【小説】ザ・サン・インザレイン #03|チャイナタウン
「ハウメニ!?」
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◀︎ 𝙉𝙤𝙬 𝙋𝙡𝙖𝙮𝙞𝙣𝙜
China Dolls — "發財發福中國年"
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白いシャツに黒い蝶ネクタイの店員に、いつものようにそう聞かれる。
ふたりだと伝えると「アップステア!(二階へ行け)」と指示された。
二階へ上がるとまた、「ハウメニ!?」
ようやく、相席の円卓に案内された。
席に着いても、まだカイは不服そうだった。
「結局ワンケイかよ。雰囲気ぶち壊し」
「しょうがないだろ、どこも閉まってたんだから」
ステンレスのポットに入ったジャスミンティーを、カップに注いでカイに渡した。
真っ白なクロスのテーブルには、醤油、酢、チリソースが中華っぽい皿に乗せて置かれている。
土曜日のこの時間はいつも以上に満席で、話し声が反響して、うるさすぎるくらいだ。それでも店員はどこかしらに空席を作っては、どんどん客を誘導している。
となりに座る黒人の男が、炒飯を運んできた店員に文句を言っている。
チキンの乗ったライスを頼んだのに、炒飯が来たそうだ。
店員は男に、「あんたが頼んだのはチキンフライドライスだ」と説明していたが、すぐさま蒸したチキンをライスに乗せたものを運んできた。
男は満足そうにチキンに取り掛かったが、男の前には、炒飯がそのまま置かれている。
一部始終を見ていた俺は、会計はどうなっているのかと気になったけれども、まあ知ったことではない。
「ほら、なんにする?」
カイにメニューを押し付けた。
「……ローストダック」
「ダックだけ?」
「ポークも。あとライスも」
ふくれっつらでも食べる気満々じゃん。
笑いながら手を上げて店員を呼び、カイにバーベキューポーク&ローステッドダック、自分にスチームドチキン(となりを見てたら食べたくなった)を、それぞれオンライスで頼んだ。
単品で頼むより、なんでもライスにのっけたほうが安くなるという、謎システムだった。
銀色の灰皿を引き寄せ、マルボロを一本取り出し火をつけた。
吐き出した煙が、蒸気に混ざって消えていく。
「メシ食ったらさ、ソーホーのオシャレなバーでもいく?」
曇っていたカイの顔が、急にぱっと輝き、いつもの笑顔に戻った。
しかもとびきりのやつ。
「うん! めっちゃいいアイデアじゃん! どこがいいかな? ミキヤどこかいいとこ知ってる?」
カイがすっかり機嫌を直したところにタイミング良く料理がやってきた。
カイのほうには、こんがり焼けたポークにダック。俺のは蒸したでかい鶏肉。どちらもロングライスの上に乗せてある。
カイがチリソースに手を伸ばしてドバドバかけている。こいつこれ好きなんだよな。
「ミキヤもいる?」と手渡されたので、俺も少しかけた。
「あー、うんま。やっぱワンケイ最高だよね」
さっきまで文句言ってたくせに。
単純なやつだよ、ほんと。
黒人の男が店員を呼び、やはり会計でまたケンカになっている。
「なんで炒飯の分まで入ってるんだ!?」
「間違えてオーダーしたのはあんただろ!?」
あー、うるさ。
𝙉𝙚𝙭𝙩 →
【CHAPTERS】
#00│プロローグ
#01|カルボナーラ
#02|キャッツ
#03|チャイナタウン
#04|ノッティング・ヒル
#05|ポートベロー・マーケット
#06|Fox in Fog
#07|Angel
#08|38番
#09|エリック
#10|香水
#11|クリスプ
#12|カムデン・マーケット
#13|Purple Turtle
#14|月
#15|最終話|邂逅
