ビタミンCを飲むほど、筋トレの効果が消えていく|抗酸化サプリの落とし穴
トレーニングのあとに、ビタミンCとEをがぶ飲みする。ドラクエでバトル後に薬草で回復するみたいで、いい気持ちになる。17年、それが正解だと思っていた。活性酸素は悪。抗酸化は正義。プロテインを買うより先にビタミンCを切らさない、そういう人間だった。
でも、その飲み方が、 筋トレの効果を自分の手で削っていたとしたら?
嘘だろ、と思うかもしれない。自分も最初はそう思った。 今年、国際スポーツ栄養学会(ISSN)が出したポジションスタンド(Gonzalez et al., 2026)を読んで、考えが変わった。トレ直後のビタミンC、半分くらい逆効果だった可能性がある。今日はその話を、できるだけ噛み砕いて書いていく。
そもそもポジションスタンドって何か。ふつうの論文は、1つの研究チームが1つの実験をやって「こうでした」と報告するものだ。ポジションスタンドは格が違う。何十人もの専門家が、何百本もの論文を読み込んで、議論して、合意が取れたことだけを学会の公式見解として出す。いわば、その分野のいまの科学的コンセンサスの集大成だ。
1本の論文の「こうでした」より、ポジションスタンドの「こうです」のほうが、はるかに重い。その重い文書が、「トレ直後の抗酸化サプリは考え直せ」と言っている。
活性酸素は「敵」じゃなかった
トレーニングで体が強くなる過程には、「逆U字カーブ」がある。ISSNはこれをホルミシスと呼んで、論文の中でも図で説明している。

ストレスが弱すぎると、体は変わらない。 ちょうどいいストレスがかかると、体は適応して強くなる。ミトコンドリアが増え、抗酸化の防御も強くなる。 ストレスが多すぎると、疲労が溜まり、炎症が慢性化して、むしろ弱くなる。
活性酸素は、この「ちょうどいいストレス」のど真ん中にいる。(正確にはROS/RNS=活性酸素・活性窒素種だけど、ここでは活性酸素で通します。)
筋トレをする。活性酸素が出る。体が「まずい、ストレスが来た」と感知する。それがちょうどいい量なら、体に備わっている防御系のスイッチが入る。ミトコンドリアが増え、抗酸化酵素(SODやGPxなど)が鍛えられる。
ISSNの論文では、持久系トレーニングに限ったデータだけれど、骨格筋のSOD活性が20〜112%、GPx活性が20〜177%上がるという報告が紹介されている。つまり、 トレーニングそのものが最強の抗酸化サプリみたいなものだ。 きついことをやれば、体は勝手に守りを固める。
サプリが良い反応を打ち消してしまう
では、高用量の抗酸化サプリを毎日飲んで、トレ直後にもせっせと足すと何が起きるか。体が「ストレスが来た」と感知する前に、外から入れた抗酸化物質が、酸化ストレスを先に消してしまう。すると、適応のシグナルそのものが弱くなる。
これが「逆U字の谷」だ。守りすぎると、逆U字の左側、つまり「ストレスが弱すぎるゾーン」に自分を押し戻してしまう。 きついトレーニングでせっかく出した適応シグナルを、抗酸化サプリで打ち消している。
ただ、ここは研究の限界もあるので、正直に書いておかないといけない。この「サプリが適応を消す」という話、分子レベルでは結構しっかりデータが出ている。ミトコンドリアが増える合図や、抗酸化酵素の遺伝子の動きが、ビタミンCやEの高用量摂取で鈍る。複数の研究で報告されている。
でも、VO2max(最大酸素摂取量)や最大筋力みたいな「目に見えるパフォーマンス」まで明確に落ちるかというと、実はまだ議論が分かれている。 2020年のメタ分析では、ビタミンCとEを組み合わせて飲んでも、VO2maxや筋力に有意な悪影響は出なかった。一方で2022年のRCTでは、上半身の筋力や肥大が鈍る可能性が示された。
細胞の中では確かに適応が鈍っている。でもそれが、実際のパフォーマンス低下にどこまで直結するかは、まだグレーゾーンだ。こう書くと「じゃあ飲んでてもよくない?」と思うかもしれない。自分の考えは少し違う。
細胞レベルで適応が鈍っているなら、それは長期で積み重なりうる。1回のトレーニングでは見えなくても、数ヶ月、数年で差になるかもしれない。少なくとも「飲んだほうがマシ」というエビデンスはない。だったらやめておいたほうがいいんじゃないの?、というのが自分のスタンス。何かを足す前に、まず余計なものを引く。順番はいつもそっちが先だと思っている。
ビタミンCをやめてみた
かなり前に、トレ直後のビタミンCを自分で抜いてみたことがある。4年前の秋ごろ。ISSNのポジションスタンドを先に読んでいたわけじゃない。きっかけは、大好きな作家のニコラス・タレーブのホルミシスについての文章だった。

適度なストレスが体を強くする、というとても普遍的な話だ。それを自分のトレーニングに当てはめてみて、ふと「ビタミンC、このホルミシスを打ち消してるんじゃないか」と思った。
正直、最初の2〜3週間は何も変わらなかった。まあ、そんなすぐ変わるわけがない。
でも1ヶ月半くらい経ったころ、トレ翌日の筋肉痛の「質」が少し変わった気がした。前より痛いのに、筋量の伸びは速い。ちゃんと壊れて、ちゃんと治って、強くなっている感覚。数字で出せないのがもどかしいけど、体感としてははっきり違った。
プラセボかもしれない。それは否定できない。でもISSNのポジションスタンドを読んだあとだと、あの体感の正体はこれだったのかもな、と今は思っている。n=1の体験談だから、これだけで何かを主張する気はない。ただ「やめてみて困ったことは何もなかった」のは事実だ。
※2026年3月24日追記 このあと、ビタミンCの抗老化作用を示す論文(老いたサルに40ヶ月投与)が出た。読んで、もう一度ビタミンCを再開しようか揺れている。ただ、飲むにしても、トレ直後を避けたほうがいいのは間違いなさそうだ。その揺れた話はこっちに書いた。
ビタミンCが老化を巻き戻した?|論文解説 Cell Metabolism 2026
食事ファースト。サプリは「ここぞ」という時だけ
じゃあ抗酸化は全部ダメなのか。そうではない。ここがややこしいところだ。
まず大前提として、食事からの抗酸化はベースラインとして要る。 ベリー、チェリー、色の濃い野菜。こういう食材に入っている自然な抗酸化物質は、ふつうに摂っていい。というか、ぜひ摂るべきだ。ISSNも「whole foods are preferred antioxidant sources(抗酸化は食品から摂るのが望ましい)」とはっきり書いている。
食事由来の抗酸化物質は、量がマイルドで、ポリフェノールや食物繊維と一緒に入ってくる。サプリみたいに「活性酸素だけをピンポイントで消す」動きにはなりにくい。ここはISSNが明言しているというより自分の解釈なのだけど、食事とサプリの違いを考えるとそう考えている。

サプリが活きるのは「特定のタイミング」だ、とISSNは言う。具体的にはこういう場面だ。
ビタミンやミネラルが明らかに足りてないとき
トレーニングが異常にきつい時期(ピーク週、1日2回練習、合宿)
環境ストレスが重なるとき(暑熱、高地、大気汚染、海外遠征の時差)
連戦や大会が続くとき
つまり、「適応させたい時期」と「回復させたい時期」を分ける、という話だ。 ふだんのトレーニングでは、活性酸素にちゃんと仕事をさせて、適応を引き出す。でも大会前や、明らかに追い込みすぎている時期は、回復を優先してサプリで守る。大会では、適応よりその場のパフォーマンスが優先だから。
ISSNが評価した4つのサプリ

じゃあ具体的に何を摂ればいいか。ISSNがアスリートに対して「エビデンスが比較的強い」と評価しているのが、次の4つだ。用量はISSNのポジションスタンド原文に書かれているもの。
タルトチェリー 480mgのパウダー、または60〜90mLのジュースを1日1回、7〜14日間。抗炎症と回復促進のデータが揃っている。大会前後や追い込み期に向く。ぶっちゃけ日本だとあんまり手に入らない。
オメガ3脂肪酸(EPA+DHA) 1,000〜6,000mg/日を6〜12週間。メインの効果は慢性炎症の抑制。自分はできるだけ魚など自然な形で摂るようにしている。サプリでもいいけど、酸化しているものもあるので品質には気を使う。抗酸化というより、全身の炎症管理としてオメガ3は大事だ。ちなみにオメガ3については別記事で詳しく書いた。飲んでいる人はぜひ目を通してほしい。自分は今は魚を食べるけどオメガ3のサプリはやめた。
アスタキサンチン 4〜12mg/日を4〜12週間。抗酸化に加えて、筋損傷マーカーの抑制や筋肉痛の軽減のデータもある。Djordjevicらの研究では、エリートサッカー選手が90日間4mgを摂ったら、運動後のCK値(筋損傷マーカー)の上昇が抑えられた。Barkerらでは12mg/日を4週間で筋肉痛が57%軽くなり、しかもレジスタンストレーニングの適応も邪魔しなかった。ここが他の抗酸化サプリとの大きな違いだ。ビタミンCやEは適応を鈍らせうるのに、アスタキサンチンにはそれがない。
ISSNの論文著者の1人(K.A.H.)は、アスタキサンチンメーカー(AstaReal Inc.)の社員だ。複数の著者が、サプリメント企業から研究費を受けている。データ自体は独立した複数の研究で再現されているので信頼できると判断しているけど、利益相反がゼロじゃないことは頭の片隅に置いておいてほしい。
クレアチン ISSNのこのポジションスタンドでは0.1g/kg/日を勧めている。体重80kgなら1日8g。一般に言われる維持量(3〜5g/日)より多い。自分は5g/日で十分だと思っている。パフォーマンスサプリとしては最強のエビデンスで、抗酸化・抗炎症の可能性も示されている。
ちなみに、クレアチンは自分も17年飲んでいる。飲んでいる人ほど、健診で腎臓の数値(クレアチニン)が上がって不安になりやすい。そのとき何を確かめればいいかは、以下のの記事にまとめた。
ホルミシスという考え方
サプリの話をしてきたけど、この逆U字を読んで自分がいちばん刺さったのは、サプリそのものじゃない。もっと普遍的な、「ストレスとの付き合い方」のほうだ。
ストレスは敵じゃない。でも多すぎたら毒になる。 ちょうどいい量のストレスに、ちゃんとさらされて、ちゃんと回復する。
活性酸素も、筋トレも、サウナも、断食も、全部これだ。 「消す」んじゃなくて「付き合う」。 体が強くなるかどうかは、たいていここで決まる。
抗酸化物質の使い分け
ふだんの食事で、ベリー・チェリー・色の濃い野菜を摂る。
これがベースライン。まずここから。トレ直後に、高用量のビタミンC・Eを飲んでいないか?
飲んでいたら、やめる。いまは「追い込み期」か「回復期」か
追い込み期はサプリ控えめ。回復期・大会前後は活用していい。オメガ3は、年間をとおして摂れているか
これは通年でいい。できれば魚から。
17年トレーニングしてきて、ようやくこの使い分けができるようになった。もっと早く知りたかった。
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※本記事は一般的な健康・医学情報の提供を目的としたものであり、特定の個人に対する診断・治療・医学的助言を行うものではありません。サプリメントの摂取は、既往・服薬・腎機能などによって適切な用量やタイミングが異なります。健康上の懸念がある場合は、必ず医療機関を受診してください。記事の情報に基づく行動の結果については、筆者は責任を負いかねます。
参考文献
Gonzalez DE, Dickerson BL, Roberts BM, et al. International Society of Sports Nutrition position stand: effects of dietary antioxidants on exercise and sports performance. J Int Soc Sports Nutr. 2026;23(1):2629828. doi:10.1080/15502783.2026.2629828
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