誰もが認める完璧な人も、子育てでは悩み事がある。 | 家族の部屋
空港まで、迎えに来てくれた人
去年のフランス到着の日、シャルル・ド・ゴール空港まで車で迎えに来てくれたのは、夫の兄でした。
パリの交通渋滞は有名です。空港からの道は、特にひどい。
でも義兄は、どんなに渋滞しても、どんなにひどい割り込みがあっても、「allez, mon gars(さあ、どうぞ)」と静かにつぶやきながら、必ずスペースを譲る人でした。
クラクションも鳴らさない。舌打ちもしない。
ただ、淡々と、正しいことを続ける。
その姿を後部座席で見ながら、ああ、この人はきっといつもこういう人なんだと思いました。
フランスで最も難しい国家資格の一つを、トップ3で通った人
義兄は、フランスで最も難しいとされる国家資格の一つを持っています。
それを、塾も家庭教師もなしに、トップ3以内で合格した人です。今は自分のオフィスを構えて、その専門性で多くの人を支えている。
3年前、お義父さんの誕生日に一緒に42kmを走るという目標のもと、マラソンを始めました。走ったことがほとんどなかった人が、始めて2年目には42kmを3時間以内で完走。今年はトライアスロンまで完走した。
奥さんも先月、初めてのハーフマラソンで1時間50分台という記録を出しています。
飛行機を使わない主義を何年も貫いている以外に、週に一度は国の機関でボランティアみたいなのをずっと続けている。
家族は笑いながら言います。
「お義父さんも過激なところがあるけど、お兄さんはさらに輪をかけている」と。
外から見ると、まさに
【絵に描いたような人でした】でした。
でも、その人の暮らしは驚くほどシンプルだった
最初に会った時、義兄の印象は「すごく成功している人」でした。
でも一緒に時間を過ごすうちに、その暮らしぶりに驚くようになりました。
移動はメトロや自転車。今回は家族4人、自転車で公園まで来ていました。車社会のフランスで、家族全員で暑い尾夏の日に自転車移動。
車は持っているけれど、いつ買ったんだろうと思うような年季の入った軽自動車。実用性だけを考えた選択、という感じ。
服は、お義父さんがマラソンを完走した時にもらった記念Tシャツのおさがりだったり。
ケチなのでは全然ない。これも彼の思想に通じているんだと思います。
飛行機を使わない。必要以上のものを持たない。社会や環境への配慮が、信念として生活のすみずみまで行き渡っている。
言葉で語るんじゃなくて、生き方で示す人です。
その人が、マクドナルドでサンデーを食べていた
だけど、今回の滞在で、忘れられない場面がありました。
みんなで博物館に行った日のこと。
カニキュルで外が40度近い猛暑で、義兄の子どもが少しぐったりし始めていました。
その時、義兄が提案したんです。
近くのマクドナルドに入って、サンデーを食べよう、と。
私は少し驚きました。
マクドナルドとか、絶対行かないタイプの人だろうなと、会った瞬間からなんとなく勝手なイメージをもっていたから。
でも子どもが暑さでへばっている。
その瞬間に、義兄は迷わず子供が喜ぶマクドナルドを選んだ。
夫はその様子を見て、子どもの頃のことを思い出しながら、静かに微笑んでいました。
「人って変わるものだよな。親になるって、すごいことだなって噛み締めちゃうよ」と、後で小さくつぶやいていました。
その人が、子育てで悩んでいた
今回のフランス滞在で、義兄と話す機会がありました。
子どもの話になった時、義兄がこう言いました。
思うようにいかないことももちろんたくさんある、と。
正直、驚きました。
何をやってもトップを取ってきた人が、子育ての話になると、そういかないと言っている。完璧に近い人生を歩んできた人が、子育てという場面では、私たちと同じ場所に立っている。
しかも、義兄と夫の距離がぐっと縮まったのは、マラソンを一緒に始めたことに加えて、子育ての経験を共感できるようになってからだと聞きました。
兄弟で、子育ての大変さを分かち合っている。
子育ての大変さは、世界共通だった
私たちは海外で子育てをしています。
国籍も文化も違う夫と、言語が4つ飛び交う家で、実家も友人も遠い土地で。
時々、自分たちだけが特別に難しい状況にいるような気持ちになることがありました。
でも義兄を見て、気づいたことがあります。
フランスで育って、フランス語を母語として、フランスの家族に囲まれて暮らしていても。完璧に近い人生を歩んできた人でも。
子育ては、思うようにいかないことばかり。
国は関係ない。言語は関係ない。学歴も、キャリアも、信念も、関係ない。
子育ての大変さは、世界共通でした。
その発見が、私にとって、思いがけず大きな救いになりました。
完璧な人が隣にいることの、プレッシャー
そして、義兄の話をしながら、夫のことを考えていました。
こういう兄の隣で育つということ。
どんなに頑張っても、常に比較される可能性がある場所にいるということ。
もちろん、良い影響も大きかったと思います。高い基準が当たり前になる環境。正しいことを続けることが普通の家庭。
でも同時に、それがプレッシャーになった部分もあっただろうと、想像します。
夫が若くして海外に出た理由の一つが、そこにあるのかもしれない。
自分も、年上のお兄ちゃんがいるから、なんとなくわかる。
この話は、夫編でもう少し深く書こうと思っています。
子育てという、唯一の平等な場所
義兄と夫が距離を縮めたのは、子育てからだったという話が、印象に残っています。
勉強でも、仕事でも、スポーツでも、義兄は常に先を行く存在だった。
でも子育てだけは、どちらも初めてで、どちらも悩んでいる。
その場所では、兄も弟も、同じ高さに立っていた。
子育てって、そういうものなのかもしれないと思っています。
どれだけ優秀でも、どれだけ経験豊富でも、子どもは自分の思い通りにはならない。
だからこそ、子育ての悩みを共有できる相手が、特別な存在になっていく。
マクドナルドでサンデーを食べる義兄を見ながら、夫が微笑んでいたあの瞬間が、その答えだった気がしました。
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