見出し画像

ドナルドのバカ ~あるアメリカ大統領の愚行録~ その③ドナルド、「無敵の不動産王」と呼ばれる

この物語は、架空のアメリカ大統領ドナルド・カーズが主人公の完全なる創作フィクションです。実在する国、人物、団体、組織などとは一切関係はありません。あらかじめご了承ください。

1980年代になると、ドナルドは父の不動産会社を受け継いだ。
ドナルドの父が後継者として期待をしていた兄が、不慮の死を遂げていたためだ。
ドナルドはローンから学んだ攻撃的な経営で、会社をどんどん大きくする。
メディアはその姿を「無敵の不動産王」と称賛した。
その象徴が、マンハッタンに建設したドナルド・タワーだ。

ドナルドは、老舗百貨店の土地を買収してそこに超高級複合ビルを建てる計画を発表する。
その際、歴史的な価値がある百貨店のアールデコ彫刻は保存すると言ったが、その約束は守られなかった。
完成したのは、全面ガラス張りの外観で、最先端を思わせる超近代的なビルであった。
複合ビルは低層階が高級レストランやブランドショップのテナント、中層階がオフィスで、高層階は高級コンドミニアムだった。
そして最上階にはドナルドが住む、ベルサイユ宮殿風のペントハウスが建てられた。

このドナルド・タワーは、その後のドナルドを象徴する建物となる。
ドナルドが事業に失敗して窮地に追い詰められた時に出演したテレビ番組の収録や、大統領選挙の出馬会見など、メディア戦略には必ずこのビルが使用されている。
ドナルド・タワーはたんなる複合ビルではなく、ドナルドのブランドとして機能していた。

このドナルド・タワーの成功により、ドナルドは不動産だけではなく全米の観光系エンターテイメント産業の経営に着手する。
高級ホテル、航空会社、カジノなどである。
ドナルドは手持ちの資産を担保に借金をし、それを資金に経営を拡大した。
財務レバレッジによる経営拡大である。
ちょうど1980年代のアメリカでは金融緩和政策が行われており、「Greed is good(強欲は善だ)」と言う風潮になっていた。
ドナルドのポリシーともぴったり合っている。
金融機関も積極的に貸し出しをし、ドナルドはさらに大きく飛躍を遂げようとしていた。
ドナルドが一番力を入れようとしたのが、カジノ経営だ。
ニュージャージ州のアトランティックシティにカジノを作り、世界最大のカジノとして喧伝した。

しかし1987年のブラックマンデーをきっかけに、アメリカの経済は急速に収束する。
ドナルドの資産は株式ではなく不動産だったため、ブラックマンデーの直撃は逃れたように見えたが、その後1990年代に入ると経済収縮の影響が不動産にもおよび価値が下落する。
さらに金融機関は信用取引を警戒して貸し渋りを行うようになり、ドナルドが得意とした財務レバレッジが利用できなくなってくる。
すでに高金利で借り入れを行っていた事もあり、ドナルドは一気に窮地に追い込まれた。
ドナルドは金融機関からの借り入れの際に、自らを保証人にしていたため、個人としても多額の借金を抱える事になった。
ただ、あまりにも借金が多額であったため、金融機関も一気にすべてを回収することはできなかった。
ドナルドを完全に破産させてしまうと、各所への影響が大きかったからだ。
金融機関はドナルドの債務を整理して条件を緩和し、返済させることにした。
他人の指示に従う事は、ドナルドにとってこの上ない屈辱であったが、この時はそうせざるを得なかった。

時代の寵児であったドナルドだが、一気に坂を転がり落ちることになる。
さらに「無敵の不動産王」ともてはやしていたメディアが、一気にドナルド叩きを始めたのだ。
連日、愛人とのスキャンダルを報じられ、結果夫人と離婚をすることになった。
ドナルドの名は地に落ちることになる。

この時にドナルドを救ったのが、ドジャー・スティールである。

④に続く
ドナルドのバカ ~あるアメリカ大統領の愚行録~ その④ドナルド、政界進出を目指す「You're out!」

最初から読む
ドナルドのバカ ~あるアメリカ大統領の愚行録~ その①ドナルド、学生時代にカリスマになる

よろしければこちらもお読みください
渋谷の墓参り|K2sato

『選ばれない自分』(1)

房総高校書道部物語


いいなと思ったら応援しよう!

ラーメンと競馬と映画がたまらなく好きです。 こんな辺境の文章を読んでいただきまして、本当にありがとうございます!