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核兵器不拡散条約
NPT|Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons
署名開放|1968年7月1日
発効|1970年3月5日
日本署名|1970年2月3日
日本批准|1976年6月8日
締約国|191か国
核兵器が存在する世界で、それ以上の拡散をどう止めるのか
1945年、人類は核兵器を実際に使用した。
その後、アメリカだけが保有していた核兵器はソ連、イギリス、フランス、中国へと広がり、冷戦 が進むなか、核兵器を開発できる技術的・経済的能力を持つ国が増えていく。
もし核兵器を保有する国家が際限なく増えれば、それだけ核兵器が使用される可能性や、国家間危機が核戦争へ発展する経路も増える。
原子力技術そのものには、発電、医療、研究、産業など平和利用の可能性があるため、核兵器への拡散を防ぎながら、原子力の平和利用を認める。
さらに、すでに核兵器を持つ国家には軍縮へ向かう責任を求める。
この三つを一つの国際制度に組み込んだものが、NPT 核兵器不拡散条約
である。
核兵器はアメリカだけのものではなくなった
1945年7月16日、アメリカはニューメキシコ州で世界初の核実験 Trinity を実施し、同年8月、広島と長崎に原子爆弾が投下された。
しかしアメリカによる核兵器独占は長く続かなかった。
1949|ソ連
1952|イギリス
1960|フランス
1964|中国
世界は、核兵器を保有する国家がさらに増えるのかという問題に直面する。
核軍拡とキューバ危機
冷戦下 では、アメリカとソ連が大量の核兵器を配備した。
核爆弾だけではなく、大陸間弾道ミサイル、潜水艦発射弾道ミサイル、中距離ミサイル、戦略爆撃機など、核兵器を運搬するシステムも急速に発展。
1962年には キューバ危機 が発生する。
ソ連によるキューバへの核ミサイル配備をめぐり、アメリカとソ連は直接対峙し、核保有大国同士の政治的危機が、実際の核戦争へ発展する可能性が世界規模で認識された出来事だった。
その後、米ソ間には直接通信回線が設置され、核兵器を管理するための国際的な取り決めも段階的に形成されていく。
1963年 部分的核実験禁止条約
キューバ危機 の翌年、1963年、アメリカ、ソ連、イギリスを中心として、
Partial Test Ban Treaty|PTBT 部分的核実験禁止条約 が成立した。
この条約は、地下核実験以外の核爆発実験を禁止した。
米ソを含む核保有国が、核活動を国際的なルールによって制限する重要な一歩となったが、核兵器を持つ国家そのものが増えていくことをどう防ぐのか、という問題は残った。
1968年 NPT
国連を中心として核不拡散に関する交渉が進められ、1968年、NPTが成立、同年7月1日、条約は署名のため開放、1970年3月5日に発効する。
NPTは核兵器をめぐる国際制度を、核不拡散・核軍縮・原子力の平和利用という三つの柱によって構成した。
この基本構造は現在まで続いている。
第1の柱 ― 核不拡散
NPT の第一の目的は、核兵器を保有する国家をこれ以上増やさないこと。
条約上の核兵器国は、核兵器やその他の核爆発装置を非核兵器国へ移譲せず、その取得を援助・奨励しないことを約束する。
一方、非核兵器国は、核兵器その他の核爆発装置を製造・取得しないことを約束する。
「核兵器国」は5か国
NPT には特徴的な定義が存在する。
条約上の 核兵器国( Nuclear-Weapon State ) とは、1967年1月1日以前に核兵器その他の核爆発装置を製造し、かつ爆発させた国である。
United States|アメリカ
Soviet Union → Russia|ソ連/ロシア
United Kingdom|イギリス
France|フランス
China|中国
つまり NPT は、すでに核兵器を持っていた5か国と、核兵器を持たない国々
を制度上区別している。
ここが NPT の最も特徴的な構造の一つである。
第2の柱 ― 核軍縮
NPT は非核兵器国だけに義務を課した条約ではない。
第6条では、すべての締約国が、核軍備競争の早期停止・核軍縮などに関する効果的な措置について誠実に交渉を行うことを約束している。
た具体的な核兵器廃絶期限や削減数が NPT そのものに規定されているわけではなく、実際の軍備削減については、米ソ・米露間のSALT、INF、STARTなど、別の軍備管理条約とも接続して進められてきた。
第3の柱 ― 原子力の平和利用
核兵器へ利用できる技術である一方、原子力発電・医療・農業・産業
科学研究 などにも利用できる。
条約第4条では、原子力を平和目的で研究・生産・利用する権利 が認められていおり、さらに平和利用のための設備、物質、科学技術情報の交換についても国際協力を促している。
IAEA保障措置
「 原子力は平和利用 」を具体的に確認するのが、IAEA International Atomic Energy Agency 国際原子力機関 である。
NPT に参加する 非核兵器国 は、原則として IAEA との 保障措置協定 を締結する。
IAEAは、核物質の計量管理・施設への査察・監視・関連情報の確認 などを通じて、核物質が平和利用から核兵器などへ転用されていないかを検証。
保障措置を強化する
1997年に、Additional Protocol|追加議定書 のモデルが採択された。
追加議定書 を締結した国については、IAEA がより広い情報へアクセスし、追加的な査察などを行えるようになる。
核不拡散制度 はNPT成立時のまま固定されているのではなく、実際に発生した問題を受けながら検証制度を強化してきた。
NPTに参加していない核保有国
世界の 核兵器保有国 すべてが NPT の「 核兵器国 」なのではない。
India|インド
Pakistan|パキスタン
Israel|イスラエル
North Korea|北朝鮮
NPT が認める5核兵器国 だけでなく、NPTの枠外で核兵器を保有する国も存在する。
脱退することはできるのか
NPT には 脱退条項 が存在する。
第10条では、締約国が、自国の至高の利益を危うくする異常な事態が発生したと判断した場合、条約から脱退できる仕組みが定められている。
原則として、他の締約国と国連安全保障理事会へ3か月前に通告する必要がある。
北朝鮮による脱退表明は、この制度をめぐる代表的な事例となった。
国家の主権と国際的な不拡散制度との間に、脱退という出口もある。
日本とNPT
日本は1970年2月3日に NPT へ署名、しかし批准までには国内で議論が続き、正式な批准は1976年6月8日となった。
日本は NPT 上の 非核兵器国 として参加している。
日本国内には原子力発電、研究炉、核燃料サイクル関連施設などが存在するため、その核物質についてIAEA保障措置が適用されている。
また日本政府は、核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず という非核三原則を政策として掲げてきた。
一方、安全保障面ではアメリカとの同盟関係にあり、米国の拡大抑止とも接続している。
日本の核政策は、NPT による非核兵器国としての地位・原子力の平和利用・非核三原則・日米安全保障体制 という複数の制度によって構成されている。
1995年 無期限延長
NPT には当初、発効から25年後に条約をどう扱うかを決定する仕組みが置かれており、1995年、NPT 再検討・延長会議が開催された。
そこで締約国は、NPT を無期限に延長する ことを決定した。
これによって NPT は一時的な核不拡散制度ではなく、恒久的な国際制度として存続し、同時に、核軍縮や中東に関する決議なども採択された。
5年ごとの再検討
NPT は、原則として5年ごとに、Review Conference|運用検討会議 が開催される。
そこでは、核不拡散・核軍縮・原子力平和利用 という三本柱がどこまで実施されているのかが検討される。
核兵器国と非核兵器国の間では、特に核軍縮の進展をめぐって意見の違いが繰り返し表面化してきた。
核兵器をめぐる国家間の異なる立場を継続的に交渉する場でもある。
NPTが作った核秩序
5か国は 核兵器国 として条約上認められる。
その他の締約国は 非核兵器国 として核兵器を取得しない。
NPT は、核兵器を保有する国家が際限なく増えることを防ぐための世界規模の制度を形成し、さらに、不拡散 だけでなく、軍縮・平和利用・IAEAによる検証 を一つの体系へ接続した。
Archive Point
核兵器がすでに存在する世界で、「 これ以上増やさない 」「 すでに持つ国には軍縮を求める 」「 核技術の平和利用は維持する 」という三つの原則を一つの国際制度として成立させた。
そこに IAEA による検証制度が接続することで、現在まで続く世界規模の核不拡散体制の中核が形成されている。

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