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第21回:キャリアを継続するために「貯蓄」でなく「投資」を選んだ理由


現在、私は大学病院の医師として働いています。この仕事に誇りを持ち、日々の業務には大きなやりがいを感じています。しかし、現実的な話をすれば、大学病院の給与だけで生活のすべてを賄うのは決して容易ではありません。私を含め、多くの医師が外勤(アルバイト)をこなすことで、生活の糧を得ているのが実情です。

住宅ローンを抱え、子供の成長とともに教育費が膨らんでいく。そんな状況下で「経済的な余裕」を保つのは、どんな職業であっても共通の悩みではないでしょうか。特に私の場合、子供が私立大学の医学部に進学することになり、家計へのインパクトは極めて大きなものとなりました。

ここで誰もが直面する問いがあります。 「収入を増やすために、今の職場を離れて転職すべきか?」

私も大いに悩みましたが、結果的に転職はせず、今の大学病院で働き続ける道を選びました。一番の理由は、今の仕事にやりがいを感じ、一緒に働く仲間が好きだからです。もし生活を支えるだけの収入を確保できるなら、今の場所で長く働きたい。そう考えたとき、私が出した結論が**「貯蓄」を捨てて「投資」にシフトする**という戦略でした。

「貯蓄」という名の、最も険しい道

多くの人は、老後のために「1億円貯めよう」と考えます。しかし、55歳の今から70歳までの15年間で1億円を積み上げるには、利息を考慮しない場合、毎月約55万円の貯金が必要です。これは、多くの人にとって非現実的な数字です。

しかし、視点を変えてみましょう。

  • 貯蓄1億円: 毎月30万円ずつ切り崩すと、約27年で底を突く。

  • 投資資産5,000万円: 年率6%で運用しながら毎月30万円を切り崩すと、約30年持つ。

驚くべきことに、「1億円の現金」よりも「5,000万円の運用資産」の方が、長持ちするのです。さらに、運用で5,000万円を作るための積立額は、同じ15年間であれば毎月約18万円で済みます。

「稼ぐ」から「投資に回す」へのパラダイムシフト

「投資にシフトする」ということは、単に口座を作る以上の大きなパラダイムシフトを意味します。

これまでは「いかに給与(額面)を上げるか」ばかりに意識が向きがちでしたが、これからは**「得た給与のうち、いかに投資に回せるか」**が将来の資産を決定づけることになります。将来の安心は、もはや年収の多寡だけではなく、自分の生活をコントロールして捻出した「投資に回せる額」にかかっているのです。

もちろん、投資に回す額を増やせば期待リターンは上がります。しかし、ここでも「リスク許容度」が重要です。投資に回したい一心で生活防衛資金(万が一の時のための現金)を削りすぎてしまえば、日々の不安は増大し、それは健全な資産形成ではなく**「綱渡りのギャンブル」**になってしまいます。国会でも話題となった "NISA貧乏”と言われる状態もこれに当たります。自分の心が穏やかでいられる範囲を見極め、コントロールすることが不可欠です。

完璧なシミュレーションより、自分なりの一歩

そして、毎月18万円を積み立てることも、決して容易なことではありません。ここでお伝えしたいのは、「18万円を積み立てられないからやらない」ではなく、たとえ1万円でも2万円でも積み立てていけば、理想とする状況に少しでも近づくことができ、老後の生活に確実に余裕が生まれるということです。

ネット上では「70歳時点でいくら」「100歳までのシミュレーション」といった情報が溢れています。しかし、必ずしもその通りにならなければならない、と身構える必要はありません。できる範囲で、少しでも目標に近づけば良いだけなのです。

大事なのは、自分の手の届く範囲で一歩を踏み出すこと。その積み重ねが、将来の不安を払拭する唯一の手段になります。私にとって投資とは、一攫千金を狙うギャンブルではありません。**「愛する仕事を、愛する場所で続けるためのインフラ」**なのです。

次回は、数ある投資法の中で、なぜ「新NISA」が最適解なのかについてお話しします。



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