配車表が埋まっても、会社が強いとは限らない

配車が埋まる。
空車も少ない。
現場から見れば順調に見える。
でも、その埋まり方が悪ければ、会社は走るほど削られます。

朝から車は出ている。
配車表には空きが少ない。
荷主からの依頼もある。
見た目だけなら、会社はよく回っているように見えるはずです。

それなのに、月末になると通帳残高が気になる。
請求は立っているのに、思ったほど資金が残らない。
現場は忙しいのに、社長だけがなぜか安心できない。

ここで疑うべき前提があります。
配車が埋まっていれば、会社は順調である。
この前提です。

運送会社では、配車が埋まっていること自体は成果に見えます。
しかし本当に見るべきなのは、埋まっているかどうかではありません。
何で埋まっているかです。

荷待ちの長い仕事で埋まっているのか。
帰り便の弱い仕事で埋まっているのか。
拘束時間のわりに単価が薄い仕事で埋まっているのか。
それとも、利益が残り、現場も無理なく回る仕事で埋まっているのか。

配車表が埋まることと、会社が強くなることは別です。

ただ、ここで終わると足りません。
大事なのはその先です。

では、どうすれば質の良い案件で配車表が埋まるのか。

答えは、配車担当の頑張りだけではありません。
荷主別、車両別に損益を見て、どの荷主を伸ばすのかを決め、営業が実際にその荷主へ動くところまで管理することです。

良い配車は、配車表の上だけでは作れません。
営業がどの荷主に向き合うかで、配車の質は決まります。

1 配車表が埋まるほど、安心していないか

空車を見ると、不安になります。
車が止まっている。
人件費はかかる。
リース代も保険も止まらない。
だから、とにかく埋めたい。

この感覚は自然です。
運送会社を経営していれば、空車が怖いのは当たり前です。

ただ、その怖さが強すぎると、配車の判断が埋めることに寄ります。

少し薄いけど入れる。
帰り便が弱いけど入れる。
待機が長そうだけど入れる。
荷主との関係もあるから入れる。

一件だけなら大きな問題には見えません。
でも、その判断が積み重なると、配車表は埋まっているのに利益は残らない会社になります。

空車を減らす判断が、会社の体力を減らしていることがある。
ここはかなり大事です。

2 空車が少ないことは、利益が出ている証拠ではない

稼働率が高い。
車両がよく動いている。
配車担当も頑張っている。
これ自体は悪いことではありません。

ただ、稼働率が高いことと、利益率が高いことは同じではありません。

行きの売上はある。
でも帰り便が弱い。
車両が遠くで寝る。
荷待ちが長く、次の便に影響する。
拘束時間が伸びて、現場の疲労も増える。

こうなると、車は動いていても会社は楽になりません。

動いている車両が、利益を作っているとは限らない。
ここが最初の認識転換です。

配車表だけ見ると、動いているように見える。
でも、採算まで見れば、会社を削っている動き方かもしれません。

3 良い案件で埋めるには、まず荷主別、車両別の損益を見る

質の良い案件で配車を埋めたいなら、最初にやるべきことは営業強化ではありません。
まず、どの案件が良い案件なのかを見えるようにすることです。

ここで必要になるのが、荷主別、車両別の損益です。

荷主別に見ると、どの荷主が本当に会社に残しているかが見えます。
売上は大きいが、荷待ちが長く、帰り便も弱く、実は利益が薄い荷主。
売上はそこまで大きくないが、安定していて、車両も回しやすく、利益が残る荷主。
こうした違いが見えてきます。

車両別に見ると、どの動き方が会社を強くしているかが見えます。
よく動いているのに残らない車両。
無理なく回ってしっかり残している車両。
この差が分かります。

質の良い案件を増やすには、まず質の良し悪しを数字で見えるようにしなければいけません。

良い案件とは、売上が大きい案件ではありません。
会社に利益を残し、現場を壊さず、次の判断につながる案件です。

4 次に必要なのは、荷主別に戦略を分けること

損益が見えたら、次にやるべきことは荷主別の戦略です。

すべての荷主に同じように営業する。
すべての案件を同じように受ける。
これでは、配車の質は変わりません。

荷主は分けて考えるべきです。

詳細は以下記事をご参照ください。
荷主別に戦略を分けて考えるべき理由|トラック運送業特化経営コンサルタント

配車の質を変えるには、荷主ごとの扱いを変えなければいけません。
全部を同じように受けている限り、配車の中身は変わりません。

5 ただし、決めただけでは人は動かない

ここが一番見落とされやすいところです。

荷主別に戦略を決める。
会議で共有する。
伸ばす荷主、交渉する荷主、見直す荷主を決める。

ここまではできる会社もあります。
でも、そのあと動かない。

なぜか。

人は、関係性のある荷主には自然に行きます。
話しやすい相手には連絡します。
昔から付き合いのある相手には相談できます。
でも、関係が薄い荷主、少し苦手な荷主、条件交渉が必要な荷主には、自分から動きにくい。

これは人として自然です。
だからこそ、戦略を決めただけでは足りません。

営業の行動管理が必要です。
誰が、どの荷主へ、いつ、何を持って行くのか。
どの荷主へ条件交渉をするのか。
どの荷主へ追加案件の提案をするのか。
どの荷主への依存度を下げるのか。
これを会議で決め、翌週、翌月に追う必要があります。

戦略は紙に書いた瞬間ではなく、人が動いた瞬間に初めて意味を持ちます。

ここが二つ目の認識転換です。

6 営業の行動管理とモチベーション管理まで必要になる

営業や管理職に、もっと良い案件を取ってきてほしいと言うだけでは動きません。

なぜなら、良い案件を取りにいく行動は、必ずしも本人にとって楽ではないからです。

条件交渉は気まずい。
関係の薄い荷主へのアプローチは面倒に感じる。
新しい荷主への提案は断られる可能性がある。
苦手な相手には後回しになりやすい。

その結果、放っておくと人は動きやすい方へ流れます。
話しやすい荷主。
いつもの荷主。
頼みやすい荷主。
今まで通りの案件。

これでは、戦略は変わっても配車の中身は変わりません。

だから、行動管理が必要です。
そして同時に、モチベーション管理も必要です。

なぜこの荷主へ行くのか。
なぜこの条件交渉をするのか。
なぜこの仕事を増やす必要があるのか。
それが会社の利益だけでなく、配車を楽にし、現場の負荷を減らし、資金繰りを軽くすることにつながる。
ここまで組織内で認識をそろえる必要があります。

単にやれではなく、なぜやるのかを共有する。
単に件数を追うのではなく、どの荷主へどんな行動をしたかを追う。
ここまでやって、ようやく良い案件で埋まる流れが作れます。

7 良い配車は、会議で決めた荷主戦略と営業行動から作られる

配車表は、配車担当だけで作られているように見えます。
でも実際には、営業が取ってきた案件、荷主との条件、車両の配置、現場の人員、会社の方針によって作られています。

つまり、配車表は会社の戦略の結果です。

荷主別損益を見る。
車両別損益を見る。
伸ばす荷主、守る荷主、交渉する荷主、見直す荷主を決める。
組織内で認識をそろえる。
営業行動を管理する。
動きにくい荷主にも向き合えるように、行動と気持ちを支える。

この流れがあって初めて、質の良い案件で配車表が埋まり始めます。

配車の質は、配車当日の頑張りではなく、その前の戦略と行動で決まる。
ここが三つ目の認識転換です。

8 まとめ 埋まっているかどうかではなく、どう埋まっているかが経営を分ける

配車が埋まる。
空車も少ない。
現場から見れば順調に見える。
でも、その埋まり方が悪ければ、会社は走るほど削られます。

本当に見るべきなのは、配車表が埋まっているかどうかではありません。
何で埋まっているかです。

そして、質の良い案件で埋めたいなら、配車の現場だけを見ても足りません。

荷主別、車両別の損益を見る。
荷主別に戦略を分ける。
組織内で認識をそろえる。
営業が動きやすい先だけに流れないように、行動管理とモチベーション管理をする。

ここまでつながって、配車表の中身は変わります。

良い案件で埋まる会社は、たまたま良い案件が来ているのではありません。
良い案件が増えるように、荷主を選び、営業を動かし、組織の判断をそろえています。

埋まっているかどうかではなく、どう埋まっているかが経営を分ける。
そして、どう埋めるかは、配車だけでなく経営の設計で決まります。

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