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Jリーグで町と町の交換留学はできないか|アウェイ遠征を地域の学びに変える

「日本サッカー産業論|世界一になるための問い」
※本記事は、Kindle書籍『日本サッカー産業論』から生まれた問いを起点に、日本サッカーの現場と仕組みを考えるシリーズの一編です。

アウェイ遠征を、観戦だけで終わらせない

これまで、アウェイ遠征を地域活性化につなげる構想として、四つの記事を書いてきました。

全国共通の認証基準で地域の宿泊施設を結ぶ「STAYX」。

クラブごとに分断された移動需要を共同化するアウェイバス。

アウェイサポーターを町へ送り出すデジタル地域パスポート。

駅を降りたサポーターが最初に立ち寄る地域拠点「AWAY BASE」。

泊まる。

移動する。

町を巡る。

安心して立ち寄る。

ここまでの構想は、主にアウェイサポーターを受け入れ、地域の中で人とお金を動かす仕組みでした。

では、その次に何ができるでしょうか。

アウェイ遠征を、消費だけでなく、町と町の学び合いへ発展させられないでしょうか。

対戦するクラブ同士の地域住民や子どもたちが、試合に合わせて互いの町を訪れます。

表向きの目的は、Jリーグのアウェイゲームを観戦することです。

しかし、その前後で、

少年サッカーチームが交流する。

高校生が地域課題を学ぶ。

商店街の若手が互いの取り組みを見学する。

地域企業が商談する。

農業や観光の事業者が意見交換する。

自治体職員が地域活性化策を共有する。

特産品の共同開発を考える。

そんな交流を組み合わせます。

これを、

ホームタウン交換留学

と呼ぶことにします。

年間19試合は、19回の交流機会である

Jリーグのアウェイゲームは、年間19試合あります。

多くの人にとって、それは応援するクラブが敵地で戦う19試合です。

しかし、地域活性化の視点から見ると、別の意味を持ちます。

自分たちの町から別の町へ、人を送り出せる機会が年間19回ある。

ということです。

19の異なる地域を訪れる。

19のスタジアムを見る。

19の商店街を歩く。

19の地域交通を利用する。

19の町の人と話す。

一つの自治体が、これほど定期的に全国の地域と接点を持つ機会は多くありません。

しかも、それが一度限りではありません。

今年対戦したクラブとは、翌年以降も対戦する可能性があります。

昇格や降格、カテゴリー変更によって対戦相手が変わることはありますが、Jリーグの試合そのものは続きます。

だからこそ、単発の視察旅行ではなく、複数年で交流を積み重ねる制度にできます。

今年は子どもたちを送る。

翌年は商店街の若手を送る。

その次は地域企業と自治体職員を送る。

再び同じ町を訪れたときには、前回出会った人と再会する。

一回の遠征で成果を求めず、数年かけて町同士の関係を育てます。

毎試合、全員を派遣する必要はない

年間19試合すべてに、大人数の交流団を送ろうとすれば、費用も人手も足りません。

受け入れる地域にも大きな負担がかかります。

ホームタウン交換留学は、毎試合同じ規模で実施する仕組みではありません。

試合ごとにテーマと参加者を変えます。

たとえば、あるシーズンを次のように設計します。

第1節の遠征では、少年サッカーチーム。

第3節では、商店街の若手経営者。

第5節では、高校生の地域探究グループ。

第7節では、自治体の観光・交通担当者。

第9節では、地域企業の社員。

第11節では、農業・食品事業者。

第13節では、障害者スポーツや福祉関係者。

第15節では、防災担当者と地域ボランティア。

第17節では、大学生と若手社会人。

最終節では、その年の交流成果を発表する代表団。

すべてのアウェイゲームに派遣しなくても構いません。

年間19試合のうち、まずは4試合から始める。

翌年は6試合へ増やす。

参加する地域団体が増えれば、8試合へ広げる。

そのように段階的に進めます。

重要なのは、派遣回数ではありません。

誰を、何のために、どの町へ送るか。

を計画することです。

誰をどの試合へ派遣するのか

参加者を先着順だけで決めると、もともと遠征に慣れている人や時間に余裕のある人ばかりが選ばれる可能性があります。

交換留学の目的は、単なる観戦希望者への旅行補助ではありません。

地域へ学びを持ち帰れる人を送り出すことです。

そこで、試合ごとにテーマを設定します。

子ども交流試合

対象は、地域の少年サッカーチーム、学校、放課後活動などです。

アウェイクラブの育成年代や地域チームと交流試合を行い、午後はトップチームの試合を観戦します。

商店街交流試合

対象は、商店主、若手経営者、商工会議所の職員などです。

相手ホームタウンの商店街を歩き、試合日の来訪者対策、空き店舗活用、キャッシュレス、イベント運営などを学びます。

高校生地域探究試合

対象は、高校生や大学生です。

事前に相手地域を調べ、現地の生徒と地域課題について意見交換します。

試合後は、自分たちの町へ応用できる提案をまとめます。

地域企業交流試合

対象は、地元企業の社員や経営者です。

相手地域の企業を訪問し、商品開発、採用、観光、物流、地域ブランドなどについて話し合います。

自治体交流試合

対象は、観光、交通、福祉、防災、教育などを担当する職員です。

相手自治体の取り組みを視察し、試合運営や地域交通も含めて情報交換します。

このように試合ごとの目的を明確にすれば、参加者も選びやすくなります。

誰を派遣するかは、クラブだけで決めません。

クラブ、自治体、学校、商工団体、地域企業などで構成する運営委員会が、年間計画をつくります。

19試合を数年で配分する

毎年すべての対戦相手と深い交流を行う必要はありません。

むしろ、数年単位で役割を分けた方が継続しやすくなります。

たとえば、一年目は「知る年」です。

子ども、高校生、商店街関係者など、小規模な代表団を送り、相手地域を知ります。

二年目は「試す年」です。

前年度に得たアイデアを、自分たちの町で小さく実施します。

同時に、前年訪問した地域の人たちを受け入れます。

三年目は「つくる年」です。

共同商品、合同イベント、学校交流、企業連携など、具体的な成果を形にします。

四年目以降は、次の地域へ重点を移します。

こうすれば、一度に19地域すべてへ大きな予算を使わずに済みます。

年間19試合を、19回の単発旅行として見るのではありません。

数年間にわたる地域交流の時間割

として考えます。

AIが派遣計画をつくる

年間の派遣先や参加者を決める際には、AIも活用できます。

AIが見るのは、単純な距離や旅費だけではありません。

対戦相手の地域特性。

過去の交流履歴。

自分たちの町が抱える課題。

相手地域の成功事例。

参加希望者の関心。

交通費と宿泊費。

受け入れ可能人数。

子どもの学校日程。

試合開始時刻。

翌日の予定。

過去に派遣された人の偏り。

こうした条件を組み合わせます。

たとえば、自分たちの町で空き店舗問題が大きいなら、商店街再生で成果を上げているホームタウンへの試合に商業関係者を派遣します。

公共交通の維持が課題なら、スタジアム交通や地域交通に特徴のある町へ自治体職員と交通事業者を送ります。

農産物のブランド化を考えているなら、地元産品とクラブをうまく結び付けている地域へ食品事業者を送ります。

子ども向け交流は、長距離移動が少なく、昼間開催で、受け入れ体制を整えやすい試合を優先します。

AIが決めるのではありません。

AIは候補を示します。

最終的には、地域の人が目的と安全性を確認して決定します。

費用を誰が負担するのか

交換留学を実現するうえで、最大の問題は費用です。

交通費。

宿泊費。

食費。

保険。

引率者の費用。

現地での移動。

施設利用料。

交流プログラムの運営費。

すべてを参加者負担にすれば、参加できる人は限られます。

特に子どもの場合、家庭の経済状況によって参加機会が変わる仕組みにはしたくありません。

一方で、クラブや自治体がすべて負担するのも現実的ではありません。

そこで、複数の主体で費用を分けます。

参加者負担

観戦チケット代や食費の一部など、通常の遠征でも必要になる費用を負担します。

完全無料にしないことで、参加意思を確認できます。

ただし、子どもや経済的事情のある家庭には免除制度を設けます。

クラブ負担

参加者の募集、試合チケット、クラブ施設の利用、交流プログラムの調整などを支援します。

自治体負担

地域学習、子ども交流、産業振興、観光、人材育成など、行政目的に該当する部分を支援します。

スポンサー負担

企業が「一試合一交流」のスポンサーになります。

単なる広告ではなく、

「この企業が、地域の子ども20人の交換留学を支えました」

と成果を示せます。

地域企業・団体負担

商工会議所、観光協会、農業団体などが、関係するテーマの派遣費用を負担します。

リーグ共通基金

人気試合や大規模クラブだけが有利にならないよう、リーグ全体で共通基金を設けます。

地方から地方への長距離移動や、小規模クラブの交流を重点的に支援します。

ふるさと納税・寄付

「子どもたちをアウェイ交換留学へ送る」という使途を明確にして、寄付を集めます。

寄付者には、子どもたちの活動報告や地域学習の成果を共有します。

一人の費用を一つの主体が全額負担するのではありません。

複数の財源を少しずつ組み合わせます。

毎年積み立てる「遠征教育基金」

交流を単年度予算だけで運営すると、毎年実施できるか分かりません。

そこで、クラブごとに、

ホームタウン遠征教育基金

を設けます。

試合チケット一枚につき10円。

グッズ購入一件につき10円。

アウェイパスポート利用額の一部。

スポンサー協賛。

自治体助成。

個人寄付。

こうした小さな金額を年間で積み立てます。

たとえば、一年間に50万人分のチケットや購買機会があれば、10円でも500万円になります。

全額を子どもの遠征だけに使う必要はありませんが、継続的な基金があれば、翌年の計画を立てやすくなります。

今年の余剰金を翌年へ繰り越します。

遠方試合が多い年に多く使います。

近隣試合が多い年は積み立てます。

単発の補助金ではなく、数年単位で運営する資金にします。

子どもを行かせる場合の親の負担

子どもにとって、アウェイゲームへの交換留学は一生忘れられない経験になると思います。

初めて訪れる町。

初めて乗る長距離バスや新幹線。

知らないチームとの交流試合。

別の地域で暮らす同年代との会話。

大きなスタジアム。

目の前で見るプロの試合。

帰宅後に家族へ話したくなる出来事。

教室で教科書を読むだけでは得られない学びがあります。

だからこそ、家庭の負担をできるだけ小さくする必要があります。

保護者が毎回同行しなければならない仕組みでは、仕事を休めない家庭の子どもは参加できません。

親が自家用車を出す。

現地まで送迎する。

宿泊先を手配する。

食事を用意する。

引率を分担する。

こうした負担を前提にしてはいけません。

交換留学では、クラブや自治体が公式プログラムとして運営し、認定された引率者を配置します。

保護者は、集合場所までの送り迎えだけで参加できるようにします。

近隣地域では、駅やAWAY BASEを集合場所にします。

遠方の場合は、アウェイバスや鉄道の団体利用を組み合わせます。

保護者向けには、事前説明会を行います。

行程。

連絡方法。

宿泊場所。

食事。

アレルギー対応。

緊急時対応。

保険。

引率者。

現地の受け入れ責任者。

これらを明確にします。

移動中は、保護者がアプリで現在地や到着状況を確認できるようにします。

ただし、子どもの位置情報を一般公開してはいけません。

保護者と運営関係者だけが確認できる仕組みにします。

引率は地域の善意だけに頼らない

子どもの交流事業では、引率する大人の負担も大きな問題です。

少年団の監督。

保護者。

学校の先生。

クラブスタッフ。

毎回同じ人に負担が集中すると、制度は続きません。

そこで、Jリーグ共通の引率者制度をつくります。

教員経験者。

保育・教育関係者。

旅行業務経験者。

スポーツ指導者。

救命講習修了者。

クラブスタッフ。

地域ボランティア。

こうした人を研修し、

ホームタウン交流コーディネーター

として認定します。

引率者には、交通費や宿泊費だけでなく、適切な謝金を支払います。

善意の無償ボランティアだけに依存しません。

子どもの人数に応じて、必要な引率者数を設定します。

男女の引率者を配置します。

夜間の連絡体制を整えます。

体調不良、けが、迷子、交通障害などの対応手順を統一します。

旅行会社にも、移動と宿泊の安全管理を担ってもらいます。

サッカー交流の部分はクラブ。

教育の部分は学校や自治体。

旅行管理は旅行会社。

それぞれの専門性を生かします。

子どもだけを「見学させる人」にしない

子どもを遠征へ連れて行き、試合を見せるだけでも、良い思い出にはなります。

しかし、交換留学としては、受け身の観客だけにしない方がよいと思います。

出発前に、相手地域について調べます。

人口。

産業。

食文化。

歴史。

スタジアム。

クラブ。

地域課題。

自分たちの町との違い。

現地では、同年代の子どもに質問します。

試合前には、両地域の子どもが一緒にサッカーをします。

昼食では、地域の料理を食べます。

町を歩きます。

試合を観戦します。

帰宅後は、

「相手の町で驚いたこと」

「自分の町にも取り入れたいこと」

「自分の町の方がよいと思ったこと」

をまとめます。

発表の場も用意します。

学校。

クラブ。

市役所。

商店街。

次のホームゲーム。

AWAY BASE。

子どもが外から見た自分の町を、大人たちへ伝えます。

子どもは単なる招待客ではありません。

地域へ新しい視点を持ち帰る役割を担います。

受け入れる側の負担をどう減らすか

交換留学は、送り出す側だけでなく、受け入れる側にも負担がかかります。

訪問先の手配。

施設の予約。

食事。

案内役。

交流相手の募集。

資料作成。

当日の運営。

安全管理。

試合日にはクラブや地域関係者が通常業務で忙しいため、追加の対応を求めすぎると続きません。

そこで、受け入れを標準化します。

各ホームタウンは、あらかじめ数種類の交流メニューを登録します。

たとえば、

二時間の商店街見学。

九十分の少年サッカー交流。

一時間の自治体担当者意見交換。

地域企業一社の訪問。

スタジアムツアー。

地域資料館の見学。

農業体験。

防災施設見学。

すべてを一から企画するのではなく、既存の地域活動を交換留学向けに整えます。

参加人数も、

10人まで。

20人まで。

40人まで。

と受け入れ上限を設定します。

対応できない試合では、無理に実施しません。

年間の受け入れ可能日を先に登録します。

AIが、送り出す側の希望と受け入れ側の余力を照合します。

迎える側にも利益を返す

受け入れ側が無償で奉仕するだけでは、長続きしません。

交流プログラムを提供した団体には、適切な対価を支払います。

商店街の案内役。

地域ガイド。

少年チームの指導者。

施設。

飲食店。

バス会社。

AWAY BASE。

それぞれに収益が残るようにします。

受け入れ地域には、参加人数に応じた交流支援金を支給します。

飲食や施設利用も、できるだけ地域内で行います。

地元企業は、自社の商品や事業を紹介できます。

自治体は、移住や観光、産業の情報を伝えられます。

地域の子どもたちも、相手地域を知る機会を得ます。

ホーム側が一方的にサービスするのではありません。

翌年は立場が逆になります。

今年、こちらが10人を受け入れた。

翌年、相手の町がこちらの10人を受け入れる。

必ず同じ人数、同じ内容で返す必要はありません。

しかし、数年単位で互いに送り、互いに迎える関係をつくります。

「おもてなし競争」にしない

アウェイサポーターを歓迎する取り組みは素晴らしいものです。

しかし、歓迎度を競いすぎると、地域側の負担が増えます。

無料サービス。

過剰な値引き。

大量の記念品。

多数のボランティア。

豪華なイベント。

予算の大きい地域ほど有利になります。

ホームタウン交換留学は、豪華さを競う制度にしてはいけません。

小さな町には、小さな町にしかできない交流があります。

地域の食堂で昼食を取る。

地元の子どもとボールを蹴る。

商店主から話を聞く。

川沿いを歩く。

市役所の若手職員と意見交換する。

大規模なイベントがなくても、十分に意味があります。

受け入れ評価も、

「何人を集めたか」

「いくら使ったか」

だけで判断しません。

参加者が何を学んだか。

翌年も交流が続いたか。

地域へ提案が持ち帰られたか。

新しい関係が生まれたか。

を見るべきです。

一試合一テーマなら、受け入れ負担を分散できる

一つのホームゲームに、子ども、企業、商店街、自治体の全員を受け入れようとすると運営が複雑になります。

そこで、一試合につき一つか二つのテーマに絞ります。

ある試合は、子ども交流の日。

別の試合は、商店街交流の日。

別の試合は、地域企業交流の日。

受け入れる団体が毎回変われば、負担が分散します。

年間日程が発表された段階で、

この試合は子ども交流。

この試合は観光交流。

この試合は防災交流。

と割り振ります。

相手クラブと早めに調整し、数か月前から準備します。

急な依頼を減らします。

対戦がなくなっても交流を切らない

昇格や降格によって、翌年は同じクラブと対戦しないことがあります。

だからといって、交流を終わらせる必要はありません。

オンラインでの意見交換。

地域産品の共同販売。

子どもたちの手紙や動画。

学校同士の交流。

地域イベントへの相互出店。

プレシーズンマッチ。

カップ戦。

別競技との連携。

関係を続ける方法はあります。

むしろ、試合がなくても交流が続けば、それは本当の地域関係になったと言えます。

Jリーグの対戦カードをきっかけに出会い、その後は町と町として付き合います。

企業にとっては、人材育成になる

地域企業の社員を交換留学へ派遣することにも意味があります。

研修というと、会議室で講義を受けるものになりがちです。

しかし、別の地域を実際に歩き、

店を見る。

企業を見る。

交通を見る。

スタジアムを見る。

地域の人と話す。

自分たちの町と比較する。

方が、実感を伴った学びになります。

若手社員にとっては、自分の会社と地域の関係を考える機会になります。

管理職にとっては、他地域の成功事例を見る機会になります。

地域企業同士の取引が生まれる可能性もあります。

地元食材を使った共同商品。

クラブ間コラボ商品。

観光ツアー。

物流連携。

人材交流。

試合では競うクラブの地域が、産業では協力します。

自治体職員も、住民の立場で遠征する

自治体間の視察は、行政施設や会議室を中心に行われることがあります。

しかし、交換留学では、一人の来訪者として町を体験します。

駅を降りる。

案内を見る。

地域交通に乗る。

AWAY BASEへ行く。

商店街を歩く。

スタジアムへ向かう。

試合後に帰る。

その過程で、

初めて来た人に案内が伝わるか。

移動しやすいか。

子ども連れで困らないか。

地域の店へ入りやすいか。

夜間の交通は十分か。

を体感できます。

自分の町を改善するためには、他の町を利用者として経験することが役立ちます。

行政視察では見えない部分が、アウェイ遠征では見えてきます。

交流の成果を地域へ戻す

交換留学は、行った人だけが楽しかったという制度で終わらせてはいけません。

参加者には、地域へ学びを返してもらいます。

ただし、長い報告書を義務づけると参加のハードルが上がります。

子どもなら、写真と感想。

高校生なら、短い発表。

商店街関係者なら、実行できそうな改善案を一つ。

企業なら、連携可能性を一つ。

自治体職員なら、制度改善案を一つ。

その程度から始めます。

成果は、ホームゲームの日に展示します。

AWAY BASEで紹介します。

クラブのSNSで発信します。

地域の学校や商店街へ共有します。

翌年の派遣計画にも反映します。

AIが過去の報告を整理し、

どの地域から何を学んだか。

どの提案が実行されたか。

どの交流が継続しているか。

を蓄積します。

数年後には、クラブのホームタウンに地域交流の知識がたまります。

子どもの記憶が、未来の地域をつくる

子どもの頃に訪れた町のことは、不思議と長く記憶に残ります。

初めて乗った新幹線。

サービスエリアの朝。

知らない町の駅。

相手チームの子どもたち。

初めて聞く方言。

スタジアムへ向かう人の流れ。

試合前の音。

ゴールが決まった瞬間。

帰りのバスで見た夜景。

勝敗だけではありません。

その日、一日すべてが記憶になります。

交換留学で訪れた子どもが、大人になって再びその町を訪れるかもしれません。

大学進学。

就職。

旅行。

仕事。

家族との観戦。

かつて交流した人との再会。

一度の遠征が、何十年後の関係につながる可能性があります。

費用対効果だけでは測れない価値です。

地域活性化は、今年の売上だけでなく、未来の関係人口を育てることでもあります。

交流の物語を、地域の外へ伝える

ホームタウン交換留学には、もう一つ大きな可能性があります。

それは、メディアに取り上げてもらえることです。

Jリーグの試合日には、スタジアムに新聞、テレビ、スポーツメディアなどの取材者が集まります。

通常は試合結果、選手、監督、順位争いが報道の中心になります。

しかし、その日に、

地域の子どもたちが初めてアウェイの町を訪れた。

両クラブの少年チームが交流した。

高校生が互いの地域課題について発表した。

商店街同士が新しい共同商品をつくった。

という出来事があれば、試合とは別の地域ニュースになります。

特に、子どもたちが交流する姿や、初めてスタジアムへ入ったときの表情は、企画の意味を分かりやすく伝えます。

「サッカー観戦に子どもを招待しました」というだけではありません。

なぜこの町を訪れたのか。

相手地域の子どもと何を話したのか。

何を見て、何を学び、自分の町へ何を持ち帰るのか。

そこまで含めれば、教育、地域交流、地方創生を扱うニュースになります。

取材する側にとっても、試合会場の周辺で行われるため、追加の移動や大規模な取材体制を必要としません。

クラブが事前に、

交流の目的。

参加する子どもや団体。

当日の行程。

取材可能な時間。

交流後の発表内容。

などを整理して提供すれば、地域の新聞やテレビも扱いやすくなります。

報道された内容は、その日の開催地域だけにとどまりません。

送り出した側の地域でも、

「私たちの町の子どもたちが、アウェイの町で学びました」

というニュースになります。

一つの交換留学が、訪問先と派遣元、二つの地域で報道される可能性があります。

さらに、クラブ公式SNSやJリーグ全体の発信を通じて、全国へ共有できます。

その報道を見た別のクラブや自治体が、

「自分たちの地域でも実施できないか」

と考えるかもしれません。

スポンサー企業が、次の交流を支援したいと申し出るかもしれません。

学校や商店街、地域企業から、新しい参加希望が出てくるかもしれません。

つまり、メディアに取り上げられることは、単なる宣伝ではありません。

一つの地域で始まった取り組みを、別の地域へ広げる力になります。

ただし、取材されるためだけに企画を派手にする必要はありません。

主役は、あくまで参加する子どもや地域の人たちです。

カメラのための演出ではなく、本当に学びや交流があることが前提です。

小さな交流であっても、その背景にある目的と、参加者が得たものを丁寧に伝えれば、十分にニュースになります。

毎週末、全国のスタジアムでホームタウン交換留学が行われ、その様子が地域ニュースとして伝えられる。

試合結果だけではなく、サッカーを通じて町と町がつながったことが報道される。

そうなれば、Jリーグの見え方も変わります。

Jリーグは、プロサッカーの試合を開催するだけの存在ではありません。

全国の地域と子どもたちを結び、学びと交流を生み出すネットワークである。

その価値が広く知られることで、ホームタウン交換留学はさらに活発になっていくと思います。

サッカーがあるから、町と町が出会える

多くの地域は、特別な理由がなければ互いを訪れません。

遠く離れた二つの町。

産業も違う。

気候も違う。

文化も違う。

住民同士が出会う機会もありません。

しかし、Jリーグの日程表には、町と町の組み合わせが毎年つくられます。

試合があるから、人が動きます。

応援するクラブがあるから、行ったことのない町へ向かいます。

対戦相手だからこそ、その町の存在を強く意識します。

この仕組みを、90分間の試合だけで終わらせるのは、もったいないと思います。

試合では競います。

町では学び合います。

スタジアムではホームとアウェイに分かれます。

試合の前後では、一緒に地域の未来を考えます。

アウェイ遠征を、町の学びに変える

STAYXが、泊まる場所をつくります。

アウェイバスが、町と町をつなぎます。

アウェイパスポートが、町を巡るきっかけをつくります。

AWAY BASEが、現地で人を迎えます。

ホームタウン交換留学は、その仕組みを使って、

人と知識を町から町へ運びます。

子どもが学びます。

商店街が学びます。

企業が学びます。

自治体が学びます。

受け入れる町も、訪れた人の視点から学びます。

誰かが一方的に教えるのではありません。

互いの町を見て、自分の町を考えます。

すぐに大きな成果が出なくても構いません。

最初は、子ども10人の交流でもよいと思います。

商店街の若手5人でも構いません。

自治体職員2人でも構いません。

年間19試合のうち、まず一試合から始めます。

翌年、別の人を送ります。

再び訪れます。

今度は相手を迎えます。

その繰り返しが、やがて町同士の関係になります。

アウェイゲームは年間19試合あります。

それは、19回の移動ではありません。

19回の出会いです。

サッカーを見に行った子どもが、知らなかった町を好きになる。

訪れた町の良さを知り、自分の町について考える。

その経験を地域へ持ち帰る。

そんな交換留学が、Jリーグから始まったら面白いと思います。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

本記事は、「日本サッカー産業論を起点に生まれた問い」シリーズの一編です。

サッカーの試合によって生まれる移動を、観戦と消費だけで終わらせず、町と町の学び合いへ変えられないか。

子ども、学校、商店街、企業、自治体がアウェイゲームをきっかけに互いの地域を訪れ、その経験を自分たちの町へ持ち帰る仕組みを考えました。


本記事は、Kindle書籍『Jリーグアウェイ経済論 サポーターの移動から始まる地域交流』の調査・構想記事です。アウェイ遠征を、交通、宿泊、観光、地域消費、関係人口の視点から考えています。

蒼色真琴
MA Publishing

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