三題噺ショートショート_かみさん
落語家もすなる三題噺といふものを、コジも、してみむとてするなり。
企画もの、大の苦手なのである。
どんな親しい人の企画ものでも、なかなか素直には乗れない。
私は、「ルール」とか「決まり事」とか「期限」とか「締め切り」とかという制限事項が世の中で一番嫌いなのだ。
いくつになろうが、聞かん坊の悪ガキ。それが、私、kojuroだからである。
え?落語?三題噺?ヤスさん?

心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
コジ、別名、天の邪鬼志朗だろ。「もし書けなかったとしても、それはそれでOK。でも、やってみなきゃ、もったいない!」なんてこと言われたら、逆に書きたくなるんじゃないの?
なんのはなしですか。

わかったよ、書くよ。書く書く。書けば良いんでしょ、リトル。それで、いいんだろ?
ブラックホールよりも重い重い重い腰を上げて、半ば自暴自棄に筆を執る。
さて。では、三題噺ショートショート「かみさん」まいりましょうか。
※今回の「かみさん」は、私の三題噺の第一話、「167」の続編です。

レギュラーからベンチになり、スタンド応援になり、2年の大会前には幽霊部員になっていた。
行くあてもなくて。かといって部活は気になって。柄にもなく図書館にいた。
炎天下で部活をしているのは、野球部くらいだ。
ボーッと窓の外を見つめていたら、辺りが騒がしくなった。風が止まり、だんだん暑くなってきた。
7月の冷房故障ほど辛いものはない。
帰るか……と立ち上がったら、目の前にアリスが立っていた。そして、誘ってきた。
「おい、すき家の牛丼でも食おうぜ!」
黙って二人で牛丼を食べた。食べ終えたら、またアリスが言った。
「明日、来いよ。人生、やるか、やらないか。世の中、やりたくてもやれないヤツだっているんだ。やれるなら、やれよ!男だろ!」
俺は、翌日から野球部に戻った。
ベンチにすら入れなかったけれど、最後までやり切った。
アリスは今、俺のかみさんだ。
なんで俺なの?って聞いたら。いつも、大笑いするだけだ。
ほんと、不思議の国のアリスだよ、お前は。

ヤスさんの三題噺企画の、そんなこんなを家内と語らおうとして後ろを振り向くと、空のソファーが、静かに笑っていた。
先日から家内は、あるプロジェクトで、都心のホテルに泊まり込んでいる。
シーンとした部屋の空気に、なんだか、心が追いつかない。
あの時の、家内の言葉が頭の中に響く。
まだ三題噺続けてるの?じゃ、それにちなんで、マッサー(注1)三倍返しで、ね。ペペン、ベンッ!
……。
昼間のやりとりからすると、家内は、元気なようである。
家内が元気だと、我が家は、明るくて平和である。
だから。
これで、いいのだ。

(注1)マッサーとは、マッサージのことである。家内のさっちゃんがそうやって、略して言うのである。さっちゃんへのマッサーは私の最重要の日課である。
三題噺も、けっこう書いたな。笑

