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嫌いだったはずなのに、絶品だった。鳥取の白いかに学ぶ「最初の体験」の設計術【いいものインサイト #7】

地方にはまだ知られていない価値がある。

この価値を広く紹介していく記事を【いいものインサイト】としてシリーズ化していきます。

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白いかも鳥取県の四季の県魚に選ばれています


鳥取に来る前、わたしはイカが得意ではありませんでした。

理由はふたつ。嚙んでも嚙んでも切れない、あのゴムのような食感。そして、鮮度が落ちると漂ってくる独特の臭み。「イカという食べ物が苦手なのだ」と、ずっとそう思っていました。

でも鳥取で、その思い込みは静かに崩れました。


ケンサキイカが「白いか」になるとき

鳥取で「白いか」と呼ばれるのは、ケンサキイカのことです。

水の中にいるとき、ケンサキイカは完全に透き通っているんだそうです。釣り上げられた瞬間から赤く染まり、時間が経つにつれて白くなっていく。地域によっては「赤イカ」と呼ぶところもあるくらい、名前ひとつとっても全身が変化し続ける繊細な生き物です。

漁法は、夏の夜に海へ出て漁火(いさりび)で集め、一本釣りで釣り上げるというもの。賀露港沖に並ぶ漁船の灯りは、鳥取の夏の風物詩になっています。

食べてみると、「イカの大トロ」と呼ばれる理由がすぐわかります。柔らかくて甘い。刺身にすると口の中でとろける。イカってこんな食感だったの?と非常に驚いたのを今でもよく覚えています。

ここで重要なのは、この食感の差が「種類の差」ではなく「状態の差」だということです。ケンサキイカは鮮度が落ちると急速に食味が変わります。遠くへ運ぶ時間をかけた白いかと、揚がったその日に口にする白いかは、同じ生き物とは思えないほど違う。わたしが「イカが苦手」だと思っていたのは、本物の状態のイカに出会っていなかっただけかもしれません。


鮮度が命。だから、鳥取の外には出ない

白いかには、決定的な弱点があります。

鮮度の劣化が、極めて早い。水揚げから時間が経つにつれ、あの透明な体は白く濁り、甘みは抜け、食感は変わっていく。「イカの大トロ」が成立するのは、揚がってから数時間以内のことなんだそう。

だから鳥取の白いかは、県外にほとんど出回りません。

古いデータではありますが、2016年の鳥取県のケンサキイカ漁獲量は307トン、水揚金額は3.1億円。鳥取を代表する夏の味覚でありながら、その多くは賀露地方卸売市場を中心とした地元で消費されています。

しかし、立ち止まって考えたいのが、「出回らない」という事実の意味。一般的に、産品が県外に出ないことは弱さとして語られます。でも白いかの場合は逆です。「食べるためには鳥取に来るしかない」という構造が、白いかという体験の希少性を守っている。「どこでも買える」「すぐ届く」ことが賞賛される世の中において、「ここでしか食べられない」という制約が、かえって体験の価値を高めていました。


「透明であること」を磨いた技術

ただ、地元だけで消費することに甘んじていたわけではありません。

鳥取県水産試験場は平成28年(2016年)、白いかの高鮮度出荷技術の開発に取り組みました。その中核が「墨袋除去技術」の開発です。

ケンサキイカを傷つけずに墨汁嚢(すみぶくろ)だけを取り除く専用器具が開発され、賀露・赤碕・淀江の主要産地で技術講習が行われました。墨袋を除いた状態のケンサキイカは「鳥取墨なし白イカ」としてブランド化され、2016年7月4日から販売を開始します。

結果はどうだったか。

墨なし白いかの単価は、通常の白いかの1.32倍。地区によっては1.52倍の単価がつきました。透明な状態を長く維持することで、白いかの価値の核心である「見た目の美しさ」が損なわれなくなった。それが数字に現れました。

ここでわたしが印象に残っているのは、この価格差が「味の差」ではなく「最初に目にした瞬間の印象の差」から生まれているという点です。購入者はまだ食べていない。でも透明な白いかを見て、価値を判断する。最初の一瞬の印象を設計することが、価格を1.32倍にしていました。


嫌いな顧客はいない。悪い状態で出会っただけだ

白いかの話から、ひとつの仮説をわたしは考えています。

「その商品が嫌いな顧客はいない。ただ、最悪な状態で最初に出会っただけかもしれない」

わたしがそうでした。スーパーの売り場で、鮮度が落ちた状態のイカに何度も出会い続けた結果、「イカが苦手」という固定観念ができあがっていた。でもそれは「イカ」への評価ではなく、「鮮度の落ちたイカ」への評価だったのです。

これは、自分の仕事・商品・発信に置き換えることができます。

商品の質は高い。でも届け方が雑で、説明が不親切で、初回の体験が悪かった。その場合、顧客は「この商品が嫌いになった」のではなく「最初の体験が悪かった商品として記憶した」だけです。本来の価値を体験する前に、離れていく。

逆に言えば、最初の体験を丁寧に設計することは、それだけで競争優位になります。白いかはその最たる例に思えます。


あなたの最初の体験を、誰が設計していますか

鳥取の白いかは、今年も7月11日・12日に「賀露白いか祭り」が開催されます。会場は賀露港そばの地場産プラザわったいな「とりっこ広場」。人気の「白いか盛り盛り丼」や、漁船への乗船体験も楽しめます。

もしかするとそこで、「わたしイカが好きじゃなかったんだけど」という人が、考えを改める瞬間が生まれるかもしれない。それが、白いかの一番の強みだと思っています。

白いかを通じて思うのは、自分の仕事や発信における「最初の体験」を見直してみようということ。顧客が最初に触れるのは何か。その状態は、最高に近いか。説明する前に、見た目で価値が伝わっているか。白いかの透明さのように、質が一目でわかる状態になっているか。

本物に出会うまで、人は嫌いなままでいる。
本物に出会った瞬間、思い込みは崩れる。

鳥取の白いかは、そんな学びをわたしに与えてくれました。


最後までお読みいただきまして、ありがとうございました!他の記事もぜひご覧ください★

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よそから来た人が鳥取の白いかに感動している印象があります!

参考URL

https://www.pref.tottori.lg.jp/secure/1093663/H28_4_2.pdf

https://www.pref.tottori.lg.jp/258924.htm


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