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笑う世間に福は来る

私は90歳の父と二人で暮らしています。
その父が今年4月7日、背骨の骨折と前立腺がんのため入院するという、思いもしない出来事に見舞われました。

明日は5月7日。ちょうど1か月が経ちます。
精神的にきつく、やっとの思いで1日を乗り越えるような日々でした。それだけに、1か月という数字以上の、気が遠くなるほど長い時間を過ごしたように感じます。本当に大変な日々でした。

背骨の骨折ということもあり、主治医からは入院期間を1か月ほどと告げられました。
しかし、それは急性期病院に長く入院できないという事情によるもので、退院後は別の病院や施設でリハビリを続けることになるかもしれない、とのことでした。

追い打ちをかけるように、「骨折が悪化して神経を損傷すれば、歩けなくなる可能性もある」「90歳という年齢を考えると何が起こるかわからない。もしものときの延命措置をどうするか、考えておいてほしい」と求められたのです。

そんな話を聞かされ、私には「寝たきりになる父」の未来しか思い浮かばず、大きな不安に押しつぶされそうになってしまいました。

さらに、面会に行くと、父は私と一緒に暮らしていたことを覚えていませんでした。
「父の実家であった遠い場所に住んでいる私が、わざわざ面会に来てくれた」と思い込んでいるのです。認知症が一気に進んでしまったと感じ、これからの介護負担を考えて、ますます気が滅入っていきました。

ところが――。
入院からわずか1週間ほどで、父は自分でトイレに行けるほどに回復したのです。
これなら自宅療養ができると、23日には退院することになりました。お医者様も、これほど早く歩けるようになるとは予想していなかったそうです。

父が自宅に戻って、2週間。
以前のように長い距離を歩くことはできませんが、自分でトイレに行き、着替え、ひげを剃り、歯を磨く。前と変わらず、身の回りのことが自分でできています。

恐れていた認知症の進行も、杞憂きゆうに終わりました。
直前のことをすぐに忘れる物忘れの激しさは相変わらずですが、習慣にしていた「ババ抜き」も「しりとり」も、間違いなくこなします。トイレの場所を迷うことも、おかしなことを言うこともありません。
腰痛を抱えつつも、今は一緒に近所を100メートルほど散歩できるようになりました。

1日が終わり、隣で前と変わらぬ安らかな表情で眠る父の寝顔を見つめる度に、神様に感謝したくなります。
1か月後にこんな穏やかな日が来るとは、当時の私は想像すらしていませんでした。

「くよくよ考えすぎるのは損だな」
今、心からそう実感しています。

悲観的に考えすぎると、ますます不幸を招いてしまう恐れがあります。
自分自身が病気になってしまったり、前に進むエネルギーを失ったり、何をするにも臆病になってしまったり。それでは余計に生きるのが大変になり、さらにどん底へと落ちてしまうでしょう。

これは、経済も同じではないでしょうか。

不景気だからと社会全体が暗い見通しばかりを立てると、人々は消極的になり、財布のひもを固く締め、景気はさらに冷え込みます。
それだけでなく「景気が悪いのは他国のせいだ」と他責思考に陥り、互いにいがみ合い、巡り巡って軍事予算を増やすことにもつながりかねません。結果として国民の生活を守る予算が削られ、暮らしはさらに苦しくなっていく。
国際協調も崩れ、共存共栄ではなくなり、世界の景気も悪化してしまうでしょう。

「景気」とは、その字の通り「気(気持ち)」が大切なのです。
楽観的に未来を捉え、明るい気持ちで活動することで、景気もまた上向いていくように思います。

「楽しいから笑うのではない、笑うから楽しくなるのだ」という言葉があります。

歴史を振り返っても、国民を明るい気分にさせることで景気を回復させた政治家がいました。
世界で初めてケインズの理論を取り入れ、「ニューディール政策」を行ったアメリカのフランクリン・ルーズベルト大統領です。
世界恐慌による大不況にあえぐ国民に対し、ルーズベルトはこう言って励ましたそうです。

「シャーリー・テンプルがいる限り、わが国は安泰だ」

シャーリー・テンプルは、当時トップスターとして活躍した伝説的な子役です。
なぜ、彼女はそれほど国民に支持されたのか。
それは彼女の愛らしく明るい笑顔が、不況に沈む人々の心を照らし、暗い気分を忘れさせたからだと思います。映画の中でも、彼女の明るさが大人たちに伝染し、世の中をハッピーに変えていく姿が描かれ、それが多くの人々を勇気づけました。

もちろん、楽観的になりすぎると、投資に失敗したり、うまい話にだまされたり、危機管理が甘くなったりするリスクはあります。
けれど、前を向くことには、それらを補って余りあるメリットがあるはずです。

泣いて暮らすも一生、笑って暮らすも一生。
人生はたった一度きりです。

たとえ最後の結末が、思い描いた通りの楽観的なものでなかったとしても、
そこに至るまでのプロセスを、希望とともに明るく過ごせたなら、その人生は決して「失敗」などではなかったと言えるのではないでしょうか。

私の提案する「ユートピア手法」で新しいシステムをデザインするのも、同じスタンスです。


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