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このエッセイストさんが凄い【創作大賞感想】

創作大賞は名作が次から次へと登場する。素敵なエッセイもたくさん読めるし、そこから学びを受けることも非常に多い。今回の記事では、創作大賞がはじまってからハッと目に止まった「このエッセイストさんが凄い」と感じた方を厳選して紹介する。

眠りにつく3分前、最後に触れたい何かになる。/シラセ ミチさん

 創作大賞では、ときどき 「誰かの人生の『ひとかけら』」 に触れたようなエッセイに出会う。シラセさんの作品もまさにそうだった。

 淡々と綴られているのに、行間からこみあげている、熱。泣かせようとしているわけじゃないのに、気づけば胸の奥がじんと熱くなる。「きしめん」という、普段ならば、なんてことのないはずの言葉が、こんなにも心を揺らすのだということに気づいたのは、実に初めてだった。

 インターネットを続けていると、名前も顔も性別も知らない誰かに、ふと想いを馳せることがある。noteを始めてから、その感覚はいっそう強くなった。オフ会もたくさんしてきたし、仲間もうんと増えた。


 「はじめまして」から始まり、言葉を交わし、気づけばその人の更新が止まってしまう。自分だけは書き続けてきたからこそ、何度も何度も「はじめまして」を繰り返してきた。

 ときどき思う。あのとき言葉を交わした人たちは、今どこで、どんな日々を生きているんだろう。そんな気持ちを知っている人なら、シラセさんのエッセイを読み進めるうちに、きっと胸の奥に静かにこみあげてくるものがあるはず。

 そして、誰かが眠りにつく3分前の世界を、今までより少しだけ大切に思えるようになる気がする。

お父さんの桃太郎は、鬼退治をしない/ 神田なりさん

 お父様が語る桃太郎のユーモラスなエピソードに微笑んでいたら、ふいに「予想していなかった」展開に、目が留まった。

 そこには、お父様が仕事で疲れて帰ってきても、自分たちを置いて先に眠ってしまった記憶がないことへの感謝が綴られていた。その告白に、思わずハッとさせられた。

 エッセイの中にこうした「意外性のある引き」があると、読む側の心を軽やかに裏切り、深く記憶に残る気がする。そして後半では、その視点が自然と自身の育児の想いへと移り変わっていく。

 この移ろいのなめらかさこそ、まさに「グラデーションの巧みさ」ともいうべきか。読み終えたあと、静かに余韻が残る、実に美しいエッセイだった。そしてこちらのエッセイはなんと「喫茶夜ふかし大賞」受賞作。納得の素晴らしさでした!

子どもと遊ぶのつまんない/しりひとみさん

 Xで大きく話題になっていたこともあり、何気なく読み始めたのに、
あまりの上手さに思わず息をのんだ。――これが、エッセイのプロの作品なのかと舌を巻く。

 こどもと遊ぶとき、楽しいよりも「早く終わらないかな」と思ってしまう瞬間。それは私にも「あるある」で、でも公の場で言葉にするには勇気がいる。

 そんな母親ならではの「言いづらい葛藤」を、逃げずに真正面から書ききった上で、ユーモアのあるエピソードを絶妙なバランスで散りばめていく。
 そして気づけば「たのしい」へと物語が転がっていく。その展開の巧みさは、まさに圧巻だった。

 子育ての苦しさが、ふとした瞬間に、まったく関係のない出来事から救われることがある。思いがけないところで、心の底から笑える瞬間が生まれる。それは何気なくみたテレビや、音楽、マクドナルドのポテトを一緒に食べた瞬間とか。不意打ちで訪れたりする。その「意外な救い」を大切にしたい――そう思わせてくれる作品だった。

現金至上主義の男/サトウリョウタ@編集者さん

 世の中、AIやキャッシュレス時代の到来で、どんどん便利になっていく。その一方で、便利なものに頼り続けると、どんどん自分がダメになっていく気がしていた。

 そんな私は、一応paypayも使うが、基本的に現金主義である。現金派は他にいるだろうか……そんなことを思っていたら、noteの海で見つけた。サトウさんだ。

 それからしばらくして、なるべく現金で支払うようになった。財布の中に一万円札を入れておく。コンビニでおにぎりと水を買う。千円札になって返ってくる。喫茶店でコーヒーを飲む。千円札を崩して小銭が増え、財布が少し薄くなる。そういうことを、ひとつずつ体で覚えるようにした。

サトウさんのエッセイより

 小銭が増えたり、千円札がふと財布に増えていたりすると、なんだか嬉しくなる。この感覚を共有できる人って、意外と少ないのかもしれないと思っていたけれど、サトウさんとはその話だけで1時間は語り合えそうだ。

 私も千円札をレジで出すとき、少しだけ躊躇う。でも、その「ちょっとした不便さ」を通して、お金のありがたみや、どう使うかを丁寧に考えられる気がして、実はけっこう好きだったりする。

 お金を使うときに「私はこれを選んだんだ」と思える感覚がある。

 サトウさんのエッセイには、人生には「ちゃんと選んだ」と思えることが大切だと書かれていた。人生は選択の連続で、お金を使うこともそのひとつ。納得して選べるかどうかは、きっと生き方そのものに繋がっている。

 お金を使うこと、そして人生を選ぶこと。その両方について、改めて立ち止まって考えさせられるエッセイだった。

【完】


【追伸】
書籍を2冊発売中です。もしよろしければ、ぜひ手に取って頂けると嬉しいです。

☆書く人生のはじめかた

☆すべては、嘘から始まった(小説・中間選考通過作品)

TALESからメディア化された作品一覧として、物語投稿サイト TALES(テイルズ)様より紹介いただきました。

☆エッセイ……ということで、エッセイに関する小説を「創作大賞」に応募中です。もしよければ、1話だけでも読んでいただけると嬉しいです。


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