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『Sound Library』が教えてくれた、心を前向きにする「不運」の捉え方

永い間、愛聴しているラジオ番組のひとつに、『Sound Library ~世界にひとつだけの本~』(JFN系列)があります。2010年に始まった、今年で16年目を迎える長寿番組です。

内容は、神田神保町にある旅行会社に勤める38歳の独身女性・月原加奈子つきはら かなこの物語を、その時々のシチュエーションに合った曲を挟みながら送る朗読劇です。

朗読は女優の木村多江さんが務め、物語はラジオドラマ界の第一人者である北阪昌人さんが描いています。
基本的には一話完結ですが、たまに2週にわたる物語もあります。

この番組が好きな理由は、木村多江さんの穏やかな語り口に癒やされるのと、主人公を通じて人との出会いのすばらしさを教わることが多いからです。
静かな空気感も実に心地よく、聴いている間は、心をざわつかせていた悩みもおとなしくなってくれます。

主人公が出会う人は、旅行の相談に訪れたお客さんや、トラブルに巻き込まれて出会った人、同じマンションの住民、職場の人、趣味を通じて知り合った人など様々です。

前回の放送は、主人公が住むマンションの管理組合・理事長の仕事を通じて知り合った女性の話でした。

月原さんが理事長になったのは、立候補でも推薦でもなく、あみだくじで決まってしまったからでした。トップに向かない性格だし、仕事も忙しい。理事長なんてなりたくなかったのに、くじ運の悪さから当選してしまったのです。

この「理事長に選ばれた時の話」が放送されたのは、2年ほど前のことでした。当時、私も地区の役をやっていたので、彼女の気持ちがよくわかり、その後どんな展開になるのか楽しみにしていました。

しかし、それ以来理事長の話はずっとなかったため、私もすっかり忘れていました。
そのエピソードが先日、散歩中に聴いていたラジオ機能付きボイスレコーダーのイヤホンから、突如として流れてきたというわけです。

その回は、マンションのメンテナンスに来た業者に、理事長として立ち会うというストーリーでした。
月原さんは、そこで出会った女性との触れ合いを通じて、なぜ彼女がその職に就いたのかを知ることになります。

その女性は、かつて引きこもりだったそうです。
外へ出る勇気を与えてくれたのは、彼女の部屋にメンテナンスで入ってきた女性でした。その女性の一言が彼女の心を動かしたのです。
それがきっかけで、自分も同じ仕事をやってみたいと思い、女性には珍しいその職に就いたというエピソードでした。

月原さんのように、やりたくもない役を引き受けることになっても、その「損な役」をやらなければ得られなかった貴重な体験をしている人はたくさんいるでしょう。
そこで多くの人と触れ合ったり、様々な経験をしたりすることは、長い目で見れば損ではありません。一生の付き合いになる素晴らしい友人ができる可能性だってあります。

面倒なことは嫌だと逃げ回ってばかりいては、自分の殻を破ることはできません。まずは飛び込んでみる。その違う世界から、新たな出会いがあり、思いもしない幸運に恵まれることもあるはずです。
知っている世界にばかり留まっていては、「井の中のかわず」と同じで成長はありません。

不運だと思えることでも、そこで経験したこと、出会えた人、それらすべてが人生のかてになると受け止め、前向きに進んでいけば、幸運に変えることもできるのではないでしょうか。

これもラジオで聴いた話ですが、日立製作所の元会長である川村隆さんの本について語る番組で、「人間が成長するのは修羅場を見たときだ」と書かれていたことが紹介されていました。
厳しい環境や苦労こそが、人を一回りも二回りも大きく成長させるというのです。

確かに、どのドラマを見ても、主人公は大きな試練に見舞われます。そしてどういう形であれ、それを引き受け、大きく成長していきます。

今朝見たNHK朝の連続テレビ小説『風、薫る』の主人公・一ノ瀬りんもそうでした。
プライドが高くわがままで医師が手を焼いていた、乳がん患者である侯爵夫人・和泉千佳子の看護を推薦された時、看護婦養成所の外人教師が「医師の失敗を養成所の責任にされる」と拒んでいたにも関わらず、看護婦実習生であるりんは「やらせてください」と困難に飛び込んだのです。
私はこれまでこのドラマをあまり熱心に見ていませんでしたが、このシーンを見て、彼女がどうやって困難を乗り越え、成長していくのか、がぜん続きを見たくなりました。

私は現在、大病を抱えた認知症の父と暮らしています。最愛の母を昨年亡くし、兄弟もなく、月原さんと同じく私は独身なので、ワンオペで父を看ていますが、その困難に、心が折れて、うしろ向きになりそうな瞬間もあります。

そんな時、月原さんのエピソードを思い出し、これも自分を成長させてくれる経験になるのだと気持ちを切り替え、前向きに生きる元気をもらえているのです。
今後も、『Sound Library ~世界にひとつだけの本~』を聴き続けたいと思います。


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