目的があると学びは加速する。アクティビティトラッカーと腕時計の併用ベルトを作る|革細工05-1
明確な目的を持つと、学びは自ずと加速する。
この世に(たぶん)ないものを作りたい強い欲求があると、こんなにも過去の学びを勝手に結びつけて活かしていくのだと、初めての課題に直面してもこんなにも頑張れるのだと、振り返ってみてよくよく理解した。今年学んだことだ。
機械式腕時計とアクティビティトラッカーFitbitを同じ腕にコンパクトに着けて、一緒に使いたい。でもそれを実現できる既存製品がなかったから、自作した。たぶん、この世で初めて。
実現までの過程には革細工(レザークラフト)の困難があったし、それを乗り越えるにはこれまでの革細工で作ってきた経験が役に立った。
そして、せっかくこの世に新しいものを生んだのだから、実用新案(簡易版特許みたいなもの。詳細後述)を取ってみた。知識として実用新案精度を知っていたけれど、実際に特許庁に申請し登録されるまでには鬼の道のりが待っていた。
でも、革細工の経験、机上の知識、すべてが「欲しいものがこの世に(たぶん)ないから、作りたい」という強い欲求で推進薬になってくれた。
学びには、学びたい思いが一番重要なのだ。
手首一つに対して欲望は二本分。
機械式時計が好きだ
僕は機械式腕時計が好きだ。高校入学時には、卒業後の進路として4年制大学への進学ではなく、機械式腕時計を作る職人になる専門学校への進学を夢見ていた。
…結局、高校生活の間に「なんか、勉強って楽しいな」と思いなおし4年制大学に進んで、そのまま資本主義社会に組込まれてしまった。
機械式時計はバネと歯車とネジとで時が刻まれ、実に美しい。
「時計の技術を2世紀早めた」ブレゲのトゥールビヨン発明前後の機械式時計の発展史には、何度魅了されたかわからない。大人になって、そうした超複雑機械式時計がとても庶民に手の届く代物ではないと知ってしまったけれど、機械式時計へのあこがれは変わらない。なんなら、コンスタントフォーストゥールビヨンとか、めっちゃほしい。
だから、盤面からムーブメントが見える時計のほうが好みだ。言い換えると、正確性よりも時を刻む機構の所有感が好きだ。
アクティビティトラッカー、とりわけFitbitが好きだ
一方で、健康管理と運動記録のためのアクティビティトラッカーFitbitも生活に欠かせない。
7ー8年前にその存在を知り、睡眠スコアも運動記録も勝手に残せる便利さに引込まれた。
…ちなみに睡眠スコアは基本的に常に高く、寝付きはすこぶる早い。健康そのものである。
勤務中の心拍数や歩数を記録できることも地味に重宝している。疲れていると心拍数の上下変化が大きいので「早めに帰って休もう」と(たまに)判断できるし、立ち仕事が多かったときは「今日は2.5万歩も歩いちゃったぜい」と悦にいることができる。
デジタルでコンピュータ寄りの時計として、いまやFitbitは存在感が弱まり、スポーツ・健康のトラッカーとしての側面を強調するならGARMINが、マルチ機能の高性能デジタル時計としての側面を強調するならAppleWatchが人々の手首の上に鎮座していることが多い。
でも僕は、Fitbit派だ。小さいアクティビティトラッカーが、運動のとき邪魔にならない。

日常生活の腕時計として大切なこと
そして、僕にとって大切なのは、「結局、時間見るのは普通の時計の文字盤が一番見やすいよね」ということ。
AppleWatchユーザーはどうせ、時間を見るためにスマホ(たいていiPhone)を取出すのだ!(偏見)
本末転倒だ!
だから、機械式時計が好きであることを差引いても、僕は、アクティビティトラッカーとしてFitbitを使いつつも、腕時計も使用したいのだ。変態だ(これは偏見じゃない)。
つまり、手首ひとつに対する欲望は二本分あるのだ。
二本分の欲望を満たすための紆余曲折
本田圭佑スタイル
アクティビティトラッカーと腕時計を両方同時に使いたいなら、片手に計時のための腕時計、もう片方の手にアクティビティトラッカーという二刀流が自然な帰結だ。

本田圭佑がやってたあれだ。

実際にやってみると、実はこれはうまくいかない。
利き手に何かをつけていると、字を書くときや作業時に邪魔だ。運動記録も狂う(歩数が異常な値をたたき出す)。本田圭佑が両手に腕時計をはめる本田圭佑スタイルを好んでやっていたのは、脚をメインで使うサッカー選手だからなんだななあと妙に納得した。

選択肢を洗い出す
となると、最初に思いつく選択肢は引き算だ。
腕時計とアクティビティトラッカーの同時使用を諦めるなら、
機械式時計だけを身に着ける
アクティビティトラッカーだけを身に着ける
折衷案として、機能性重視の大きいウェアラブル端末を身に着ける

ここで、同時使用を諦めるのは、やりたかったことの何かしらを諦めることになるので、僕の美学に反する。

でも、利き手と利き手じゃない方の手に1つずつつける本田圭佑スタイルはうまくいかないことが既にわかっている。ならば——どうする?
若田宇宙飛行士も同じ悩みを持っていた
「じゃあ、利き手じゃない左手に二個ともつけるしかない」と当然、思いついた。

機能的な問題は、時々両者が干渉して手首が曲げにくくなることだけだ。
言い換えると少しだけ不便だけれど使用を諦めるほどではない。
それでも「アクティビティトラッカーとしてFitbitを使いつつも、腕時計も使用したい」僕の欲求は満足されるのだ。

ただし、見た目はちょこっと異様だ。
とはいえ、変態とは思わないし、業務中はカッターシャツの袖に隠せる。たまにカッターシャツの端からお客さんに見えてしまっても失礼では決してない。ただし、二度見はされる、それくらいの許容可能な異様さだ。

この「左手に腕時計を。左手にアクティビティトラッカーも」スタイルで1年ほど過ごしていたある日、日経新聞を読んでいて衝撃を受けた。
「…おわかり、いただけるだろうか(呪いのビデオ風)」
「拡大して、もう一度、ご覧いただこう」

日経新聞2018年8月23日 15:30より ※丸印は僕によるもの
そう、若田宇宙飛行士も同じことをしていたのだ。
これを見てからは、この「左手に腕時計を。左手にアクティビティトラッカーも」スタイル、いや、若田宇宙飛行士スタイルで堂々と併用を続けた。業務中は腕時計とアクティビティトラッカーを両方つけ、寝るときや運動するときは腕時計を外すのだ。
おおよそ6ー7年、この若田宇宙飛行士スタイルで使用を続けた。

革細工との出会い、若田宇宙飛行士との決別
既にご紹介したとおり、PASMOケース、ペンケース、財布、一つ穴ベルトと革細工の経験を着々とつけていったある日。時計の革ベルトがボロボロになってきたので「そろそろ替えなきゃなあ」「この時計のベルトも自作できちゃうなあ」と思っていた時、ふと、思いついてしまった。
革細工で、「腕時計を手の甲側、トラッカーを手首の内側につけるベルトがあればいいんじゃない?」
6-7年寄り添った、若田宇宙飛行士からの卒業である。
そもそも、既存製品ないんだっけ?
ちなみに、世の中にそもそもそういうベルトがないか確認した。Amazon、楽天、メルカリ……。
…そう、そんな製品存在しないのだ!
ということは、やはり、自分で作るしかないのだ。
「腕時計を手の甲側、トラッカーを手首の内側につけるベルト」をいよいよ、これまでに培った革細工の経験を生かして自作するのだ。この世にないものを、自分の手で生み出す!
ということで、全3回です。
今回 :革細工で腕時計ベルト作成に至るまでの長い過程
次回 :併用ベルト完成までの長い長い道のり
次々回:実用新案登録までの長い長い長い道のり
