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【小説】ザ・サン・インザレイン #02|キャッツ

 オペラ座の怪人、ミス・サイゴン、レ・ミゼラブルにキャッツ。

 ウエストエンドには、いくつもの劇場の看板が立ち並んでいる。
 いつもなら風景の一部と化しているレ・ミゼラブルの少女と目が合ってしまい、その存在感の生々しさに驚く。
 
 大通りから少し外れたニュー・ロンドン・シアター。
 黄色い猫の目の看板を見上げる。
 普段なら素通りしているこのシアターに、足を踏み入れる日が来ようとは思わなかった。



「いやー、めっちゃ感動したわ」

 シアターを出ると、空にはオレンジと紺のグラデーションがかかり、薄い三日月が、猫が爪を立てたみたいにかかっていた。

 シアターから出る人たちは、みな興奮冷めやらない様子で夢中で話をしている。こいつみたいに。

「やっぱさ、グリザベラのメモリーはいいよねー!」
 たしかに、あのよく耳にする歌は生で聴くと、ちょっとぐっときた。
 あと、劇場内全体が猫の目線で作られていて、観客もその世界の一部になっているような設計には感心した。実際、猫が客席を走り回り、目の前で威嚇するさまなど想像を超えていた。
 けど、やっぱり、あの温度感に完全に没入できない自分がいた。

「ミキヤはどうだった?」
「まあ、悪くはなかったかな」
「うっそだー。感動してたくせに」
「してねーわ」
「いや、俺にはわかる。泣いてた!」
「泣いてない」
 それよりも、臆面もなく涙をぽろぽろこぼすカイを見ているほうがおもしろかったことは、言わないでおいてやった。

「てか、腹減らね? チャイナタウンいこうぜ」
「せっかくミュージカル見たのにワンケイかよ」
 いつもならすぐ乗ってくる誘いに、カイが不満げな顔を見せた。
「問題でも?」
「もっとなんかオシャレなもの食いたい」
「なんだよオシャレなものって」
「んー、タイ料理とか?」

 タイ料理ってオシャレなのか?
 その前に、こんな時間にあいてる店ってあるんだろうか?

 
𝙉𝙚𝙭𝙩 →

【CHAPTERS】

#00│プロローグ
#01|カルボナーラ
#02|キャッツ
#03|チャイナタウン
#04|ノッティング・ヒル
#05|ポートベロー・マーケット
#06|Fox in Fog
#07|Angel
#08|38番
#09|エリック
#10|香水
#11|クリスプ
#12|カムデン・マーケット
#13|Purple Turtle
#14|月
#15|最終話|邂逅


【MAGAZIE】

|ザ・サン・インザレイン(スピンオフ)

|ア・リトル・ビット・クレイジー・デイズ(本編)


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