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"The Lady is a Tramp”(3)女性/男性バージョン,言語行為の違い...英語学から

表紙写真: The Lady is a Trampの上級者用楽譜



"The Lady is a Tramp”「ザ・レディ・イズ・ア・トランプ」(1)曲のファクト,要注意"trump"と発音せぬように!…英語学から」
"The Lady is a Tramp”「ザ・レディ・イズ・ア・トランプ」(2)"tramp"を「ふしだらな女」から「独立自尊の女性」へ意味変換..英語学から|」に続く(3)。

はじめに改めて,英語学習に役立つ英語の歌

改めてお話させていただく。ご存じのように筆者が開発した「プロジェクト発信型英語プログラムProject-based English Program(PEP)」では学生さんが関心事をテーマにプロジェクトを組みその成果を英語で発信した。学術的なテーマもあれば娯楽趣味もあれば様々。必ず音楽を取り上げる学生さんたちがおり、筆者もそれに触発されて63才ごろからボーカル・ジャズを習い始めた。習った曲の一つがこの"The Lady is a Tramp"だ。

まさかそれから約20年も続くとは思っていなかったが、歌詞から色々なことを学ぶ。専攻の言語学、意味論、語用論、英語学のよいデータを提供してくれる。歌詞を覚え、4ビートのメロディ―に合わせて歌うのは結構大変だが、老いゆく脳トレになる。今年からはボーカルセッションに参加する楽しみも増えた。

筆者ら年寄りだけではない、英語学習中の若者たちよ、英語の歌を幾つか覚えると重要な語彙・表現・構文がすんなり頭に入って来る。通学・通勤時にYoutubeでできる。"The Lady is a Tramp"を聞いて本稿を読んでいただけるとなお良い。

女性歌手バージョンは「宣言」の言語行為、男性歌手バージョンは「陳述」の言語行為

(1)で述べたように、この曲は、1937年ミュージカルBabes in Armsの中で歌われた楽曲で、ティーン・エイジャーの女性主人公役Mitzi Greenが歌っている。従って以下の歌詞のように主語は1人称単数”I”である。長くなるが、重要なのでもう一度そのLyrics をご覧いただきたい。

Lyrics (Version)

[Verse 1]
I get too hungry for dinner at eight
I like the theatre, but never come late
I never bother with people I hate
That’s why the lady is a tramp

[Verse 2]
I don’t like crap games with barons and earls
Won’t (I won't) go to Harlem in ermine and pearls
Won’t (I won't)dish the dirt with the rest of the girls
That’s why the lady is a tramp

[Verse 3]
I like the free fresh wind in my hair
Life without care, I’m broke, it’s oke
Hate California, it’s cold and it’s damp
That’s why the lady is a tramp

(2)で述べたように、男性歌手(Pal Joyに扮するシナトラ)は、主語3人称単数の主語”she"に換え、彼女は自由に動くという文字通りの意味でのtrampであり、大物共に忖度しないからふしだらで尻軽という意味でのtrampではない!と賛美する。もう一度そのlyricsをみよう。

Lyrics (Sinatra Version)

[Verse 1]
She gets too hungry for dinner at eight 
She likes the theatre and never comes late
She never bothers with people she'd hate
That's why the lady is a tramp

[Verse 2]
Doesn't like crap games with barons or earls
Won't go to Harlem in ermine and pearls
Won't dish the dirt with the rest of the girls
That's why the lady is a tramp

[Verse 3]
She likes the free, fresh wind in her hair, life without care
She's broke and it's oke'
Hates California, it's cold and it's damp
That's why the lady is a tramp

ポツダム宣言への日本側の返答「黙殺せよ」が米側に"ignore"や"reject"と訳されて悲劇がー機械翻訳考(その5ー2)」で紹介した、J.L. Austinmの遂行文(performatives)を発展させたJohn Searleの言語行為(speech acts)の出番だ。尚、言語行為(発話行為)についてはそちらの稿に書いたので詳しいことは割愛する。更に深く知りたい読者はEXPRESSION AND MEANING Studies in the Theory of ...をお読みいただきたい。

女性バージョンのLyricsの1人称単数現在形の文が続くが、その内、"Won’t (I won't) go to Harlem in ermine and perles"は典型的な言語行為文だ。ここでの"won't"は未来形ではなく(そもそも現在英語には未来形は無い)、主語の強い意志を示すwill = persist だ。"I persist not to go to Harlem in ermine and perles"(男どもが喜びそうな毛皮や真珠を付けてハーレムに行くことを拒否する)という、Assertives(断言),Directives(命令),Commisives(委託), Expressives(陳述),Declarations(宣言)の6種類の主要発話行為の最後にあたる(拒否の)宣言(Declarations)の発話行為に当たる。

その意味では、”I don't like crap games…."も行為動詞を使っていないが、間接的には”I won't play crap games…"に言い換えられるので宣言の発話行為と言えよう。

宣言の発話行為の力(force)は強い!宣言したことはYes/Noの問題ではない、その余地すら与えない、遂行するか/しないかだ。結婚式での宣言がそうだ。結婚するという行為そのものが成立する。映画『卒業』のラストシーンのように宣言される前に何が何でも止めないとそのまま有効になる。そのくらい重い。

女性歌手が歌う場合(拒否の)「宣言」の発話行為という重厚さが響くのがお分かりだろう。(1)で紹介した椎名林檎さんバージョンには特にその感を強くする。

一方、男性歌手のこの歌のLyricsは全て3人称単数現在形に代わるので、断言(Assertives)または陳述(Expressives)の発話行為である。断言したこと陳述したことそのものの行為は厳然と残るものの、力(force)は宣言ほど強くない。どこか第三者的視点が漂う。よって、法廷などの陳述には嘘が無いよう宣言させ責任を持たせる。この曲ではそこまでの拘束はない。Joey Pal役のシナトラ・バージョンには体制的な社会への批判があるがそれ以上でも重く陳述的だ

The Lady is a Tramp (4)曲ファクト,背景1930s大恐慌, Dust Bowl,hobo, tramp, bum, Chaplin "The Tramp"|に続く

(2025年8月26日記)


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鈴木佑治 N.Yuji Suzuki サポートいただけるととても嬉しいです。幼稚園児から社会人まで英語が好きになるよう相談を受けています。いただいたサポートはその為に使わせていただきます。