お仕事をもう一度頑張ろうと思える小説を紹介【創作大賞感想】
夏が本気を出してきました。
noterのマイトンさんも、そう呟いてたから本当だと思います。暑いですね。
嘘だろ?
— マイトン@京大薬博士の頭脳無駄遣い | 読むサプリ出します (@miton4890) July 1, 2025
今までのは遊びだったってのか。
こんなチカラ隠してやがったとは。
夏が本気出した。
暑さのせい?AIの擬人化を始めたマイトンさん。個人的に、めっちゃ面白かったです。創作大賞でお疲れの方にも楽しめる内容かと思い、冒頭で紹介してみました。(創作大賞全然関係ないけど)
ジピ子のじわじわ迫ってくるところと、アプローチの説得力が凄まじいぜ……。
さて、暑さとマイトンさんの話はここまで!
今日は、創作大賞応募作品の感想を紹介します。私は在宅ワーカーなので、家の中でも暑さを忘れるような「仕事と楽しく向き合えるような小説やエッセイ」が好きです。もちろん、ドロドロしたものも好きです。(結局、全部好きです)
仕事は人偏に士と書きます。
仕事——人が自分の得意を活かして、誰かの役に立つために働くもの。けれども、時にはそんな仕事自体を自分が「楽しみたい」と思ったりもしちゃったりなんかして。てへっ。
それは「視点」を変えることで、もう一度頑張ろうと踏ん張れたり、楽しめるんじゃないかなと、今回紹介する作品を通じて思いました。(今回は、2作品のみです)
①人事部付 真田雪乃の議事録/亜麻布みゆさん
人事部付に配属された雪乃の小さな勇気から、物語は動いていきます。
私自身も総務にいた経験があったので「人事部付」とタイトルについてた時『付』って何だろう?何か理由があるのかも?」と思っていました。
その理由は、2話目の上杉部長がやんわり伝えたり、雪乃の心の内的な部分でそれとなく明かされます。
確かに会社というか、組織って。あえて肝心なことほど「濁す」といいますか……。古いしきたりを重んじる会社ほど、その傾向が強そうです。そして、曖昧な部分をあえて作ることで、社員の労力をそこに委ねていく(無言の圧力?)ということもありそうな気がします。
人事部ではなく人事部付、の雪乃はいわば事務における「なんでも屋さん」になった。
だからこそ、その部分に疑問を感じてしまったりもして。会社は会社で、社員の愛社精神を頼りにしてしまったりとか。
そういった会社ならではのリアルや、そこで働く人たちの心理描写がとても丁寧に書かれているところが面白いと感じました。お仕事要素もしっかり詰まってて、THEお仕事小説です。
城山社長、上杉部長、川端部長、山南啓太郎、茉莉也など、登場するキャラが、それぞれ立っています。いそうでいない感じ、良いですね。
それにしても、登場人物がみんな魅力的で可愛いです。人が集まると天使業を始めちゃう茉莉也、実際にいたらきっと可愛いはず。
誰かが困っている時は手を差し伸べようと奮闘し、どんなことが目の前に訪れても、前向きに可愛く捉えてしまう……そして議事録に記録してしまう雪乃も、もちろん可愛いはず。
セクハラと揶揄されていた川端部長が、女子につい外見や恋愛について触れちゃう理由も可愛い。作品の中には、たくさんの可愛いが溢れていています。
作品を読んでて思うのは、どんな人でも話してみると「気づき」があったり。もしかすると私も、誰かを偏見の目で見ており、勘違いしていることもあるかもしれないということです。
小説を読んで、改めて誰かと深い話……いや、雑談でもいい。「雑談強化週間」は難しいので、私も「#匿名雑談チャンネル」を作り、ホンシャーマンを召喚したいと感じました。
何のことを言ってるかについては、小説をぜひ読んでください。
激務で辛いシーンのところにも、美味しそうなデザートが登場するなど「救い」もあるのが良かったです。セリフの掛け合いもテンポがよく、洒落が効いてるところもあって面白い。ここはきっと、みゆさんの落語経験が生きてる気がしました。
それにしても上杉部長は、仕事を任せるのが上手いです。社員に仕事させる時は、なぜその人に任せたのかもサラッと伝えつつ、「本社の悪口を言われても怒らない」など、コツについても触れています。それも押し付け感がなく、さらっと。
現実にも、こんな風に仕事をする意味を教えつつ「任せたよ」といって、肩をポンと叩いてくれる人がいたらいいなと思いました。そして、この作品を通じて改めて思ったのは……
「小説は楽しい」
ということでしょうか。
小説を書いていると、つい難しい表現とか。凝った伝え方をしようと考えてしまいます。
それも、コンテストへの応募が続いたり、書けば書くほどに。
彼女の作品を読むと、そんなことよりも「読んでくれる人に、純粋に楽しんでほしい」という思いがひしひしと伝わります。
なるべく初めて読んだ方にも、内容が伝わるようにしようとか、登場人物をなるべく悪者にしたくないなど、彼女なりの色んな配慮が随所に滲んでいる気もしました。
そう感じたのは過去作に触れていることや、talesの応募作品を先に見ていたからかもしれません。

talesの作品も読みやすく、面白かったです。noteで公開された「さなゆき」が全世代に楽しめる作品だったのに対し、talesは世界平和を祈るには歴史を辿って考える必要があると考えさせられる、みゆさんの挑戦というか、意欲作とも感じました。
逆に「さなゆき」がtalesで公開されていたら、また別の書き方になっていたのだろうか。そんなことを、ふと考えさせられました。
……という話を「一番乗り」で伝えるつもりが……な、なんと!!
コニシ木の子さんに先を越されました!!
誰にでも分かりやすくとか、誰にでも読みやすくするというのは、簡単に思えて一番難しい。その選択をすると、小説を書くうえで、自分の表現を捨てる部分が少なからず出てくるはずだからだ。
そうそう、これが言いたかったのよ!!
なぜなら、亜麻布みゆは、狙って書ける。
本当に、すごいスキルだと思います!
そんな訳で、私の伝えたかったことは、ほぼコニシ木の子さんが感想を書いているので、こちらをご覧ください。
それにしても、サムネイルに蛇を巻いた「テルマエロマエ」に登場する北村一輝のようなイケメンのイラストが描かれています。
コニシさんに「イケメンになりましたね」とお伝えしたところ、ご本人は「蛇の方」とのことです。
蛇の方が私です笑
— コニシ 木の子 (@kdcmoto2) June 26, 2025
作品については、彩野リィさんが投稿をまとめられているので、こちらもぜひ。
完結おめでとうございます!#さなゆき
— 彩野リィ|こじらせアラサーOL (@ree_eee30) July 1, 2025
※雪乃ちゃんイメージです pic.twitter.com/vdNEYZ89Nx
さなゆきに登場する、雪乃ちゃんのイラストも描かれています。そんなリィさん、先日お誕生日を迎えられたとのこと。お誕生日おめでとうございます!それにしても、絵が上手っ!
リィさん、お誕生日おめでとうございます!
②リミッター・ブレイク/吉穂みらいさん
お仕事小説部門応募作品です。
五人の女性がそれぞれの「書くこと」に対する目標や、思いに向けて葛藤していく様子が物凄いリアルです。
フィクションということですが、まるで吉穂さんの手記ではないかと錯覚してしまうくらいに、どの話もリアリティがあります。
たとえば第一話に登場する江崎実咲は、作家を目指して持ち込みもするのですが、編集長からの意見は辛辣です。
実際に、私も駆け出しの頃に企画を持ち込みした際に(ライターですが)、同じようなことを言われたことがあったので(企画が少し古いみたいな)、その時を思い出して胸が熱くなりました。
江崎は他にも、努力ではどうにもならない「年齢が出てしまっている」という指摘も受け、呆然としてしまいます。努力でカバーできる指摘なら希望が持てるけど、年齢なんてどうしようもないですもんね……。私は46歳なので、江崎の気持ちがひしひしと伝わりました。
物語はここで終わらず、編集者である佐藤絵梨花の内省や、富田編集長が抱える背景についても書かれています。
実は佐藤、江崎を傷つけないために真実をやんわりと包んでいたのです。
それは、はたして本当に優しさなのだろうか。けれども、長く書き続けてきたことに対する努力も、その仕事に長く従事してきた佐藤には手に取るようにわかっていました。
佐藤がはっきり言えないのは、作品を通じて江崎の努力を理解できたこと。そして、それが彼女の生き甲斐であること。その他には、江崎の年齢も、理由のひとつだったのかもしれません。
だからこそ、これ以上言ってしまうと「筆を折ってしまうかもしれない」(生き甲斐を奪ったらどうしよう)という思いもあったのかなぁと感じました。
はっきり伝えることが優しさになることもあれば、そうじゃないこともあります。かといって、伝えないことが冷たいとか、相手のことを考えていないとか。こればかりは、答えを簡単に出せない問題です。「ただし、人による」案件ですよね……。
でもお仕事になると、努力したからといって、すべて通す訳にもいかず。会社の抱える事情もありますし。難しい問題です。
佐藤は、江崎に精一杯の気遣いをしつつも、はっきり言えない自分を責めていました。
挙げ句の果てには、自分の恋愛がうまくいかないことまで責めてしまう佐藤。流石に「そんなことないよ」と、思わず励ましたくなりました。けど、そんなことあるかもしれないし。励ます、寄り添う。難しい問題です。
きっと佐藤は優しいのです。けど、優しいからこそ悩んでしまうのです。その優しさをどう表せばいいのかについて——。
富田編集長は、業績が傾いている会社の心配をしつつも、ママ友会に参加しては無駄に人間観察をしてしまい、1人気疲れをしていました。
仕事に関してはシビアな富田も、本当は繊細な一面を抱えています。でも、それが江崎や佐藤に伝わることはありません。
人の数だけ、いろんな事情がそこには潜んでいます。
優しいとか、気遣いとか。寄り添うとか。どれも曖昧でわかりにくいものです。もしかしたら、冷たいと感じてきた人も、人知れず誰かに「気遣い」をしていたのかもしれません。
それを知ることで、人は一つ何かを許せるようになり、優しくなるのかもしれないなぁ……。こちらの作品を通じて、そんなことをふと感じました。
作品の中には文学フリマ、共同書店などいろんな「書くスタイル」が登場します。書くって「ひとつ」じゃないと気づくと、希望が持てます。
本屋になりたいと感じたら、店舗ごと構えると大変なので共同書店というのもひとつの手だなぁと感じました。
共同書店で江崎と佐藤が出会い、そこで打ち解けあっていくシーンは圧巻でした。2人のやり取りは熱く、セリフも長めですが、そのやり取りはずっと眺めていたいと思うほど素敵なものでした。
長めのセリフのやり取りが、めちゃくちゃ面白い。ついつい夢中になって読んでしまう。改めて、吉穂さんの書くスキルが半端なく素晴らしいことを実感しました。

こちらの作品は、昨年度の創作大賞受賞者であるヱリさんが素晴らしい感想を書いています。
そして、吉穂さん自身も振り返りnoteを書かれているので、こちらもぜひ!
光栄なことに、何気なく書いた「打席に立ち続ける」の話についても触れてくださっており、めちゃくちゃ嬉しかったです!!いつもありがとうございます!!
【完】
⭐︎追伸
私もtalesで小説を書いています。
先日「すべては嘘からはじまった」が、無事書き終えられました。小説を書き切るってすごく大変だなぁと感じました。この振り返りについては、またそのうち書きます!(素敵なレビューもありがとうございました!)
