ。人々は現金化するために、思い出の物を売る。そのため、コレクティブル市場は意外と強い

◼️私の考察

この記事はコレクティブル市場の話だが、構造的には私のリユース事業と非常に近い。私のリユースショップは言わば「入り口」で、幅広い商品を買い取る。つまり、供給の入口だ。一方でこの記事のコレクティブル市場は高付加価値で販売する出口の上位レイヤーだ。

◼️本質は同じ

両者の共通点は、「価値がモノではなく意味で決まる」部分だ。同じ物でも、0円にもなるし、数百万円にもなる。価値が、ストーリー、人気具合い、需要、そして文脈などに応じて変動するのだ。

◼️鑑定士=価値の翻訳者

以前、私は「鑑定士はホストに近い」と投稿した。これは今でもそう思う。鑑定とは、モノの価値を説明する行為。つまり、意味を翻訳する仕事である。その意味を上手に説明出来る信頼が出来る人間が、今後のコレクティブル 経済でますます重要になってくるはずだ。

◼️リユースは文化ビジネス

この記事の冒頭に戻るが、人間は必ず物を溜める30万年前から、人間は物を集めていた。つまり、供給は無限に生まれるのだ。リユースは単なる中古販売ではない。人間の記憶、文化、ノスタルジア、そして個人史などを再流通させるビジネスなのだ。

この記事はコレクティブル市場の話だった。しかし構造を見ると、世界のオークション市場と日本の地方のリユース店は繋がっている。規模は違うが、やっていることは同じだ。人が集めたものに、もう1度価値を与える。それがこのビジネスの本質だと思う。


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