MVP ARCHIVE HISTORY|Energy : Energy History SPECIAL 06 : Reactor Core / 原子炉炉心


原子炉炉心
原子力発電所では、核分裂 によって熱が生まれる。
核燃料が規則的に配置され、中性子の動きが調整され、発生した熱が冷却材へ受け渡される限られた領域がある。
原子炉の中心に位置し、核分裂連鎖反応 を維持しながら熱を取り出す場所。
それが、Reactor Core( 原子炉炉心 )である。
燃料が集まる場所
軽水炉で広く使われる燃料は、二酸化ウランを焼き固めた小さな円柱状の燃料ペレットである。
燃料ペレットは細長い金属製の管に収められ、一本の燃料棒とり、さらに多くの燃料棒が格子状に束ねられ、燃料集合体 を構成する。
炉心 は、複数の 燃料集合体 を規則的に並べた構造を持つ。
外から見ると一つの大きな燃料の塊に見えるかもしれないが、実際には、燃料、冷却材、制御設備、計測装置などが細かく配置された、精密な構造体である。
燃料ペレットの内部
燃料ペレットに含まれるウランのうち、主に核分裂を起こすのはウラン235で、自然界のウランに含まれるウラン235は少ないため、多くの軽水炉ではその割合を数パーセント程度まで高めた低濃縮ウランが使われる。
中性子がウラン235の原子核へ吸収されると、原子核が分裂し、エネルギーと新たな中性子が放出、分裂によって生まれた 核分裂 生成物は大きな運動エネルギーを持ち、燃料内部の原子へ衝突する。
この運動が熱へ変わり、燃料ペレットの温度を上昇させる。
炉心 で最初に生まれるのは、蒸気でも電気でもない、燃料内部に発生する熱である。
熱が外へ伝わる
燃料ペレットで生まれた熱は、外側へ向かって移動する。
まず燃料ペレットの内部を伝わり、その周囲を覆う金属製の被覆管へ届く。さらに被覆管の表面から、炉心 を流れる冷却材へ受け渡される。
軽水炉では、通常の水が冷却材として使われており、燃料棒の間を流れながら熱を受け取り、炉心の外へ運び出す。
核分裂 エネルギー → 燃料ペレット → 被覆管 → 冷却材
そして原子炉の外側にある蒸気や発電のシステムへと移っていく。
炉心 は 核分裂 を起こす場所であると同時に、その熱を安全に取り出し続けるための熱交換の場でもある。
被覆管が燃料を包む
燃料ペレットを収める被覆管は、核燃料と冷却材の間にある最初の物理的な境界となり、軽水炉では、ジルコニウム合金などの材料が広く使われている。
被覆管には、核分裂 で生じた放射性物質を内部に保持しながら、燃料の熱を冷却材へ伝える役割があると同時に、高温、高圧、水流、放射線、中性子照射といった環境に長期間耐えなければならない。
熱を伝えやすく、腐食しにくく、中性子を必要以上に吸収しないこと。
複数の条件を満たす材料によって、燃料と冷却材の境界が保たれている。
水が二つの役割を担う
多くの軽水炉では、水が冷却材であると同時に減速材としても働く。
核分裂 によって放出された直後の中性子は、非常に高い速度を持っている。
中性子が水分子の原子核へ繰り返し衝突すると、少しずつ運動エネルギーを失い、ウラン235に吸収されて次の 核分裂 を起こしやすくなる。
つまり 炉心 を流れる水は、燃料から熱を運び出すだけではない。
中性子の速度を調整し、連鎖反応を維持しやすい環境をつくっている。
炉心では、熱の流れと中性子の流れが同じ空間の中で重なっている。
制御棒が中性子を吸収する
炉心 には、核分裂 の進み方を調整するための 制御棒 が配置されている。
制御棒 は、ホウ素やカドミウム、ハフニウムなど、中性子を吸収しやすい材料を利用してつくられる。
制御棒 を炉心へ深く挿入すると、次の 核分裂 に使われる中性子が多く吸収され、反応は弱くなり、引き抜くと燃料へ到達する中性子が増え、反応は強くなる。
運転中の出力調整や原子炉の停止では、制御棒 の位置が重要な役割を果たすと同時に、緊急時には 制御棒 を速やかに挿入し、核分裂連鎖反応 を維持できない未臨界の状態へ移行させる。
炉心全体で反応を整える
燃料集合体の位置、燃料に含まれる 核分裂 性物質の量、制御棒 との距離、冷却材の温度や密度によって、中性子の分布と発熱量は変化する。
炉心の中心部では周囲から中性子を受け取りやすく、外側では中性子が炉心の外へ逃げやすい。
そのため、燃料の濃縮度や配置、燃焼の進み方を考慮しながら、炉心全体の出力が極端に偏らないように設計される。
原子炉の運転は、単に 核分裂 の数を増減させることではない。
炉心内部のどこで、どれだけ熱が生まれているかを把握しながら、燃料、冷却材、制御棒 の状態を整え続けることで成り立っている。
燃料は少しずつ変化する
原子炉の運転が続くと、燃料内部の構成は少しずつ変化する。
ウラン235は 核分裂 によって減少し、様々な 核分裂 生成物が蓄積する。
一部の 核分裂 生成物は中性子を吸収するため、連鎖反応にも影響を与え、ウラン238が中性子を吸収すると、過程を経てプルトニウム239などが生成され、その一部も 核分裂 を起こし、炉心 の出力に加わる。
炉心の燃料は、運転開始時と終了時で同じ状態ではない。
反応が進むにつれて変化する燃料の性質を予測し、制御しながら運転する必要がある。
燃料交換
燃料は、一度装荷すれば永久に使用できるわけではない。
運転によって核分裂 性物質が消費され、核分裂 生成物が蓄積すると、燃料は次第に連鎖反応を維持しにくくなるため、原子炉は定期的に停止し、炉心 の一部の燃料集合体を新しいものと交換する。
多くの場合、すべての燃料を同時に交換するのではない。
燃焼の進んだ燃料を取り出し、残った燃料の位置を組み替えながら、新しい燃料を加え、炉心全体の反応と発熱の分布を整え、次の運転期間に備える。
原子炉の種類で変わる炉心
加圧水型原子炉では、炉心 を流れる水を高い圧力に保ち、原子炉内部で沸騰しないようにする。熱は蒸気発生器を通して別の水へ伝えられる。
沸騰水型原子炉では、炉心 を通過する水が原子炉圧力容器の中で沸騰し、発生した蒸気がタービンへ送られる。
黒鉛を減速材として使う原子炉、重水を利用する原子炉、液体金属やガスを冷却材として使う原子炉もある。
燃料、減速材、冷却材、制御方式の組み合わせによって、炉心 の形と運転特性は大きく変わる。
停止後も残る熱
制御棒を挿入して連鎖反応を停止すると、核分裂 による大きな出力は急速に低下する。しかし、炉心 から熱が完全になくなるわけではない。
燃料内部に蓄積した 核分裂 生成物は、放射性崩壊を続け、その過程で発生する崩壊熱によって、停止後も燃料は熱を出し続ける。
時間が経つにつれて崩壊熱は減少していくが、停止直後は無視できない大きさを持つため、原子炉を停止したあとも冷却材を循環させ、炉心 から熱を取り除き続ける必要がある。
燃料を守るための冷却
冷却が不足すると、燃料と被覆管の温度が上昇する。
高温状態が続けば被覆管が損傷し、さらに温度が上がると燃料集合体の形状が保てなくなる可能性がある。
このため原子炉には、通常運転時の冷却系だけでなく、配管の損傷などによって冷却材が失われた場合に水を供給する非常用炉心冷却設備が設けられている。
核分裂 を制御することと、発生した熱を取り除くこと。
炉心 の安全は、この二つが同時に維持されることで成立している。
炉心から発電へ
炉心 で生まれた熱は、冷却材によって運び出され、その熱で水から蒸気をつくり、蒸気がタービンを回し発電機が回させ、電気を生み出す。
炉心 の役割は、核分裂連鎖反応 を制御された状態で維持し、発電に利用できる熱を安定して供給することである。
Archive Point
Reactor Core は、核燃料、冷却材、制御棒などが配置され、核分裂連鎖反応によって熱が生み出される原子炉の中心部である。
中性子の数と速度、燃料の状態、冷却材の流れ、各部の温度は絶えず監視され、燃料ペレットで発生した熱は、被覆管を通して冷却材へ伝わり、炉心 の外へ運ばれる。
原子核の反応を安定した熱源として維持し、その熱を安全に取り出すために設計された、原子炉の中心的なシステムである。

