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【美術展2025#69】岡山・瀬戸内 夏の旅行記 1日目@岡山市、奈義町


7月某日。
夏に瀬戸内一人旅したいなあ〜と妻にダメ元でしれっと呟いてみたところ、まさかの許可がおりた。

ということで独身バックパッカー時代ぶりの一人旅。
期間は3泊4日で忙しくなりそうだがこれは楽しみすぎる。


早速計画に取り掛かるが、移動もホテルも美術展も何もかもがスマホ片手に事前ネット予約が必須になっていることに隔世の感を覚える。
便利になったのは良いのだが行き当たりばったりの旅の醍醐味は失われ、結局ルートが決まっている一人ツアーを分単位で移動するようなせわしなさを感じてしまう。
だが、まあ時代に取り残されて老害と言われないように頑張って付いていこう。

ということで訪れた展示を一つ一つ記事にしていたら年を越してしまいそうなくらいきつきつに詰め込んだ旅程だったので、【美術展2025】特別企画として一日ごとにざっくりまとめた計4回の「岡山・瀬戸内 夏の旅行記」として記す。

すでに行ったけれどもnote記事が追いついていない展覧会が10展近くあるが、それらはもう後回し。



1日目:8月13日(水)


そんなこんなで朝イチで家を出てウキウキで新幹線に乗り、いざ岡山へ。
昼ちょい前に岡山駅着。


・岡山市立オリエント美術館

まずは以前から行きたかった岡山市立オリエント美術館へ向かう。
ちょうど「古代エジプト・ふしぎ発見!-ナイルの贈り物と秘められた物語-」と題した特別展が行われていた。

会期:2025年7月12日(土)〜8月31日(日)

 古代エジプトの考古美術品が日本に初めて伝わったのは、明治時代のこと。本展では、岡山と下関に所在する初期のコレクションを出発点に、ミイラを収めていた棺をはじめ、彫刻、装飾品、護符、土器などの約280点の資料を、「生活」「信仰」「埋葬」といった切り口から紹介し、古代エジプトの魅力を再発見します。これらコレクションの背景には、武内金平や児島虎次郎らによる収集活動、国内古物商の売り立て、さらには戦後経済人の動向など、見逃すことのできない歴史が秘められています。
 そして、日本人の古代エジプトへの眼差しを大きく転換させた、黎明期のエジプト考古学者・鈴木八司氏の収集資料や、吉村作治氏を中心に結成された早稲田大学エジプト調査隊による、アジア初の発掘調査実現までの歩みについても紹介します。

岡山市立オリエント美術館


池袋の古代オリエント博物館は公益財団法人が運営しているが、岡山は市立でやっているというのがすごい。


入口のこの階段はピラミッドがモチーフに違いない。

中に入ると市立とは思えないくらいとても重厚で立派な建物だった。
設計は警視庁本部庁舎いわゆる「桜田門」や最高裁判所などを手掛けた岡田新一。

展示室内は写真不可。

展示は1896年に西洋画科が新設された東京美術学校で行われたエジプト考古学の講義ノートやメモから始まる。

1910年代に銀行家武内金平が英国で収集した古代エジプト美術品を日本へもち帰る。
これが日本最古の古代エジプトコレクションと言われている。
1920年台には児島虎次郎がヨーロッパやエジプトで古代エジプト美術品を買い付け日本へ持ち帰る。
ちなみに最初期の大原美術館の収蔵品も大原孫三郎の命を受けた児島虎次郎が買い付けている。

戦後、武内コレクションを購入した河村幸次郎、昭和期に収集活動をした岡﨑林平、とこの地には昔から先見の明のある実業家コレクターが多数いたようだ


毎年どこかで行われているような印象のエジプト関連展だが、今年は森アーツセンターギャラリーで行われていたブルックリン博物館所蔵の特別展が記憶に新しい。
こちらの展覧会、ちょうど今時期は豊田市博物館へ巡回しているようだ。


岡山市立オリエント美術館の展示は派手な作品や宣伝は無かったが、一つ一つにストーリーが込められていたり、子供向けにマンガを制作していたり、丁寧に見せ方を工夫していたり、と作り手の熱意がひしひしと伝わるとても良い展覧会だった。



・岡山県立美術館

続いてすぐ隣に建つ岡山県立美術館へ。
こちらも立派な建物で設計はオリエント美術館と同じく岡田新一。

こちらでは改修工事中の宮城県美術館のコレクションから「響きあう絵画」と題した特別展が行われていた。
神戸、久留米、大分と巡回してきた展覧会だ。
ちなみに宮城県美術館の設計も岡田新一。

日本の近現代美術、ドイツ近代美術、そしてエッセイ「気まぐれ美術館」で知られるコレクター洲之内徹が最後まで手放さなかった「洲之内コレクション」など、約7000点に及ぶ国内有数の優れたコレクションで知られる宮城県美術館。同館のリニューアル工事に伴う休館を機に実現することとなった本展では、厳選された約70点の作品を紹介します。
「響きあう絵画」というタイトルは、宮城県美術館コレクションの顔の一人である画家、ヴァシリー・カンディンスキーが芸術の本質と考えた「内なる響き」からとっています。
多彩な絵画が響きあう展示空間をどうぞお楽しみに!

展覧会特別サイト


天井が高い。

高橋由一、萬鉄五郎、梅原龍三郎、岸田劉生、松本俊介、等々、日本の西洋画史を担ってきた方々の作品が一堂に並ぶ。

だが、展示室内は建物のポテンシャルを活かしきれていないようにも思えるほどの天井の低さ。

カンディンスキーやパウル・クレーが並ぶ。

後半は昭和期の動向をざっくり辿る。

《作品(白)》1963
斎藤義重


古代エジプト美術、近代美術を経て、次は現代美術へ。



・奈義町現代美術館

この日のメインイベントである奈義町現代美術館。
いつか行ってみたいとは思っていたがなかなかその機会がなかった。
今回も直島がメインの旅だし、岡山駅から奈義町までのアクセス激悪っぽいからどうしようかと思ったのだが、今回行かないでいつ行くか?今でしょ!!と無理やり日程に組み込むことにした。

気持ちを後押ししてもらったnote↓


ただし色々スケジュールを考えたところ岡山市で美術館2つ行った後に電車とバスを乗り継いで奈義町まで行って帰ってくるのは絶対無理。

ということで事前に岡山駅前でレンタカーを予約しておいた。
せっかくだからあまり乗る機会のないスポーツタイプを借りることにした。

現在岡山駅14:00。
いざ奈義町までかっ飛ばすぜ!(法定速度内で)

TOYOTA GR86
「美」@美作市


途中の風景は綺麗だったしドライブは楽しかったがさすがに遠かった。
片道70km、2時間近くかかった…。


この美術館は、通称Nagi MOCA(ナギ・モカ)と呼ばれ、わが国を代表する世界的な建築家磯崎新によって設計され、平成6年4月25日に開館しました。

国際的に活躍されている荒川修作+マドリン・ギンズ、岡崎和郎、宮脇愛子の4人の芸術家に一般の美術館では収集不能とされる巨大作品をあらかじめ制作依頼し、その作品、又その全体の空間を作家と建築家が話合い、美術館として建築化したもので作品を本尊にたとえれば建築家はそれに覆い屋を架けるという発想から建てられた、いわば、作品と建物とが半永久的に一体化した、美術館です。

当美術館は、太陽、月、大地と名付けられた、外部からも明らかに認知出来るような形の3つの展示室から構成され、この土地の自然条件に基づいた固有の軸線を持っています。「太陽」の軸は南北軸、「月」の平坦な壁は中秋の名月の午後10時の方向を指し「大地」の中心軸は、秀峰那岐山の山頂に向かっています。

池に面した喫茶室から太陽、月、大地の展示室と同時に、借景になっている秀峰那岐山を望むことが出来ます。日毎、季節ごとにその表情の変化を据えることが出来るのは当美術館の見所の一つです。それぞれの部屋で静かに個人個人が全身の感覚で自分なりに何かを感じていただくようになっております。

建築家と芸術家が共同制作した、この奈義町現代美術館は、未来の美術館の方向を示すものとして一つの提案を差し出した、公共の施設として世界で初めて実現した美術館です。

奈義町現代美術館


何もない場所に突然異物が現れる。

ドーン
入口はこちら

設計は磯崎新。
1994年にこんなところによくこんなの作ったな。

入るとすぐに置いてある椅子も磯崎新の「モンローチェア」。

元ネタはもちろんマッキントッシュの「ヒルハウス」

我が家のHILL HOUSE Chair

正面から見るとヒルハウスそのものなのに、横から見るとうねうねしていて全くの別物なのがすごい。

ローバックモデルは現在廃盤か。
カフェにも多数並ぶ。


この美術館は「太陽」「月」「大地」で構成され、それぞれが空間も含めて荒川修作+マドリン・ギンズ、岡崎和郎、宮脇愛子の作品となっている。


「大地」《うつろひ-a moment of movement》
宮脇愛子

磯崎新の妻でもある宮脇愛子。
もちろん諸々の作品群は知っているが、私にとって宮脇愛子といえば沢木耕太郎の「深夜特急」に夫婦揃って登場し、イランのテヘランでなんだかんだ、という印象が強い。

自由自在に軌跡を描くステンレスワイヤー。
やがて光から闇へ。
深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗いているのだ。

境目

ドローイングも展示されている。

リズム感が心地よい。
方や金属、方や鉛筆の線。
全く違うのに、だけど同じなんだなあ。



「月」《HISASHI-補遺するもの》
岡崎和郎

与えらたとせよ

なんか一時期よく耳にしたような言い回し。


中に入ると高〜い天井。
《HISASHI》と《ベンチ》がちょこんと置かれる。

この広さと高さは写真では伝わらない
《HISASHI》

一歩歩くごとに音が反響する。
この感覚はこの場に行かないと味わえない。
すごいぞ、なんだこれ。



「太陽」《遍在の場・奈義の龍安寺・建築する身体》 
荒川修作+マドリン・ギンズ

布袋のギター柄のような天井。
中央の黒い筒が螺旋階段になっていて、

上まで登ると、

なんだここ

こちらもとんでもなかった。
ガンダムのスペースコロニーを最小化したような世界。

床が斜めっているので重力が持っていかれる。
平衡感覚を保つのが精一杯。
上を見ても横を見てもその度に平衡感覚が失われる。
なんでこんなのを作ろうと思ったのだろう。
ヤバすぎる。

写真では何回も目にしてきたけれどもそんなのは何の役にも立たなかった。
ああやっぱりスマホの画面をぽちぽちやっているだけではわからないことってたくさんあるなあ。

こちらもドローイングが並ぶ。

???じゃないのよ


2022年に磯崎新氏が亡くなり、この美術館の作家全ての人がこの世に存在しなくなった。
だが建物や作品はこの場所に残る。 

芸術は長く、人生は短し。
来てよかった。



さあ帰るぞ。
現在奈義町17:00。
いざ岡山駅までかっ飛ばすぜ!(法定速度内で)

帰りも2時間ほどのドライブ。


19:00くらいに岡山駅着。
まあ道中のドライブは楽しかったが、やはりさすがに知らない土地を往復140kmは疲れた。

だが本日の日程はこれで終わりではない。
この後さらに岡山駅から1時間ほど電車に揺られて宇野港まで行かなければならないのだ。


そんなこんなで20:30。
ようやく宇野港到着。

最初は直島の民宿に泊まろうと思っていたのだが、7月末時点で島内の宿はどこも満室だったので、島へ渡る拠点の港にあるホテルを予約した。
結果、このホテルが素晴らしかった。


・UNO HOTEL

駅を降りてすぐ正面にあるとてもきれいなホテル。
親切に出迎えていただいた。

ちなみに私は一番安いセパレートルームという大部屋を小分けにしたいわゆるドミトリータイプの部屋を予約しておいた。

とてもきれい

ドミトリーとはいうもののジャバラの扉でプライバシーが確保できる。
ただしカギはかからないが、まあ問題ないでしょ。
アジアの(小汚い)ドミトリーに比べたら天国。


ちなみに今までで一番プライバシーが無かったドミトリー↓

野戦病院か!
@ミャンマー 2004


ホテルのすぐ近くには温泉施設があってホテル宿泊者は入浴できる。
ここがまたよかった。

居酒屋やマッサージも併設されている。

早速入浴してから遅めの夕飯を豪華に御膳でいただく。

サイコー

このあとサウナをキメてホテルに戻る。

ようやく長かった1日目終了。
明日は直島へ。
楽しみだ。


2日目へ続く↓



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