行動管理は、人を詰めるためではなく、人を育てるためにある
前回の記事では、KPI会議は結果を確認する場ではなく、先行指標を見ながら翌月の行動を調整する場だと書きました。
売上や利益などの遅行指標だけを見るのではなく、重点荷主への接触数、商談数、提案件数、条件交渉件数などの先行指標を見る。
そして、正しい方向に行動できているか。
行動量は足りているか。
次回までに何をするか。
誰が支援するか。
ここまで決めることが大事だという話でした。
ただ、ここで一つ注意があります。
行動管理という言葉を間違えると、現場を育てるどころか、現場を追い込むだけになります。
なぜ訪問していないのか。
なぜ提案していないのか。
なぜ数字が足りないのか。
なぜ決めたことができていないのか。
これだけでは、行動管理ではありません。
それはただの詰めです。
行動管理は、人を詰めるためにあるのではありません。
成果につながる行動を身につけてもらうためにあります。
行動管理という言葉が、詰める管理になっていないか
行動管理というと、管理される側は嫌な印象を持ちやすいです。
毎日何をしたか確認される。
件数を詰められる。
できていない理由を聞かれる。
数字が足りないと責められる。
こういう状態になると、現場は行動管理を前向きに受け取りません。
むしろ、管理者に怒られないための報告になります。
やったことにする。
できなかった理由を探す。
都合の悪いことを言いにくくなる。
本当の課題が上がらなくなる。
これでは、行動管理は機能しません。
本来の行動管理は、監視ではありません。
どの行動が成果につながるのか。
その行動はできているのか。
量は足りているのか。
方向性は合っているのか。
うまくいかない理由は何か。
次にどう支援すればよいか。
これを見るためのものです。
行動管理の目的は、できていない人を責めることではありません。
できるようにすることです。
結果だけを見ても、人は育たない
人材育成でよく起きる問題があります。
結果だけを見てしまうことです。
売上が足りない。
利益が足りない。
事故が減らない。
クレームが出ている。
離職が起きている。
残業が多い。
もちろん、結果を見ることは大事です。
ただ、結果だけを見ても、人は育ちません。
売上が足りないと言われても、営業担当は何を変えればよいか分からないことがあります。
事故を減らせと言われても、管理者はどの行動を増やせばよいか分からないことがあります。
残業を減らせと言われても、配車係はどの組み方を見直せばよいか分からないことがあります。
結果は、あくまで結果です。
育成に必要なのは、その手前を見ることです。
営業なら、重点荷主に接触できているか。
商談ができているか。
提案が出せているか。
見積後のフォローができているか。
条件交渉を先送りしていないか。
安全管理なら、点呼で確認すべきことを確認しているか。
ヒヤリハットを拾えているか。
面談できているか。
事故が起きやすいコースを確認しているか。
配車なら、ただ埋めているのか。
荷主別、コース別、車両別の採算や負荷を意識しているのか。
ドライバーの状態を見ているのか。
営業へ必要な情報を返しているのか。
結果を見るだけでは、反省で終わります。
行動を見るから、育成につながります。
行動管理で見るべきは、量、方向性、質、障害である
行動管理で見るべきものは、単なる件数ではありません。
大きく4つあります。
1つ目は、行動量です。
必要な量の行動ができているか。
営業なら、重点荷主への接触数、商談数、提案件数、条件交渉件数。
管理者なら、面談数、現場確認数、教育実施数。
配車なら、改善テーマの共有数、営業へのフィードバック数。
量が足りなければ、結果は出にくいです。
2つ目は、方向性です。
たくさん動いていても、会社が伸ばしたい方向に向かっていなければ成果につながりません。
営業が行きやすい荷主ばかり回っていないか。
採算の良い荷主に動けているか。
条件交渉が必要な荷主から逃げていないか。
配車が埋めやすい仕事ばかり優先していないか。
行動量があっても、方向性がズレていれば意味が薄くなります。
3つ目は、行動の質です。
商談数は足りている。
でも、提案内容が弱い。
訪問はしている。
でも、次回商談につながっていない。
面談はしている。
でも、相手の本音を拾えていない。
点呼はしている。
でも、確認が形式的になっている。
量だけでは見えない部分があります。
4つ目は、障害です。
できていない理由は何か。
やる気がないのか。
時間がないのか。
優先順位が分からないのか。
やり方が分からないのか。
一人では交渉しにくいのか。
資料が足りないのか。
現場情報が足りないのか。
社長や管理者の支援が必要なのか。
ここを分解しなければ、正しい支援はできません。
行動管理とは、行動量だけを見ることではありません。
量。
方向性。
質。
障害。
この4つを見ることです。
営業の行動管理は、訪問件数を見るだけでは足りない
営業で考えると分かりやすいです。
営業担当に、今月は訪問件数を増やそうと言う。
これは悪いことではありません。
ただ、訪問件数だけを見ると問題が起きます。
行きやすい荷主に行く。
話しやすい相手に行く。
昔から関係のある荷主に行く。
断られにくい相手に行く。
これでも訪問件数は増えます。
でも、会社として伸ばしたい荷主に行けているとは限りません。
本当に見るべきなのは、
重点荷主への接触数。
商談数。
提案件数。
見積提出数。
条件交渉件数。
次回商談設定数。
見積後のフォロー件数。
こうした先行指標です。
さらに、行動の中身も見る必要があります。
どの荷主に行ったのか。
なぜその荷主なのか。
何を提案したのか。
相手は何に困っていたのか。
次回につながったのか。
条件交渉の障害は何か。
上司の同行が必要か。
ここまで見るから、営業は育ちます。
訪問件数だけを詰めると、営業は件数をこなす人になります。
行動の方向性と質まで見ると、営業は考えて動く人になります。
管理者の仕事は、できていない理由を分解すること
行動管理で一番大事なのは、できていない理由を分解することです。
できていない人に対して、
もっとやれ。
意識が低い。
危機感がない。
やる気が足りない。
こう言うのは簡単です。
ただ、それでは育ちません。
本当に見るべきは、なぜできていないのかです。
そもそも何をすればよいか分かっていない。
やり方が分かっていない。
優先順位が分かっていない。
時間が取れていない。
相手との関係が弱く、一人では踏み込めない。
成功体験がなく、自信がない。
上司に相談しにくい。
失敗した時に責められると思っている。
理由によって、打ち手は変わります。
やり方が分からないなら、教える必要があります。
優先順位が分からないなら、整理する必要があります。
一人で交渉できないなら、同行する必要があります。
時間がないなら、業務を見直す必要があります。
自信がないなら、小さな成功体験を作る必要があります。
管理者の仕事は、できていないことを責めることではありません。
できていない理由を分解し、次にできるように支援することです。
行動管理は、モチベーションを下げるものではなく維持するもの
行動管理が下手な会社では、管理すればするほど現場のモチベーションが下がります。
なぜできていないのか。
いつやるのか。
何件足りないのか。
なぜ結果が出ないのか。
この確認ばかりになるからです。
もちろん、確認は必要です。
ただ、確認だけでは人は前向きに動き続けられません。
特に先行指標は、すぐに結果へつながらないことがあります。
重点荷主に接触している。
提案もしている。
条件交渉も始めている。
でも、売上や利益にはまだ反映されていない。
この時に、結果だけを見てまだ足りないと詰めると、現場は苦しくなります。
だから、行動管理では小さな進捗を見ることが大事です。
重点荷主に行けた。
次回商談が取れた。
提案を出せた。
条件交渉の入口が作れた。
現場から必要な情報を拾えた。
今まで避けていた荷主に向き合えた。
こうした進捗を確認し、評価する。
これがモチベーション維持につながります。
人は、結果だけでなく、前に進んでいる感覚があると動き続けやすくなります。
行動管理は、追い込むためではありません。
正しい行動を続けられるように支えるためにあります。
行動管理ができる会社は、できる人のやり方を再現できる
行動管理には、もう一つ大きな価値があります。
できる人のやり方を再現できるようになることです。
行動管理がない会社では、成果が属人化します。
あの営業は売れる。
あの配車係はうまい。
あの管理者は人をまとめられる。
あの社長は判断が早い。
でも、なぜできているのかが分からない。
これでは育成できません。
できる人は、どの荷主に行っているのか。
どの順番で提案しているのか。
どのタイミングで条件交渉しているのか。
どんな準備をして商談しているのか。
配車で何を優先しているのか。
ドライバーとどう話しているのか。
こうした行動を分解すると、他の人にも伝えられます。
行動管理とは、できていない人を見るためだけのものではありません。
できている人の行動を見える化し、組織に広げるためのものでもあります。
これができると、人材育成はかなり進みます。
行動管理は、管理者自身を育てる
行動管理は、部下だけを育てるものではありません。
管理者自身も育てます。
なぜなら、行動管理をするためには、管理者が考えなければいけないからです。
どの行動が成果につながるのか。
どの行動が足りていないのか。
方向性は合っているのか。
量は足りているのか。
質はどうか。
何が障害になっているのか。
次にどう支援するのか。
これを考えること自体が、管理者の育成になります。
逆に、結果だけを見て詰める管理者は育ちません。
売上が足りない。
もっとやれ。
事故が増えた。
気をつけろ。
残業が多い。
減らせ。
これでは、管理者も判断力が育ちません。
行動管理ができる管理者は、結果の手前を見るようになります。
結果を見て、原因を分解する。
行動を見て、支援を考える。
部下の状態を見て、声かけを変える。
次回までの行動を一緒に決める。
この繰り返しで、管理者も育ちます。
つまり、行動管理は、人材育成であり、管理者育成でもあります。
まとめ 行動管理は、人を詰めるためではなく、人を育てるためにある
行動管理は、人を詰めるためのものではありません。
できていない人を責める。
件数だけを追う。
数字で圧をかける。
結果が出ない理由を問い詰める。
これでは、人は育ちません。
本来の行動管理は、成果につながる行動を身につけてもらうためのものです。
行動量は足りているか。
方向性は合っているか。
行動の質はどうか。
何が障害になっているか。
どんな支援が必要か。
小さな進捗は出ているか。
次回までに何を変えるか。
ここを見ることです。
営業なら、訪問件数だけではなく、重点荷主への接触、商談、提案、条件交渉、次回商談設定を見る。
配車なら、埋めたかどうかだけではなく、採算、負荷、荷主戦略との接続を見る。
管理者なら、事故件数だけではなく、点呼、面談、教育、現場確認、声かけを見る。
結果だけを見ると、人は詰められます。
行動を見ると、人は育てられます。
そして、行動管理が機能する会社では、できる人のやり方が見えるようになります。
属人化していた成果を、組織で再現できるようになる。
管理者が、結果ではなく行動を見て支援できるようになる。
幹部候補が、数字を見て行動を修正する経験を積めるようになる。
行動管理は、監視ではありません。
育成です。
経営者や管理者の役割は、現場を数字で詰めることではありません。
正しい方向に、必要な量の行動を続けられるように支援することです。
行動管理は、人を管理するためではなく、人が育つためにある。
この視点を持てる会社ほど、KPIも会議も人材育成もつながっていきます。
このnoteでは、運送会社の営業、配車、採用、組織づくり、会議、法対応まで、現場と経営の間にあるズレを整理して発信しています。
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