大学受験にも就職にも失敗、入ったのはボロ会社。ついていない凡人を大実業家に変えた魔法の数式とは
日本を代表する経営コンサルタント、船井幸雄氏が監修した『ビジネスマンが読んでおくべき 一流人のあの選択、この決断 この99のヒントがあなたの人生を開く』(知的生きかた文庫・三笠書房)。
一流人がどのようにピンチを乗り越え、なぜ成功できたのか。本書に登場する99人の中から、特に感銘を受けた人物を厳選して学ぶシリーズも、ついに第5回(全6回予定)を迎えました。
今回スポットを当てるのは、京セラ創業者の稲盛和夫さんです。
経営破綻した日本航空(JAL)を見事に再建させ、独自の経営手法「アメーバ経営」を世に広めた稲盛さん。今なお世界中から「平成の経営の神様」と称えられ、深く愛され続ける彼にも、壮絶な苦労時代がありました。
稲盛さんを襲ったのは、どのような苦難だったのか。そして、それをどう乗り越えてきたのか。伝説の経営者がその苦労のなかから会得した「ピンチをチャンスに変える極意」に迫ります。
不遇の連続だった青春時代
偉大な経営者である稲盛さん。若い頃からさぞエリート人生を歩んできたのだろうと思いきや、その青春時代は、とことん「ついていない」ことの連続でした。
12歳の頃に結核を患った経験から医者を志すものの、大阪大学医学部の受験に失敗。家が裕福でなかったため再受験はあきらめ、地元の鹿児島大学工学部に進学します。
不遇は就職活動でも続きました。
大学の恩師から「君ならどこでも入れる」と太鼓判を押されたにもかかわらず、一流企業はすべて不採用。恩師の紹介でなんとか京都の「松風工業」に入社できたものの、かつての名門企業は戦後、倒産寸前のボロ会社に成り下がっていました。

さすがの稲盛さんも、自分の運のなさを嘆いたといいます。
そんな環境だったため、同期入社した大卒社員5人は1人、また1人と辞めていき、3ヶ月後には稲盛さんを含めて3人に。残った同期と集まっては「自分たちも早く辞めよう」と愚痴を言い合う毎日だったそうです。
そのうちに、やがて1人が去り、同期の大卒はついに2人だけになってしまいます。
焦った稲盛さんは、自分たちも後に続こうと、その友人と2人で陸上自衛隊の幹部候補生試験を受ける決断をしました。
自衛隊にも入れない不運が人生をかえるきっかけに
結果は2人とも見事に合格。
ところが、入隊に必要な戸籍謄本が故郷からなぜか届きません。
結局、提出期限が過ぎてしまい、同期の友人だけが自衛隊へ行き、稲盛さんだけがボロ会社に取り残されてしまいました。
実はこれ、稲盛さんの2歳上のお兄さんが「大学の先生の紹介でせっかく入れてもらった会社なのに、1年も経たずに辞めるとは何事か!」と激怒し、あえて書類を送らずに止めていたのです。
しかし当時の稲盛さんは、そんな事情を知る由もありません。
ここまで不運が重なれば、誰だって「もうどうにでもなれ」と投げやりになってしまうはずです。
ところが稲盛さんは、ここで腹をくくったのでした。
「いつまでもブツブツ文句を言って働いていても仕方がない。現世のうまくいかないことを忘れるためにも、一生懸命仕事をしよう」
この心境の変化が、稲盛さんの人生を劇的に好転させる転機となりました。
寝食を忘れて研究に没頭した結果、当時最新の「ファインセラミックス」技術を用いた画期的な部品開発に成功。これが、のちの京セラ誕生へと繋がっていくのです。

成功を引き寄せるための「稲盛流・働き方改革」とは
この経験から稲盛さんは、自分に与えられた仕事を天職と思い、全身全霊を傾けて打ち込むことの大切さを伝えるようになりました。
その根底には、「常に明るさを失わず努力をする人には、神様はちゃんと未来を準備してくれる」という強い信念があります。

長い目で見れば、数々の不運があったからこそ、稲盛さんは偉大な経営者の道を歩むことができたのでしょう。
戸籍謄本が届かなかった時、当時の稲盛さんは一瞬、「神様はなんていじわるなんだ」と天を恨む気になったかもしれません。
しかし後から振り返れば、それこそが素晴らしい人生への入り口になりました。きっと、神様に感謝する気持ちが湧いてきたでしょう。だから、その信念をもてたのだと思います。
私たちだって不運に負けずに頑張っていれば、同じ体験ができるはずです。
「あの不運があったからこそ、今の幸せがある」と振り返ることができたとき、過去の不運はいつしか幸福へとつづく愛おしい思い出に変わるのです。
だから、うまくいかないことばかりの人生でも、絶望して自暴自棄になってはいけません。そんなことをしたら、むしろ余計に不幸を引き寄せてしまいます。
たとえ、不運が続いたとしても、それを受け入れることが重要なのです。
そうしないと、いつまでも覚悟が決まらず、仕事に集中することができなくなります。
余計なことは考えず、まずは目の前のことに100%集中する。これこそが、仕事のパフォーマンスを最大に高める秘訣です。
医師にも、自衛官にもなれず、とことん落とされ、開き直れたからこそ、稲盛さんには全身全霊で仕事に打ち込めるエネルギーが宿りました。そして、そのエネルギーが人生を変える大発明を生んだのです。
凡人が天才を超えるための「成功の方程式」
天才的な経営者といっても過言ではない稲盛さんですが、生前、ご自身のことを「人並みの能力だ」と評していました。
それでは、なぜ「凡人」を自認する彼が、世界的な大企業を育て上げることができたのでしょうか。
その理由を、稲盛さんが遺した有名な数式で説明しましょう。
稲盛さんは、人生や仕事の成果は「考え方 × 熱意 × 能力」の掛け算で決まると言います。

この方程式の最大のポイントは、これらが「足し算」ではなく「掛け算」である点にあります。
掛け算にする理由は、一要素でもゼロがあると結果がゼロになってしまうからです。
しかし、それぞれの点数を少しでも高くすることができれば、掛け算によって結果が何倍、何十倍にも膨れ上がるという大きなメリット(相乗効果)があります。
たとえば、「能力90点」の天才と、「能力50点」の凡人を比較してみましょう。
【天才】能力90点 × 熱意30点 × 考え方20点 = 54,000点
【凡人】能力50点 × 熱意100点 × 考え方100点 = 500,000点
いかがでしょう。ど真剣な凡人のほうが圧倒的に大きな成果を出せることになります。
どんなに才能に恵まれていても、自惚れて努力を怠ったり、ネガティブ思考でチャレンジを避ける道を選んでばかりでは、大きな成果を上げることは不可能なのです。
もちろん、世の中は単純ではないので、判断に迷う局面は必ず生じます。
そういうときは、「人間として正しいかどうか」を基準に考えて行動することが大切だという教えも残しています。

こちらを選んだほうが利益が大きいと思えても、それが人の道から外れた選択であれば、成果を遥かに上回る悪い結果を導いてしまうリスクがあるからです。現代の環境問題は、まさにその典型的な例です。
だからこそ、目先の利益よりも、遠くを見て行動することが必要なのです。
私事ではございますが、私は昨年、最愛の母を亡くしました。現在は認知症を患う父と二人で暮らしていますが、その父にもがんが見つかりました。
正直、「なぜ、こんなにも不幸が続くのか」と天を仰ぎ、嘆きたくなる日もあります。
しかし久しぶりに稲盛さんのエピソードを読み直したことで、またも大きな力をもらいました。
「常に明るさを失わず努力をする人には、神様はちゃんと未来を準備してくれる」
この言葉を信じ、明るさを忘れず、運命を受け入れる努力をしながら、自分の目標に向かって一歩一歩進んでいきたいと思います。
次回予告
全6回でお届けしている「一流人の選択と決断」シリーズ、第5回をお読みいただきありがとうございました。
次回は、ついに最終回を迎えます。
ラストを飾るのは、「奥様の意見」を素直に聞いたことで、運命を変えることができた実業家のエピソードです。
失敗続きの夫を救った奥様の助言とは何か? 決断に迷ったときに、何を大切にすべきかも学べます。どうぞお楽しみに!
第1回~4回の話はこちらです。よろしければご覧ください。
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