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カカオから色をいただく会

この週末に参加したワークショップがとても良い時間だった。

おいしい色の草木染め─「カカオハスク」を染める半日ワークショップ

あと4回開催されるとのことなので、カカオの温かみが冷めないうちにご紹介したい。


草木染めとチョコレート


会場の写真館に着くと、ポスターと色とりどりの糸がお出迎え。

ぐるぐるねじられた色とりどりの糸たちを見ると思い出すのが、大住正子さんの回顧展。

友人や知人や親戚にも草木染めや機織りをしている人がいて、親しみを寄せていた。

草木染めへの興味は、ずいぶん前に読んだ梨木香歩さんの「からくりからくさ」に遡る。この本に流れる時間と空気がとても好きで、何人もに勧めた。

一度やってみたいと思っていた草木染め。カカオとの組み合わせにさらに親しみが湧き、今回のワークショップに参加した。

おいしい草木染めをおいしいとこ取り

「チョコレートの香りだ!」

甘い香りを思わず吸い込んだ。カカオハスクはカカオの皮。それを煮出した染液もホットチョコレートのような香りがする。

大鍋から湯気とともに立ち上る、おいしそうな香り。お砂糖とミルクを混ぜて飲みたくなる。

大きな鍋と液の色からの連想か、お汁粉にも似ていると思う。自然のものを煮出した者同士。

ウールのマフラーも色を吸いやすいようお湯につけてほぐされ、準備万端。

下準備は先にやってくれていて、一人一台のコンロも耐熱手袋も用意されていて、あとは染めるだけ。デコレーションケーキの土台は組み上がっていて、仕上げのデコレーションだけ取っておいてもらっているような、草木染めのおいしいとこ取り。

羊を押しいただく

参加者が揃い、自己紹介。なぜこのワークショップに参加したか、チョコレートへの想いを一言ずつ。草木染めが初めての人もいれば、何度も参加されている人もいる。

場が温まり、主宰のATELIER SOWのイシザワさんから説明を聞く。

カカオハスクは台湾で育ったカカオのもの。
草木染めは「自然のものから色をいただく」。

「ご自分で染めたマフラーでご自身を温めたり、誰かを温めたりしてください」

イシザワさんの言葉選びが優しくて温かい。そして面白い。

しっかり染まるようにとギュギュッと揉むとウールが固まってしまうと注意するときは、「羊の団子が出来上がります」。

ウールを「羊」と呼ぶうち、一人一枚ずつマフラーを配るときも「羊を配ります」になっていた。

団子にならないよう、包むようにふわっと扱おうという気持ちに仕上がっている参加者たち。一人ずつイシザワさんから手渡された「羊」を恭しく押しいただいて席に戻った。

灰汁か鉄か

草木染めでは「染める」とは別に「媒染する」という色を定着させる作業がある。陶芸でいう釉薬がけにあたる工程だろうか。

染めてから媒染するのが一般的なようだが、今回は媒染してから染める順序。

ここで2種類の媒染液、「灰汁」か「鉄」かを選択する。

媒染の後にカカオ染めした仕上がり例を見比べると、灰汁はオレンジっぽく、鉄はグレーっぽく、まったく違った印象に。

今までならオレンジに飛びついたところだが、最近は落ち着いた色を身につけることが増え、ワークショップに着て行った服もくすみ系だったので、鉄を選んだ。

鉄の媒染液は木酢液の匂い。

漬け込むと、白い羊がほのかに染まる感じ。

灰汁の媒染液はほぼ透明で、漬けてもあまり変化はなかった。

優しく絞り、タオルに挟んで水気を取り、いよいよカカオから色をいただく。

魔女の儀式

媒染液に漬け込むのと、やることは同じなのだが、カカオから色をいただくので、気合が違う。「羊」を扱う手つきも、色を見る顔つきも、より真剣に、神妙になる。

「魔女の儀式みたいですね」とどなたかが言った。

撮影してもらった動画を見返すと、そこに魔女が映っていた。チョコレート色の液に羊を泳がせ、おまじないをかけている。

羊よ、染まれ。

染ま〜れ。

染ま〜れ〜。

入らなかった色を流す

漬け込む時間は取らず、すぐに水洗い。

チョコレート色の水が流れていく。

「色が落ちたのではなく、入らなかった色を流します」とイシザワさん。

必要な色だけいただき、余った色は水に流して返す。自然に任せるという感じがして、草木染めらしいなと思ってしまう。

写真を撮られていて気づいたのだが、わたしの着ていた服が洗い場のミントグリーンと壁のグレーに同化していた。

壁の色は鉄媒染のマフラーにも似ている。というか、わたしが着て行ったワンピースの色とかなり近い。

マフラーを干した眺め。

左が灰汁の媒染液。
右が鉄の媒染液。

鉄の左側がわたしの染めたもの。

灰汁の右端の方は、漬け方に差をつけて、グラデーションに。

いろんな色をいただく

コーヒーを飲みながらの振り返りの時間も豊かだった。袋にたっぷり入ったカカオハスクに鼻を突っ込み、上モノのカカオをキメて盛り上がった。

カカオハスクは大量に余っていて、廃棄されているものも多いらしい。コーヒーかすと同じく、匂い消し効果も高いそうだし、ポプリみたいな袋に詰めて販売してはなどと話した。

チョコレート用にカカオを日本に輸出するときは水分を飛ばして乾燥豆にするが、もぎたてのカカオの実は紫がかった色で、新鮮なカカオから色をいただくと、紫色っぽく染まるらしい。実を割ると、たくさんの豆粒(チョコレートの原料)のまわりにライチのような果肉があり、果肉を食べてもチョコの味はまったくしないそう。

カカオの色だけでなく、いろんな色をいただいた会だった。

「家に帰ってからやっていただきたいこと」と宿題もいただいた。

羊毛の余計な油や汚れを落とす「縮絨」という作業。これをやることで風合いが増すそう。

先延ばし癖のあるわたしだが、家に帰って、早速やった。そのマフラーを干し、半乾きでアイロンをかけ(またはスチームアイロン)、形を整えて完成。

鉄と羊のマリアージュ。良い色。

2時間のワークショップだが、宿題を入れると、一日がかりで草木染めを体験したという充実感を味わえた。

当日の準備の時間、その前の試し染めの時間、ワークショップを企画する時間、さらに遡って技術を磨いた時間がギュッと凝縮され、おいしいとこどりをさせてもらった。

イタリアで発行された「ウールです」の証明カードもいただいた。

早速巻いて自慢している。薄手だけどあったかいし、春まで巻けそう。

カカオハスク「を」染める?

最初にワークショップの名前を見たとき、「カカオハスクで染める」ではなく「カカオハスクを染める」なの?と「を」に引っかかったが、参加してみると、カカオハスクから色を引き出す工程を通して、これまでなじみのなかったカカオハスクに輪郭と色がついた。

カカオハスクを知り、カカオハスクを色にして羊に移し、持ち帰った。

だから、「を」だ。と納得する。

カカオハスクが目的語になった日。

カカオハスクを染めるワークショップ、あと4回開催されるので、興味と予定と距離が合う方はぜひ草木染めとカカオにお近づきを。

2月4日(水)午前の回(10:00-12:00)
2月4日(水)午後の回(14:00-16:00)
2月8日(日)午前の回(10:00-12:00)
2月8日(日)午後の回(14:00-16:00)

お申し込みはpeatixから。参加費(12,100円)は当日お支払い。キャンセルの場合はキャンセル料が発生するので、申し込まれる方は事前にpeatixのページでご確認を。

RICO KAGURAZAKAさんのチョコレートと台湾のカカオ

カカオハスクを提供された神楽坂の「RICO KAGURAZAKA」さんのお菓子をお土産にいただいたのだが、これがまたびっくりするほどおいしく、うれしい出会いだった。

わたしが参加した会はショコラティエのRICOさんがいらしていて、台湾カカオとの出会いやチョコレート作りのお話を聞け、人柄も知れたので、その親近感と好感も上乗せされているが、良い材料と真摯な手が感じられ、しみじみと味わい深い。

あの人に教えてあげたい、とおいしいもの好きな友人の顔が浮かんだ。

中国語のチョコレートは「巧克力」

「台湾で育てられているカカオ」というのが意外だったが、そう言えば、家に中国語のチョコレートの本があったなと思い出した。

台湾ではなく上海で買い求めたものだが、タイトルは「巧克力先生的世界記録」(チョコレート先生の世界記録)」。

チョコレートは中国語で「巧克力」。

コーヒーを飲みながら振り返りの雑談をしていたときに「中国語で『超克力』って書くんですよ。精力増強剤っぽいですね」と間違えてしまったが、権力者の薬として飲まれてきた歴史があるというチョコレート。当て字ではあるが「力」が入っているのは言い得て妙。

購入したときよりも中国語を読めるようになっていることに時の流れを感じる。冒頭、チョコレートさんがクッキーさんに会いに行くのだが、ワークショップのお土産のチョコレートクッキーと重なって、うれしい。

裏表紙にクッキーさんがいる。本もクッキーさんの形に型抜きされて、縁が波々になっている。

中国の絵本だと思っていたが、表紙に「译」の字を見つけ、翻译(=翻訳)された本であることに気づいた。奥付にある横文字のタイトルから検索すると、出版社のページにヒットした。

書かれている文章を翻訳にかけると、オランダ語だとわかった。元はオランダで出版された絵本が中国で出版されたようだ。

台湾のチョコレートから「チョコレートの中国語」の連想で何年かぶりに絵本を手に取り、初めて奥付を見るきっかけができた。

本や映画や舞台も世界を広げてくれるが、展覧会やワークショップなど体を動かして感受する体験は、よりアンテナの感度を上げてくれるし、体に余韻が残るように思う。

特に今回のワークショップは、色を味わう視覚のほかに嗅覚や聴覚や触覚も刺激された。媒染液や染液のにおい、羊(ウール)の手触り、お湯の温かさ、水洗いの水の冷たさ。お土産のチョコレートで味覚も刺激された。

ワークショップ翌日、1/11付の朝日中高生新聞でチョコレートが目に留まった。

「しごとフォーカス」はショコラティエの川路さとみさん。司書さんが本を紹介する「シショドク」には『チョコレートを食べたことがないカカオ農園の子どもにきみはチョコレートをあげるか?』(木下理仁)

チョコレート名刺とチョコ仕事

自己紹介のとき、「チョコレートのこと書いてます」と話そうかと思ったが、はじめましての人に自分が物書きであることから話していたら長くなると思い、「チョコの名刺を作ってました」と話した。

フリーになって最初に作ったチョコレート名刺。一枚一枚にアルミホイルを巻き、カバーを巻いた。板チョコより高くなったが、名前を覚えてもらえた。(後日、チョコ名刺のnoteを書いた)

チョコレートの仕事は来なかったが、チョコレートのことはちょこちょこ書いた。

ドラマ脚本では中村倫也さんが時をさすらう麿を演じた「想ひそめし〜恋歌百人一首」(大九明子監督)の第3首「失恋に効くレシピ」がパティシエとチョコレートのビターな話。友人のパティシエ亜紀ちゃんが冗談で言っていた「チョコレートは鈍器になって溶かせば完全犯罪」をセリフに入れた。

2010年公開の映画「バレンタインデー」(ゲイリー・マーシャル監督)の劇場パンフに寄稿したエッセイ「愛とは、ワタシってこと」には、留学中のバレンタインデーの思い出を綴った。

FMシアター「昭和八十年のラヂオ少年」には「チョコレートと兵隊」の歌とチョコレートのエピソードが登場。

自称「書きチョコ」

他にも書いてたチョコnote。

🍫さすらい駅わすれもの室「彼の苦いブラウニー」
🍫さすらい駅わすれもの室「彼女の苦いブラウニー」
🍫「ドラキュラとあかいチョコレート」スイート篇 ビター篇
🍫「ドラキュラとあかいチョコレート」ビタースイート篇 
🍫「膝枕」外伝「ショコラティエが見た膝枕」
🍫子守話74「チョコレートのちきゅう」(2026.2.6追記)

自称「書き鉄」だが、「書きチョコ」も名乗って良いかもしれない。


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脚本家・今井雅子📚言葉遊びが好きな物書き 目に留めていただき、ありがとうございます。わたしが物書きでいられるのは、面白がってくださる方々のおかげです。