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「未来」(備忘録的感想)

原作は湊かなえで、監督は瀬々敬久だ。
湊かなえのミステリー作品は、原作は「告白」しか読んでいないが、映像化された作品はほぼ見ている。
ただ「告白」以外はどの作品も、風呂敷がかなり大きく広げられるものの、最後はうまくたたみ切れていない印象だった。
瀬々敬久も作品の出来不出来のブレが大きく、「春に散る」や「少年と犬」などは、ハッキリ言ってまったく評価できなかった。
そんな事もあり、この作品も予告編は面白そうだが、実際にはイマイチの可能性もあるかな、と思って観に行った。
しかし予想を大きく裏切り、非常に重厚できちんと作りこまれた作品だった。

小学4年生の章子は、最愛の父良太(松坂桃李)を病気で亡くしていた。
母の文乃(北川景子)は心を病んでいて、多くの時間でスイッチがオフになっており、その時はまるで反応がなく人形のようにうつろに宙を見つめるだけだった。
そんな章子に、20年後の自分から手紙が届く。
手紙には、これからもいろいろな事が起こるが大丈夫だと書かれており、20年後の自分である事の証明として、ドリームマウンテン30周年の記念グッズが同封されていた。
テーマパークのドリームランドは開園30周年だったが、ドリームマウンテンは章子が生まれた年に開園されており、まだ10周年だった。
章子はそれから、たびたび未来の自分に対して手紙を書くことにした。

後に章子の担任となる篠宮(黒島結菜)は、学生時代を東京で過ごしていた。
そこで同じアパートで暮らす勇輝(坂東龍汰)と親しくなる。
勇輝は映画好きで、小さな映画館でバイトをしており、映画関係の仕事に就くことを目指していた。
そんなある日、篠宮の祖母が倒れたと連絡が入る。
篠宮は両親の離婚後は、祖母に育てられた。
祖母は倒れる直前まで家の隣の製麺所で働いており、そこの社長夫妻がいろいろと面倒を見てくれていた。
篠宮が駆け付けた病院で製麺所の社長夫妻から事情を聞いていると、そこに突然母親が現れる。
母親は祖母が死ぬ前に預金を引き出すと言って、篠宮から無理やり家のカギを取り上げて去って行った。
祖母はそのまま他界し、東京に戻った篠宮は勇輝に支えられた。
しかし生活は苦しく、バイト先で映像制作会社の社長に声を掛けられ、カラオケのPVに出演する。

教師となった篠宮は、章子を気遣い文乃に会いに行く。
二人を公園に連れ出すが、そこで倒れそうになった文乃を後ろから抱き留めた姿を、章子のクラスメートの実里たちに目撃されてしまう。
すると翌日、実里たちは教室で篠宮と文乃が恋人だとはやし立て、篠宮に自分たちも貧乏なら章子と同じようにひいきしてもらえるのかと問いかけた。
篠宮はつい実里の口を手でふさぐが、実里の母親は体罰だと大騒ぎする。
さらに、たまたま実里の父親がカラオケで見かけた映像で、篠宮が裸に近い状態だったと訴えた。
それは篠宮が学生時代に出演したカラオケの映像だった。
篠宮は学校を去ることになってしまう。

章子はその後中学に進学する。
中学時代は楽しく、親友のコバちゃんと文芸部に所属していた。
文乃はホテルで働き始め、そこのシェフの早坂と再婚することとなった。
章子が母に早坂を愛しているのかと聞くと、文乃はわからない、あなたのお父さんだけが私の特別な人だったから、と答える。
早坂は再婚と同時に、自分の店をオープンした。
しかしそこに実里の家族が現れ、料理に難癖をつけた。
実里は中学でも同じクラスだったが、章子は実里と接触を持たないようにしていた。
だがこの事がきっかけで、再び実里のいじめが始まる。

ストーリーは章子を中心に展開するが、そこに篠宮の生い立ちなどのエピソードが加わり、さらに父の良太の学生時代までさかのぼる。
この3つの時代が頻繁に行き来をするため、ストーリーを追うのにやや集中が必要だ。
ただ、篠宮は自らも家族愛に恵まれなかったため章子を気遣うなど、人物の相関関係に無理がない。
良太の青年時代(細田佳央太)に登場する森本真珠(近藤華)も、父が政治家と言う複雑な家庭環境の設定がうまくハマっていた。。
そしてキーとなるのがテーマパークのドリームランドだ。
実際に、日本中から深夜バスでディズニーランドを訪れる人は多く、深夜バスでドリームランドに行くのが夢、という設定が、最後にすべてのエピソードをつなぎ、ストーリーにある種のリアリティを持たせていた。

ハッキリ言って、誰が主役なのかよくわからない作品だ。
篠宮と章子のダブル主演なのかもしれないが、どちらもいい演技で、特に章子役の山﨑七海は17歳ながら素晴らしい演技を見せていた。
山﨑七海以外も、森本真珠役の近藤華も難しい演技をこなしており、須山亜里沙役の野澤しおり、そしてイジメをする実里役の共田すずなど、若手の好演技が作品全体に強烈に機能していた。
このあたりは、瀬々敬久の手腕が存分に発揮されていると言っていいだろう。

「イヤミス」と言うカテゴリーを定着させた湊かなえの原作だけに、感動したなどと言う感想には当然ならない。
ただ、少々ネタバレになるが、少し救われるラストシーンとなっており、見終わった後は「嫌な気分」にはならなかった。
ベテラン、若手の演技力を堪能する作品と言っていいだろう。

74.未来

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