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出張先でテロ遭遇 銃乱射をどう逃げる

【連載】アジア安全講座 第5回

安全サポート株式会社
代表 有坂 錬成

駐在員・出張者を危険からどう守るか。今回は、出張先でテロに遭った場合の対応。銃や爆弾を用いた海外のテロで日本人が犠牲になることもある。その時、あなたが生きる可能性を高めるには。(聞き手=編集長 岡下貴寛)


レクチャー1
無差別銃撃テロに遭遇した


アジア出張中、ショッピングセンターで土産物を選んでいると覆面姿の男たちが押し入ってきた。小銃らしき物を持っていて、テロリストかもしれない。


――恐ろしい状況です。銃撃テロに遭遇したら、どうすればいいですか

まずは逃げます。逃げる際は、犯人との距離や位置関係がポイントになります。犯人がまだ離れた所にいて、銃声や人の叫び声、大きな物音が聞こえてきたという段階なら、そちらとは逆の方向へ一目散に走って逃げる。

もし、劇場やショッピングセンターなど建物の中にいるなら、一刻も早く付近の出入り口から外へ脱出しましょう。

――逃げる時、撃たれづらい走り方はありますか
 
多くの場合、上半身が狙われます。姿勢を低くしましょう。低い方が狙いを付けづらく、的も小さくなります。
 
「ジグザグに逃げろ」とよく言われますが、自動小銃で左右に流して撃ってくる相手にはあまり効果がありません。拳銃などで1発ずつ撃っているなら、ジグザグに走れば狙いを合わせづらくなり有効です。ケースバイケースです。
 
なお、今はインターネットでも、本物の銃声をいい音質で聞くことができます。爆竹、かんしゃく玉とあまり変わらない、すごく乾いた音です。あらかじめ銃声とはどのような音なのか聞いておき、それが聞こえてきたらすぐに逃げるとよいでしょう。

「あらかじめ本物の銃声を聞いておくといい」と有坂氏(NNA撮影)

テロは殺傷目的
降参しても無駄


――犯人が近い場合は

 
犯人が近くまで来ており、既に逃走が難しい時、その場でどうするべきか。私の講習では、次の3つの対応のうち、どれがベターと思うか参加者に尋ねています。皆さんは、どれを選ぶでしょうか。

1 両手を上げて降参。無抵抗の意思を示す
2 その場で伏せる
3 物陰に隠れる


まずは1。「降参する」とどうなるか。

テロリストの目的は1人でも多く殺し、傷つけることです。格好の標的となり、たちまち撃たれてしまうでしょう。降参や話し合いは通じないと思ってください。初めからこれをしてはいけません。

「犯人がイスラム過激派で、コーランの一節を唱えたら撃たれなかった」という話を聞くこともありますが、明らかに別の宗教に見える日本人などがそれをしても効果はないだろうという見方が有力です。それよりは伏せたり隠れたりする方が、まだ助かる確率が少しでも上がります。

次は2の「伏せる」。一定の有効性があります。

大勢の人を殺傷しようとするテロは、拳銃で1人ずつ狙い撃つのではなく、自動小銃のように連射できる銃でダーッと左右に流して撃つことが多い。

その際、1人や2人が床に伏せていたとしても、わざわざそこを狙わずにたくさんいる方を先に狙います。犯人の目に留まらず通り過ぎれば、いったんは逃れられるかもしれない。助かる可能性が少しは上がります。

米国のバーで発生した銃乱射の事件では、伏せてほふく前進しながら非常口にたどり着いて助かったという人がインタビューに出ていました。

伏せる際は手足を曲げておき、すぐ立ち上がれる体勢を保つ(NNA撮影)

物取りは撃たない
撃つのはテロリスト


最後は3の「隠れる」。犯人の視角から逃れるのもよいです。
 
例えば、ショッピングセンターならカウンターや商品棚の後ろに身を隠す。人がいない(ように見える)所に向けて、あえては撃たないかもしれない。ただ、その商品棚を目がけて撃たれたら弾はほとんど防げません。幸いにも隠れてやり過ごすことができれば、すぐに外に出ましょう。

なお、伏せっぱなしでいたり、隠れた所に留まり続けるのは危険です。銃乱射のテロリストは、撃ちそこねた人、まだ生きている人、隠れている人を探して確実に殺傷しようとする恐れがあります。早く逃げましょう。

――強盗なのかテロなのか、どう見極めれば

銃を乱射しながら大勢の人に向かって来た場合、それが物取りの可能性は低いです。
例えば、バス強盗だとしたら手早く金品を奪うために銃でどこかを撃ったり、1人を見せしめにということもあるかもしれません。ただ、普通に考えれば、物取りは殴ったり傷付けたりしても、殺害まではなかなかしない。犯人にとっても、もし捕まった場合には割が合わない。

基本的に、物取りなら威嚇でもそうは撃たないと思います。撃ったら注目を集め、騒ぎになります。本来は目立ちたくないはずなので、脅して奪えるならそれでいいわけです。だから、金品が目当ての犯行だと分かれば抵抗しない方がいい。物だけの被害で済むなら、それに越したことはありません。

だから逆に言えば、銃声がバンバン鳴っているとか乱射している状況なら、恐らくは物取りではなく殺害目的の「命取り」と考えていいでしょう。

構造が複雑な施設は、逃走経路や非常口を把握しておきたい(NNA撮影)

レクチャー2
爆弾テロに遭遇した


アジアに出張中、混み合う夜市で土産物を選んでいると、少し離れた辺りから大きな爆発音が聞こえた。野次馬がそちらに集まっている。


――ドーンと大きな音が聞こえた。人々が集まって行きますが、何かは分からない。車の事故か火災かもしれない。どうすべきですか

大きな爆発音がしたなら爆弾テロの可能性があります。爆弾かどうか分からない、という不確かな状況でも逃げてください。車の事故やガス火災かもしれませんが、近づいても得なことはありません。
 
銃乱射のケースでは「逆の方向に逃げる」と言いましたが、これも同じです。音と反対の方へ一目散に逃げましょう。

夜市巡りは、自分がどの方角を向いているか把握しながら楽しもう(NNA撮影)

――様子を見る、周りの人に合わせるのは

日本人は、他の人がいる方や他人と同じ行動が安全だと思い込みやすい。でも、そこで何が起きたのか、どうすべきなのか分かっている人はその場にはいません。他人が走って行った方だからといって、本当に安全なのかは何の保証もないわけです。
 
被害に遭う確率を少しでも下げるには他人の動きに関係なく、やはり音から離れることです。大きな音がしたら、何か不審な物が見えたら、それと反対の方向へと即座に動き出す。そう自分の心に決めておくことです。そこは爆弾も銃の乱射テロと一緒です。

爆弾は伏せない
とにかく遠くへ一刻も早く動く

映画でよく「伏せろ!」と言って、みんな地面に伏せるシーンを見かけますが、そこで時間を使うよりは早く遠くに逃げるべきです。
 
「音を聞いたら伏せる」と言う人がいますが、爆風の衝撃波と音の速度では爆風の方がはるかに速い。もし爆風でやられるなら音が聞こえる前にやられています。だから、音が聞こえたということは自分は助かったということ。そこで伏せて時間を使ってしまうより、ただちに遠くに走った方がいい。
 
この時はできるだけ遠くへ行きましょう。
なぜなら、爆発は2度起きる場合が非常に多いためです。

1度目である程度の被害を出すと人が寄ってきます。負傷者の救助や興味本位などで人が集まってきたところで、もう1度爆発させるのが犯人の狙い。時差で攻撃するのが爆破テロの常とう手段。この2発目を避けるためにも、その場を速やかに離れましょう。

爆発物はさまざまな偽装が施されている場合が多い(NNA撮影)

――爆破や銃撃から無事に逃れたら

本社の危機管理担当者は、報道などで事件を察知したら安否確認をすぐに取り始めます。自分は遭遇したが助かった、難を逃れたという報告はすぐに入れた方がいいので連絡するようにしてください。


レクチャー3
テロに遭遇する三要素


アジアのイスラム圏に出張することになった。イスラムの断食月(ラマダン)の期間中で、その国では昨年の同期間中にもテロが発生していた。


――襲撃の予兆を察して回避することはできますか
 
訪問先でテロが起きそうなのか、発生の可能性を知ることができます。

まずは過去の発生について知ること。

過去に何度かあったとか、ここ1年以内にあったという所は、自分が行く際にも起きる可能性があります。また、直近のニュースや外務省の情報などからも、今が危ない状況なのかそれとも落ち着いているのか、ある程度の予測が立ちます。

そして、テロは狙われやすい場所、時期、時間帯の傾向がそれぞれあります。その3つをうまく回避する行動をとれば、遭遇する確率を減らすことができます。

場所:人が集う所や施設。繁華街、ショッピングモール、イベント会場など
時期:ラマダン(イスラム教の断食月)、クリスマスなど
時間:人が多い時間帯。狙われやすい場所でも人のいない時間は比較的安全

クリスマスはテロが発生しやすい時期の一つ(NNA撮影)

買い物は開店後すぐ
危険三要素を少なく


2013年9月、ケニアの首都ナイロビのショッピングセンターで銃乱射テロが発生しました。土曜日の昼過ぎです。大体どこの国でも週末の土曜の昼から午後にかけては混みますから、大勢の方が犠牲になりました。

このケースで問題となる要素は「場所」「時間帯」。ショッピングセンターは人が集まるから狙われやすい。そして土曜の昼はそのピークです。

例えば、仕事や何かの事情でテロが起きる可能性のある時期、その場所に行かねばならないことがあるかもしれない。そうした場合でも、訪問や活動の時間帯を変えることにより、遭遇する確率を下げることができます。

「時期、場所、時間帯」という三要素のうち、できれば2つを取り除けばより安心。それが難しい場合も、1つは要素を避けるようにする。

ショッピングセンターなら、そこが10時開店なら人が少ない10時にすぐ訪れ、11時前には買い物を終えて帰ってくるとか、逆に閉店の間際に行くなど。それで確率を下げることができます。

なお、ここは日本人もよく行く施設だったにもかかわらず、日本人の犠牲者はありませんでした。その日に日本人会の行事があり、多くの日本人がそちらに行っていたからだったと聞きます。

テロリストが現れて銃を撃ってきたら、実際は冷静な対処を考えることなどできません。先に紹介した伏せ方や走り方もうまくいけばラッキーですが、それよりも時期や時間帯をずらすなどして、そもそも事件に遭遇しないことが最善です。

夕日の見物客が集まる観光スポット(NNA撮影)

有坂 錬成(ありさか・れんせい)
安全サポート株式会社 代表取締役 上席コンサルタント

三井住友海上でドイツ駐在、本社での駐在員送り出し業務、および危機管理業務を担当。1999年、外務省に出向し、官民合同の海外安全対策を担当。「誘拐対策マニュアル」の編集や「海外安全ホームページ」の基となったサイトの立ち上げにも携わる。

安全サポート株式会社
創業20年。海外派遣者の危機管理に特化した危機管理会社。社員の命を守るために必要な、全ての業務をワンストップで提供。顧客は企業、政府機関、大学、業界団体など幅広い。企業担当者向け無料セミナーも多数提供。https://www.anzen-support.com/


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