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MVP ARCHIVE HISTORY | ISIS Islamic State / カリフ制国家 - 国家を名乗った非国家武装組織

ISIS Islamic State / カリフ制国家 - 国家を名乗った非国家武装組織

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ISIS - Islamic State

国家を名乗った非国家武装組織

2014年6月29日、イラクとシリアで勢力を拡大していた武装組織 Islamic State of Iraq and al-Sham( ISIS )は、自らを「 Islamic State 」と称し、「 カリフ制国家 」の樹立を宣言した。

その直前にはイラク第二の都市 Mosul を制圧、シリア東部からイラク西部にまたがる広大な地域を支配し、数百万人がその統治下に置かれた。

ISIS は、それまでの多くの国際テロ組織とは異なる姿を見せた。
都市を占領し、国境を越えて領土を支配し、徴税する。
石油などの資源を利用し、行政組織をつくる。
そして世界中から人間を集める。
非国家武装組織が、国家そのものをつくろうとした。

起源はイラク戦争の中にあった

ISIS の系譜には、Abu Musab al-Zarqawiが率いた武装組織がある。
2003年のイラク戦争によって Saddam Hussein政権 が崩壊すると、イラクでは治安機構が混乱し、旧政権関係者、イスラム武装勢力、外国人戦闘員など、多数の勢力が活動するようになった。

Zarqawiの組織もその中で勢力を拡大し、2004年には Osama bin Laden への忠誠を表明し、Al-Qaeda in Iraq( AQI )となった。
AQI は米軍やイラク政府だけでなく、シーア派市民や宗教施設を攻撃、攻撃と報復が繰り返され、イラクでは宗派間の暴力が激化していった。

アルカイダから離れていく組織

2006年、Zarqawiは米軍の空爆によって死亡したが、組織は残存、AQIを中心とする複数の武装勢力は、やがて Islamic State of Iraq( ISI )を名乗るようになる。
2007年以降、米軍の増派やスンニ派部族による反発などによって組織は大きく弱体化した。

Syrian Civil War

国境の向こうに生まれた空白

2011年、シリアで反政府運動が拡大し、やがて大規模な内戦へ発展、政府軍、反政府勢力、クルド勢力、イスラム武装勢力、外国勢力などが入り乱れ、国家による統治が弱まる地域が生まれた。

ISI はその空間へ活動を拡大、2013年、指導者 Abu Bakr al-Baghdadi は組織を Islamic State of Iraq and al-Sham( ISIS )へ拡大すると宣言した。
その後シリアでアルカイダ系組織との対立が発生、2014年、アルカイダ指導部はISISとの関係を断絶した。

Mosul

国家の軍隊が崩れた

2014年6月、ISIS はイラク北部へ大規模な攻勢を開始、Mosulへ進攻した。
イラク政府軍は崩壊し、大量の兵器や軍事物資が ISIS の手に渡った。
人口100万人を超える巨大都市が、非国家武装組織によって制圧され、Mosulの陥落は世界に衝撃を与えた。
ISIS はさらにイラク西部とシリア東部へ支配地域を広げていった。

June 29, 2014

「国家」の宣言

2014年6月29日、ISIS は支配地域に「 カリフ制国家 」を樹立したと一方的に宣言、Baghdadiは「 カリフ 」を名乗り、自らを単なる武装組織ではなく、領土と住民を持つ政治体として扱った。

支配地域では行政組織を設置し、税や各種徴収を行い、裁判制度や治安組織を運営、石油施設や農業地域なども支配し、それらを資金源として利用すると同時に、住民に対する極端な統制と暴力が行われた。

Terror

統治の手段としての恐怖

ISIS の支配は激しい暴力を伴った。
異なる宗教・宗派の人々への迫害、捕虜の殺害、奴隷化、文化遺産の破壊などが行われた。

2014年にはイラク北部Sinjar地域のYazidi住民が攻撃され、多数が殺害・拉致され、女性や少女が性的奴隷として扱われた。
国連の調査は、ISIS によるYazidiへの行為についてジェノサイドに当たると認定している。

Internet

世界へ開かれた戦場

ISIS を21世紀の組織として特徴づけたものの一つが、インターネットであり、映像、SNS、オンライン出版物などを利用して、自らの存在を世界へ発信した。
その結果、中東だけでなく欧州、北米、アジア、アフリカなどから多数の外国人がイラクやシリアへ渡った。
戦場は、インターネットを通じて世界と直接接続された。

International Coalition

世界がISISと戦う

ISIS の急速な拡大に対し、2014年、アメリカを中心とする 国際連合体 が軍事作戦を開始、イラク政府軍、クルド勢力、シリア民主軍なども ISIS と戦い、空爆、地上作戦、情報活動、資金源への対策などが続けられる。

2017年、イラク政府軍はMosulを奪還、同年、ISIS が事実上の首都としていたシリアのRaqqaも陥落した。

Baghuz 2019

「国家」の終わり

2019年3月、シリア東部Baghuzに残っていた ISIS 最後の主要支配地域が陥落、2014年に広大な領土を支配した「 Islamic State 」は、領域支配を失い、同年10月には、Baghdadiも米軍の作戦中に死亡した。

After the Caliphate

領土を失っても残ったもの

領土支配を失ったISISは、再び地下組織として活動するようになった。
イラクやシリアでは攻撃が続き、ISIS の思想や名称を共有する関連組織はアフガニスタン、アフリカなど複数地域で活動している。

その代表例の一つが ISIS-K( Islamic State Khorasan Province )である。
2021年のKabul空港周辺での自爆攻撃、2024年のモスクワ郊外Crocus City Hall襲撃など、ISIS系組織 による大規模攻撃は「 カリフ制国家 」崩壊後にも発生している。

From 9/11 to ISIS

一つの直線ではない歴史

2001年、アルカイダが 9.11同時多発テロ を実行した。
アメリカは アフガニスタンへ軍事介入 し、2003年、アメリカを中心とする連合軍が イラクへ侵攻 し、Saddam Hussein政権 は崩壊した。

その後の混乱の中で AQI が拡大、AQIはISIへ変化し、シリア内戦によって新たな活動空間が生まれ、そしてISISが成立した。

しかし、9.11イラク戦争ISIS

という単純な一本の因果関係としてだけでなく、宗派対立、イラク国内政治、シリア内戦、地域諸国の介入、アルカイダとの対立など、多数の要因が重なった結果として ISIS は巨大化した。

MVP ARCHIVE|Perspective

空白は、空白のままでは残らない

AQI、イラク戦争、シリア内戦があり、国家による統治が失われた空白地帯に地武器、人間、資金、思想が流れ込み、接続できる組織が現れた。
国家という構造が崩れた場所は、何も存在しない空間になるわけではない。

ISIS は、その空白を軍事力、行政、資金、思想、恐怖によって埋めた。
国際社会はその領土を奪い返すことには成功した。
しかし領土を失った後も ISIS系組織 は残った。
ここに、9.11 から続いてきた歴史のもう一つの問いが見える。

アルカイダ の指導者を排除しても組織は残った。
Taliban政権 を倒しても Taliban は戻った。
Saddam Hussein政権 を倒した後には別の武装勢力が成長した。
ISIS から領土を奪っても、そのネットワークは完全には消えなかった。

問題は、「 敵を倒せるか 」だけではない。
「何がそこへ入るのか」
まで見なければならない。

ISIS の歴史は、軍事力の限界だけを示しているのではなく、社会から構造が失われたとき、その空白を誰が、何によって埋めるのか。
その問いを、21世紀の世界に残している。

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